境界線上のホライゾン・シャッフルズ!(マスチモ版) 作:ボストーク
皆様、こんにちわ。
ストーリー展開が亀足なことに定評のあるボストークです(自虐)
今回でめでたく二桁話数に乗ったというのに、まだ”武蔵の追いかけっこ”が続いてるという。
しかも今回のエピソードは前回に引き続きバトルがメイン……の筈だったんですが、どういうわけか内面掘り下げの側面が強くなってしまいました(^^
やっぱり亀足展開ですね~。
こんな感じのエピソードですが、呆れながらも楽しんでいただけたら嬉しいです♪
魔女は嫌われ者だ。
無論、時の宗教にとって。
魔女は知らなくていいことを知ろうとするから。
だけどその好奇心ゆえに、魔女だけが本当の彼の姿を見ていた。
<配点:魔女の瞳>
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「マルゴット、マルガ、合わせろ……!!」
それはシロジロ・ベルトーニの金勘定の時とまた別種の凛とした声だった。
普段の理知的な声ではなく、普段は魂の奥底に眠る闘争本能の戦闘衝動に突き動かされたときにしか発しない、シロジロが『雄としてのサガ』を解放した時の声だ。
「りょおか~い♪ ナイちゃん、シーちゃんのお妾(めかけ)さんの面目がつぶれないように頑張っちゃうんだから♪ でも、その時はご褒美おねだりしてもいいよね? ね?」
「いいわよ。三人で安宿でなくて滅多に泊まれない高級旅籠(ホテル)ね。料金はもちろんシロジロ持ちよ?」
「心得た!」
マルゴットはひどく上機嫌だった。
『ちょっとシロくん!? わたし、そんなの絶対に了承できないよ!? というかマルゴット=シロくんの妾なんて図式まだ認めてないんだからねっ!』
なんて本妻の割り込み通神が入っていたことすら気が付かないくらいだから、相当浮かれているのかもしれない。
本来はゆるキャラならぬ百合キャラのマルゴット・ナイトではあるが、この世界ではシロジロにひどくご執心のようだ。
ただし、それはハイディと違って純粋な恋愛感情などではないようだ。
(やっぱり魔女としての本性かなぁ?)
誤解のように言っておくが、マルゴット本人が『恋人はガッちゃん。シーちゃんは愛人』と公言したり、『えっ? ナイちゃんはシーちゃんのお妾さんだしなぁ~♪』と公然と言い放ちながらシロジロにべたべたしていたりするが、言葉の通り基本的に恋愛感情はナルゼに向いている。
ナルゼはナルゼでその自覚はあるので、不必要にシロジロに嫉妬したりはしていない。
別に平行世界の同一存在より物分りがいいわけでなくて、単純に『自分とは別枠』と割り切っているのだ。
それにナルゼ自身も昔から金銭面だけでなく色々世話になっていて、それが『お得意様への当然のサービス』だとしても困ったときに助けてもらえるのは嬉しいものであり、故にシロジロに対する好感度は低くはない。
というよりむしろ、むしろマルゴットと一緒に一つのベッドで汗だくになって可愛がられるのになんら抵抗がない(というより女同士では味わえない快楽がむしろ気持ちいい)位にはシロジロに対する好感度は高い。
ハイディの苦労が忍ばれるエピソードではあるが、
(でも普段のお金儲けして喜んでるシーちゃんも可愛いけど、なんか窮屈そうに見えるんだよねぇ~)
マルゴットがシロジロを見る目、あるいはその評価はどうやら他のクラスメートとは少し視点が違うようだ。
(ナイちゃんの見立てだと、”シーちゃんの本質”はもっと獰猛で凶悪なはずだもん)
根拠はある。
マルゴットは『魔女でいいよ。魔女なら魔女らしいやり方でNTRしてあげるから』って普段の朗らかな彼女らしくないハイライトの消えた瞳をしながらナルゼとつるんで隙を突いてシロジロを拉致、ハイディの追っ手を振り切り旅籠(ホテル)へしけこんだことが何度もある。
そのたびに感じるのはシロジロの野性味溢れた”獣性”だ。
性的な意味でナルゼの耐久度は愛らしいサイズの胸と比例するように低いから、文字通り”金髪のケダモノ”のようなシロジロの激しい責めの前にすぐに陥落して失神してしまうのであまり蓄積も経験もないが、そっち方面にはやたらと耐久度が高いマルゴットはついつい最後までつきあってしまうのだ。
詳細を語るとR-18指定まっしぐらになるため避けるが、胸部装甲の厚さに比例して性的な意味で高い耐久性を誇るマルゴットさえも、シロジロと一晩も共にすると『嬲られ続け身も心もボロボロになってしまう』のだった。
無論、暴力的な意味ではなく、苦痛と快感の境界線をさまようようなひたすら与え続けられる強い快楽ゆえにだ。
(あっ、濡れてきちゃった……この間もすごかったもんなぁ~♪)
どうやら思い出したら肢体が勝手に反応するレベルのプレイ強度だったようだ。
『そのうちシーちゃん無しじゃ生きていけない肢体になっちゃうかもね~』と軽くマルゴットは危惧するが、そうなったらそうなったで悪くないかな?とかも同時に思っているあたり彼女もまたツワモノ側だろう。
(まあ快楽で悪墜ちした駄目天使っていうなら、確かにナイちゃんにはお似合いのキャラだけどね~)
「でも、”守銭奴”とか”冷面”とかって今一つシーちゃんには似合ってない気がするんだよねぇ?」
そう小さく呟く。
名がその存在の本質を現すなら、このよく知られるシロジロの二つ名はマルゴットにとってシロジロの表層しか現してないような気がした。
マルゴットがいくつかの夜をシロジロと共にすごしたのは伊達じゃないということだろうか?
