Fate/wizard liner プリズマ☆イリヤ   作:天野蒼夜

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アイリスの言葉により再起して戦場にやって来たイリヤ。今ここに、
カード回収任務に終止符が打たれる!!

OP:
「Life is SHOW TIME」唄:鬼龍院翔fromゴールデンボンバー

ED:
「Prism Sympathy」唄:Stylips






最終話「The last hope」

「はぁ……はぁ……」

 

バーサーカーに渾身のエクスカリバーを炸裂させ、変身も強制解除された私は体力を疲弊させて地面に片膝をついている。

 

「美遊様!」

 

強制解除された際、投げ出されたサファイアが半身を起こして私の身を案じてくる。

 

マスター思いの魔術礼装だ。

 

「大丈夫……大丈夫だから……早く体力の回復を……」

 

「は、はい……」

 

サファイアが浮遊して私のところに近付こうとする。

 

だが、しかし……。

 

「グオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオォオ!!!」

 

エクスカリバーをまともに喰らったはずのバーサーカーが外からよじ登ってきてサファイアを右手で捕まえて中に入ってきた。

 

「そんな……エクスカリバーはまともに喰らったのに……」

 

バーサーカーの宝具がこれほどのものだったなんて……。

 

しかもサファイアを捕まえられているのでは変身もできない。

 

今のこの状況を言葉で示すなら万事休すだ。

 

「美遊!お逃げ下さい!お願いです!美遊様!!!」

 

逃げろって言ったって……こんな狭い空間に逃げるところなんてありはしない。

 

私は危険な状況でありながらもそれだけは冷静に判断できていた。

 

「(もう……ここで終わりか……)」

 

せめて死ぬならルヴィアさんに恩を返してから死にたかった……。

 

あの日サファイアと契約して、ルヴィアさんに拾われて、全てを与えられて、ここまで生きていくことができた。

 

でも……これは私の意地が生み出したこと……自業自得なのだ。

 

ここで殺されたって文句は言えない。

 

覚悟を決め、私は両目を瞑る。

 

視界が防がれた空間の中で聞こえてきたのはズシンズシンというバーサーカーが私の元に近付いてくる音と【お逃げ下さい】というサファイアからの警告の声だけだった。

 

でも私は動かない。

 

自分はもう助からないって分かっているから……。

 

「(さようならルヴィアさん、裕輔、イリヤ、悠生……。こんな形で分かれることになることを許して下さい……)」

 

これが今生の別れ……。

 

もうすぐ私の頭上にはバーサーカーの大きな鉄拳が炸裂―――。

 

「だぁらっしゃぁああああああああああああああああああああああぁ!!!」

 

されなかった。

 

代わりに聞こえてきたのは激しい斬撃音だった。

 

何かと思い、私はゆっくりと瞼を持ち上げる。

 

するとその先には……。

 

「ったく、一人でカッコつけやがって。一人だけ目立とうったってそうはいかねぇぜ」

 

私がルヴィアさんと凛さんと共に通常界に強制転移させたはずの裕輔が立っていた。

 

 

―――――

 

 

突如俺の目の前に現れたイリヤに俺は驚愕の表情を隠せない。

 

何故ならイリヤはあの一件以来すっかり戦意を喪失し、戦うことを恐れていたからだ。

 

「イリヤ……何で来たんだよ!?お前もう戦いたくないんじゃなかったのか!?」

 

「……ごめんなさい悠生君。でも私、やっと分かったの」

 

「分かったこと……?」

 

「逃げてばかりいちゃ前には進めない。あの時の私はそれが分からなかったから、逃げ出しちゃったんだ……」

 

イリヤの身体が震え、すすり泣く声が聞こえてきた。

 

「だから私、そんな自分が許せないの……!友達が必死に戦ってるのに一人何もしないでいたことが……でも」

 

イリヤが俺のほうに振り返る。

 

「私、もう逃げたりしない!貴方と一緒にこの戦いを終わらせる!だから、私も一緒に戦わせて下さい!!」

 

そう言って深く頭を下げるイリヤ。

 

そうか……俺は何か勘違いをしていたみたいだ。

 

俺はもうイリヤは戦いを望んでいないと思ったからそこから遠ざけるためにわざと彼女を突き放した。

 

でもそれは同時にイリヤとの絆を断つことだ。

 

