Fate/wizard liner プリズマ☆イリヤ   作:天野蒼夜

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あの一件から悠生とイリヤの仲は極端にこじれてしまう。そしてイリヤ
は命のやり取りが行われる世界から……。

OP:
「Life is SHOW TIME」唄:鬼龍院翔fromゴールデンボンバー

ED:
「Prisum Sympathy」唄:Stylips



第11話「契約の鎖を断つ言葉」

「はぁあああああああああああああああ……!うおらぁあああああああぁ!!!」

 

レグルスセイバーから放たれる水の斬撃が巨大な顔をした灰色の召喚獣を斬り裂いて消滅する。

 

消滅したことによって出現したカードを美遊が回収する。

 

【美遊】

「サモンカードアトモス、回収完了」

 

これで俺が回収したサモンカードは三枚、あいつと同列になったってわけだ。

 

重力系の魔術を使ってきたから若干焦ったが、どうにか気合いで倒せたな。

 

「さすが私が見込んだだけのことはありますわ。私が手を出すまでもありませんでしたわね」

 

ああ、あんたは本当にほとんど何もしなかったな……。

 

「これで回収されたサモンカードは六枚、あっちも回収しているからクラスカードの数も六枚。これで残りは一枚ずつになった」

 

「あいつ等ならとっくに回収してんだろ。相手がセイバークラスでもない限りな」

 

「さ、用も済んだことですし帰りますわよ。最後のクラスカードは一筋縄じゃ行きませんから」

 

最後の一枚か……。

 

「面白ぇじゃねぇか。俺は相手が強ければ強いほど燃えるタイプだ。どんな奴が来たって俺とレグルスでぶっ潰してやるぜ!」

 

【ふっ、頼もしい限りだな】

 

当然だろレグルス、何たって俺は…………獣(ビースト)だからな!

 

 

―――――

 

 

「もう俺は……お前とは戦いたくない」

 

冷たく言い放った後、イリヤは両目に涙を浮かべながら飛び去って行き、その後ろ姿を俺はただ黙って見ていた。

 

「ちょっとあんた……いくら何でもあれは言い過ぎなんじゃないの?しかも意中の相手に」

 

「彼女が足を引っ張ったのは事実です。現にイリヤが不覚を取らなければもっと効率的にカードを回収することができたのですから」

 

「それはそうかもしれないけど……でも、あんたまさか」

 

「凛さん、ちょっと頼みたいことがあるんですけど……いいですか?美遊にも協力してもらいますが」

 

「言ってみなさい」

 

「ええ、それは……」

 

俺は頼み事の内容を凛さんに伝えた。

 

今後のイリヤの行動を予測して……。

 

 

―――――

 

 

あの一件から翌日。

 

私はいつものように学校に登校した。

 

「よお、おはようイリヤ。ん?どうした?何か顔色がよくないように見えるけど……」

 

雀花のその言葉は家を出る前にセラに言われた言葉だ。

 

それでもう一日学校を休むよう言われたが、別に私自身は体調が悪いわけじゃないからこうして登校してきたのだ。

 

「大丈夫だよ、私はいつも通り。元気だよ」

 

心情を悟られたくなった私は笑顔を作って元気であることを示してみせる。

 

余計な心配を友達にかけたくなかったのだ。

 

「そうか……ならいいんだが……あんま無理はするなよ?」

 

「うん、ありがとう。あ、そうだ!まだ宿題やってないんだ!

やらなきゃ!」

 

昨日のことで宿題に手をつけてないことを思い出した私は計算ドリルと筆記用具を鞄から取り出して宿題を始める。

 

計算ドリルに出題されている内容を読み、答えをシャーペンで書く作業を淡々と続けていると、また雀花から【おはよう】という声が聞こえてきた。

 

クールで口調で【ああ】と返す男の子の声。

 

その声の持ち主は間違いなく悠生君だった。

 

私は昨日のことで顔を合わせることができず、ただ黙々と宿題を続ける。

 

「ようお前等!ん?何だ?しみったれた空気は?喧嘩でもしてるのか?」

 

悠生君より遅れて教室にやって来た裕輔君がいつもの豪快な口調で言ってくる。

 

裕輔君は今日も元気だな……。

 

「なあライバル、お前イリヤとは話さなくていいのか?マブダチ

なんだろ?」

 

私は今計算ドリルのほうに視線を向けているのでどういう行動をしているのかは分からないが、恐らく肩に腕を乗せながら話しているのだろう。

 

「うるさい黙れ、俺は今そんな気分じゃないんだよ」

 

ドスの利いた声で裕輔君に返答する悠生君。

 

でも裕輔君はそれに対して【冷たい奴だな~】と言ってあっけら

かんとしている。

 

「裕輔、少しは空気を読んで」

 

空気を読まない裕輔君の発言に美遊が呆れた口調でツッコム。

 

美遊もいつも通りだ。

 

「空気~?何だよそれ?食えんのか?」

 

「空気は目に見えないから食べられない」

 

いや、そういう意味じゃないと思うけど……。

 

私は心の中でツッコミを入れると、隣からガタッという音が

聞こえてきた。

 

悠生君が席を立った音だろう。

 

「あれ悠生、どこ行くの?」

 

「トイレだよ」

 

それだけ言って私の隣から足音が聞こえてきて、それはやがて遠くなった。

 

宿題をようやく終わらせて周囲に視線を向けると悠生君だけじゃなく、美遊や裕輔君までいなくなっている。

 

「あれ?美遊と裕輔君は?」

 

「二人なら悠生君が出て行った少し後に出て行ったよ。二人共何か真剣な顔してたけど……」

 

真剣な顔してって……一体何をしに行ったんだろう?トイレじゃ、

ないよね?

