トリオンを操れる少年の話   作:脱力系何か

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今回はだいたい4000文字くらいです。


第6話 ボーダー②

翌日、流次が目を覚まして、最初に目に入ったのは壁だった。それを見てすぐに自分が寝てしまっていたのだと理解した。

 

(トリオン、トリガー)

 

迅が言っていたその言葉は、まるで忘れていた物の名前を他人に教えられたかのようにしっくりきた。流次はなぜそんな感じがするのか考えようとしたが、夢の男と同じように何をしてもわからない物な気がした。だから考えを後回しにして現状を把握しようとは膝を伸ばして体を起こした。

 

部屋を見渡す。その部屋には、おそらく一般的な小学生の部屋にあるであろうものがすべて揃っていた。流次は何気なくカーテンを開けた。日の出が見えた。時計を見ると針は6時半頃を指していた。

 

流次はベットから出て目を瞑り壁に手をあて、トリオンを壁に薄くつたわせて監視カメラや盗聴機が仕掛けられていないかを調べた。机の引き出しの中、本棚、ベットの下、時計の中、本の中までも調べたが、何も見つからなかった。

 

(....)

 

次に意識を集中させ、トリオンの反応を探った。すると地下に、トリオンが貯蓄されている場所を発見した。そこからは何本か水道のように管が伸びていた。

気分が高まるのを抑えて、トリオンを壁や床につたわせる。そこに近いところまでの道を覚えたところで目を開けた。

 

 

 

トリオンの貯蓄された場所から管が伸びていた場所に着いた。そこにはやはり一般的な家にはありえない空間が広がっていた。そして前に似たような光景を見たことがある気がした。

流次にとってそれは自分の目的に近づくことができたという証拠だった。

 

満足感に浸っていると、突然扉が開いた。

振り返ってみると、扉の近くに真面目そうな男が立っているのが目に入った。その男は流次を見た瞬間生身からトリオン体に変わって構えた。

 

「何者だ、どうやってここに入った」

 

威圧、強い殺意。流次はその言葉で男がボーダーの人間だと理解した。向けられる殺意による興奮を抑えて挨拶をする。

 

「...どうも、昨日迅さんに誘われてボーダーに入ることになりました。よろしくお願いします。」

 

「...そうか、君が迅の言っていた...」

 

(ジンが、言っていた?)

 

迅は流次を知っている人間が2人だけと言っていた。その2人は迅と狙撃をした人間だけのはずだ。それなのに忍田は迅が言っていたと言っている。

 

(存在だけ知っていたったことか?)

 

その答えはすぐに出た。

 

「驚かせてすまない。私は忍田だ。今までトリオン兵に狙われていて大変だったろう。これからよろしく頼む」

 

「あ〜。はい」

 

(都合よく説明しやがって)

 

不快感を感じながら曖昧な返事をした。その中で迅が忍田の事をどう説明したのかを理解した。忍田の言葉からは、言葉の意味通りの感情しか感じられなかったのだ。つまり迅がトリオン兵に狙われているという事だけしか伝えなかったのだ。

 

(トリオン兵に狙われるだけならどれだけ楽だったか)

 

心の中で毒を吐く。実際、トリオン兵に狙われる事よりも、トリオンを操れる事での迫害の方が面倒だった。トリオン兵は壊せば終わるが、人間は壊したら騒ぎになるから迂闊に手が出せないのだ。

 

「そうだ、私は迅に君と会ったらトリガーを使う訓練をしてくれと言われているんだ。早速始めよう」

 

「迅さんは今どこに?」

 

「まだ寝ている。それに今日は学校もある。長い話は迅が学校から帰ってきてからだ。」

 

(学校ね...)

