《神託》が夢見た未来の世界 作:さいきょーさん
御影学園、この学校は三年前に起こった大災害の後突如発生した《異能》を持つ《超越者》と呼ばれる子供を隔離、保護、教育している場所だ、この学校は一般的にも公開されており、《異能》を持たないいわゆる《無能力者》達も平和に生活している。
「はぁ……退屈だな…」
御影学園屋上でポツリと呟く彼は市松一真(いちまつかずま)《無能力者》である、現在は授業も終わり部活動などが活発に活動している。
「まーたこんなとこで油売ってる、いい加減顔出せば?」
ヒュウと風が吹くと同時にそんな事を言いながら少女が現れる、彼女は市松葵(いちまつあおい)風を操る事ができる《超越者》で、一真の妹である。
「やだね、強制で部活入れられても俺には出る義務はねえ」
彼が言った通りこの学校では部活動に入る事が強制されている、そのせいで彼は葵に誘われる形で陸上部に所属している。
「まったく……いいから後で部室に来てよ…部長が話があるって」
「あいつにあっても俺には無いって言っとけ」
「めんどくさいなあ…いい加減にしないと飛ばすよ?」
「……チッ……わーったよ…後で行く…」
そう言うと満足げに葵が飛び降りてグラウンドへと向かう、それを確認すると気だるそうに起き上がり屋上のドアを開ける、その瞬間。
『宴の始まりだ』
そう彼の頭に呟く声が聞こえた、その瞬間グラウンドで爆発音が聞こえ一瞬にして一真の頭に不安が浮かぶ。
「葵……!」
冷や汗が湧き出る中屋上を飛び出し階段を駆け下りる、外に出るとグラウンドはえぐれ、周りには大怪我をした男女や既に息は無いであろう生徒が倒れている。
「カズにぃ!」
煙の中から葵の声がする、それを聞いて一真は安心して座り込む。
「よかった……ってか…これ……なんだよ」
「わかんない…けど………ガハッ……」
葵の声が途切れる、よく見ると彼女の腹部には穴が開いており、彼女の後ろには銃を持ち仮面をかぶった何者かが立っている。
「あ……お…い……?」
急いで彼女を抱き抱え傷を抑える、だが既に息は無く、あったのは一真が抱く憎悪と嫌悪感だけだった。
「お前が……お前がやったんだな…?」
『そうだよ、お兄さん、楽しんでくれてる?』
「ふざけんな…妹を目の前で殺されて楽しめる奴がいてたまるか…」
そう言い拳を握る、だが仮面付きが放った言葉で彼は理解する。
『怒ってるの?でもお兄さんは…《無能力者》でしょ?何ができるの?』
(そうだ…俺は妹と違って《異能》なんかねえ…あいつには…勝てないのか?)
すると急に一真の頭に激痛が走り、声が聞こえる。
(本当にこのままでいいのか?)
「誰だよ…」
(妹の仇を取りたくは無いのか?)
「とりてえに決まってんだろうが」
(力が欲しいか?)
「んなもん決まってんだろうがよ…」
(ならば貴様に眠る《異能》を目覚めさせよう、その力、存分に奮え)
「ぐぁ…がぁ……な……なにを……」
頭痛が止まり、頭から手を離すと、情報が流れ込んでくる。
【奴の名前は藍染宗馬、《異能》は《絶対》思ったことを確実に遂げる能力だ】
(んだこれ……情報が流れ込んで来て…)
【そして俺の《異能》は《神託》全てを思うがままに変える、あったことをなかったことにできる能力だ】
「チート…じゃねえかよ……」
自分の能力を理解し、足の震えを止め仮面の男、藍染宗馬を見る。
『考え事は終わった?』
そう言われ彼はニヤリと口元を釣り上げる、なぜか?前々から市松一真と言う男は趣味が悪く《異能》が無くとも相手にしたく無い男ランキング一位の男だったからだ。
「ああ…待っててくれたのか…ありがとう、宗馬クン」
名前を呼ばれ宗馬が固まる、彼の頭の中では一真に《異能》が発現し、それが未来予知系統の能力だと思い込んでいる、だが彼は御構い無しに銃を撃ち放つ。
『そんな《異能》で僕を倒せると思った!?』
しかし銃弾は当たらず、逆に宗馬の左肩が消え去る。
『え……な…んで?』
「お前は二つミスをしている、一つは俺の《異能》の視察だ、二つ目は………」
口を閉じ大きな鎌を顕現させる、そして目を紅く染めながら。
「俺をここまでイラつかせたことだ…!!」
大きく鎌を振るう、すると宗馬が形を残さず消える、それだけでは無く、彼が存在した事象さえ消え去り、彼はこの世界に存在していたことすら無かったことにした。
「葵……仇は……とったぞ」
そう言い彼女の亡骸を抱え、学園に戻ろうとすると。
「ば……化け物だ!」
「こ、殺せ!」
「あんな事が人間にできるわけが無い!」
彼の戦いを見ていた学園の生徒たちが一真に向け罵詈雑言を浴びせる、それと同時にナイフや弓矢、銃弾が放たれた。
「ああ…そうか…俺は化け物か……なあお前ら」
「な、なんだ化け物!」
「こいつを…ただの人間のこいつを…葵だけは傷つけ無いで眠らせてやってくれ…頼む」
葵を寝かせ、身体中が傷だらけになりながらも頭を下げる、生徒たちは顔を見合わせ驚きながらも攻撃を止め、葵を抱え走りながら学園に戻る。
「ありがとう…葵……じゃあな…」
その言葉と同時に彼は息絶えた……筈だった。