 

「(すごく気になるけど……今の私は……もう……)」

 

あの怖い世界とは関わりたくない。

 

たしかに悠生君から命のやり取りだということは教えられたが、実際殺されそうになるとやはり恐怖心に駆られる。

 

私は……普通の小学生なんだから……。

 

 

―――――

 

 

教室から出て、屋上にやって来た俺は教室を出る前にこっそり呼んだ裕輔と美遊と話していた。

 

内容はもちろんイリヤについてだ。

 

「……なるほどな。死の瀬戸際に立たされて力を暴発させ、それがアサシンを消滅させたと」

 

「同時にその力の暴発が悠生や凛さんを死なせる要員になりえなかっ

たことも……でも、だからって」

 

「分かっている。イリヤがどうにかしようとしてやったことは。だがそれで他人が死んでしまえば元も子もない。それはお前達も分かっているだろ?」

 

「イリヤ……思いつめた顔をしていた」

 

「ああ、多分クラスカード集めもやりたくないって思ってるだろうな」

 

当然のことだ。

 

どこにでもいるような平凡な小学生が魔法の使い方や戦い方を教わってバケモノと戦うこと事態酷なことなんだから。

 

って、それは俺も一緒か。

 

「でも、命のやり取りをしてることに関しては貴方も同じ。それを怖いと思ったことはないの?」

 

「ないわけないだろう。俺だってこの前までは普通の小学生だったし。けど、俺は一度引き受けたことは最後までやりたいと思ってる。だから俺は最後まで続ける」

 

「でもイリヤのほうはどうすんだ?」

 

「そのことに関しては心配ない。今日の夕方にでもイリヤが行動を起こすはずだから」

 

「……まさか」

 

「ああ、そのまさかだ。俺はこれ以上イリヤを危険な目に遭わせたくない。だから美遊、お前にも協力して欲しい。イリヤのことを思うなら」

 

「……」

 

考えるように美遊が視線を地面に向けて沈黙する。

 

しばらくそれが続き、美遊から回答が返ってきた。

 

「分かった、何をすればいいの?」

 

「それは……」

 

凛さんの時同様に詳細を美遊に伝える。

 

これがイリヤにとって一番いいことだろうから。

 

たとえ……それで絆が断ち切られたとしても……。

 

 

―――――

 

 

学校は終わった後、私は家に帰って来た。

 

そして今は自分の部屋のベッドの上で顔を枕で埋めている。

 

「結局、悠生さんとは一言も話せませんでしたね」

 

「……うん」

 

あれから話しかけようと何度か試みたことがあるが、悠生の全身から放たれた話しかけるなオーラに気圧されてできなかった。

 

やっぱり悠生君は昨日のことを怒ってる。

 

でも……それはそうだ。

 

あの力を暴発させたことによって私は英霊だけじゃなく、悠生君や凛さんの命まで奪おうとしたのだから。

 

「やはりこのままじゃいけませんね。ねえイリヤさん、凛さんと連絡を取りましょうか」

 

凛さんという単語に私はビクッ!と心臓をドキリとさせながらル

ビーに【どうして?】と聞く。

 

「どうして、ですか?簡単な話です。今イリヤさんが思ってることを凛さんにぶっちゃけるためですよ~」

 

「私の……思ってること?」

 

「ええ、そうです。イリヤさんはもうあの戦いには関わりたくない

と思っている。そうですよね?」

 

「……うん」

 

「その気持ちを凛さんに打ち明けるんですよ。貴女のためにも。

彼のためにも」

 

「彼?」

 

「いいえ、何でもありません。さあ、行きましょうか。公園で凛さんが待ってますよ~」

 

そうして、私はルビーに連れられるまま公園に向かった。

 

関わりを絶つための辞表を手にして……。

 

 

―――――

 

 

夕方の公園にやって来ると、そこには本当に凛さんが待っていた。

 

「これ……辞表です……」

 

自分で書いた辞表を恐る恐る凛さんに私、凛さんはそれを受け取る。

 

あまりに申し訳なくて凛さんと顔を合わせることができない。

 

 

「やっぱり……こうなったか」

 

「最初は……興味本位というか……面白半分だったの……。でも、実際にやってみると、魔法少女の戦いは命を賭けた戦いばかりで……現に私は二回も死にかけていて……」

 

私が想像していた魔法少女と実際の魔法少女は全然違っていた。

 

私はもっと魔法少女というのはキラキラしたものだと思っていたのだ。

 

