あなざー ~もしも夜見山北中学3年3組に「現象」がなかったら~   作:天木武

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 格安の海での小旅行から1週間が経った。海の次は山、今日からは2泊3日のクラス合宿だ。が、山とはいえこの街の名前にもなっている夜見山はそこまで標高が高いわけでもない。ハイキングや散歩気分で十分登れてしまう高さである。祖母が話してくれたことだが、若い頃はよく祖父と一緒に登ったことがあるらしい。街が一望できて、特に夕方時は綺麗だと教えてくれた。

 今回久保寺先生がメインイベントに「清掃」として据えた対象である夜見山神社は中腹にあり、距離としてはさらに短い。2日目はまず山頂まで登って昼食、それから帰り足に夜見山神社を清掃して宿泊場所まで戻るというスケジュールだ。まあ思い出作りとして登山、というかハイキングというのは悪くない試みではあるだろう。

 

 宿泊場所の咲谷記念館はその夜見山の麓にある。そこまでは各自で移動、ということだった。その宿泊場所に到着し、外観を眺めて僕は思わずため息をこぼす。見るからに古い。0号館といい勝負が出来るんじゃないかと思ってしまう。

 だが実のところここの情報は多少仕入れてはいた。まだ学校が夏休みになる前、例によって見崎と共に第2図書室に行った時の事だった。クラス合宿があることを見崎が千曳先生に告げると「またやるのか」という反応と共に、色々と話してくれた。なんでも、久保寺先生は3年のクラスを受け持つと決まってこの「合宿」をやるのだそうだ。思い出作りと神社の清掃という名目らしい。過去に既に2度ほど行われている、と千曳先生は教えてくれた。加えて咲谷記念館も、元は地元の企業の保養所だったのだが、後に夜見山北中学校に寄贈されたものらしい。その時の事業主か寄付主かである、咲谷なんとかさんの苗字からとっているのだとか。年数的に結構古い、というのはその時に聞いた情報である。

 加えて部活動で合宿として使うこともある、ということだった。千曳先生が顧問である演劇部も下旬に合宿を予定しているそうだ。他にも運動部が基礎体力作りと言う名目で頂上まで数往復したり、文科系の部活も演劇部の他に吹奏楽部が個々の技量上昇を目指して少人数でアンサンブルするために使う、といったこともあるらしい。もっとも、一番大きな場所は食堂で次が2部屋ある多目的室という建物の造りのため、使用用途は大分限られてしまうのだそうだ。演劇部で合宿をする際も、基本的には多目的室2部屋に分かれて絡みの多い役同士での練習となり、仕上げとして全員で練習する時に食堂を数度借りる、という使い方をするらしい。その辺は元々保養所だったから仕方ない、とも千曳先生は付け加えてくれた。

 

 その情報を仕入れていてもこの外観の古さは、先ほどのような感想を十分に抱かせてくれる。前情報なしで感慨深げな声を上げるクラスメイトの目に、この建物はどう映っているのか少し興味が沸く。そのクラスメイトに関してだが、なんと欠席者なしの全員参加という「よくて6割かな」なんて僕の予想を完全に裏切る形となっていた。高校受験対策として夏期講習を受けているような人もいたようだが、この日程が土日に被せてあったために1日だけ休むことにしてきた、という人がほとんどだったようだ。

 

「そろそろ集合時間ですが……。どうやら皆さん揃ったようですね。嬉しい限りです。参加率100%というのは、実のところ予想していませんでしたからね」

 

 そしてそれは担任の久保寺先生も同じ考えだったらしい。僕達を眺めた後で、感慨深げにそう言った。

 

「ではまずは記念撮影といきましょう。この建物の名前の彫られた青銅板を中心に、うまく左右対称になるように……」

 

 言いつつ、久保寺先生は1番端へと立った。「咲谷記念館」と名の彫られた板は身長の低い人間がかがんでも十分に見える高さにある。そこに数人をかがませないとカメラに収まりきらないと判断しての配慮だろう。その先生の場所より内側に参加率100%の人々はどう並ぼうかとあれこれ相談しながら並んでいく。……いや、「参加率」でいうなら100%ではなかった。

 

「あの……三神先生、隣いいですか?」

 

 聞こえてきたのは望月の声だった。そう、その言葉の通り、学年副担任の三神先生も同行していた。一応表向きは久保寺先生が声をかけたことになっているが、多分望月も部活の時辺りに誘ったのだろう。つまり参加率は100%を超えている、と言ってしまっていいわけである。そしてさらにもう1人。

 

「両先生方、もう少し中央に寄っていただかないと入らないですね」

 

 カメラのファインダーを覗きながらそう言っているのは千曳先生だった。こちらも久保寺先生に声をかけられた……と思いきや、なんと先生が合宿をする際は同行させてもらっているらしい。道理で過去の合宿の話に関して詳しいわけだ……。

