Fate/wizard liner プリズマ☆イリヤ   作:天野蒼夜

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悠生達が敗退!?ということで少年少女達はそれぞれ特訓を始めるが……。

OP2:
「コネクト」唄:ClariS

ED:
「Prisum Sympathy」唄:Stylips



第6話「考えるよりまず空想しろ」

俺達は今……ボロボロになった身体で意気消沈していた。

 

どうしてそのようなことになっているのか、それは数分前に遡るが……。

 

<いい?四人共、油断せずにしっかりやるのよ!>

 

俺達は凛さんからの呼び出しで、今回も橋のふもとにある公園にやってきてカード回収の任務に出ていた。

 

今回の敵はキャスターという魔術師のような姿をした英霊で、俺達は鏡面界にやって来た途端に無数の魔法陣を展開し、俺達に広範囲のビームの雨を降らして畳みかけてきた。

 

<うわあっ!何かすごいの出してきそうだよあの人!!??>

 

俺達を黒い煙の中に閉じ込め、その中に強力な魔力の塊をぶつけようとするのだからさあ大変。

 

俺達は慌てて鏡面界から転移してボロボロの身体のまま元の世界に戻ってきたというわけだ。

 

あれはマジで死ぬかと思った……あと0コンマ転移が遅かったらきっと死んでなありゃ……。

 

「まさか……二体目があそこまでやるとはね……ちょっと予想外だったわ」

 

「どういうことですのサファイア!カレイドステッキは無敵だったの

ではなくて!?」

 

「ルヴィア様、それは勘違いというものです。たしかにカレイドステッキには大概の敵なら圧倒できますが、相性というものがあります」

 

「それがあのキャスター……ってことか?」

 

「その通りです。あの英霊を倒すにはこちらも飛べるようにならなければなりません。でもそれには―――」

 

「何だ、飛べばよかったんだ」

 

サファイアの言葉にイリヤがひょいっと地面からジャンプして空中に浮遊した。

 

イリヤのそんな姿を見て、凛さんとルヴィアさんは驚愕の表情を浮かべる。

 

「ちょっと!何であんた飛べてんのよ!?」

 

「イリヤの言う通りだ。最初から飛べばよかったんだな」

 

「まったく同感だぜ」

 

イリヤに続いて俺と裕輔も軽々と空中を浮遊してみせた。

 

「え~!?何で!?何でそんな簡単に飛べてるわけ!?空を飛ぶのってよっぽどのイメージ力がないとできないはずじゃ!?」

 

「え~っと、何でって言われても、ねぇ……」

 

「だってなぁ……」

 

「そりゃなぁ……」

 

『魔法少女(魔法使い)って、飛ぶものでしょ(飛ぶもんだろ)?』

 

「(な、何て頼もしい思い込み!!!)」

 

綺麗にハモッた俺達に凛さんとルヴィアさんはよっぽどショックを受けたのか、効果音でいう【ガビーン!】とか出てきそうな表情になっている。

 

俺達にとっちゃ至極当たり前のことだと思ってたんだが……。

 

「皆に遅れを取るわけにはいきませんわ!美遊!貴女も飛んでみせなさい!」

 

「ルヴィアさん、人は飛べません!」

 

『(な……何て夢のない発言!)』

 

まあ、美遊は常識に囚われてるからな……。

 

ここでそれが仇になったか……。

 

「そんな考えでは空を飛ぶなんてできませんわ!明日は飛べるようにみっちり特訓ですわ!」

 

「人は空を飛ぶようにできていません。人間に翼はないのですから」

 

「というわけだ、じゃあな」

 

そうしてルヴィアさんは美遊を引きずりながら、裕輔もルヴィアさんの後を追うようにして去って行った。

 

今回の敵は一筋縄じゃいかないっぽいな……。

 

「う~ん、二戦目であいつとはね~。私も何か作戦は立てておくけど、あんた達も次の戦いに向けて特訓とかしときなさいよ」

 

「うん、分かった」

 

