Fate/wizard liner プリズマ☆イリヤ   作:天野蒼夜

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戦いを終え、ひと時の平和を過ごす悠生達。しかしこの日、イリヤは
美遊と裕輔の知られざる姿を目にしてしまう。

OP2:
「コネクト」唄:ClariS

ED:
「Prisum Sympathy」唄:Stylips


第10話「友達」

「え~今日イリヤちゃん、美遊ちゃん、裕輔君は体調不良のためお休みです」

 

今日のHRでタイガーがそれを俺達に告げる。

 

そういえばイリヤは俺と裕輔が駆けつけた時、ぐったりしたように倒れていた。

 

美遊とサファイアが言うにはイリヤはたった一人でセイバーという英霊と戦い、突如具現化させた力で互角の戦いを見せ、勝利を収めた。

 

イリヤのその時の姿はまるで英霊そのものだったとか……。

 

「へ~珍しいこともあるもんだな。美遊ならともかく、そういうのに縁がなさそうなイリヤや裕輔が体調不良なんて」

 

たしかにイリヤは俺が知り合った日々の中で体調を崩したことなんて一度もなかった。

 

しかし美遊と裕輔は本当は体調不良ではなくルヴィアの言いつけで今日は休むように言われているだけなのだ。

 

まあ俺は両親に余計な心配をかけたくないからこうやって普通に学校に来ているが。

 

「(放課後、お見舞いでも行ってみるか。やっぱ心配だしな)」

 

そう決めて、俺は今日もいつも通りのタイガーからの授業を受けた。

 

 

―――――

 

 

「……」

 

本日……午後3:00。

 

私イリヤスフィール・フォン・アインツベルンはセラからの言いつけでベッドの中にいた、だが。

 

「……暇だ」

 

そう、暇なのだ。

 

こうやって部屋でベッドの中でい続けるなんて暇以外の何者でもない。

 

「あ~こんななら私も学校行きたかったな~。ベッドで寝てばかりじゃ退屈で死んじゃうよ。人は勉強や仕事に縛られることによってようやく生きている実感を得られるんだわきっと」

 

「その歳で老成した人生観を持つのもどうかと思いますが……」

 

「それにても美遊さんは今頃何をしてるんだろう。ルヴィアさんの言いつけで療養してるって聞いてるけど……」

 

「だったら直接話してみます?はいっ!」

 

ルビーが身体を変形させて携帯に変形する。

 

「何その携帯!?」

 

「私の持つシークレットデバイスの一つ、テレフォンモードです!」

 

もう……何ていうか……何でもありだよね…………魔術礼装って。

 

ルビーは頂点に出現させたアンテナで【もしも~し!サファイアちゃ~ん!】と言いながら向かいの別荘に住んでいるサファイアと通信を取り始める。

 

それがしばらく続くと通信が届いたのか、【どうしたの姉さん?】というクールな口調の声が聞こえてきた。

 

この声はまさしくサファイアだ。

 

すごい!本当に通じるんだ!

 

【今の声、何なのサファイア?】

 

【何だ?誰かと話してるのか?】

 

サファイアの声だけじゃなく、美遊と弐藤君の声まで聞こえてきた。

 

「ど、どうも……イリヤスフィールです……」

 

何だか緊張してしまってつい敬語口調で話してしまった。

 

いつものように顔を合わせているはずなのに通信でやり取りすると直接話すのとは勝手が違う。

 

【何か用事?】

 

「いや……用ってわけじゃないけど……今何してるのかなって、思って……」

 

【……今は裕輔と家にいる。ルヴィアさんが休養を取りなさいって言っていたから。それより、身体のほうは何ともないの?】

 

美遊さんが私の身を案じてくれてる?

 

今まではとっつきにくかったのにどういった心境の変化だろう?