 

「恒一君、隣いいわよね?」

 

 そんなことを考えていると聞こえてきた声に僕は声の主に目を移す。僕の右手側には赤沢さん、その隣に杉浦さんが見える。海でも一緒だった仲の良い2人か、と思っていたが、どうも赤沢さんの視線が僕を通り越してその奥に行っている気がする。振り返るといつの間にかそこに立っていたのは見崎。これには思わず僕も驚いた。

 

「……何?」

「いや、いつの間に、って思ってさ。ちょっとびっくりした」

「……フン、ちゃっかりしてるのね」

 

 右手側から小声でそんな言葉が聞こえてきた。どういう意味だろうかと彼女の方を振り返るが既に知らぬ顔で明後日の方を向いている。

 

「よっしゃ、んじゃ俺は赤沢の前、と……」

 

 そこで、そう言いながら勅使河原は中腰で彼女の前に入ってきた。それをご丁寧に彼女は一旦靴を脱いでから背中を足蹴。勅使河原はつんのめり、前に転びかける。

 

「いってえ! ひでえぞ赤沢、何すんだ! 服が汚れるだろ!」

「ちゃんと靴は脱いだわよ」

「あ、それなら……っていいわけねえだろ!」

 

 ついにこの男はノリツッコミまで会得したのか……。この打たれ強さにはまったく敬意を表したくなる。どうやら杉浦さんも同じ心境らしく、「……ほんと見上げた根性だわ」と彼女なりに褒めているようだった。

 そんな杉浦さんの奥には中尾君がいる。先週の海での一件があるからだろうか。さらによく見れば館の名称がある板の左右にはかがんで風見君と桜木さんがいる。クラス委員だから、中央にいるのは当たり前といえばそうなのだが、なんだか見事に先週の海での組み合わせになってるんだなと思ってしまうのだった。

 

「……これでギリギリか。それじゃ、撮るよ。皆笑って」

 

 普段通りあまり愛想のない様子で千曳先生はファインダーを覗き込みながらそう言った。そんな硬い声で笑えと言われましても、と突っ込みたい。それでも皆心なしか、表情はどこか穏やかなようだった。中学生最後の夏休み、そこでのクラスによる思い出作りだ。思うところは人それぞれだろう。それでもきっと先週の海と同じように楽しい思い出になるんだろうなと、僕はふと思ったのだった。

 

 

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 咲谷記念館自体は上から見るとコの字型になっている、2階建ての建物だ。まず入り口をくぐって内装を見て、改めてその年季を感じる。天井から立派なシャンデリアがぶら下がり、左右対称な造りの階段が形式美を生み出している……気がする。柱も傍から見ると立派で、年代を感じさせるものだと思った。

 

「これはこれは久保寺先生、よくいらっしゃいました。今年はまた大勢で……」

 

 そう言って出迎えたのはここに住み込みで働いているという沼田という老夫婦だった。今話しているのは妻の方で名は峯子というらしい。夫の謙作の方は見た感じ千曳先生以上に愛想がなさそうな雰囲気だった。そして今の口調から察するに、やはり先生はここを数度利用していて老夫婦と面識があるらしい。

 

「またお世話になります、沼田さん。毎度のことですが、今回もよろしくお願いします。……特に今年はそちらの身内も預かっている身ですから」

「ええ、まああまりそれで今年を特別だとは思ってませんが……。体のことだけは心配で。うちの郁夫(・・・・・)は元気にやってますかね?」

 

 その沼田妻、峯子の言葉にほぼ全員が「えっ」と驚いた風に郁夫と呼ばれた生徒――高林郁夫の方を振り返った。

 

「うちの、って……。高林、お前の親戚か何かか?」

 

 クラス中の皆が思っているであろう疑問を、真っ先に勅使河原が口にする。

 

「母方の祖父母なんだ。10年ぐらい前からかな、ここの管理を任されたって」

 

 ああそういうことか、と僕は納得した。だから久保寺先生は宿泊施設としてここを使う、と言った時に「高林君がこのクラスにいる」と付け加えたのはそれが理由だったのだろう。

 

「建物はこんなですけど、一応冷房は入ってますので各部屋で利用してください。あと、料理の方も期待してくれていいですよ。普段はうちの人だけなんですが、強力な助っ人が来てくださってるんで」

 

 ニコニコと笑顔を浮かべつつ、沼田妻は僕達を通り越した先に視線を送った。それがどこかばつが悪そうに視線を逸らした初老の人物に向けられたものだと気づき、またしても皆が驚いた反応を見せる。

 

「千曳先生には実のところこの合宿の度に協力してもらっているんですよ。料理の方も手伝っていただいて」

「まあ……。料理は私の数少ない趣味だからね。一昨日から先乗りさせてもらってソースなりなんなりを仕込ませてもらっている」

 

