―2025年春
入隊式が終わり兵科ごとに居住区エリアに分かれる。
地球にはもう巨大生物がいない。この緊張感のない新兵たちはその証拠である。
女性隊員はオペレーターか私のようにウイングダイバーに配属される。
「ここが杏ちゃんのロッカーだから!」と明るく声をかけてくれたのは
私の配属されたウイングダイバー全体を取り仕切る、三上 梨花である。
年齢は35歳、茶髪のショートカット。小柄でリスのような人だった。年齢よりはかなり若く見える。
「まさかあの本田さんの娘さんが入隊してくるなんてね~」といいながら私のスーツの準備を整えてくれた。
「能力測定は15:00からだからトイレ済ませちゃってご飯も食べちゃってね!あとその長い髪はまとめておいて!私ね入隊する前にあなたのお父さんに助けられたのよー…入隊してからも…」
「…ありがとうございます」不愛想に伝え話を遮った。そのまま自室に入った。
ここに入ったのは失敗だったのかもしれない。
今隊長レベルになっている人たちはみんな父のことを知っている。
そして口をそろえて言う「あの本田さんの娘さんが入ってくるなんて!」
どうやら父はEDFのほぼ全員からとても慕われていたようだった。
切るのが面倒で伸ばしていた黒髪も一本に束ねた。
鏡の前に立つ。少し疲れているようだ。
このあとの能力測定で配属チームが決定する。
少し眠ろう…。
目が覚めると30分前だった。
急いでスーツを着用しなくては…
自室から出たときに誰かにぶつかりそうになりとっさによけた。
見た目は23歳くらいの若いレンジャー隊員だった。
「あれ?ごめんねー」なんて間の抜けた言葉が返ってくる。同じ新兵だろう。
「ここはウイングダイバーの居住区です。隊長格以上の承認カードがなければ男性は入れません。失礼ですが出て行ってください。」相手を睨みつけて言う。
「そうだねーごめんねーじゃあ能力測定会場でー」と手を振ってどこかへ行ってしまった。
あとで三上さんに報告しなくては。この居住区のセキュリティーもゆるい…。
そんなことをしてるうちに開始時間が迫ってきた。
スーツに着替えて会場へ走る。
「ウイングダイバー0257 本田 杏」
私の番だ。
能力測定とはEDFが作った弱化クローン100体との実戦闘である。
たいていの新兵は上官が危険と判断しリタイアとなる。
そもそもウイングダイバーは飛べるかどうかから問題だ。
ウイング起動
飛べる。
武器を構える
狙い
そして撃つ。
単純だった。
あっという間に測定は終わった。
結果は
撃破数100
損傷46%
所要時間80分
新兵の中では文句なしのぶっちぎり1位だった。
「それでは新兵諸君にEDFが誇る最強チームであるストームチームのお手本を見てもらいたい」司令部からのアナウンスが流れた。
一部の新兵たちからはおお!とか声が上がっていたがあまり興味もなかったのでぼーっと見ることにした。
一瞬だった。
これが…最強とうたわれる所以か…
ストームチームは各兵科一人ずつの少人数編成のチームだった。
一人一人ヘルメットを脱ぎ紹介がされていく。
ウイングダイバーは活発な感じが伝わってくる長身の女性だった。名前は桜木優里。
エアレイダーは落ち着いた感じのおじさんだった。小松慎之助。
フェンサーは気性が荒そうなパンクな雰囲気を醸し出している。佐野和也。
そしてレンジャー隊員がヘルメットをとったとき、私は驚愕した。
さっき居住区でぶつかりかけた青年…安住晃という名前だった。
私は居住区エリアに戻りウイングダイバー1というチームに配属された。
そこには三上梨花、桜木優里などウイングダイバーでもかなりの精鋭たちが顔をそろえていた。
「杏ちゃーん!やっぱり杏ちゃんはここにきてくれると思ってたよー!」と三上さんが嬉しそうに言ってくれた。
「よろしくお願いします」機械的な挨拶を交わしてこれからの日程を話し合う。
これから私はほかのチームとも行動を共にしながら研修期間に入るらしい。
地球にはもう巨大生物がいないのでただのパトロールだと思ってくれればいいとのことだった。
明日からはまずレンジャーチームに同行しパトロールということらしい。
話を聞きながらずっと失礼な態度をとってしまったストームチームのレンジャー隊員のことが頭から離れなかった。
謝りに行ったほうがいいだろうか?しかし相手が対して覚えてもいなかったら恥をかくだけである。
難しい顔をしていると桜木さんから声をかけられた
「不安?」
「あ、いえ。今日この居住区でレンジャー隊員の安住さんと会いまして。安住さんとは知らず新兵だと思って声をかけてしまいました。失礼なことをしたので謝ったほうがいいかなと思いまして…」
「あー…晃ならそういうの気にしないから!」と桜木さんは笑い飛ばしていた。
少しほっとした。
「そっかーそうだよね本田さんと晃は年齢が近いのか!5歳くらいかな?」と桜木さんと三上さんは話していた。
明日から任務が始まる。