虚飾を捨てたある意味の極限状態、正気と狂気の狭間のような場所を互いに何も纏わぬ……何もかもを曝け出した時間を二人で共有してるからこそ、見えてくるものがあるのだろう。
多くの人間に忘れられているようふだが、時にはサキュバス(淫魔)と同等に語られるほど魔女は淫乱なものとされる。曰く『悪魔と性的交わりによって契約し魔法を得る存在』とまでされる。
故に聖譜の示す”七つの大罪”の一つ【色欲(luxuria)】に反するとして迫害されてきた。
確かにサバト(魔女集会)では性交渉やそれに従属する行為が行われるが、それはツァークや他の宗教と魔女との間に横たわる『解釈と意見の相違』と言えなくもない。
魔女にとって性交渉は愛情や悪魔との契約という世俗にとらわれるものじゃない。根源的には相手の最も深き場所を、本質や本性を探り知るための手段でありコミュニケーションだ。
隠さぬ隠せぬところで剥き出しの相手と自分を見るのなら、たしかにそれは合理的なのかもしれない。
参考までに言っておけばハイディに対するナイト・プレイは、マルゴットのそれと比べるならそこまで激しいものじゃないことは追記しておく。
むしろシロジロの奥底に眠る獣性は、マルゴットが触媒となって引き出している感すらある。
それを薄々感じ、自負してるからこそマルゴットは思う。
(それが”魔女”として正しい姿だと思うんだよねぇ~♪)
魔女は嫌われる。魔法を使うことだけは理由じゃない。知られたくない秘密(しんぴ)に土足で踏み込み、無造作に暴くから。それがどんなに他人に知られたくないことでも魔女には関係がない。
魔女とは生来、傲慢な生物なのだ。
もっともお互い肉食系だから共鳴する部分があるというオチもありえそうで怖いが。
(だからシーちゃん……)
「ナイちゃんが、シーちゃんを解き放ってあげるからね?」
「マルゴット、何か言った?」
呟きに反応したナルゼに、マルゴットは満面の笑みで告げる。
「ガッちゃん、【双嬢(ツヴァイ・フローレン)】使っちゃおうか?」
「いいの? たかが授業中よ? それに気に入らないけど三征西班牙(トレス・エスパニア)の連中の監視が……」
今回の航行、三河行きの航路で”武蔵”の監視役についてるはずの三征西班牙はガチガチの旧派でなおかつ純潔主義なんて超保守な国是を持つ国であり、そのため旧派の共通方針と言っていい”魔女狩り”……魔女達への排斥や迫害はことさらに強い。
実際、彼らの心情的に”武蔵”への監視や締め付けは厳しく、半ば嫌がらせじみてきてる。
当然のようにいかなる理由があっても、魔女達が自由に空を飛ぶのを毛嫌いし、ナルゼ自身もかなり高圧……というか恫喝的な目にあってるのだ。
その報復としてアルカナ・デ・エナレス運動部をモチーフにした『や・ら・な・い・か?』系のガチホモBL同人誌を各地即売会でばら撒いて溜飲を下げたりしてるのだが……
まったくの余談ながらその報復的同人誌(笑)とは別口に、同じBLジャンルながら第一特務隊長をモチーフにした耽美爽やか系の『トーリ様がまかり通る』は不思議と同性愛が宗教的な意味で禁止されてるはずの三征西班牙でも根強い人気があり、どこで情報を聞きつけているのか新刊を出すたびに即座にまとまった数の発注が入っていた。
「大丈夫じゃない? どういうわけか知らないけど連中まだ監視任務に来てないみたいだし」
たしかにマルゴットの言うとおり、いつもなら三河に近づくとブンブン煩く飛んでくる三征西班牙ご自慢の航空武神”猛鷲(エル・アゾゥル)”が視界の中には見えない。
「そういえばそうね……どうせならこのまま職務放棄しててくれると鬱陶しくなくていいわね。なんだったらずっと昼寝でもしててくれると助かるんだけど。どうせシエスタの国なんだし」
普段の魔女に対する態度の不満と憤懣がふんだんに詰まった不平を垂れるナルゼだったがマルゴットは苦笑して、
「それでも昼寝から醒めたら、その情熱には定評のある国だよ?」
「マルゴットったらロクでもないこと言わないでよ」
ナルゼはそう唇を尖らせつつも、
「そういうことなら異論はないわ。相手はホライゾンの斬撃も智の射撃技ですらまともに当たらない正真正銘の化物だもの」
「なら……」
マルゴットとナルゼが互いの”相棒”を召還しようとした瞬間、
「あんたら”敵”を目の前にして悠長におしゃべりしすぎよ?」
”ビュオン!”