 これまた生徒の間で挙がる驚きの声。そりゃ驚くだろう、比較的面識のある僕でさえ初耳だ。と同時に「だからこの数日間の部活が顧問不在だったのね……」という赤沢さんの呟きも聞こえてきた。というか、数日前にから仕込み作業をしているとか、どんな本格的な料理だろう……。同じく料理を趣味としている僕としては非常に気になる。これで今後は話題に困ることもないような気もしてきた。

 

「では、今日は特に予定もありませんので、各自部屋に荷物を置いたら夕食まで自由とします。各々親睦を深めるなり、館内を見て回るなりするとよろしいでしょう。部屋割りはこれから渡しますしおりに乗せておきました。相部屋となりますが、仲が良い人と思われる人同士をこちらで勝手に組み合わせました。しかしもし不満があれば申し出てください。可能な限り対処します」

 

 しおりを受け取り部屋割りを確認する。僕の部屋は202号室、中央の階段を上って左側に奥ばった場所、望月と相部屋だった。他の人の組み合わせを見てみると風見君と勅使河原、赤沢さんと杉浦さん、綾野さんと小椋さん、松井さんと金木さんなど、非常にクラス内の事情を把握していると言っていい組み合わせに思えた。やはり久保寺先生、見ていないようでクラスのことよく見てるみたいだ。

 ちなみに見崎の部屋は223号室、僕のいる部屋と丁度対照的に反対側となる。桜木さんと同室らしい。しかしこの部屋割り、左右に男女を明確に分けてある。

 

「なお、見てわかるように男子は中央階段の左側、女子は右側とさせてもらいました。……もし男女を交互に、などとして互いの部屋の行き来をしやすくしたことで深夜に何か(・・)などということがあっては事です。日中、健全なお付き合いをしている限り私は口を出すつもりはありませんが、消灯時間後の夜中はやめてください。監督役である私が槍玉に挙がりますので。よろしいですか」

 

 これも先生なりのジョークだろうか。少々ブラックジョークな類ではないかと思える。事実笑っている人もいないわけではないが苦笑といった具合だ。

 

「それでは各自部屋に移動後、自由行動としてくださって結構です。一応貴重品は常に持ち歩くようにしてください。何かありましたら、1階の101号室に私が、102号室に千曳先生が、110号室に三神先生がいますので、そこまで連絡を」

 

 

 

 

 

 2人部屋ではあったが、宿泊部屋はなかなか豪奢な雰囲気だった。古臭い、という野暮ったさはなく、言うなれば「いかにも推理小説に出てきそうな洋館」と言ったところだろうか。2人1組の部屋の構造と相俟って、アリバイ工作云々を考える場合にはもってこいな造りじゃないかなとかふと思ったりした。

 

「榊原君はこの後どうするの?」

 

 部屋に荷物を置き、望月が尋ねてくる。特に何をしようとは考えていなかった。まあしかしせっかく雰囲気ある建物なんだし、ちょっと館内を歩いて回るのはいいかなと思う。

 

「適当に散歩かな。夕食はおいしそうだって話だし、それまでにお腹すかせておいたほうがいいだろうから」

「僕も歩き回ろうかなと思ってたんだけど……。部屋の鍵、どうしようか?」

「いるなら僕がかけておくよ。でも貴重品って言っても財布と携帯さえ持ってればあとは盗られるような物ないし、クラスの誰かがそんなことをするとも考えたくないし」

「なんていうか……榊原君っていい人っていうか、人がいいよね」

 

 ……そうだろうか? でもクラスメイトを疑うような真似はあまりしたくないし、したところで心地よいものでもない。実際財布と携帯以外で取られてそんな困るものは、少なくとも僕は持ってきていない。

 

「じゃあ鍵は任せるよ。僕も別に盗まれて困るようなものはないし。……じゃ先にその辺ぶらぶらしてるね」

 

 そう言って望月はいそいそと部屋を出て行く。その辺ぶらぶら、ね……。何はなくともまずは110号室に直行だろう、きっと。

 そんな呑気に他人のことを言っている場合ではないか、と僕も腰を上げた。とりあえずぶらぶらはしたい。が、どうせするなら見崎を誘ってしたかったりする。だが彼女は1人でいることを好むし、静かな場所が好きとかいう変わり者だ。もう既に1人になれる場所を見つけてそこに落ち着いていたりするんじゃないかという不安はある。……建物隅の階段とかに座ってそうだ。割と本気でイメージできる。しかし一方で桜木さんを風見君が連れ出しているなら、まだ部屋にいる可能性はあるわけだ。そっちに賭けてみようかと、館内の見取り図も乗っているしおりを手に、僕は部屋の入り口へと向かう。

