境界線上のホライゾン・シャッフルズ!(マスチモ版)   作:ボストーク

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皆様、始めまして。
Arcadia様にて主に活動していたボストークという者です。

しばし執筆活動を停止していたのですが最近色々と思うところがあり、ハーメルン様にも投稿させていただこうと思ったしだいです。
この作品もArcadia様に投稿させていただいている作品を叩き台に加筆修正したバージョンとなりますので、新しい読者様もまた原典を読んでくださっていた読者様も楽しんでいただければ幸いです。


第01話 ”快男児(マスチモ)”

 

 

人間関係とは常に合縁奇縁。

ちょっとした”運命”、あるいはほんの僅かな可能性の差異で、万華鏡のように大きくその姿を変えてゆく。

そして、このGENESISでは果たしてどのような色が世界を彩るのであろうか?

 

<配点:平行世界>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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かつて戦争があった。

 

もっとも聖譜に示された”歴史再現”が繰り返されるこのGENESIS世界では、特に【重奏統合争乱(じゅうそうとうごうそうらん)】以降は戦争(学生間抗争)くらいしか国家間ではやることないから珍しい話ではないのだが……

 

その中では多くのアクシデント、そして悲劇が存在した。

特に悲劇として語られるのはやはり四半世紀ほど前に起きた【レパント海戦】だろう。

 

本来は聖連監視の下、聖譜の基づき粛々と行われるはずだった「厳島の合戦」との二重の歴史再現の戦いで、十字軍の一角を担う”三征西班牙(トレス・エスパニア)”に対しオスマントルコ帝国役のP.A.Odaが歴史再現を越えた過剰な侵攻を行い、本来の歴史ではありえない”勝利”を得たのだった。

 

その甚大すぎる被害は、ただでさえ慢性的な破産傾向のある三征西班牙に歴史より早い衰退を招きそうな勢いだった。

 

そこで戦後、聖連は歴史再現を遵守しなかったP.A.Odaに対する政治的/経済的制裁を行うと同時に、各国に三征西班牙の支援を命じた。

 

そこでささやかだが歴史が動く。

 

 

 

聖連からの要請を受けた三河は、国家再建の為に必要な人材を融通すると決定する。

後で語られるところの三征西班牙で語られるところの【国家再建の為の復興人材支援(El apoyo de los recursos humanos para la reconstruccion)】である。

その供出人材目録を自ら書き上げた君主の【松平・傀儡男(イエスマン)・元信】に白羽の矢が立てられた中に、こんな名前があった。

 

”小野・忠明”

”葵・善鬼”

 

そう、まだ若かりし日の葵姉弟の両親の名が、だ。

 

 

 

小野忠明という人物は天下の剣豪”伊東一刀斎”から一刀流を相伝され、史実では柳生と並ぶ黎明期の徳川家剣術指南役だったが……傲岸不遜な性格で政治的駆け引きには向かず、接待勝負のようなものは受けず徳川の直参相手でもかまわずボッコボコにしてあげる~♪とばかりの立ち振る舞いだった為に周囲とは諍いを起こしてばかりだったらしい。

一説によれば手合わせで徳川の大藩の家臣を再起不能した為に徳川秀忠の怒りをかって、蟄居閉門処分にされたなんて逸話も残ってる。

 

そう考えると人材供出にかこつけた体のいい厄介払いのような気もするが……

いや、おそらくそこは追求してはいけないところなのだろう。きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、時は流れて平行世界と同じように忠明と善鬼は、”伊東一刀斎の一刀流相伝試合”の歴史再現の後に結ばれ、トーリと喜美が生まれることになるのだが……

 

もう皆さんも薄々お気づきだろう。

”この世界”において、葵・喜美とトーリは三征西班牙生まれであり、現在所属している学校は武蔵アリアダスト教導院ではなく”アルカラ・デ・エナレス”ということだ。

 

そして……【ホライゾン・アリアダスト】はその出自や正体が隠匿されたまま偽りの姿を演じながら、機械仕掛けの肉体を持とうともあるいは自動人形のように振舞おうとも”人間のまま生きて”いた。

そりゃああもう、武蔵の外道ども率いて元気いっぱいに。

 

 

 

さてさて、今はそんな細かい(?)ことはどうでも良くて……

 

トレス・エスパニア独特の太陽と情熱を表す明るい赤色に、旧派を示す白い十字架の意匠をあしらったいかにも空気抵抗の少なそうな流麗な船体を持つ小型航空艦の一室にて……在り来たりな日常がそこにはあった。

 

時刻は、まだ早朝といっていい時間帯。

船は舳先を三河へと進路を向けているが、そんなことはこの今まさにこの”第一特務長室(個室)”のダブルベッドにて呑気に高鼾をかいてる少年には関係ないだろう。

 

黒髪からすると極東系だろうか?

いや、そんなことはどうでもいい。

問題なのは”全裸”だということだ。

まあ西洋では全裸で寝るというのはさほど珍しいことじゃない。例えば男女の違いはあれど、英国君主の姉の方はまさにそうだ。

 

黒髪の少年で全裸といえば……皆様に思い浮かぶ該当者は一人しかいないのではないだろうか?