二人の間を空間ごと斬り裂くような巨大な真空刃(ソニック・ブレード)が飛び抜けた!
***
「ちょっと先生! 今から変身シーンを入れようって時に攻撃してくる敵役がどこにいるのよっ!? ちょっとは空気を読んでっっ!!」
そうクレームをつけるナルゼだったが、オリオトライはシロジロの放つ硬貨指弾の弾幕射撃を涼しい顔で弾きながら告げる。
「どこの世界に目の前に飛んでる魔女が【強化機殻(シャーレ・ベーゼン)】を召還しようってのに指くわえて見てるバカがいるのよ?」
言うまでもないことだが、シロジロの弾幕を弾きながらソニック・ブレードを放った犯人はオリオトライだった。
無論、それは手に握るIZUMO謹製の大太刀で放ったのだが、その間シロジロの硬貨弾をどうやって裁いたのかと言えば……きっと聞けば彼女はこう平然と答えるだろう。
曰く『動体衝撃波(ボディ・ソニック)でそのまま弾いたんだけど?』と……
このボディ・ソニックという技、原理は極めて単純で肢体の動きを局所的に加速させて音速を突破、その時に発生する超音速衝撃波(ソニック・ブーム)に指向性を持たせて放つという技だ。
この場合、オリオトライは身体を旋回させる際に踏み込み/腰の回転/上半身の捻り/肩から腕の振りを連動させてボディ・ソニックを発生させ、しかもその動きで生じた”加速圧縮された空気”を太刀に相乗させて先ほどの巨大なソニック・ブレードを射出したのだ。
あの一瞬で自らの体の動きだけで攻防を兼ねた真空技二つを発生させるとは驚くべき戦闘センス……というよりもはや人間レベルのそれでは分類できないような気もする。
しかし、この程度のことでいちいち驚いていたら梅組じゃやっていけない。
オリオトライが”ベルセルク・アマゾネス”なんて呼ばれているのは伊達や酔狂ではなく、梅組の認識では『この人外ならこのくらいは出来て当たり前』なのだ。
「それとナイト、”双嬢”使う気があったのなら戦場に入る前に用意しときなさい。あんたたちの変身を待ってくれる呑気な敵なんて滅多に居ないから。いるとすればそうね……バカか、」
オリオトライは少し考えてから、
「あんた達が変身したところで『脅威度判定に差はない』って言い切るくらい自信があるヤツだわね」
言うまでもなく明らかな挑発なのだが、特にナルゼは冷静なふりを装いながら傍目にわかるほど鼻白ませるのが見て取れる。
しかし、
「いや十分だ」
(これで仕込みは終わった)
シロジロは表情に出さぬよう獰猛な笑みをつくり、
「マルガ、私のために剣を一振り描写してくれ。マルゴットはマルガが書き上げるまで私とともに回り込みながら教師オリオトライを弾幕で押し込むぞ」
「Jud. 有料になるわよ?」
どこからか愛用のスケッチブックを取り出し早速ペンを動かすナルゼに、
「Jud! ナイちゃんにお任せだよぉ~」
箒に複数の棒金を装填するマルゴット。
「今更、金に糸目はつけん。マルゴット、頼りにしてる」
「「Jud!!」」
そしてシロジロはわざわざソニック・ブレードを放って以来足を止め、こちらが何をしてくるのか実に楽しそうに見ているオリオトライを仮面越しに鋭い視線で見据え、
「教師オリオトライ、”とびっきりの一撃”を受けてもらうぞ……!」
残弾0に近づきつつあった両手の棒金にくわえ、新たな棒金を手首から”ジャコン”とスライドさせた!
皆様、ご愛読ありがとうございました。
今回のエピソード・ヒロインは間違いなくマルゴットでしたね~(笑)
作者、どんだけマルゴット好きなんだか(^^
でもアニメ版でも『マルゴットが微妙に優遇されてる説』がることですし。
基本的にこのシリーズのマルゴットは『”いい女だけど悪女” or 悪女だけどいい女』って魔女らしい側面があったりします。
というかシロジロ&マルゴット・ペア(ナルゼも忘れてませんよー)に書いてる本人知らないうちにハマってしまって(苦笑)
まだまだバトルは続きますが、お待ちいただければ幸いです。
是非是非、ご意見ご感想をお聞かせください。