 廊下には既に楽しそうな話し声やら、活気が溢れていた。そんな中を歩き、女子側の部屋の方に行く時に自然と大きな窓から裏庭が見えるわけだが、そこでは複数人でバドミントンをしてるらしい姿も見受けられた。どうやら運動部系の男子のようだ。まったく準備が良い。やけに荷物が多い人がいると思ったらそういうことだったのか。

 そんな中央部分を突っ切り、女子側の部屋の方へ。幸い、と言うべきか誰ともすれ違わなかったが、なんだか気まずさを覚えつつ、僕は直線の廊下を直角に曲がって右奥の見崎がいるはずの223号室の前に着いた。一度深呼吸をし、ドアをノックする。

 

「見崎? いる?」

 

 だが返事がない。再度ドアを叩いてみるがやはり反応なし。こりゃもうどこか行っちゃったかと諦めてため息をこぼし、場を離れようとしたその時。

 

「あれ、榊原君? もしかして見崎さん探してる?」

 

 ひとつ部屋をまたいで221号室から出てきたのは有田さんだった。学校では窓際の列で見崎の2つ前の席にいる彼女は明るい性格なので時々話したことはあるが、それほど親しいというわけでもない。そんなわけでなんだかそこで認めるのもばつが悪いというか恥ずかしいため、「まあ……ちょっと用事が……」とか言って言葉を濁すことにした。だがそんな僕の心の中などお見通しだと言わんばかりに彼女はニヤッとあまりよろしくない笑みを浮かべてから笑いを噛み殺したようだった。

 

「用事ね、どんな用事か聞いてもいいけど……。まあうちの部屋の柿沼さんもさっき辻井が来て連れ出したし、そこで見崎さんと相部屋の桜木さんもさっき風見が連れて行ったよ。一緒に館内散歩とか考えてるんでしょ?」

 

 ああ、男とはどうしてこうも短絡的で行動を読まれやすい生き物だろうか、などと考えてしまった。風見君は無事桜木さんを連れ出せたようでよかったな、と思う一方、あまり話したことはないが辻井君と柿沼さんというペアは耳にしたことがなかったので少し驚いた。だがよく考えてみれば2人とも本を読んでいることが多い気がする。そういう意味で気が合うのだろう。……そういえばさっき推理小説のトリックに云々とか自分で思ったんだった。もしもミステリ小説が好きなら、こういう場所は是非とも歩きたいものなのだろう。

 そんな他人のことは置いておくにしろ、まずは自分のことだ。どう答えるものかと僕が悩んでいると「わかったよ」と言いたげに有田さんは手をひらひらと振って見せた。

 

「いいや、聞くまい。そんな野暮なことは聞かないでおこう。……見崎さんなら佐藤と渡辺の部屋に入っていくのを見たよ」

「佐藤さんと渡辺さん……?」

 

 えっと確か……見崎と同じ列の窓際の2人だったはずだ。あまり話したことはない。が、見崎は席が近いわけだから、もしかしたら仲が良くて会いに行った、とかだろうか。でもあの見崎に限ってそれがあるとも思えない。

 

「218号室だよ。そこの角曲がって3部屋目ぐらいだったと思う」

 

 ありがとう、と感謝の言葉を述べて僕は言われた部屋へ向かう。コの字型に作られたこの建物の端部分から中央部分へ。角を曲がって3つめ、確かに有田さんの言ったとおりそこが218号室だった。しかしノックしていきなり「見崎いますか?」というのも変な話だし、さあどうしようかと僕が若干迷っていた時。その部屋の扉が空いた。

 

「……榊原君?」

 

 そして部屋から出てこようとした女子生徒が僕の苗字を呼ぶ。それは紛れもなく見崎だった。

 

「あれ、榊原君どうしたの?」

「……その質問する? 見崎さんのお迎えに決まってるじゃない」

 

 長身でポニーテールな佐藤さんの質問に、大人びた印象でおでこが出てる髪形の渡辺さんは茶化し気味に返した。……というか、「その質問する?」とか言っておきながら本人を前に結局あなた言っちゃってるじゃないですか、と突っ込みを入れたい。とりあえず、2人の話は流すことにした。

 

「……見崎、なんでこの部屋に?」

「ちょっと……用事があって」

「用事?」

「私にね。びっくりしちゃった」

 

 そう言ったのは見崎の前の席の佐藤さんではなく渡辺さんの方だった。これは意外、彼女の言葉ではないが僕もびっくりだ。

 

「渡辺さんに用事、って……」

「榊原君、その呼び方はちょっと失礼かも」

「え……? 呼び方? 失礼?」

 

 見崎が何を言っているのかわからず首を傾げる。ややあって「……あ、そういうことか」と何かを察したらしく渡辺さんが声を上げた。

 

「もしかして私の名前のこと言ってるのかな」

「名前?」

「私の名前って『(さん)』だから。『渡辺さん』って言うと、実はフルネームを呼ばれてるのと同じになっちゃうのよ」

 

