【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第十話~短い再会~

 事の始まりは、数時間前まで遡る。

 その時、電脳探偵としての一歩を踏み出したアミは、山科悠子という少女からの依頼を受けた。依頼内容は、父を探して欲しいというもので、杏子のバックアップの下、アミは調査を開始。

 EDENアカウント内の個人情報の線から居場所を突き止めようとするも、彼のアカウントは何者かに奪われていた。

 アカウント狩り。最近、EDEN内部で発生している、ハッカーたちによる悪質な事件である。悠子の父を探すためにも、アミはまずそのアカウントを奪い返すことにして、その犯人を追い始め――そして、追い詰めた、のだが。

 

「よこせぇぇえええ!」

「こんなことになるなんて……!」

 

 アミの前にいるのは、深紅の魔竜。

 アミが、リーダー格の男にアカウント狩りを止めて奪ったアカウントを返すように言った瞬間、この竜は現れた。それはまるで、駄々をこねる子供のような雰囲気で、話し合いが通じるような雰囲気ではない。

 

「こうなったら仕方ない! みんなっ!」

 

 あまり望むべくではないが、こうなった時、アミにできることは一つだけだった。

 アミの掛け声と共に、勢いよく現れたのは、三匹のデジモン。

 

「イキマス」

 

 歯車のごとき身体が特徴の機械のような、ハグルモンというデジモンと。

 

「わかったよ~!」

 

 大きな耳が特徴のぬいぐるみのような、テリアモンというデジモンと。

 

「任せてっ!」

 

 そして、頭の大きな花が特徴の植物のような、パルモンというデジモンだった。

 それぞれが勢いよく現れて、守るかのようにアミの前に立つ。その目はやる気に満ち溢れていて、まさに気合十分といった感じだった。

 

「よこせぇぇぇぇぇ!」

「っ! みんな避けてっ!」

 

 深紅の魔竜が、咆哮を上げて駆ける。

 三匹のデジモンは、それぞれバラバラに動くことでそれを躱した。傍から見れば、蜘蛛の子が散らされたかのような光景。だが、()()()()()()()()という意味で、この躱し方は上手かった。

 そう。今、深紅の魔竜は、迷っている。四方に散った相手、そのどれを狙うべきか。迷いは隙を生む。戦いにおいて、その隙は致命的なものだ。

 

「今だよ!」

 

 アミの声が、響く。

 その声を前に、まるで示し合わせたかのようにデジモンたちは動いた。

 

「コチラデス!」

「よこ……っ!?」

 

 深紅の魔竜を、ハグルモンがかく乱する。

 その隙に他の二体のデジモンたちが動く。

 

「“ポイズンアイビー”!」

 

 パルモンが、その手の爪を蔦のように伸ばした。それは、パルモンの必殺技。

 伸びていったソレは、寸分違わずに深紅の魔竜に絡みつく。もちろん、深紅の魔竜もただ無抵抗でいる訳ではない。彼は力の限りで、その蔦を引き裂く――が、そんな彼は自分の身体に違和感を感じた。身体がうまく動かない、そんな違和感を。

 

「アタシのが効いてる! 今よっ!」

 

 それは、パルモンの“ポイズンアイビー”という技に麻痺毒の追加効果があるからだった。

 とはいえ、深紅の魔竜は、パルモンより格上。そのせいで麻痺毒も、せいぜい動きを鈍くする程度の効果しかない。

 だが、それでも十分だった。

 

「“ブレイジングファイア”!」

 

 生まれた一瞬の隙。そこを、最大限に生かす。

 テリアモンが口から吐き出したのは、高熱の熱気弾。テリアモンの必殺技であるソレは、単純な威力という面で、現状の面々の中では最大火力を誇る。

 それが、深紅の魔竜に直撃する。ズンっ、と。大きな音を立てて、深紅の魔竜は倒れる。

 

「ぶい~!」

「やったわね!」

「やった!」

 

 作戦はこれ以上なくうまくいった。

 倒れた深紅の魔竜を前に、アミたちの喜ぶような声が、辺りに満ちて――。

 

「イイエ……マダデス」

 

 ――そんな中で、ハグルモンだけが、険しい顔で現実を見ていた。

 そんなハグルモンの声に、アミたちが答えるよりもずっと早く。

 

「よくもぉおおおおおお! 黙ってよこせぇええええ! “エキゾーストフレイム”ゥ!」

 

 爆音と共に放たれた炎が、アミたちを襲った。

 アミたちは、間一髪でそれを躱す。ハグルモンの声がなければ危なかっただろう。彼が冷静に相手を観察してくれていたからこそ、アミたちは助かったのだ。

 