それを俺はイリヤに……。

 

「イリヤ、分かってると思うが今俺が戦っているのはサモンカードの中でも最強クラスの召喚獣だ。もしかしたら命の保障はできないかもしれない。それでもお前は戦うか?」

 

「分かってるよ。それを覚悟の上で来たんだもん。でも私も悠生君も死んだりしないよ。だって悠生君のことが私が守るし、悠生君は私を守ってくれるから。幼稚園生の時、野良犬から助けてくれたみたいに……」

 

野良犬か……五年前のことをよく覚えてるなお前は。

 

けど、俺がクラスカード回収を手伝うと言い出したのもイリヤをこの手で

守りたかったからだ。

 

なら……俺がここでやることといったら一つだけだ。

 

「一人より二人ってやつか……じゃ、終わらせるか。俺達二人で、この戦いを」

 

「うん!」

 

「だが、奴は虚無の龍神と称されし者だ。今のお前等じゃ勝ち目は皆無だ」

 

どこからともなく聞こえてきた声に俺達はその声がしたほうに視線を向ける。

 

そこにはさっきまで姿が見えなかったブルーナイトが観客席のほうに座って俺達を見下ろしていた。

 

「じゃあ、どうやってあいつを倒せばいいんだ?」

 

「奴は常に身体を鋼鉄のウロコで覆って守られている。それがある限りどんなに攻撃しようが弾かれてしまう。ようはそのウロコを剥がせばいい」

 

「でも……それをどうやってやるんですか?」

 

「鋼鉄のウロコって言っても決して無敵というわけではない。どのようなものにも必ずウィークポイントが存在する。それを見つけるんだ」

 

「見つけるって言ったって……そんなのどうやって見つけるんだよ?」

 

「あいつのウロコはお前が無駄に攻撃したおかげで徐々にウロコにヒビができている。そこを叩けばウロコは次第に剥がれ落ちて丸裸になる。そこですかさず―――」

 

「とっておきの一撃を加える、ですか?」

 

「そういうことだ」

 

そうか……どおりであいつはピンピンしてるわけだ。

 

あのウロコ……盾みたいな役割をしてたんだな……。

 

「さ、あとはお前達次第だ。勝利を勝ち取り、この戦いを終わらせるか。それとも死んで一生を終えるかのな」

 

死ぬ覚悟はここに来る前からできている。

 

だが……。

 

「(こいつにくれてやる命がないだけだ)」

 

ドラグブレイドを両手に持って構える。

 

「行くぞ、イリヤ」

 

「うん、貴方は絶対……私が守る!」

 

「なら俺はお前を守る。ここからは俺達の……ショータイムだ!!」

 

俺が言うと、バハムートが大きな口を開けて咆哮を上げる。

 

それを合図に俺とイリヤはドラグブレイドとステッキを構えてバハムートに向かって行った。

 

 

―――――

 

 

結界の中にバーサーカーが閉じ込められている。

 

俺と一緒に転移してきた凛とお嬢がテンカウントっていう術式で結界を作って閉じ込めたのだ。

 

「裕輔……どうして来たの?こんなところにわざわざ……」

 

戸惑うように言う美遊。

 

だが、俺がここに来た理由はもう聞くまでもない。

 

「んなの決まってんだろ。俺のルールを守るためだ」

 

「ルール……?」

 

「俺は俺の言ったことに責任を取る。その上で俺はお前を守ると言った。でもあのまま帰ったんじゃ、俺のルールを破ることになる。だから戻ってきたんだ。お嬢達と一緒にな。ほら」

 

地面に落ちているサファイアを拾って美遊に差し出す。

 

「俺も一緒に戦う。お前がどんなに拒もうとな。お前が一人で戦う選択肢はねぇぜ?」

 

「……」

 

美遊が黙って俺からサファイアを受け取り、嘆息する

 

「ここでダメだって言っても……貴方は嫌だって言うんでしょうね……」

 

「よく分かってんじゃねぇか。その通りだ」

 

「でもあいつは正真正銘のバケモノ……勝てるかどうか分からないよ……?」

 

「あ~さっきまで俺も戦ってたんだからな。でもお前のその顔、何か対策があるんだろ?」

 

「たしかにある……でも成功するかどうかは分からない。フィフティーフィフティーって感じ……」

 

