境界線上のホライゾン・シャッフルズ!(マスチモ版)   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
ちょっとした発表ですが、今回のエピソードより益荒男版の改訂版ではなくハーメルン様(マスチモ版)用に完全新作で書き下ろした未発表のオリジナル・エピソード展開になります。

もしかしたらこれまでのエピソードと雰囲気が微妙に違うかもしれませんが、これまで同様に気に入っていただけたら嬉しいです。

さて、今回の主役は珍しくも……?
ついでにまたしても人間関係が中途半端にシャッフルされてたりして(^^



ハーメルン(マスチモ版)・オリジナル・エピソード
第09話 ”悪徳商人(シャムロック)”


 

 

 

 

 

彼は”守銭奴”だと人は言う。

だがそれは本当に彼の本質と言えるのだろうか?

おそらく、彼を愛した少女”達”は、それを笑顔で否定するだろう。

 

 

 

<配点:商人の皮を被った……>

 

 

 

 

 

**************************************

 

 

 

オリオトライ・真喜子、別名”ベルセルク・アマゾネス”はとにかく強い。

その強さは実際、本当に【種族:人間】なのか疑わしくなるレベルだ。

まあ薫陶を授けたのがミツ……かつて”とある大剣豪”の襲名者なのだから当然と言えば当然なのかもしれない。

 

だが、そんな彼女が今度は薫陶を”授ける側”になった場合はどうなるか?

その答えは梅組が示してくれていた。

 

 

 

時系列は、ミトツダイラが”品川”にアンカーをぶち込む前まで遡る。

 

「もっと派手に金を使え~~~っ!!」

 

上機嫌で街を駆け抜けるのは”冷面(レーメン)”のアーバンネームをもつ「銭ゲバ夫婦の夫のほう」こと”シロジロ・ベルトーニ”だ。

彼はる商業の神【稲荷系サンクト】と契約しており、奉納や神々との間のやり取りに金銭を用いることができた。

ぶっちゃけ『契約を仲介し術式などなどを”商材”として金銭で売買できる』という能力だ。

 

この能力に加え、均整の取れた長身で金髪碧眼、おまけに文句なく二枚目の顔立ちという世のヤローから怨嗟の声の集中砲火を浴びそうなキャラだが、そうならずに”外道の一員”という分類でカテゴライズされているのは、偏にその残念な性格ゆえだった。

まあ一言で言えばHNの通り自他共に認める”守銭奴”だ。

彼の言動はそれを根幹とすることも多いのだが、本質的に言えば少し違うようだ。

 

『シロジロ、景気は上々のようですね?』

 

唐突に開いた通神の相手はホライゾンだった。

 

「ああ。教師オリオトライを倒すため、皆が景気良く金をばらまいてくれるからな」

 

そう愉快という感情を隠そうともしないシロジロだ。

少なくともこの時点ではっきりしたことがある。彼は常時鉄火面でもなくポーカーフェイスでもない。見た感じどちらかと言えば表情豊かだ。どちらかと言えば彼のアーバンネームたる”冷面”はむしろ通神の向こう側に居る『一見すると感情が欠落したような』印象を受けるホライゾンの方が似合う気もする。

では、彼のアーバンネームの由来とはなんであろう?

 

『ですがシロジロ、お金を儲けることは否定しませんが溜め込むことが貴方の本懐ですか?』

 

「……何が言いたい?」

 

『動かぬ金はただの死に金です。経済とは金銭の流動があり初めて意味を成すもの。ただ金を溜め込むのが、貴方の商人としての在り方ですか?』

 

”ぞくり……”

 

その時、シロジロが全てを見透かすようなホライゾンの冷たい視線に感じたのは、明確な歓喜だった。

 

(嗚呼、これだからこの女に仕えるのは……)

 

「やめられんな」

 

『? 何がです?』

 

しかしシロジロはホライゾンに明確な答えを返すわけではなく、

 