「痛い……痛いぃいい! よこせぇぇぇええ……お前ら持っているきらきらしたの……よこせぇぇぇ!」

 

 起き上がった深紅の魔竜は、身体中に僅かな火傷を負っていた。

 先ほどの攻撃すべてが全く効いていない訳ではない。そのことを理解したアミは、指示を出す。もう一度、連携攻撃で攻める、と。

 

「わかったわ! “ポイズンアイビー”!」

 

 まずは深紅の魔竜に隙を作るために、再度、パルモンが必殺技を放つ。

 だが――。

 

「うがぁぁぁぁあ! “プラズマブレイド”ォ!」

 

 ――だが、深紅の魔竜の方が上手だった。

 パチパチと帯電するかのような音が辺りに響く。それは、プラズマの発生を告げる音。発生したプラズマが宿るのは、深紅の魔竜の両肘に生えている天然のブレードで。

 

「えっ!?」

 

 思わず、パルモンは我が目を疑った。

 深紅の魔竜が、その肘のブレードを使って、“ポイズンアイビー”を自分の身体に届く前に、すべて切り落としていったのだ。これでは、麻痺毒の効果は望めない。

 

「っ。まずい! “ブレイジングファイア”!」

「今度ハ、ワタシモヤリマス。“ダークネスギア”」

 

 焦ったテリアモンも、必殺技を放つ。それに合わせるように、ハグルモンも必殺技を放った。

 放たれた高温の熱気弾と黒い歯車が、真紅の魔竜めがけて飛んで行き――。

 

「邪魔だぁぁぁあああ!」

 

 ――そのすべてを、深紅の魔竜は叩き切った。

 自分たちの技が通じないその事実に、彼らは一瞬だけ動きを止めてしまって――それは、致命的な隙だった。先ほど、彼らが深紅の魔竜の隙を狙ったように、深紅の魔竜もまたその隙を狙う。

 ただし、深紅の魔竜が彼らと違うのは、()()()()()()()()()()()()()()()()という部分だろうか。

 

「お前のアカウント……よこせぇぇぇえええ!」

「アミちゃん!」

「アミ~!」

「マスター!」

 

 デジモンたちの鬼気迫る声が、アミの耳に届く。が、その時には、もうアミの目の前に深紅の魔竜は迫っていた。

 迫り来る脅威。すべてがスローモーションに見える中で、アミは気づいた。

 

「アミ!」

 

 聞き慣れた――それでいて、全く聞いたことのないような声が聞こえたことに。

 一瞬の後に来たる、()()()()衝撃。

 

「……え?」

 

 そこで、アミは気づく。自分が何者かに抱かれ、助けられたことに。

 そして、アミは見る。自分を助けてくれた、少年のようなデジモンの姿を。

 

 

 

 

 

 時は少しだけ遡る。

 深紅の魔竜と戦い始めたアミたち。そんなアミたちを、来人は陰ながら見守っていた。

 

「……なんか、すっげぇことになってるんだけど!? 何アイツ、いつの間にあんなことになってるんだ!?」

『ふむ。デジモンたちが懐き、自ら協力する人間か。あの娘は良い者なのだな』

 

 そう言ったカミサマの声色は、どこか面白そうな、どこか嬉しそうなものだった。

 そんなカミサマの言葉に、来人も機嫌良くなる。幼馴染のことを褒められて、悪い気はしないのだ。

 

「っは。だろ? アイツはいつもそうなんだよ。いつだって、事の中心で、誰かの中心にいる……スゲェやつだよ」

『そこは“誰か”ではなく……()()の、と言うべきではないのか?』

「う、うるせぇ!」

 

 からかわれている。そのことに気づきながらも、来人はどうすることもできなかった。せいぜい、反抗しするかのように言葉を吐き捨てることくらいだ。

 

「やっぱり、心配なかったかな……」

 

 ポツリ、とそんなことを呟く来人。そう呟く彼の表情は複雑そうだった。

 もちろん、無事に終わるは良いことで、それに越したことはない。のだが、彼はここにいる自分の必要性すらもなくなりそうな気がして、寂しい気がしたのだ。

 

『いや、貴様があの娘のことを思うのならば、行った方がいいだろう』

「え?」

『あの娘が連れている者たちはすべて成長期。対して、あの深紅の魔竜はグラウモンと呼ばれる成熟期だ。勝てないとは言わんが、相応の代償がかかるだろうな』

 

 見ろと言わんばかりのカミサマの言葉に、来人は視線をアミの方向へと向ける。

 そこには、先ほどまでとは一転して追い詰められていくアミたちの姿があって――。

 

「アミ!」

 

 ――そんな彼女たちの姿を見た瞬間に、来人は駆け出した。

 