「この際勝てる方法があるなら何でもいいわ!美遊!早く言ってちょうだい!」

 

「今バーサーカーは凛さんとルヴィアさんが形成したテンカウントの魔術結界の中にいます。けど、あれはあくまで一時的に動きを止めるだけのものに過ぎない。だからあいつが結界から解き放たれたら私の合図で四方向に散って下さい」

 

「それからはどうしますの?」

 

「最後は私がゲイボルグでトドメを刺します。いくら蘇生能力があっても限界はあるはずですから」

 

「なるほど。ようは俺等が囮になればいいんだな。分かりやすくて助かるぜ。あまり複雑だと覚えられないんでな」

 

「でもあの結界は最高クラスのテンカウント……そう簡単には破れ―――」

 

凛の言葉を遮るように魔術結界が徐々にひび割れていく。

 

あまりの速さに凛とお嬢も驚いていた。

 

「バカな!テンカウントの魔術結界にヒビを入れるなんて!」

 

「どんだけ規格外なのよあいつ!?」

 

「あと3秒で結界が破られます。3……2……1……0!!」

 

美遊の合図でバーサーカーが内側から魔術結界を打ち砕いた。

 

同時に俺達はそれぞれの方向に散って走って行く。

 

「アトモス!インクルード!」

 

レグルスセイバーの装填口にアトモスのサモンカードを装填し、右の肩パッドがアトモスの頭部を象った灰色に金の彩色がされたマントを装着する。

 

そのマントを装着すると、右手に魔力を溜めて、その溜めたものをバーサーカーに向けて投げつける。

 

するとバーサーカーは上から何かにのしかかられたように地面に片膝をついてクレーターを作る。

 

「アトモスの重力魔法だ。さっきのは重力を重くするやつだが、こんなこともできるんだぜ!」

 

バーサーカーが片膝をつくと、左手に魔力を溜めてそれをバーサーカーに向けて投げつける。

 

バーサーカーはそれを喰らうと、今度は逆に重力が軽くなったかのように天井を突き破って空高く飛んだ。

 

「美遊!今だ!」

 

俺が叫ぶと美遊がステッキにランサーのクラスカードをインクルードして槍の形に変化させてバーサーカーのところに跳んでいく。

 

「ゲイ……ボルグ!!!」

 

槍を心臓部めがけて投げつけ、バーサーカーを吹き飛ばす。

 

吹き飛ばされたバーサーカーはそのまま隣のビルに身体を叩きつけられた。

 

俺達は遠目でそれを確認すると飛び上がって美遊のいる屋上に上がった。

 

「よくやりましたわ二人共、これで―――」

 

「残念、まだくたばってないみたいだぜ……見ろ」

 

バーサーカーが吹き飛ばされた隣のビルに視線を移す。

 

しばらくそうしていると、黒煙の中からバーサーカーが現れてゆっくりと

こちらのほうに歩いて来ていた。

 

「ゲイボルグをまともに喰らった上に心臓を一突きされても死なないなんて……。

あと何回倒せばいいのよ!?」

 

【裕輔】

「……」

 

規格外な身体能力にあの再生力……。

 

たしかにありゃチート級だよな……。

 

けど凛とお嬢の宝石はテンカウントのやつで弾切れ……マジで参ったなこりゃ。

 

「……裕輔」

 

美遊が俺を一瞥せずに呼ぶ。

 

「何だ?」

 

「本当ならあれでトドメを刺すつもりだったけど……相手は思っていた以上に不死身。だから、奴を倒すには二度と蘇生できないように吹き飛ばすしかない」

 

「けどそれほどの魔力がどこにある?エクスカリバーでもダメだったんだろ?」

 

「いいえ、できるかもしれません」

 

「何?」

 

「はい、これは本来二対のカレイドステッキから使用されるものですが、それと同じ概念のある貴方にもできるはずです」

 

「だから、何なんだよそれ!?」

 

「パラレル・インクルード」

 

「パラレル……何だって?」

 

「二対の魔術礼装を交差させ、一枚のクラスカードから無数の宝具を具現化させるキシュア・ゼルレッチの応用。あいつを倒すにはもうそれしかない」

 

俺にそう説明して取り出されたセイバーのクラスカードに視線を向ける美遊。

 

パラレル・インクルードか……方法がそれしかないってんなら……それに

賭けるしかねぇか!