 

日浦や雨取の事が頭に浮かんだが、すぐにその思考に蓋をした。

 

「ちょっと待っててくれ」

 

そう言って忍田が機械を少しいじった。流次はトリオンの動きを見ようと目を瞑った。トリオンが扉に向かって流れていて、扉の向こうに歪んだ空間が出来たのが確認出来た。

流次は目を疑った。今までトリオンを見てきて空間を新しく作るなど見たことがなかったのだ。

 

「よし、広さはこのくらいでいいだろう。...どうした?」

 

呆然としていた流次に忍田はまるでこれが普通だとでもいうかのように声をかけた。

 

「...いえ、何でも」

 

「そうか、じゃあ行こう」

 

二人は扉をくぐって新しくできた空間に入った。その空間は中に入ると歪みは感じなくなった。それはまるで一つの世界かのように思えた。

 

「この空間、どういう仕組みなんですか?」

 

「ああ、この空間はトリガーで出来ているんだ」

 

「へぇ...凄いですね」

 

「これが君のトリガーだ」

 

受け取った物は昨晩迅に見せられた物と形が同じだった。しかし、その表面にスイッチなどは無く、どうすれば使うのかはわからなかった。

 

「『トリガーon』と言うだけで起動する。まずはやってみてくれ」

 

「...と、トリガーon」

 

流次は若干恥じらいながらその言葉を口にした。その時もちろん目を瞑ってトリオンの動きを観察していた。

 

まずトリガーに自分の身体からトリオンが吸収された。そしてトリガーの中でトリオンが集まって空間と、その中に身体が作られたのがわかった。そして気持ちの悪い浮遊感ともに一瞬でその身体と生身の身体が入れ替わった。腰に掛かった刀以外、外見はほとんど変わっていなかった。しかし手に握っていたトリガーは無くなっていた。

 

「それはトリオン体というものだ。生身よりも格段に身体能力が高い。ちなみにトリオン体を破壊しても、生身に影響はない」

 

「なるほど」

 

流次は身体能力を確かめようと地面を蹴った。次に目に入ったのは普段よりも圧倒的に高い位置からの光景だった。着地の方も、余裕にこなすことができた。

次に腰の刀を抜いた。刀のトリオン密度は高く、日本刀を彷彿させる外見だった。軽く振るだけで凄まじい風切り音がした。

 

「これで戦うんですか?」

 

「他にも銃などもあるが、基本はそうだ」

 

流次はそれを聞いていつもの刀を取り出そうとしたが、何も出てこなかった。流次はそれをまあいいかと思い、特に気にしなかった。

 

忍田は刀を構えた。

 

「さて、実力を試させてもらう。」

 

「はい」

 

(武器が刀一本。そこそこの身体能力。ブースト無し。相手。刀一本。身体能力不明)

 

流次は軽くトリオン体を動かして身体能力を確かめながら頭の中で忍田を倒す方法を思考し始めた。

 

(...よし)

 

流次は少ししゃがんで、刀を両手で持って少し斜めにして構えて、忍田に向かって接近した。忍田の間合いに入ると忍田はトリオン兵よりもはるかに早い速度で刀を振り下ろした。その刀の軌道を横から刀で強引にそらす。

 

「っと」

 

しかし反動で体制を崩したので少し距離をとった。

 

(鋭くて重い攻撃。かなり強いな...でも、片手だ)

 

流次は勝ち筋を考えながら、その顔に笑みを浮かべていた。

再び急接近、今度は先に刀を振る。弾かれた、忍田が刀を振る、受け流す。

雨のように降り注ぐ斬撃を流次は全て受け流した。何十回か受け流した後、後ろに一歩下がった。忍田の攻撃が空を切る。持ち手の近くを狙って予備動作無しで小さく刀を振った。忍田の刀を持つ手が少し崩れたのを見逃さずそこに全力で刀を振った。

金属音が響き渡り、忍田の手から刀が離れた。刀は流次から見て右に転がっていった。流次は刀と忍田の間に入り忍田が刀を拾えないようにした。刀がなければ倒すのが楽になると考えたからだ。

 