 なるほど……。じゃあどう呼べばいいのだろう。「渡辺珊さん」だろうか? 長い。

 

「……やっぱ見崎さん変わってて面白いわね。珊にサインもらいに来たってのも意外だったし」

「サイン?」

 

 あれ、渡辺さん有名人だっけ……? 勅使河原は何も言わなかったはずだ。実はアイドル、なんて話なら間違いなく奴はそういう話をするような人間なのだが……。

 

「実はさ、私ちょっと学外でバンド組んでてベースやってるんだ。それで見崎さんがさっき部屋に来て急にそのことを言い出してサイン欲しい、って。全然有名なバンドじゃないんだけどね。びっくりしちゃった」

「へえ……。そうなんだ。僕音楽はあんまり詳しくないけど、どんな感じのバンドなの?」

 

 僕の問いに答えず、渡辺さんは困ったような表情を浮かべ、視線を同室の佐藤さんの方に流した。それを受けて彼女も苦笑を浮かべつつ、答えを放棄した当人に代わって教えてくれた。

 

「……デスメタル」

 

 思わず、僕は固まる。さっき言ったとおり音楽に詳しいわけではない。だがデスメタル、と聞いてそれが何かわからないほどでもない。要するに彼女は、その大人っぽい外見に似つかわしくなく、と言っては失礼かもしれないが、非常に過激な音楽を演奏するバンドのベース、ということらしい。凄まじく意外である。

 

「あーあ、榊原君にも引かれちゃったか」

 

 やれやれと言わんばかりにオーバーリアクションで渡辺さんはショックを受けた、とアピールしてみせる。まずい、引いたというより意外すぎて反応できなかった、というのが正しい。

 

「あ、いや引いたとかじゃなくて……」

「でも意外でしょ? この話すると皆に驚かれるんだよね。だからあまり無闇に口外しないようにしてたんだけど……。それをまさか見崎さんが知ってるとは、こっちが驚いちゃったよ」

 

 そう言うと渡辺さんは誤魔化すように笑いつつ、頬を掻いてみせた。確かに彼女がデスメタルのベース、というのも意外だが、それを見崎が知っていたことも意外だ。

 

「とにかく、見崎さんの用事済んだみたいだから、榊原君に返すね」

「いや、返すって……」

「2人で館内でも歩くんでしょ? いってらっしゃい」

 

 渡辺さんと、さらに間髪入れずに佐藤さんに雪崩式に畳み掛けられ、僕は返す気力も失ってしまった。もう見崎も「用事は終わった」とばかりに部屋から完全に出ているし、まあいいかと思うことにする。「じゃあどうも、失礼しました」と一応挨拶を述べ、見崎の方を振り返った。

 

「……書いてもらった色紙、部屋に置いて来たいから、館内を歩くのは部屋に戻ってからでもいい?」

「全然。……でも見崎よく渡辺さんのこと知ってたね。しかもサインまでもらうなんて……。ライブとか行ったの? ファン?」

「頼まれたの。未咲にね」

 

 ミサキって君じゃない、と言おうと思ったところで彼女が言うミサキにようやく思い当たった。

 

「ああ、藤岡さんか。……彼女そういう音楽聞くんだ」

「結構過激なの聞くみたい。それで中高生のバンドが集まって演奏したイベントがあったらしくて。それに行った時にかっこいいと思ったバンドが、渡辺さんが所属するところだったんだって。ちょっと話して同じクラスだって言ったらサインもらってきて、って」

「聞く曲も意外だけど、それ以上にミーハーだってことも意外だ……。それにしても藤岡さん病み上がりじゃないっけ? そんなイベントとかまた無茶するなあ……」

「リハビリとか適当な理由つけて行ったらしいよ。まあ体に何もなかったし、いいんじゃない? ずっと病室にこもりっぱなしで、あの子も発散したかっただろうから」

 

 そうか、と僕は見崎に言われて初めて気づいた。確かに体のこともあるが、彼女はずっと病院にいたのだ。自分と同じ年頃の、それも明るい性格の活発そうな少女だ、それは自由に遊びたかったのだろう。そのことを気づける辺り、やっぱり藤岡さんは見崎にとっての「半身」なんだな、と改めて思う。

 しかしそれはそうとして、1回行ったイベントで見たバンドの人が見崎と同じクラスだからサインもらってきてくれと頼むというのは……。やはりミーハーだなあと思う。

 

「ちょっとサイン見せてもらえる?」

 

 そして渡辺さんがどんなサインを書いたのかも興味を引かれた。プロじゃないんだろうからそんなすごいものでは無いのだろうと甘く見ていたのだが……。

 無言で見崎から差し出された色紙を見て驚いた。なんて書いてあるかわからないが、おそらく英語で書かれたであろうバンド名と彼女の名前があるのはわかった。しかしこの字体を崩して書いている辺り、なんだがプロが書いたような、はっきり言ってかっこいい。これは絶対サインの練習しているだろう……。その下の方に「ミサキさんへ」と、ここだけ字体を崩さずに書かれていた。