「大したことじゃない。そうだな……確かに死に金を溜め込むのは商人として美徳に満ちた行為とは言いかねるな」

 

『では、いかがします?』

 

するとこんどはその通神に割り込む形でもう一つの表示枠(サインフレーム)が浮かび上がり、

 

『私も久しぶりにシロくんのちょっといいとこ見てみたいかも♪』

 

そう微笑むのは長い金髪がよく映える優しげだけどふわふわした感じの少女だった。

このどこかとらえどころのないけど間違いなく美少女の分類に入る彼女は、名を”ハイディ・オーゲザヴァラー”という。

 

「フン……まあいいだろう」

 

つまらなさそうに鼻を鳴らすシロジロだが、その口元には微かにだがはっきりと笑みが浮かんでいた。

 

「安い挑発だが、あえて今は乗ってやろう。私の実力を見せることによって商品の宣伝/販促に繋がるのなら悪い取引ではない」

そして彼は金銭を奉納し自らに術式をかける。

 

「術式ライブラリより仮面術式”雷光男爵(ライトニング・バロン)”を選択、展開……!!」

 

その時、シロジロに明確な変化が訪れる。

そう彼の鼻から上を覆うような無機的でシャープなデザインの【純白のフェイス・マスク】が顔に巻きつくように出現したのだ!

そう、実は”この世界”におけるシロジロのアーバン・ネーム”冷面”の由来は無表情であることではなく、彼の得意とするこの仮面術式にこそあった。

つまり生の表情ではなく『”無機質な仮面=表情を隠す冷たい面”で能力を底上げする男』であるからこその”冷面”なのである。

 

 

 

彼は金銭奉納により得た仮面の力を憑依させることにより己の力とし、【自らの適性や特性】を瞬時に切り替えることが出来る。

無論、奉納する金額によって召還するグレードは変わってくるが、当然グレードが上がるほどその効果は高い。

実際、ここ”雷光男爵”の上位マスクには”雷光伯爵(ライトニング・カウント)”なるものも存在するといわれているが、噂によれば伯爵は男爵の『単純な上位互換』ではないらしいが……

 

「創作術式”時は金也”!」

 

”ヒュゴッ!”

 

その術式展開の瞬間、シロジロの身体は常識外れのスピードで加速する!

 

 

 

***

 

 

 

「マルガ、マルゴット、援護する」

 

驚くべき加速度でトップスピードに達したシロジロは、ついに白黒の魔女(テクノ・ヘクセン)が弾幕射撃を浴びせかけてるためにジグザグ走行を余儀なくされ、幾分進撃速度を落としたオリオトライの横、正確には屋根伝いに併走する場所に躍り出たのだった。

 

創作術式”時は金也”は『時が金ならば逆もまた然り。等式が成り立つなら金は時になりうる』という発想で練りこまれた時間操作系の術式だった。

もっとも本当に時間が金で買えるわけではなく、シロジロは”体感時間”を操作し、相対的な時間感覚を圧縮/加速させたのだった。

今回、シロジロは金銭奉納により加速30倍……『1秒を30秒と感じるまで』時間感覚を引き伸ばしたのだ。

肉体もその感覚に引っ張られるために必然的に加速されるが加速した感覚に比べるとやはり相対的に鈍くなるのでシロジロに言わせると『ゲル化した空気の中を泳ぐような負荷』を感じるらしい。

またその際にかかる肉体的過負荷や疲労はやはり金銭奉納によって自動的に禊れるよう設定しているため、出費は小さくない。

 

「Wow! ”シーちゃん”やっるうっ~♪」

 

「へぇー。”守銭奴”が金に糸目をつけない術式発動なんて珍しいじゃない?」

 

素直び感嘆するマルゴット・ナイトと軽く驚くマルガ・ナルゼ。

しかしシロジロは仮面に隠れて表情こそわからないがクールな声で、

 

「何を言っている? 守銭奴であることは全面肯定するが、私は金を溜め込むのが快楽なのではない。むしろ盛大に使うのが趣味であり快楽だ。貯めるのはその快楽を味わうための手段に過ぎん。金は使われるものではない使うものだ」

 

『金を主とするのでなく常に金の主たれ』……シロジロ・ベルトーニとはそういう男なのだ。

 

「例えば、このように……なっ!」

 

”シャコン!”