特訓か……何か少年誌みたいな展開になってきたな……。

 

ま、俺も負けっぱなしってのは性に合わないからやるけどな。

 

 

―――――

 

 

翌日の昼下がり。

 

俺達は回りに迷惑がかからないように冬木市から少し離れた大草原にやって来た。

 

え?どうやって来たのかって?飛んで来たに決まってるだろ。

 

「さて、ここに来たはいいが、特訓をすれば何をすればいいのやら……」

 

「まあ、とりあえずここに人はいないし。まずは転身しよっか」

 

「そうだな」

 

イリヤに頷いたと同時に俺とイリヤは転身する。

 

そしてイリヤは転身すると右足に付けられているカードケースからクラスカードを取り出した。

 

「イリヤ、それって……アーチャーのクラスカードだよな?」

 

「うん、凛さんから預かってきたんだ。この際だから試しに使ってみようと思って。ルビー、使ってみてもいいかな?」

 

「ええ、いいですよ」

 

「じゃあ俺もこの際だから一昨日新しく手に入れたカードを使ってみるか」

 

イリヤがアーチャーのクラスカードを取り出すと、俺も自分のカードケースから一昨日の戦いで手に入れたパンデモニウムのサモンカードを取り出す。

 

「それって一昨日やっつけた奴のだよね?たしか……パンデモニウムだっけ?」

 

「ああ、あの時は圧勝されて使う暇なかったし。この際どういったものなのか試してみようと思って。パンデモニウム、インクルード」

 

その掛け声で俺はサモンカードをドラグロスの装填口に入れて目の前に巨大化したパンデモニウムのサモンカードを出現させて通過させる。

 

そのカードが俺を完全に通過すると、俺はブレイズスタイルから頭部には緑色のドラゴンの装飾が着けられ、ロングコートの色が緑色に変化する格好になった。

 

しかもドラグロスの見た目が剣から二刀の小太刀に変化している。

 

そういえばパンデモニウムの奴も小太刀を使ってたっけ?

 

「風を操る形態、ウインドスタイルと言ったところか。何かちょっとだけ身体が軽くなってるような気がする」

 

【パンデモニウムの特徴は驚異的な身軽さと風魔法だ。試しにちょっとその辺を走ってみな】

 

「分かった」

 

ドラグロスに言われるままに俺はだだっ広い大草原の中を駆け抜けていく。

 

駆け抜けていくと気持ちのいい風を俺の肌に浸透しているようでとても気分がよくなった。

 

しばらくそれを堪能して、俺はイリヤのところまで戻って来る。

 

「す、すごいよ悠生君!それさえあればオリンピックで金メダル取れるよ!」

 

「ああ、すごく気分がよかった。けど油断してるとスピードに振り回されそうだな」

 

【だが、トロくさい敵にはかなり有効だぜ。そういう奴って身軽な奴が苦手なもんだからな】

 

「よ~し、私もアーチャーのクラスカード使ってみる!インクルード!」

 

イリヤのその掛け声でアーチャーのクラスカードをルビーにかざす。

 

するとルビーが光りだし、ステッキから弓に変化した。

 

「お~絵の通り弓だった。で、矢は?」

 

「ありませんよ?」

 

『意味ないじゃん!!!』

 

矢がないんじゃ何の戦力にもならないよな……弓だけじゃ使い物にならないし。

 

「アーチャーのクラスカードは役に立たずか……矢さえあれば戦力になりそうなんだが……」

 

「いや~それがそうなんですよね~」

 

気楽に笑うルビー。

 

いや、笑い事じゃないだろ……。

 

「うおぉおおああああぁあっ!!!!!」

 

俺達がアーチャーのクラスカードは使い物にならないことを言っていると、数m先の森の中に聞き覚えのある叫び声と何かが突撃する音とが聞こえてきたと共に煙が噴き上がった。

 

「な、何あの音!?爆弾!?」

 

「いや……それは分からない。とにかく行ってみよう」

 

激しい激突音が聞こえてきたところに向かって俺達は走り出す。

 