 見崎が足を止める。気づけば彼女の部屋である223号室の前だった。

 

「すぐ戻ってくるから、ちょっと待ってて」

 

 そう言って彼女は手を差し出した。あ、と気づいて僕は色紙を渡す。それを受け取って部屋の中に入り、彼女は言葉通りすぐに出てきた。

 

「お待たせ。……それで、館内を歩くの?」

「まあ……珍しいからね。あまりこういうところ来たことないし。見崎がよければ、だけど……」

「……そうね。こういう雰囲気の建物は嫌いじゃないし悪くないかも、ね」

 

 よかった、どうやら一緒に歩いてくれそうだ。とはいえ、この建物はあくまで元々保養所だったのだから、見て回るようなところはそんなにないかもしれないが。

 そんな僕の考えなど知ったことではない、と見崎は「行きましょ」と先を歩き始める。一応誘ったのは僕なんだけど……。というか、

 

「見崎、鍵いいの?」

 

 と、疑問が僕の口を次いで出た。まあ言ってる自分もかけてはいないのだが、女子の場合もう少しセキュリティに気を遣ったほうが良いような気もする。

 

「いいの。桜木さんも別にいいって言ってたし」

 

 無用心な気がしないでもないが……。まあ本人達が良いと言っているのだし言及しないでおこう。

 

「それで、どう歩くの?」

「2階は全部客室だろうから……。あ、多目的室があるのか」

 

 手に持ったしおりに目を落としつつ、僕はそう呟いた。丁度角部屋の比較的広いスペースが多目的室となっていて、2階の左右に1つずつ存在している。ここからならすぐ目と鼻の先だ。

 

「鍵かかってたよ。使うときは許可がいるんじゃないかな」

 

 が、既に見崎が調べていたらしい。すぐそこなので実際歩いてノブを回してみるが、やはり閉まっている。

 

「ほんとに閉まってるね。じゃああまり見るところないかな」

「中央階段の反対側にバルコニーがあったかも」

 

 しおりを再度眺めて、確かにバルコニーという文字を確認した。さすが「こういう雰囲気の建物は嫌いじゃない」というだけあってよく見ているようだ。とりあえずそこを目指してみよう。

 来た道を引き返す形で角を曲がる。女子の部屋が並ぶ客室の扉を左手に廊下を進み、フロント部分に出る。バルコニーを見ようとしたが、その手前、置いてあるソファーに金木さんと松井さんが座って話している様子が目に入ってきた。この2人本当に仲がいいな……。でも確か同室だったはずだから、ここで話さなくても、と思ってしまう。

 ともあれバルコニーはどんなかな、と視線を移し、そこに行くのは無理だということを悟った。バルコニーには既に先客がいる。風見君と桜木さんだった。……彼は先週一緒に海に行ってからなんだか吹っ切れたような気がする。もしかすると桜木さんと一緒だった帰りの車で何かあったのかもしれないけど……。それを知ってるとしたら勅使河原だろう。が、僕が聞いたとなるとやぶ蛇になりかねない。まあ僕としては「頑張れ少年」と応援するしかないわけだ。

 

「バルコニー、先客がいるみたいだから先に1階を見て回らない?」

「……なんで?」

 

 なんで、と来た。彼女からも2人がいるのは見えているはずだ。もっとも、その辺り気を遣うということが出来ないというかわからなそうなのが見崎と言ってしまえばそれまでではあるが。

 

「今風見君と桜木さんがいるじゃない。邪魔しちゃ無粋だと思うけど」

 

 ふうん、とだけ彼女は答えた。やはり、というか理解しきっているわけではない様子だ。

 

「……まあいいよ。榊原君に任せる」

 

 それは助かるよ、と僕は肩をすくめた。そして見崎と2人、並んでフロントの中央階段を降りる。こういう大階段を降りていると、なんだかおとぎ話の類のお城の立派な階段を降りているような感覚を覚えるな、なんて思ってしまう。しかも傍らには見崎。シチュエーションとしてはありなのかな、とか邪な考えも浮かんできてしまった。……いかん、こんな浮ついているところを勅使河原にでも見られたらそれこそからかわれかねない。せめて表情が緩まないようにだけは気をつけておこう。

 階段を降り、まずは左手側へ。広い間隔で扉が2つある部屋だが、しおりによると食堂らしい。まだ食事の時間には早いが、中の様子を見てみたいとノブに手をかける。しかしどうやらまだ鍵がかかっているようだった。残念。

 

「ここは?」

「食堂だって。でも鍵がかかってるみたい」

「蹴破ったりしないの?」

 