 

「よし、やってみようぜ。方法がそれしかないってんならな。ここで皆一緒にお陀仏になるよりはずっとマシだ。それに、お前となら何でもできる気がするしな」

 

「それは私も同じ。貴方となら……何が来ても負けはしない」

 

俺がレグルスセイバー、美遊がステッキを交差させてその中央にセイバーのクラスカードを装填して上空から複数のエクスカリバーを召喚する。

 

エクスカリバーが召喚されると俺達はそれを一本ずつ持って構える。

 

俺達がエクスカリバーを構えるとバーサーカーが走り出してこちらのほうに向かってくる。

 

「行くぜ……美遊!」

 

「うん……貴方と一緒に……この戦いを終わらせる!エクス……」

 

『カリバァアアアアアアアアアァア!!!!!』

 

二本のエクスカリバーから極太の光のエネルギーを放出し、それが一つとなって超巨大な光のエネルギーを形成する。

 

その二つのエネルギーが融合したものがぶつかり、バーサーカーはそれを両手で押し返そうと押さえる。

 

「バーサーカー!てめぇはたしかに強い!けどな!いくら強くても絆には勝てない!これは決定事項だ!」

 

「私はこの短い間に学んだ!人を信じる大切さを!だから私は裕輔を信じる!皆を信じる!今も!これからも!」

 

俺達のその言葉を掛け声に光のエネルギーを更に放出させて巨大化させる。

 

バーサーカーはそれを最後まで押さえようとしたが、最終的にあまりの大きさに押さえきることができず、押さえたまま光の中に飲み込まれてしまった。

 

バーサーカーが飲み込まれると光のエネルギーは黒雲を貫き、一筋の日の光を見せて一枚のクラスカードが俺達のところに降ってきた。

 

俺はそれを手に取る。

 

「クラスカードバーサーカー、回収完了。これで全てのクラスカードが揃ったってわけだ」

 

「でも……歪みがまだ消えてない。悠生がまだ戦ってる。助けに行かないと」

 

「あ~あ~その心配はいらねぇよ。何せ今頃援軍と組んで戦ってる頃だろうからな」

 

「援軍?」

 

「ああ、とっておきのな。だが、何かあるといけない。見に行っているか」

 

「うん、悠生のことが心配」

 

「ぼやぼやしてる時間はなさそうね。行きましょう!」

 

こうして、バーサーカーとの激闘を終えた俺達は急いで悠生のところに

向かって行った。

 

ま、わざわざ行く必要はないだろうけどな。

 

 

―――――

 

 

「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!!!」

 

ドラグブレイドの刀身に紅蓮の炎を纏わせ、バハムートに斬りかかる。

 

しかし予想通りそれで傷付けたのはウロコだけであり、本体には傷一つ付けられていなかった。

 

「硬い……あとどれくらい攻撃したらウロコが剥がれるの……?」

 

「だがさっきの一撃でウロコに大分ヒビを入れることができた。もう少しでウロコが

剥がれ落ちるはずだ」

 

「悠生君危ない!!!」

 

「うおっ!?」

 

急にイリヤに抱えられたかと思えばバハムートが口内から紫色の火炎を吐き出した。

 

もしあのまま避けるのが遅れていたら俺は丸焼き、いや……溶かされていたのか……。

 

「イリヤ、あと一息だ。あと一息で奴のウロコは剥がれ落ちる。そしてとっておきの一撃を加えることができればこの戦いは終わる」

 

「うん……でも悠生君は大丈夫なの?私が来る前も戦っていたんでしょ?顔色もそんなによくないみたいだし……」

 

こんな状況でも俺のことを心配してくれるんだなイリヤは……。

 

友達思いな子を持てて涙が出てくるぜ。

 

「これぐらい平気だ。俺にはイリヤを守るっていう大事な使命があるからな。それまで倒れてなんていられないさ」

 

「でも、それで悠生君が死んじゃったら私は悲しいよ……ううん、私だけじゃない。悠生君のパパもママも裕輔君も美遊も凛さんもルヴィアさん、それに雀花達だって……」

 

ああ、分かってるイリヤ。

 

だからそんな悲しそうな顔するなって。

 

俺が悲しんでるお前よりもバカみたいに笑ってるお前のほうが好きなんだからさ。

 