そこにたどり着くと、そこの地面には巨大なクレーターができており、その中心に美遊を両腕で抱えている裕輔の姿があった。

 

「な、何やってんだ?お前等」

 

クレーターの中心でお姫様抱っこしてるって一体どういう状況だよ……。

 

「おうライバル。いやな、ちょっとウチの主が美遊に空を飛ばせる特訓をさせるからってヘリに乗せて上空から叩き落されたんだよ。で、俺が落ちそうになったのを俺が受け止めたんだ。美遊、怪我はねぇか?」

 

「うん……大丈夫、裕輔が助けてくれたから。だから、そろそろ下ろして」

 

「お、おう……」

 

顔を赤くしている美遊を弐藤が両腕で抱えている状態から下ろす。

 

「ったく、お嬢の奴……いくら何でも小学生を上空から叩き落すかフツー。考えらんねぇぜ……」

 

おっと、珍しく意見が合ったな。

 

俺も同じことを考えていた。

 

「どうして、皆みたいに飛べないんだろう……?皆はあんなに軽々と飛べたのに……」

 

「恐らくそれは美遊様の空を飛ぶイメージに決定的な問題があるのが原因です。それを取り除くことができればお三方のように空を飛べるようになるはずです。ですので、イリヤ様、悠生様、貴方達がその空を飛ぶイメージの元になったものを教えてくれませんか?」

 

「イメージか……じゃあウチに来る?サファイアの言うイメージの元になったものがそこにあるから」

 

「……いいの?」

 

「いいも何も俺達は一緒に戦ってる仲間なんだ。遠慮する必要ないだろ」

 

「とあっちは言ってるが、どうする?」

 

「……」

 

何かを考えるように美遊が俺達から視線を逸らす。

 

だが、どうしても空を飛びたいためかしばらくの沈黙が続いた後、【じゃあ、お願い……】とちょっと照れながら言った。

 

何だ、ちゃんと他人にお願いもできるんじゃないか。

 

あの時の戦いを通じて少しは進展したんだろうな。

 

「よし、じゃあ決まり!早速の私ん家に行こっか!皆で!」

 

「俺は家から俺のイメージの元になったものを取ってくるから後で来るよ」

 

「分かった、またあとでね」

 

そう言って、俺は一旦イリヤ達と分かれて自宅へ。

 

まさか……毎週録画してるあれが役に立とう時が来るなんてな……。

 

あれが美遊の手助けになってくれればいいんだけどな。

 

 

ーーーーー

 

 

一旦自宅に帰った後、俺は例のものを持ってイリヤの自宅にやって来て美遊にイリヤの魔法少女のイメージの元になった魔法少女マジカル☆ブシドームサシ、そして俺が自宅から持ってきた仮面マジーカの今週放送されたものを美遊に順番に見せた。

 

だが、美遊はそのアニメの内容に対して何かをぶつぶつ言っているが、かなりありえないという表情をしているのだけは分かる。

 

「航空力学を無視したでたらめな動き……人間でこんな動き、絶対ありえない……」

 

これが頭脳明晰の完璧超人さんが魔法アニメを見た感想である。

 

ていうか何で小学生が航空力学とかいう頭の良さそうな大人が勉強してそうなもん知ってんだよ……。

 

「も~美遊さんは基本性能は素晴らしいのにそんなコチコチな頭では魔法少女は務まりませんよ。イリヤさんを見て下さい、理屈は行程をすっ飛ばして結果だけをイメージする!これぐらい能天気なほうが魔法少女には向いているんです!」

 

「何かひどい言われようなんだけど!?」

 

「悪いイリヤ、こればかりは俺も否定できない……」

 

「ええっ!?悠生君まで!!」

 

まぁ……能天気なのは事実だしな。

 

「美遊さんにはこの言葉を贈りましょう。人が空想できること全ては起こりうる魔法事象、私達の創造主たる魔法使いの言葉です」

 

「物理事象じゃないの?」

 

「似たようなものです」

 