 そこでそんなことを言い出した見崎に思わずため息がこぼれる。もしやったとしたら僕は怒られることになるじゃないか。非常時ならまだしも、今はそういう時ではないだろう。が、諦めて先に行こうとする僕と対照的に、彼女はまだ鍵穴をじっと覗いてその場から動こうとしなかった。

 

「そこは夕食の時に入れるから、その時に見ればいいんじゃない?」

「……榊原君、ヘアピンとか持ってない? 開けられる気がする」

 

 再び、僕は深くため息をこぼした。まったくこの子は普段どんな漫画を読んでるのか、それともドラマを見てるのか。その場を離れようとしない見崎に痺れを切らせ、僕は腕を掴んで引き摺るようにそこから連れ出すことにした。

 

「だから夕食の時に見ればいいじゃない」

「……つまんない」

 

 不満そうな見崎の声が聞こえたが、ここは流させてもらう。しおりによるとその隣が厨房。ここは覗くわけにはいかないだろう。作業の邪魔をしては悪い。が、それを知らない見崎は当たり前とばかりに僕に尋ねてきた。

 

「ここはいいの?」

「ここは厨房だって。入ると邪魔になるから」

「でも料理をする身としては気になるんじゃないの?」

「そりゃなるけど……。でも邪魔しちゃ悪いよ。もし入るなら、後で千曳先生辺りに了解を取ってからかな」

 

 僕としては至極真っ当な言い分を述べたつもりだった。しかし見崎はやはりご不満らしく、相変わらず面白くなさそうな表情で「つまんない」と再び呟いた。

 

「そう言わないで。……って、ここが非常口、あとそこの角を曲がったら客室と非常階段があるだけか……」

 

 これでは見崎じゃなくても「つまんない」という感想が出てきてしまうだろう。結局こっち側は見るところがなかったということになる。非常口は鍵の部分にカバーが付いているのを見ると本当に非常時以外は開けないほうがいいだろう。そう思いつつ非常扉に近づいた時。その角の右手奥、階段があるはずのところから男女1組の生徒が現れたのが見えた。そこでまだ見崎の腕を掴んだままだったと気づき、慌てて離す。

 

「あ……。や、やあ、榊原君」

 

 戸惑った様子で声をかけてきたのは僕とあまり面識のない辻井君だった。その後ろには眼鏡に三つ編みのいかにも文学少女、という佇まいの柿沼さんがいたのだが、らしくなくなにやらメモ帳のような物に何かを書き込みながら辺りを真剣に見渡している。よく見ると2人とも眼鏡のコンビ、それにそういえば読書仲間だったか、さっきの有田さんの話と合わせて思い出した。

 

「榊原君も館内探検?」

「まあ……。そんなところかな。辻井君も?」

「うん、こっちもそんなところなんだけど……」

「……そこの非常扉は、開けられない?」

 

 不意に、僕達の会話に柿沼さんが割り込んできた。あまりに急だったので一瞬戸惑ったが、すぐ「ああ、うん」と返事を返す。

 

「鍵のところにカバーがかかってるから、本当に非常以外は開けないほうがよさそう」

「そう。……しおりによるとそこは裏庭の手前に繋がってるわけだから……。まあいいか」

 

 そんな風に言いつつも、彼女は非常扉のドアノブに手をかけ、やはり開かないことを確認してからその扉を触ってみたり叩いてみたりしている。

 

「……何してるの?」

「彼女、こういう古い建物に非常に関心があるらしくて、テンション上がっちゃったみたいでさ。いいネタが思いつきそうってちょっと一緒に歩くことになったんだ。まあ僕も興味あるし」

 

 熱心にメモを取る柿沼さんの代わりに辻井君が答えてくれた。

 

「ネタ、って……。ミステリとか? 書くの?」

「僕も彼女も、趣味でちょっとね。ちなみにミステリは僕の担当。確かにこういう推理小説にもってこいな建物は興味深いよ。ただ彼女の担当はどっちかっていうと……ホラーかな」

「ホラー!?」

 

 それは非常に意外だ。彼女は文学とか史書とかそういう類を読むものだと、あってもせいぜいミステリーだろう、と勝手に思い込んでいた。……ああ、ホラー好きなら1人いい人(・・・)を思い出した。今度紹介しようかな。

 

「……この分厚い鉄の扉をいとも容易くこじ開けるなり引き裂くなりして侵入してくる怪人とか、想像しただけで面白いと思わない?」

 

 コンコンと扉を叩きながら柿沼さんはそう言った。それは……。ちょっと興味を引かれるかも……。だが今の発言はいかにも文学少女という風貌の彼女からのギャップが凄まじい。そしてそれに同意してしまうとまた誰かさんに「やっぱりホラー少年だ」とか言われそうなので、あまり考えないようにした。