 

「うん、ちょっと熱は出たけど今は平気かな。元々身体は丈夫

なほうだから」

 

【……そう】

 

「……」

 

【……】

 

十分にも感じた十秒間の沈黙だった。

 

会話を繋げないといけいないってのは分かってるけど、何を話したらいいのか全然分からない。

 

「あ~もう!何不器用な会話してんですか~!?いいです!こうなったらテレビ電話に切り替えて話しましょう!顔を見れば会話も弾むでしょう!」

 

そう言ってルビーから壁側に移動してプロジェクターを出現させる。

 

ルビーが何者なのかますます分からなくなってきたかも……。

 

私が驚くのをスルーするようにルビーはプロジェクターから映像を映し出す。

 

すると映像に映し出されたのは……。

 

「め……メイド服に……執事服!?」

 

スクリーンに映し出されたもの……それはメイド服に身を包んだ美遊さんと執事服に身を包んだ

弐藤君だった。

 

弐藤君は何でもないって顔をしているが、美遊さんは恥ずかしそうに顔を赤くさせてモジモジしている。

 

「これはサファイアちゃんが今見ているものをリアルタイムで中継できるんです。それにしても美遊さんも裕輔さんも、変わった趣味をお持ちのようで」

 

【いやっ!これは……これは違うの!これはルヴィアさんに無理矢理着せられて……その……あの……】

 

【俺のは趣味じゃねぇぞ!】

 

涙目になりながら私に弁明する美遊さんは今までのクールな物腰はこれっぽちもなかった。

 

同時にそんな美遊さんを見て、私の中でガッチリと何かのスイッチが入る音がした。

 

「美遊さん、弐藤君、今すぐ貴方達に会いたいの。いや、会いたい!すごく会いたい!その姿を生で見たい!来て!今すぐ来て!その格好のままで!!」

 

ルビーを力強く握り締め、息も荒くさせながら言う私。

 

今の私はは知る暴走機関車と言っても過言ではないだろう。

 

【いや……でもその……】

 

「家は向かいでしょ!今すぐ来て!駆け足で!!!」

 

【は、はい~!】

 

あまりに興奮する私に美遊さんと弐藤君は駆け足で別荘から駆け出して行った。

 

早く来ないかな~?生メイドに生執事……ふふふふふふふふっ。

 

 

―――――

 

 

何か人が変わったイリヤのご指名通り、俺と美遊は執事服とメイド服のままの格好でイリヤの部屋に

やって来た。

 

そして、そこで待っていたのはイリヤスフィールという名のオタクだった。

 

「うわぁ~!すご~い!生執事に生メイドだ!生地もいいの使ってるし!作りもしっかりしてるし~!」

 

その場でぴょんぴょんとウサギのように跳ねながら俺達をあらゆる角度で俺達の格好を見続ける

オタク小学生。

 

「本当にメイド!?ちょっと私のことご主人様って言ってみて!」

 

「この場合って普通お嬢様じゃねぇのか?お前女だろ?」

 

「細かいことはいいの!いいから呼んでみて!さあ、さあさあ!」

 

「ご、ご主人様~!」

 

テンションがハイボルテージ状態になったイリヤをそれ以上反抗することはできず、俺達はやむなくイリヤのことをご主人様と呼ぶハメに。

 

それからしばらくしてイリヤのテンションも落ち着き、オタク状態から解放された。

 

「ごめんね二人共……何か変なテンションになっちゃって……」

 

「そ、それはいいけど……家の人に変な目で見られたのがちょっと……」

 

ああ、あのセラって人俺達を完全に遠い目で見てたしな。

 

これもイリヤのせいだ。

 

「ごめんなさい、そういうの考えなしでした……」

 

「恥じることはありません。美遊様のメイド服も裕輔様の執事服も正式な仕事着なのですから」

 

「じゃあ本当にメイドと執事なの?」

 

「ああ、そうだよ。俺が執事で美遊がレディースメイドって扱いでな。生活の保護をしてもらう代わりにお嬢の身の回りの世話してんだよ。あとカード回収もな」

 

「へ、へ~そうなんだ」

 

イリヤが苦笑する。

 

きっと俺達のことを考えて深く突っ込まないようにしてくれているのだろう。

 

友達思いのいい奴だ。

 

あんなに友達が多いのも納得できる。

 

「でもすごいよね。メイドや執事、カード回収の両立なんて!私だったら絶対できないよ!」

 