心の中でそう言いながら、俺は右目に一滴の涙を浮かべているイリヤの顔に指を添えて涙を拭ってやる。

 

俺に涙を拭われてイリヤは俺を俯いていた状態から上目遣いになる。

 

「悠生君……」

 

「イリヤ、お前にそんな顔は似合わない。だから俺にそんな顔を見せないでくれよ」

 

「でも……もし悠生君に何かあったりでもしたら私……」

 

「俺は死なないんだろ?お前が守ってくれるから。さっきお前が自分で言っていたじゃないか。もう忘れちまったのか?」

 

俺の言葉でイリヤはハッとなる。

 

やれやれ忘れていたのか……やっぱりイリヤはどこか抜けてるな。

 

「話はここまでだ。あちらさん、大分待ってるみたいだぜ。インクルード」

 

イクシオンのサモンカードをドラグブレイドに装填し、ブレイズスタイルからエレキスタイルにタイプチェンジする。

 

俺がエレキスタイルに変身するとバハムートが巨大な腕を振り下ろしてきたが、俺はその軌道を見て上空に回避し、頭部に槌部分に金色の雷を付加させたハンマーを振り下ろして叩きつける。

 

雷属性が付加された鉄槌を喰らい、バハムートはうめき声を上げる。

 

どうやら頭部だけ防御は薄かったみたいだな。

 

「最大出力……全開!ホイヤッ!!」

 

バハムートが怯んで動きが鈍ると、イリヤが間髪入れずにステッキに高密度の魔力を凝縮して極太の魔力砲を発射する。

 

その魔力砲を喰らったことより、バハムートの全身を纏っていた鋼鉄のウロコは完全に剥がれ落ちたと同時に吹き飛ばされて動けなくなる。

 

「トドメを刺すなら今しかない。悠生!イリヤ!最後にどデカいのをかましてやれ!」

 

「イリヤ!」

 

「うん!」

 

イリヤが返答すると、俺はエレキスタイルからブレイズスタイルに戻り、ドラグブレイドの刀身に炎を纏わせる。

 

対してイリヤもまたステッキの先端に魔力を凝縮して巨大な魔力弾を形成しようとしている。

 

「これで!」

 

「フィナーレだ!!」

 

ドラグブレイドから巨大な炎の波、イリヤから巨大な魔力弾が放たれ、それが一つになって巨大な炎の魔力弾となってバハムートめがけて飛んで行く。

 

やがてそれはバハムート全身を燃やし尽くし、その巨体は消滅した。

 

バハムートが消滅すると、俺の頭上に一枚のカードが落ちてきて、俺はそれを拾う。

 

「サモンカード、バハムート。回収かん……りょ……」

 

サモンカードの回収が終わったと言おうとすると、俺は戦いが終わった安心感から一気に力が抜けてその場にうつ伏せに倒れたと同時に転身も強制解除される。

 

それを見たイリヤが俺のところに駆け寄ってきて抱き起こす。

 

「やっぱりかなり体力を使ってたんだ……ずっと戦ってたから……」

 

「ああ……今回はちょっとばかしキツい相手だったからな……。転身する力さえ残ってないよ……」

 

「ま、無理もねぇさ。何せ虚無の龍神と戦っていたんだからな。だが休んでる暇はねぇぜ。サモンカードが全て回収された今、鏡面界は崩れる。早く脱出しないと通常界に戻れなくなっちまう」

 

「あ、そうだった!ルビー!すぐに脱出の準備するよ!」

 

「了解で~す!半径2m反射路形成!境界回廊一部反転しま~す!」

 

ルビーのその掛け声で巨大な魔法陣が形成され、崩れ行く鏡面界から俺達は通常界へ戻ってきた。

 

鏡面界ではほぼ全壊していた競技場だったが、通常界では何事もなかったかのように建っている。

 

本当ならこのまま帰りたいところだが、いかんせん俺は今は動けない状態なので近くのベンチに座り、イリヤも俺の隣に座っている。

 

「なあ、イリヤ……」

 

「何?」

 

「遅れちまったけど、ありがとな。助けに来てくれて。お前が来てくれなかったらきっと俺は死んでた。お前は俺の命の恩人だ」

 

「命の恩人だなんてそんな!私は友達として当然のことをしただけだよ1別にお礼を言われることなんかじゃ!」

 