「……怖かった?でも何も恥じることはないのよ。あんなの誰だって怖いものなんだから。小学生なら尚更ね」

 

優しい口調で言う凛さんに私は黙って頷く。

 

「でも……いいの?」

 

「いいも何も。元々これは私とルヴィアに課せられた任務だし。これ以上強制することはできないわ」

 

「……ごめんなさい」

 

「謝らなくてもいいわよ。貴女は貴女の日常に戻ればいい。彼のためにもね」

 

「彼?」

 

「こっちの話よ。じゃあ今までお疲れ様、ここまで手伝ってくれて本当にありがとう」

 

その言葉を契約の鎖を断つ言葉……同時にこれから自分達は他人同士だと意味してるものだった。

 

「貴女もそれでいいわよね?美遊」

 

「美遊?」

 

人の気配がして私は後ろを振り返る。

 

そこには凛とした表情で立っている美遊がいた。

 

「問題ありません。最後のクラスカードは私と裕輔で回収します」

 

「……そう」

 

「……美遊―――」

 

「貴女はもう戦わなくていい。カード回収は私達で終わらせる」

 

それだけ言うと美遊は踵を返して歩き去って行った。

 

「さ、これでいいでしょ?ルビーマスター認証を私に戻しなさい」

 

「やなこった~!私のマスターは私で決めます!ていうか私のマスターはもうイリヤさんだけですから!」

 

ルビーの言葉に凛さんはルビーをふん捕まえてアイアンクローを炸裂させる。

 

凛さんから繰り出されるアイアンクローをルビーは【ルビーちゃんは暴力には屈しませんよ~!】と言って耐える。

 

しばらくその奮闘は続き、凛さんは【まあいいわ】と言ってルビーを放り出す。

 

「どうせ残りのカードは二枚。それを全て回収したら嫌でもあんたを連れ帰るから。それまでは好きにしなさい」

 

「言われなくてもそうしますよ~っだ!」

 

「まったく……というわけでイリヤ。あとのことは私達に任せなさい。貴女はもう、私の命令を聞かなくていいんだから」

 

「……はい」

 

「今まで本当にありがとう。それじゃ、またね」

 

凛さんは笑顔で言って公園から去って行った。

 

本当はこんな形で終わらせたくなかったけど……もうあんな怖い

ことはしたくない。

 

だから……。

 

「(これで……いいんだよね……?)」

 

自分に言い聞かせるように私は心の中でそう言った。

 

 

―――――

 

 

午後11:33。

 

俺達は一旦橋のふもとに集まった。

 

もちろんイリヤを欠けたメンバーでだ。

 

「イリヤは魔法少女を辞退。私はそれを承認した。本当にこれ

でいいの?悠生」

 

「はい、問題ありません。この戦いはイリヤには荷が重すぎたのです。だから美遊にもあとは引き受けるよう言ってもらって、この戦いに関わることができないようにさせたのですから。ブルーナイト、本当にサモンカードは最後の一枚なんだな?」

 

「ああ、クラスカード同様サモンカードも残り一枚だ。でも、最後の一枚のバハムートは今までの召喚獣とは格が違うぜ?本当にお前一人でやるのか?」

 

「これは俺自身が決めたことだ。あんたの力を借りなくても俺一人でやれる」

 

「ああ、そうかい」

 

「で、俺達は最後のクラスカードの回収に行く。それでいいんだな?」

 

「ああ、多分最後のクラスカードも今までの英霊とは比べ物にならないほどの力を持っている。だからお前は美遊達を助けてやってくれ」

 

「たった一人の戦いを……貴方は望むのですか?」

 

「一人じゃありませんよ、俺にはドラグロスがいます。ドラグロスがいれば、どんな奴にだって負けません」

 

【おうよ!俺とお前が組めば最強だからな!】

 

今まで俺はひそかにサモンカードの力を自在に操れるように訓練を重ねてきた。

 

毎日……日課のように。

 

その成果を発揮することができれば……大丈夫なはずだ。

 

「じゃあ、行くぞ。これがお前の正念場となる地に」

 

「ああ」

 

ブルーナイトに言われて飛んでいこうとする俺を弐藤が【おい】

と言って引き止める。

 

引き止められた俺は空中で止まって【何だ?】と言って振り返る。

 

「お前はイリヤはもう来ないって言ったがな。俺はそうは思わないぜ。お前が思っているほど、あいつは弱くない」

 

「何を言ってる、あんな目に遭ったんだぞ。来るわけないじゃないか」

 

「……」

 

「話はそれだけか?じゃ、俺は行くぜ」

 

そう言うと、俺はブルーナイトと共に最後のサモンカードのある場所へと飛んで行った。

 

「来るわけない、か……果たして真実はどっちなんだろうな?」

 

「それは彼女自身が決めることよ。でもきっと……」

 

「ああ、そうだな。俺は信じるぜ、あいつのことを」

 

「うん、私も信じる。それが……友達だから」

 

「さあ、私達も参りますわよ。最後のクラスカード回収に」

 

少年少女達は行く。

 

それぞれの決戦の地に。

 

果たしてカード回収に終止符を打つことができるのか……?

 

 

 

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