なんせ同じ全裸芸風の金髪の方は、六護式仏蘭西(エグザゴン・フランセーズ)だし。

 

そう、彼こそが平行世界における全裸の代名詞、このGENESIS世界では何をどう間違ったか三征西班牙に生まれてしまった【葵・トーリ】本人だ。

 

もちろん、平行世界とは数多くの相違点がある。

例えばその肉体。

原作では細く華奢な体つきで、ホライゾンが人としての生を失ったときに刻まれた痛々しい傷痕がひどく目立った……それがまるで胸に刻まれた癒されない痛みを代弁するように。

 

しかし、このトレス・エスパニア産の葵・トーリの肉体は、一見すると華奢だがつけるべき筋肉はしっかりとつけている。

いや、それどころか明確に普段から鍛えてる痕跡が見て取れた。

例えば、そう誰もがイメージするマッチョから余分な”魅せる筋肉”を削ぎ落とし、実用的な筋肉のみを残して、同時にそれを極限まで引き締め引き絞ったような印象の体つき。

ブルース・リーのそれに近いと言ったら誉めすぎだろうか?

 

そして最も重要な相違点は……『ゴッドモザイクを装着してない』ということだ!

 

つまり、ベッドを思う存分に占有して大の字に寝るトーリの脚の間には、誰憚ることなく立派な”マスラヲ”がそそり立っていた。

平たく言えば漢の朝の生理現象、モーニング・スタンドという状態である。

 

そのワイルドかつ開放的な寝姿は、本来は断じて余人に鑑賞させるためのものではない。

だが……

 

”きぃ”

 

部屋の主を起こさないようにそっと扉が開いた。

周囲をきょろきょろと見回し誰もいないのを確認すると、足音を忍ばせそっと入ってきたのは、巨大な胸に反比例した童顔をもつ藍色の短い髪の女性……いや、少女だ。

 

その熟練すら感じる周囲の空気さえも揺らさないような静かな脚裁きから、一瞬『暗殺者かっ!?』とも心配するが、それにしては様子がどうにも妙だ。

 

(うふふ。トーリ様、そんなご立派な”宝物”を携えてるのに、相変わらず無防備すぎですよ?)

 

と内心で呟くと、とりあえず左右の機械腕を静粛駆動(サイレント)モードで駆動させて、そそり立つマスラヲに二拍一礼をもって拝んでいたりする。

 

(寝てるのに、こんなに私をドキドキさせるなんて、本当にトーリ様は罪作りな殿方です……)

 

”ごくりっ”

 

機械腕の少女はこらえ切れないように生唾を飲み込むと、

 

「そんな悪い殿方にはオシオキです。他の女性(にょしょう)が被害にあってからでは遅いですし……」

 

彼女はベッドに登りながら肉食獣の瞳で、

 

「トーリ様の”一番槍”は何人たりとも渡しません……!」

 

決意の言葉と共にむしゃぶり……

 

「ちょお~っとまったぁ! ”誾(ぎん)”さん、なに朝からエキサイティングかつエロティックな奇襲攻撃しようとしてんの?」

 

 

 

***

 

 

 

そう、今更言うまでもないかもしれないが……機械腕の少女の名はは【立花・誾(たちばな・ぎん)】。

武術の腕は超一流なれど純粋で無愛想で面倒臭い(本人談)で天然で変人……

 

「おはようございます。トーリ様」

 

まるで何事もなかったかのようにさわやかに挨拶する誾だ。

ただし、視線は一番槍とやらをロックオンしてるが……

 

「おはよ。誾さん……って軽く流されちゃったぜ」

 

「いつものことですよ?」

 

”ぎゅ”

 

と誾は抱きつき、

 

「こうするのも」

 

「Wow! 俺様の扱い朝から種馬っぽいぜ~♪」

 

「一部訂正させてください。トーリ様は他の誰でもない”私の種馬”がちょうどいいと思います」

 

「誾さん、朝から熱烈だねぇ~」

 

真っ直ぐな想いについ顔が緩むトーリ。

彼に優しく髪を撫でられ、嬉しそうに気持ちよさそうに誾は目を細め、

 

「”快男児(マスチモ)”を自分の胸抱きたいと願うなら、自ら打って出なければその手綱はつかめません。それに……」

 

「それに?」

 

「『ねだるな。勝ち取れ』と偉い人も言ってます」

 

「いや、それはサーフボード乗った武神が飛び交う別の世界なんじゃ……」

 

 

そう、平行世界では不可能男(インポッシブル)というアーバンネームを与えられたトーリだが、この世界での二つ名はなんと”快男児(マスチモ)”!

この世界のトーリは、そう呼ばれるに相応しいいかにもラテン漢的な生き様を貫いてきた(あるいは浮名を流した)のだからある意味、当然かもしれない。

 

 

そう、この物語は……

 

破産状態の国家の中でも夫婦(?)むつまじく戦闘に勤しむ【葵・”快男児(マスチモ)”・トーリ】と【立花・誾】のちょっと変な戦闘系夫婦ぜんざいな妄想ストーリーである!!

 

「これでトーリ様が【立花・宗茂】を襲名してくれれば言うことないんですが……」

 

「無理だって。それに宗茂つったらアイツがいるじゃん?」

 

「顔も見たこと無い上に、三河だか武蔵だかに修行に言ったまま帰ってこない人は、論外だと思いませんか?」

 

何はともあれ相手こそ大幅に違うが、どうやらこの世界においても夫婦(?)仲良好で何よりである。

 

 

 

***

 

 

 

聖譜暦1648年04月20日

人為的に歴史の再現が繰り返される”世界”は、まだ辛うじて平和だった……

 

 

 

 

 

 

 

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