顔を真っ赤にさせながら手をわたわたさせるイリヤ。

 

不覚にもそんなイリヤを久しぶりに見たような気がする。

 

最近のイリヤは暗い顔したり、泣いてばっかりだったからな。

 

「(こいつのこんな顔が見たくて……俺は今まで戦ってきたかもしれないな)」

 

今まで素直じゃなかった俺だが、イリヤのこの顔を見て俺はそれを自覚した。

 

イリヤの笑顔は俺にとってクラスカードでいう宝具のような存在だ。

 

だから命がけで守りたいって思えたし、これからもその笑顔を守っていきたい。

 

心から……そう思っている。

 

「(でも……イリヤは……)」

 

イリヤは……俺のことはどう思っているだろうか……?

 

聞いてみたいが、何だか恥ずかしくて……同時に怖いと思って聞けない。

 

でも……俺はもう自覚した。

 

俺は……。

 

「(イリヤのことが…………好きだ)」

 

きっと俺が今まで否定してきたことは全部イリヤに対する恋心だったんだ。

 

でも今までの俺はそれを素直に受け止めることができず、否定することしかできなかった。

 

でも……これからはちゃんとそのことを自覚してイリヤを守っていきたい。

 

それが俺がイリヤにできる数少ないことだと思うから……。

 

「お~い!悠生~!イリヤ~!」

 

遠くから裕輔君の声と皆がこちらに駆け寄ってくるのが見える。

 

あの様子だと皆はクラスカードの回収に成功したんだね。

 

よかった……。

 

「何だ何だぁ?悠生の野郎、こんなところで休憩か?そんなことじゃ俺のライバルは務まらねぇぜ?」

 

「こっちは虚無の龍神っていうすげぇ奴と戦ってきた後なんだぞ。これぐらい大目に見ろ」

 

「そ、そうだよ!私達今日二人で頑張ったんだから!ほら!カードも回収したし!」

 

そう言ってイリヤがバハムートのサモンカードを皆に見せる。

 

「二人で取ったカードだよ。あの時の悠生君、すごく頑張ってた。私が来る前もずっと戦っていたし……」

 

「危うく死にかけたけどな。イリヤが来てくれなかったら本当に冗談抜きでヤバかった」

 

「うん、二人はよくやったと思う。でも……私と裕輔だって……」

 

「おう!バーサーカーって奴をパラレルなんとかって奴でぶっ飛ばしてやったぜ!」

 

「パラレル・インクルードよ……」

 

ああ、そりゃすごいな……。

 

「そういえばブルーナイトは?さっきから見かけないけど……」

 

「そうだね……鏡面界にいた時は一緒だったと思うけど……」

 

俺達はブルーナイトの姿を捜して辺りを見渡す。

 

しかしどこに目を向けてもブルーナイトはどこにもいなかった。

 

あいつ……一体どこ行ったんだ?

 

 

―――――

 

 

悠生達がブルーナイトの行方を気にかけている頃、当のブルーナイトは競技場を出てトリスメギストスと合流していた。

 

「どうやら彼等は無事全てのサモンカードとクラスカードを回収できたみたいだね。でも、最後に会って行かなくてよかったのかい?」

 

「ああ、あいつ等の成長は十分見ることができた。けど、まだまだだな。バハムート倒してくらいであんなに浮かれてんだから」

 

「召喚獣といえばサモンカードの中でも最強クラスって聞いてるけど?」

 

「サモンカードの中じゃな。だがそのバハムートは龍神クラスの中でも中の下くらいの強さだ。あいつ等にとってはかなりの強敵だったかもしれないが、他の龍神と比べたらザコ当然だ。ま、でも全てのサモンカードを回収できたってことくらいは褒めてやってもいいがな」

 

「そうだね。で、君はこれからどうするんだい?」

 

「俺にはまだやらなきゃいけないことがあるからな。また次の物語に旅立つさ。俺は忙しい身なんでな」

 

「そうかい、僕も君のためなら助力は惜しまないよ。じゃ、そろそろ行こうか」

 

「ああ」

 

綺麗な笑顔で言うトリスメギストスを最後に二人の青年はこの次元世界から姿を消した。

 

 

―――――

 

 

あの戦いから翌日の朝。

 

今日俺とイリヤが日直ということでいつもより早く教室にやって来た。

 