「いつもルヴィアさんにはお世話になってるから。それぐらいのことは……。でも、イリヤスフィールもすごいと思う」

 

「私が?」

 

「うん、友達もたくさんいるし、戦う度にどんどん強くなってるし。きっと貴女には私にはない何かがあるんだと思う」

 

美遊にはない何か、か……。

 

たしかにイリヤと美遊は正反対の性格だからそういうのもあるかもしれないが……。

 

「ねぇ……前から思ってたんだけど、イリヤスフィールって呼ぶの長くない?」

 

「え?」

 

「イリヤでいいよ、友達は皆そう呼んでるし。フルネームで呼ばれるのはその、恥ずかしいというか……」

 

「そういうことならいいんじゃねぇか?美遊もイリヤって呼んで、イリヤは呼び捨てにする。

それでいいだろ」

 

「……裕輔がそう言うならそうする。イリヤ」

 

顔を赤くしながらイリヤの名前を呼ぶ美遊。

 

あ~らら、最初のクールな物腰はどこへ行ったのやらって感じだな。

 

「うん、改めてよろしくね美遊。裕輔君も」

 

「おう!よろしくなイリヤ!ほら美遊も」

 

「よ、よろしく……イリヤ」

 

こうして俺達とイリヤの仲は更に深まった。

 

イリヤにオタクなところがあったのは驚いたが……ま、結果オーラ

イだな。

 

ちなみにその後悠生達が見舞いにやって来て騒いだ。

 

だが……。

 

「待てゴルァァアアアアアアァ!!イリヤの裸見やがって!!殺す!てめぇは殺す!!!」

 

見舞いに来る際イリヤがまた変なテンションになり、急に脱ぎ出して俺がパンツ一丁になったイリヤを見てしまったのところを悠生に見られてしまい、俺が冬木市の中で悠生と死の追いかけっこをしたのも今ではいい思い出だ。

 

「イリヤの裸……イリヤの白い成長途中の柔肌……そしてパンツ。うおおおおおおぉおおおぉ!!!!!」

 

「こっそり撮っておいたあの時の写真を悠生の机の上に置いたのはいいが、あいつにはち~とばかし刺激が強すぎたようだな」

 

何かこういうこともあったらしいがこれは放っておいてもいいだろう。

 

 

―――――

 

 

翌日の深夜。

 

私達はいつものようにカード回収に向かっていた。

 

しかし今回は班分けがされており、クラスカードの回収班に私と悠生、凛さん、サモンカード回収に裕輔君、美遊、ルヴィアさんが向かっている。

 

「変だな……英霊がどこにもいない……。凛さん本当にここにクラスカードがあるんですか?」

 

しかも今回の鏡面界は霧が濃い。

 

ヘタしたら迷子になりそうだ。

 

「ええ、そのはずよ。こうして鏡面界は存在しているのだから」

 

「それにしても回を追う毎に鏡面界が狭くなってるような……」

 

【鏡面界は英霊や召喚獣によって作られるってのは話しただろ。その英霊と召喚獣が回収されたことによって歪みが減ってきてるってことだ】

 

イリヤの疑問にドラグブレイドことドラグロスが答える。

 

私達が回収していないカードはクラスカードとサモンカードが二枚ずつの計四枚。

 

それらを全て回収することできれば鏡面界もなくなるってこと、だよね?

 

「とにかく嘆いていてもしかたないわね。地味だけど歩いて捜しましょう」

 

凛さんに同意して私達は霧に包まれた森の中を歩いていく。

 

しかしそうしている間、私はきょろきょろと辺りを見渡している。

 

さっきから感じる妙な気配が気になってしかたないのだ。

 

「どうしたイリヤ?」

 

そんな私が気になってか、悠生君が横から声をかける。

 

「……うん、私の気のせいかもしれないけど。何かさっき何が動いたような……」

 

これはもしかしたら―――。

 

「っ!」

 

何かが私の首筋をかすった。

 

その飛んできたものは鋭利なナイフで、近くの木に突き刺さった。

 

どうにかルビーが物理防御で防いだためか、薄皮一枚で済んでいる。

 

「敵がどこにいるのか分からないわ!二人共方陣を組んで!!」

 

凛さんの指示で私達は円を作るように方陣を取っていつどこから来てもいいように全方位を警戒する。

 

しばらくそうやって構えていると、私の視界に一瞬何かが駆け抜けて行った。

 

イリヤはそれに反応するようにステッキからエネルギー波を出そうとするが……。

 

「あ……れ……?」

 

視界がぼやける。

 

身体もふらつく。

 

さっきまで何ともなかったのにどうして……?