『やれやれ』

 

 呆れた気配のカミサマすら置き去りに、来人は走る。普通の人間ならば、アミを助けることはできなかっただろう。だが、幸か不幸か、今の来人は人間ではない。

 アイギオモンという種の身体。その人間離れした力が、来人の思いを叶える。

 

「……え?」

 

 アミの呆けたような声が、来人の耳に届く。

 グラウモンがアミの下にたどり着くよりも早く、来人はアミを助け出すことができたのだ。

 

「あ、ありがと……えっと……誰?」

 

 再度、自身が助かったことに気づいたアミが声を挙げる。

 それは、この場の誰もに共通した思いだった。グラウモンですら、いきなり現れた来人に驚愕して、動きを止めていたのだ。

 自分に視線が集中している。それは、自分の言葉を待っているから。

 そのことを来人は理解して――。

 

「……別に。通りすがっただけの、ただのカミサマだ」

 

 ――テンパった来人は、阿呆なことを言った。

 まあ、ギリギリ本当のことではあるが、それが正しいかといえば否である。

 

『阿呆が……』

 

 カミサマの呆れた声が、空間に響く。

 いきなりの第三者の声に、誰もが首を傾げて――その声が向けられた当の阿呆(来人)は、数秒前の自分を殴りたくなった。もう少しまともなことは言えなかったのか、と。

 

「は? カミサマ……?」

 

 呆然と呟いたのは、アミではなく、グラウモンだ。その肩は、何かを耐えているかのようにプルプルと震えている。

 あ、これまずい。そんなことを、来人は思った。

 

「ふざけてんじゃねぇよぉおおおおお! 邪魔するなぁぁぁああ!」

 

 そして、来人の想像通りに、グラウモンは激昂する。

 その目には、もはや来人しか写ってなかった。アミもアミのデジモンたちも無視して、グラウモンは来人に迫る。

 

『まぁ、これが目的だったのだから、ある意味で目的通りか。頑張りたまえ』

「頑張りたまえってっ! 何かないのかよ! ほら、必殺技のやり方とか!」

 

 怒ってるのかと問いたくなるくらいの丸投げなカミサマに、来人は思わず叫んだ。が、現実はどこまでも無情でしかない。

 

『自分で見つけろ』

「いきなりスパルタすぎるだろ!」

『まあ、わめくのはいいが……来てるぞ』

 

 カミサマが答えをくれることもなければ、敵が待ってくれることもなかった。

 来人の下に迫り来るグラウモンの距離は、もはや近すぎる。今の来人にはどうすることもできない距離だ。さらに言えば、その肘のブレードはプラズマで光っている。

 これでは一瞬後に、来人の身体はスプラッタなことになってしまうだろう。

 だが、天はまだ彼を見捨ててはいなかった。

 

「パルモン!」

「“ポイズンアイビー”!」

 

 その瞬間に、来人の耳に聞こえたのは、幼馴染の声と誰かの声。

 直後、一瞬だけグラウモンの動きが遅くなった。

 

「サンキュー! なんだかわからないけど……チャンスだ!」

 

 正確な何かはわからなかったが、来人の勘が言っていた。これは、幼馴染が作ってくれた千載一遇のチャンスだと。助けに来たつもりが、助けられてしまったのだと。

 そんな幼馴染の努力を逃すことは、来人はしたくなかった。

 その一瞬後の話だ。来人は腕に力を貯める。力の限り、腕を振り抜く。その拳は、グラウモンの腹に直撃して――。

 

「はっ! “○○○○○○○○○”!」

「ガァッ!?」

 

 直後、精一杯な来人に反応するかのように、バチバチッという音が辺りに響いた。

 その一撃が効いたのだろう。ズゥウンっという轟音を立てて、グラウモンは倒れる。

 

「すごい……!」

「は……?」

 

 感嘆したような声を挙げるアミとは対照的に、来人は何が起きたかわからなかった――のだが、そんな彼にも、自分のすべきことだけはわかっていた。

 

「……さらばっ!」

「えっ!? ちょっと!」

 

 自分の正体を知られたくなかった来人は、アミが驚く前で逃げ出した。

 ちなみに、逃げ出した彼は隠密行動をするのを忘れており、何人ものハッカーたちに追われることとなったのだが、それはほんの余談である。

 




どうも。
イマイチなあらすじをどうにかしたいと思ってる作者です。
あらすじ書くの、苦手なんですよね……はぁ。
ともあれ、第十話でした。
ちなみに、来人のアミに会いたくない理由は、だんだんと明らかになっていく予定です。

さて、次回。
ついにあの聖騎士(予定)の二匹が登場する話です。

それでは次回もよろしくお願いします。
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