現在イリヤは廊下側の窓を開け、俺は教室側の窓を開けている。

 

「よし、これで終わりっと。イリヤ、そっちは終わったか?」

 

「うん、今終わったよ。でもごめんね悠生君、わざわざ起こしてもらいに来てもらちゃって」

 

そりゃあれがあった後だ。

 

まともに起きられないんじゃないかと思ったからな。

 

「気にするな。家は近所なんだし。友達としてこれぐらいはな」

 

「ありがとう、やっぱり悠生君は優しいね」

 

笑顔で言ってくるイリヤ。

 

そりゃ俺はお前が好きだからな。

 

優しくなるのは当然だろ。

 

「よぉ、おはよう二人共」

 

何故かギクシャクしている裕輔の声が聞こえてくる。

 

いつもと様子が違うと思いながら裕輔のほうに視線を向けるとそこには信じられない光景が映っていた。

 

「(何だ……あれは……?)」

 

そう、美遊が……美遊が裕輔の右腕にピッタリ抱き付いているのだ。

 

今までクールだった美遊には考えられなかった光景だ。

 

「お前等あの後何があったんだよ……?」

 

「いや、そんなの俺が聞きてぇよ……なあ美遊、そろそろ離れねぇか?歩き辛いんだが……」

 

「嫌」

 

そう言って裕輔のお願いを拒否して更に抱き付く力を強める美遊。

 

何故だろう……?あの二人を見てると妙に殺意が沸くんだが……。

 

「ったく……しょうがねぇ奴だな。ああ、そういえばお前等知ってるか?凛とお嬢のあの後」

 

「二人はたしかカード回収を終えて時計塔に帰ったって聞いたけど……」

 

「本当はそのはずだったんだがな……実は」

 

裕輔の話したことをまとめるならこうだ。

 

凛さんとルヴィアさんはヘリで時計塔に帰ろうとしたが途中で何らかのアクシデントに遭い、ヘリが墜落。

 

その後時計塔から連絡があり、【お前達はチームワークを崩すほど協調性がない。なので一年の期間の間、日本で協調性を磨いて来い】。

 

……と言われ、凛さんはその間ルヴィアさんの別荘でメイドとして働くことになったらしい。

 

ま、たしかにあの二人は犬猿っていうレベルじゃ生易しいくらい仲悪いからな……。

 

「じゃあ、二人はもうしばらくの間日本に残るってこと?」

 

「ああ、そういうこと。だからその間ここの高等部に通うらしいぜ。一応年齢的には学生だからな」

 

一応って……。

 

「けどブルーナイトの奴、最後まで何者だったか分からない奴だったな。あれから姿を見せねぇし」

 

「サモンカードは俺達が持ってるけど、これ俺達が持ってていいのか?」

 

「問題はなかろう。お前達は自分の力で召喚獣を倒したほどの実力だからな」

 

倒したって言ってもそれは皆の力を合わせてだ。

 

俺達個人個人の力はまだそんなに強くない。

 

「思えば、俺達の戦いってまだ一ヶ月にも経ってないんだよな。もう一ヶ月は過ぎたように思える……」

 

「そうだね。でも何か終わったと思うと寂しい気もするね」

 

「でも、私達の戦いはまだ終わってない」

 

「美遊、それってどういう意味だ?」

 

「分からない。けど……そんな気がするの」

 

俺達の戦いはまだ終わっていないか……何か少年漫画みたいな台詞だな。

 

「けど、それならそれでいいんじゃないか?」

 

「え?」

 

「俺達には魔法、それに召喚獣だっている。それがあれば何が来たって平気さ。だって俺達は―――」

 

「最後の希望だから、だろ?」

 

「ああ、そういうことだ」

 

そうだ……これから何があったって俺達は負けない。

 

そしてカードを集めるために駆け抜けたこの数週間の日々を、俺達は

一生忘れないだろう。

 

ブルーナイト、最後まで正体は分からなかったけど、お前には感謝してる。

 

俺に夢だった魔法使いにくれて。

 

出会いをくれて。

 

希望をくれて。

 

だから次会ったらこう言わせてくれ。

 

【ありがとう】って。

 

窓のほうに視線を向けると、そこには無限に広がる青空が広がっていた。

 

それはあいつの色によく似ていた。

 

ふと……俺はそんなことを考えていた。

 

 

END

 

 

 

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