 

シロジロの着こんだ制服の上着、その極東特有の長い袖口から硬貨を纏めた棒金が左右の手の平に飛び出し……

 

「創作術式”盗人に追い銭”!」

 

”ビュバッ!”

 

左右の親指で同時に硬貨を弾き飛ばす!

そのモーションは一般には”指弾”、銭を使うので変則的な羅漢銭とも言えるか?という暗器(隠し武器)の技能なのだが、シロジロのそれは一味違う。

もともとシロジロは金持ちであるが故に強盗や物取りにに襲われる機会は一般人より遥かに多い。

しかし、彼はボディガードを雇うことを『金の無駄』と切り捨て、四六時中護身用の武器を持ち歩くことを『エレガントではない』という理由でよしとしない。

そこで行き着いたのが彼にとって最も身近で硬質なアイテムである硬貨を武器として使う武術だった。

 

『金を武器にするとはいかにも商人らしい良い技だ』

 

とシロジロはその武術を知ったとき絶賛したという。

実際、彼はこの硬貨指弾に加え、『手首のスナップを生かして手裏剣のように水平に硬貨を投射』する”本来の羅漢銭”も習得していた。

ちなみに指弾は打撃力、羅漢銭は手裏剣と同じく刺突力が主な威力となるので使い道が少し異なるため、シロジロは使い分けているようだ。

それだけでは飽き足らずシロジロはこれら暗器投射術に加えて硬貨を触媒とした『硬貨の価値に応じた威力や様々な特性を付与させる術式群』を相乗させることに成功した。

シロジロが標準的なパチンコ玉のような金属球ではなく空気抵抗の大きな硬貨をわざわざ”弾丸”としているのは、この一連の”金銭価値比例型付与術式”があるからだった。

 

既にお気づきかも知れないが、術式の構成は大幅に違っても効果はマルゴットの攻撃術式に極めて近い。

そのせいだろうか?

シロジロにとりマルゴットはこと術式においては最大のお得意さまで、またマルゴットの発注で術式開発を請け負ったり、また二人で共同開発した術式もいくつもあるらしい。

そういう関係だから、シロジロとマルゴットは平行世界とは全く異なる意味で相性も仲も極めて良好なようだ。

どのくらい良好かと言えば、ハイディが思わずヤキモチを妬きまくるくらいのレベルらしい。蛇足ながらナルゼに向けるそれとは別種ながらMAXの好感度を隠そうともせずにハイディの目の前でも平然とべたべたするマルゴットほどではにないにしても、マルゴットとの絡みでシロジロとナルゼの関係も良好だ。

もしかしてナルゼは異性は排除すべきライバルなどではなく、”別腹”扱いなのだろうか?

そんな四人である故に、武蔵の掲示板によれば『こんがらがった四角関係(笑)』と揶揄するむきもあるようだ。

 

 

 

それはともかく……

術式付与により硬貨金額を速度と威力に変換した硬貨は、本物の弾丸と見紛うような勢いでオリオトライに迫る。

まるでその一連の動作は某”超電磁砲”やら某”竜宮神社の鉄砲巫女”を彷彿させるが……

 

「ナイトの弾幕を隠れ蓑に死角から高速硬貨弾を放つなんて、中々味な真似をするじゃない?と言いたいとこだけどまだ……甘い♪」

 

”ギインッ!”