 

「イリヤ!」

 

突如私の前に飛んできたナイフから守るように私の右手を取って身体を反らさせる。

 

「ボーッとするな!あれが当たったらただじゃ済まないぞ!」

 

「ただじゃ……済まない……?」

 

そういえばセイバーの戦いの時も死の瀬戸際だった。

 

しかもさっきのナイフは的確に私の喉元を狙ってきていた。

 

あれがもし避けられなかったら……私はどうなるんだろう……?

 

「周囲に目を光らせろ!ぼやぼやしてたらあっという間にあの世行きだぞ!」

 

「……え?」

 

そういえば、この前悠生君は私にこう言っていた。

 

<お前はあれをアニメやゲームと言っていたが、俺は違うと思う。クラスカード回収も、サモンカード回収も、きっと命のやり取りだ>

 

命のやり取り……きっと悠生君が言っていたのはこのことだったんだ……しかも。

 

「何よこの数!敵が軍勢だなんて聞いてないわよ!!」

 

森の中から突如私達の前に現れて囲む異形の軍勢。

 

どの敵も武器を構えて私達を殺す勢いだ。

 

その軍勢の持つ刃はどれも不気味に光っており、人間の肉なんて楽々と斬り裂けそうだった。

 

「くっ……!」

 

凛さんが指と指に挟んだ宝石を投げつけて業火の渦を発生させて軍勢を吹き飛ばす。

 

「ひとまず包囲網を突破するわ!悠生とイリヤは道を作って!」

 

「はい!」

 

凛さんと悠生君と一緒に走り続ける私だが、途中で地面に膝をついてしまう。

 

「何をしてるのイリヤ!」

 

「か……身体が……動かない……!」

 

「魔力循環に異常発生!物理防御を維持することができません!」

 

私が地面に伏せたことを勝機と言わんばかりに軍勢達が持っている武器を全て私めがけて投げつける。

 

それはまるで王手をかけられた将棋あるいはチェス。

 

私は魔法少女はもっと綺麗なものだと思っていた。

 

でも、実際はこんなに命のやり取りが行われているんだ……でも。

 

「(何とかしなくちゃ……こんなこところで。こんなところで死ぬなんて……!)」

 

絶対に……絶対に……!

 

「嫌ぁああああああああああああああぁ!!!!!」

 

私が叫ぶと全身から眩い光が発せられてドームのように広がり、そのドームの中に入った軍勢達もたちまちに消去する。

 

そして……セイバーの戦いの時、自分が何をしたのか分かっていなかった私だったが、この時の私は自分が何をしたのかちゃんと覚えていた。

 

「これ……私がやったの……?」

 

周囲には私を中心に巨大なクレーターができており、目の前にはブリザドスタイルになった悠生君が息を切らしながら氷の防壁を張っていた。

 

あのドームの光がかなりのものであったためか、かなりボロボロになっている。

 

「悠生k―――」

 

「危ないところだった」

 

「え?」

 

「あと0コンマ防壁張るのが遅れていたら俺も凛さんもお陀仏だった。お前のせいで」

 

「ちょっと悠生―――」

 

「結果的には敵を倒すことはできた。だが、お前が暴走させなければ被害はもっと最小限

に済んだ。思えば、最初に攻撃を喰らったのもお前だった。お前が俺や凛さんの足を引っ

張ったんだ……俺は」

 

その後に放たれた悠生君の言葉の意味を私は理解した。

 

同時にそれは私の心をえぐりこむものだった。

 

その言葉の意味は……。

 

「もう俺は……お前と一緒に戦いたくない」

 

絆を断つこと……。

 

同時に私に【役立たず】という烙印が押された瞬間であった……。

 

 

 

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