 

「あとは厨房と食堂……。多分覗くのは無理だよね」

「食堂は鍵がかかってたよ。厨房は確認しなかったけど、作業の邪魔しちゃ悪いから……」

「ありがと。じゃあ一通り回った、と。……辻井君、207号室だよね? 部屋行っていい?」

「へ!? な、なんで……」

「私の部屋、ベランダがないの。ある部屋を見ておきたい」

 

 そういうことか、と辻井君は呟きながらため息をこぼして柿沼さんの懇願を受諾した。しかし今のため息は……安堵なのか失望なのかはちょっと興味をそそられる。

 

「じゃあ今来た階段から戻ろう」

 

 一方的にそうまとめ、彼女は僕達に背を向けた。辻井君も「まあそういうことで……」と困った様子で彼女に続く。それにしてもメモまで取るとは、柿沼さんは随分とこの建物に執着のご様子だ。

 

「……変わってるね」

 

 そして2人が見えなくなってからポツリと呟かれた見崎の感想に一旦同意しかけて、いやそれを君が言うかと思いなおした。しかし言っている事はごもっともだ。さすが「変わり者の多い3年3組」と呼ばれるだけの事はある。

 

「それで、2人の後を追って階段上がる?」

「反対側も見てからがいいかな。自販機、ってあるし、飲み物のラインナップと価格は調べてみたいかな」

「……榊原君も十分変わってる」

 

 それ以上に変わってる君に言われたくないよ、と心の中で返した。それに自販機のところには「談話スペース」なる記述がある。多分2階にあったようなソファが置いてあるだけだろうが、この建物で客室と食堂以外で変わってそうな場所と言ったらそこと2階のバルコニーぐらいなものだろう。まあもともと保養所だったわけだから仕方がないといえばそうだが。

 あまり期待はできないな、と思いつつ僕達は来た道を引き返して1階の反対側へと向かうことにした。

 




誰得モブ回。
今回名前を出したクラスメイトは佐藤さん以外は全員原作アニメの合宿に参加してます。公式にあるような座席表を見てもらうと名前と顔一致すると思いますが、合宿時の特徴をちょっと紹介。若干ネタバレあるかも。
・有田松子……キャミソール着てた女子。これで名前の読みが「しょうこ」。
・佐藤和江……合宿不参加。長身ポニーテール、見崎の前の席。
・渡辺珊……最後逃げようとしてシャンデリアの下敷きになった人。でも助かったらしい。ちなみにデスメタルのベースは驚愕の公式設定。CVの明坂聡美さんにデスヴォイスで1曲お願いしたいところ。
・金木杏子、松井亜紀……廊下側の席の百合カップル。先に刺されたのが金木、助けを求めてきたところで刺されたのが松井。
・辻井雪人……モップ持ってた人。その後シャンデリアの下敷きになるが逃げ延びた。
・柿沼小百合……渡辺、辻井同様にシャンデリアの下敷きになりつつ生き残った人。三つ編み眼鏡。CV南條愛乃さんをもう少し有効活用してもらいたかった。

それから挿絵機能を使って館内見取り図を載せてみました。制作時間ペイントで2時間ぐらい、公式設定資料集から多少いじってあります。
客室の設定に「ユニットバス」という表記があったので、いわゆるトイレ・洗面台・風呂の三点ユニットが各部屋についているものと考えました。そのためにトイレもっと少なくていいだろうと考え、公式設定では2階でトイレになっている部分を削って多目的室に変えてあります。その方が施設として使いやすそうですし。
また、自販機の脇を談話スペースとし、非常階段扱いの両端の階段を普通の階段としてあります。

ついでに参加人数を変えたことで部屋割りをアニメから大きく変更してあります。蛇足的ですが一応設定としては以下の通りを考えました。見取り図に乗せる余裕なかったのでここに。

101:久保寺 102:千曳 110:三神
202:榊原・望月(部屋まで含めてアニメ版以外の原作通り、アニメだと恒一1人部屋で望月が203) 205:王子・猿田(アニメ版通り) 206:前島・川掘(アニメ版通り) 207:水野・辻井(座席前後、仲良さそう) 208:中尾・米村(座席前後) 210:高林・和久井(持病持ちコンビ) 212:勅使河原・風見(腐れ縁)
213:赤沢・杉浦(言わずもがな) 215:綾野・小椋(演劇部コンビ) 216:金木・松井(アニメ版通り) 218:佐藤・渡辺(席近い、仲良さそう) 219:中島・多々良(原作セリフなしコンビ、仲良さそう) 220:江藤・藤巻(運動部繋がり) 221:有田・柿沼(アニメ版通り) 223:見崎・桜木(部屋はアニメと同じ、組み合わせは半ば消去法的に)

以上、本編以上に完全に誰得な長い後書きとなってしまってすみません。

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