しかし、忍田の手には新しく刀が握られていた。その刀による斬撃をギリギリで避ける。

 

(武器の形を変えられないのは不便だな)

 

流次は心の中でそう呟き、後ろに跳んで忍田の刀を拾った。

 

《トリガー臨時接続》

 

そんな声が頭に響く。なかなか親切だなという事を思いながら構えた。

二本の刀で忍田の攻撃に対応した。刀が二本になったことで、反撃をする余裕が生まれた。忍田の攻撃を左手の刀で受け流すと同時に忍田の腕を狙ってもう片方の刀を振る。切り裂く感覚ではなく、硬いものに当たった感覚が手に伝わった。忍田は刀を引いて防いでいた。

流次は地面を蹴り、宙返りをしながら忍田へ斬撃を繰り出す。忍田は一切動じず全て避けて流次に刀を振った。二本の刀で受け止めたものの、踏ん張る地面も無いまま正面から受けたためそのまま吹き飛んだ。流次はすぐに体制を立て直して着地した。前方で忍田がこちらを向いて攻撃体制に入っているのが流次の目に映った。そして、目を瞑った。

 

脳内に広がる立方体の世界。忍田が壁の近くに立つ流次に接近しながら刀を右上から斜めに斬り下ろす。流次は体を左にずらして忍田の攻撃を避けるのと同時に左手の刀を前に出した。忍田の背中に刀が生えた。

 

刀を起点に忍田のトリオン体にヒビが入り、煙とともに壊れた。煙が晴れると忍田が口を開いた。

 

「...なるほど、強いな君は」

 

「当たり前じゃないですか」

 

流次は笑ってそう言いながらも内心忍田の強さに感心していた。刀が一本のままだったのなら恐らく勝つのは難しかったのだ。

 

(まあ生身だったら楽勝なんだけど)

 

生身の場合、身体能力はトリオンの噴射でいくらでもカバー出来る。それに加えて武器の形を変えて虚をつくことも出来るからだ。そもそも、トリオンでできた物や武器が使われるのならば、攻撃も全て無効化できるからだ。

 

「...君は、何歳だ?」

 

忍田が唐突にその質問をしてきた。その中には、『心配』のような感情が含まれているように感じられた。若干不快感を感じたが、素直に答える事にした。

 

「...小5です」

 

「今まで辛か「その憐れむような視線をやめてください」

 

流次は忍田が言い終わる前に言いたい事を理解した。

全て言われると怒りを抑えられる自信が無かった為、忍田の言葉を丁寧口調で遮って睨みつけた。流次にとってこの強さは何度も殺されて、それでも努力して手に入れたものだ。その過程の辛い事を否定するのは、この強さを否定することになるのだ。

確かに小さい子供がこれほど強ければ心配するのは当たり前ではあるが、それは流次には屈辱だった。

 

怒りは収まらないが、この空気が続くのにも耐えられ無かったので、話をそらすためにどうでもいい事を聞く。

 

「このトリガーは貰っていいんですか?」

 

「あ、ああ」

 

無言が続いた。

流次はその間に空間の解析をした。解析してみると案外作りは簡単なもので、空間の作り方さえ習得すれば簡単に模倣できそうだった。

流次はそれを理解して一つ新しい戦法を思いついた。作った空間の中に閉じ込め、自分の有利な地形で戦うというものだ。

 

流次は自分がまた強くなれる事を喜んだ。今までトリオン兵しか相手にしていなかった為、刀タイプもブーストを使わずに倒せるようになってからはあまり大きな成長は無かったのだ。

 

怒りは収まった。同時に、初対面で自身を知らない人間をいきなり睨みつけた事が申し訳なく思えた。

怒っていない事を伝えようと、笑顔で振り返り、

 

「訓練の続きしましょうよ」

 

と、何事も無かったかのように言った。




トリガーで空間が作れるならfateの固有結界がマネできるんじゃないかと思い始めました。

体はトリオンでできている。
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