「まあ、つまりあれだろ?考えるな!空想しろ!って、うわ~すごく納得いかねぇって顔だな……」

 

きっと美遊は頭がいい故に非常識的な受け付けられないのだろう。

 

もしイリヤくらい能天気になれば軽々と空も飛べたんだろうけど……。

 

「何か心の声でまたひどいこと言われてる気がする!!」

 

気のせいだろ、ていうか人の心を勝手に読むんじゃない。

 

「参考にはならなかったけど、少し考えが分かった気がする」

 

そう言うと、美遊が床に座っていた状態から立ち上がってリビングの出入り口のほうに向かう。

 

「あれ?もう帰っちゃうの?」

 

「うん……今夜までにイメージを固めておかないと。それじゃ、また今夜」

 

「とりあえず一歩前進って言った感じか。じゃ、俺も帰るわ」

 

美遊がリビングから出ると、裕輔も後を追うよう形でリビングから出て行った。

 

そして取り残される俺とイリヤ。

 

「ねえ、悠生君」

 

「何だ?」

 

「私達、本当にあんなのに勝てるのかな?」

 

何だ……そんなことか。

 

イリヤはそんなことで悩んでるのか。

 

今更だな。

 

「勝てるかどうかは俺達の頑張り次第だ。けど、帰り際に凛さんも言ってたろ?【勝ちたいじゃない、勝つ!】ってな。それに……」

 

「それに……?」

 

「お前のことは絶対俺が守る。この命に代えてもな」

 

「……どうして?」

 

「え?」

 

「どうして悠生君はそこまで私に優しくしてくれるの?」

 

随分唐突な質問だ。

 

だが、そんなの決まってる。

 

「一々そういうのに理由なんていらないだろ。俺がそうしたいからそうする、それだけだ」

 

「……そう、なんだ。悠生君らしいね。私、悠生君のそういうところ……好きだよ」

 

「っ!?」

 

笑顔で言うイリヤに俺はつい視線を逸らしてしまった。

 

今の俺の表情を彼女に見られたくないからだ。

 

「?どうしたの?」

 

「いや……何でもない」

 

くそっ……その笑顔は反則だろ……。

 

それから俺はしばらくの間イリヤの太陽のような笑顔が頭から離れず、

イリヤの顔をあまり直視できなかった。

 

 

―――――

 

 

イリヤの自宅から出ると、そのすぐそばのところで美遊が立っていた。

 

「どした美遊?そんなとこに突っ立ったりしてよ?」

 

「……裕輔、貴方はどうして飛ぶことができたの?」

 

いきなり唐突だな。

 

まあ、俺の場合は別にこれといった理由があったわけじゃないが……。

 

「美遊、お前はどうして人が上を向くことができるか知ってるか?」

 

「それは……身体の性質上そうなってるからで……それが何か関係あるの?」

 

「人ってのはさ、きっと空を飛びたいってことを願うために航空機やジェット機とか飛べる乗り物を作ったんだと思うぜ」

 

「つまり……どういうこと?」

 

「俺も難しいことはよく分かんねぇよ。考えるのが苦手だからな俺は。けど魔法ってのは空想の世界だ。つまりお前が飛びたいと強く願えばできるようになるじゃねぇか?」

 

「願い……か、ついでにお願いしたいことがあるんだけど、いい?」

 

「何だ?」

 

「私の特訓に付き合ってくれない?何としてでも空を飛べるようになりたいから……」

 

こいつは頭がコチコチだが、それなりに努力家なんだな。

 

こういう奴、正直嫌いじゃないぜ。

 

「ああいいぜ、時間が許されるまでみっちり見てやる」

 

「……ありがと、裕輔」

 

「これぐらいダチとして当然だろ。気にすんな」

 

「……そう」

 

そう言った時の美遊は少しだけ元気がなかった気がするか、気のせいか?

 

それから俺は美遊につきっきりで空を飛ぶ特訓に付き合った。

 

え?それで飛べたのかって?それは次回のお楽しみだ。

 

 

 

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