 

オリオトライはマルゴットの硬貨弾幕を回避しながらシロジロの放った指弾硬貨ニ発を振り向きもしないで抜刀と同時に切り払うという離れ業を、呼吸するように平然とやってのけた。

だが、相手はあのホライゾンの残像踏み込みから真空斬撃をかわすどころかカタパルトに使うような女だ。

この程度で驚いていたら梅組の一因としてやっていけないだろう。

 

「そうでなくてはな。だからこそ”金の力”の力と意味を示す価値がある」

 

一本の棒金に纏められてる十円硬貨(キャスト・ブレット)は100枚。

十円硬貨にしたためられてる威力などたかが知れてると思われるだろうが、本来ならこれで十分なのだ。

単純な価値からいうと21世紀のアメリカなら対人用としてはメジャーな9mmパラベラム弾はノーブランドのバーゲンセール品なら500発1箱2000円程度で入手できる。

つまり1発当たり4円だ。シロジロの術式で価値変換を行えば、単純な威力だけで換算すれば『1発辺り10円の弾丸と同じ威力』を十円硬貨に持たせることができた。

 

(だが、威力は一枚辺り五円分に限定……)

 

威力をあえて半分にする辺り、何か考えがありそうだが……

 

「教えてやろう。私が百枚つづりの十円棒金を両手に持つということは、百連発弾倉(マガジン)付の二丁拳銃に等しいことを」

 

するとオリオトライはニヤリと笑い、

 

「教師に教えを説くとは中々に挑戦的じゃない?」

 

「なに。今日こそ教師オリオトライの不敗伝説を終わらせる気があるだけだ。君主がそれを望むなら、その望みを叶えるのが良き臣下というものであろう?」

 

オリオトライは愉快さを隠そうともしない表情で、

 

「へぇ~♪ アンタがそこまでホライゾンに入れ込んでるなんて先生知らなかったわ♪ ”冷面”なんてアーバンネーム付けられてクールなふりをしてるけど、本性の熱血が顔を覗かせてるわよ?」

 

例え生徒であろうとしっかりと挑発し返すことを忘れないあたりも、オリオトライがオリオトライである所以だろう。

 

「やかましい……!」

 

シロジロは不本意という言葉を顔に浮かべるような表情で十円硬貨指弾を三点分射(トリプル・バースト)で放ちながら、

 

「マルゴット、マルガ、合わせろ……!!」

 

「りょおか~い♪ ナイちゃん、シーちゃんのお妾(めかけ)さんの面目がつぶれないように頑張っちゃうんだから♪ でも、その時はご褒美おねだりしてもいいよね? ね?」

 

「いいわよ。三人で安宿でなくて滅多に泊まれない高級旅籠(ホテル)ね。料金はもちろんシロジロ持ちよ?」

 

「心得た!」

 

『ちょっとシロくん!? わたし、そんなの絶対に了承できないよ!? というかマルゴット=シロくんの妾(めかけ)なんて図式まだ認めてないんだからねっ!』

 

割り込むハイディの通神もなんのその。

二人の魔女と一人の商人の皮を被った”戦士”は、オリオトライを打倒すべく彼女を軸にするような急速旋回に入った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
魔改造され、『商人であると同時に戦士でもある』シロジロの活躍は如何だったでしょうか?
ちなみに仮面術式”ライトニング・バロン”の元ネタは中の人つながりで、某機動戦士シリーズの”W”の名敵役のあの方です(^^

マルゴット→シロジロの想いは『ガッちゃんは恋人。シーちゃんは愛人だよぉ~♪』

ナルゼ→シロジロのスタンスは、『まっ、不本意だけど愛人のふりくらいはしてあげるわ』
って感じでしょうか?
シロジロ、水橋パルスィあたりに刺されねぇかなぁ……
いずれにせよ、ハイディは原作以上に苦労しそうですが、彼女もまた原作とは違う意味で只者じゃないような?

ともあれ今回よりマスチモ版オリジナル展開、皆様のご意見ご感想を是非是非お待ちしております!


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