【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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今日は二話同時投稿しています。
ですので、前話をご覧になっていない方はそちらからよろしくお願いします。


第百五話~獅子は流星をその目に拝む~

「我が力のひと雫を奪った程度で調子に乗るな! 今や我は本来の力を取り戻している! 未だ本来の力に及ばぬ貴様は敵ではないわ!」

 

 ドゥフトモン:レオパルドモードは駆ける。その素早さはロイヤルナイツ最速の面々ほどには及ばずとも、かなりのものを誇っていた。

 

「貴様はここで終わる! ……いや、貴様の伝説はここで終わらせるのだ!」

 

 ドゥフトモンの目に映るのはアルファモンのみ。

 ドゥフトモンは知っていたのだ。この場で最も警戒しなければならないのは、アルファモンだということを。アルファモンの持つその能力こそ、使わせてはならないものなのだということを。

 

「……! これは!」

 

 ドゥフトモンのしようとしていることに気がついて、アルファモンは僅かに目を見開いた。

 

「ぶっ、ルァアアアアアアアアアアア!」

 

 ドゥフトモンが咆哮する。その瞬間、紫電が辺り一帯に走った。

 この場の全員が思わずその防御態勢をとる――が、紫電はこの場の面々の身体をすり抜けた。予想に反する無ダメージに、この場の全員が疑問を表情に出した。

 一体どういうことなのか。先ほどの攻撃は何なのか。そんなこの場の全員に共通する疑問に対する答えを持っていたのは、仕掛けた当人であるドゥフトモンと――()()()()()()アルファモンだけだった。

 

「これで貴様の能力は無価値だ!」

「……さすがはロイヤルナイツ随一の策略家と言うべきか。まさか私の力を見てもいないのに封じるとは」

「く。ロードナイトモンを倒した貴様の存在は掴んでいた。そして、似たような力を持つ者は他にもいる。伝承に照らし合わせ、貴様のデータの波長から読み取れば、かような対策など容易よ」

 

 アルファモンは僅かに驚いた。ドゥフトモンが見たことすらない自らの能力に対する対抗策を打ち出してきたことに。

 そう、今のアルファモンは自らの最大にして最強の能力を使用できなくなっていたのだ。使用すれば勝敗を決することができるほどに強力な能力で、以前にロードナイトモン相手に使ったあの能力である。

 ドゥフトモンはアルファモンの伝承から能力の危険性を察知し、封じたのだ。

 

「最大の力を封じるのは戦の常套手段よ。卑怯とは言うまいな?」

「いや、言わないよ。私の能力を封じたのは見事だ。とはいえ、私も一つ言わせてもらおう。戦の常套手段ならば、“我々”も心得ている」

「何――!?」

 

 アルファモンがそう言った瞬間のことだった。

 ドゥフトモンは自らに迫り来る気配を前に、回避を選択する。一瞬前まで彼がいたところに、拳と剣が振り下ろされる。

 

「っく!」

 

 それぞれ来人とオメガモンが攻撃である。

 完璧な不意打ちだったというのに、失敗した。その失敗に、来人は小さく舌打ちする。一方で、オメガモンは失敗も視野に入れていたために、淡々としていた。

 

「数は戦の常套手段だ。そうだろう?」

「ぬぅ……! このドゥフトモンは烏合の衆などに負けはせぬわ!」

 

 ドゥフトモンの吐き出した言葉は、ともすれば苦し紛れの言葉のようでもあったが、本気の言葉でもあった。いや、どちらも本当だった。

 ドゥフトモンは知っているのだ。自分の力を疑い、その疑いを口に出すような弱き者こそ、戦場では負けるのだ、と。

 

「みんな!」

「疲れているところごめんなさい、行ってください!」

「久しぶりの出番だぜ、インフェルモン。放ったらかして悪かっけど、頼んだぜ!」

 

 アミたち人間組が叫ぶ。

 瞬間、彼女たちのデジモンたちが飛び出し、ドゥフトモンに向かった。

 ドゥフトモンはそれらを躱し、防ぎ、時には返し――冷静に対応する。だが、内心で舌打ちしたかった。アミたちのデジモンたちのレベルを測る。自分たちレベルではないが、無視できるレベルでもない。倒すのには面倒かもしれないが、逆に言えばそれだけの者たち。

 だが、そんな面倒な者たちが、今のドゥフトモンにとって何よりも厄介だった。

 後方に回転するという回避行動をとりながら、ドゥフトモンはガイオウモンを蹴り飛ばす。苦悶の声を上げたガイオウモンを一瞥し、彼は向かい来る他のデジモンたちに目を向け、その瞬間に気づく。

 

「ふっ!」

「はぁっ!」

 

 蹴られた勢いのままに吹っ飛んでいくガイオウモンの影から、オメガモンと来人が来ていることに。

 

「ぬぅ!」

 

 直後、ドゥフトモンは他のデジモンたちに対する意識のすべてをオメガモンたちに向ける。その際、いくらか攻撃をくらってしまったが、それは必要経費として割り切った。

 彼にとって最も注意しなければならないのは、アルファモンやオメガモン、ユピテルモンといった自分と同格存在なのだから。

 もっとも、今の来人は未だ完全体状態。だが、いつ進化するともわからないからこそ、逆に気を抜けるはずもなかった。完全体だからと気を抜いて接近を許し、その瞬間に進化されれば手痛い一撃を喰らうことになるのだから。

 

「くらえっ!」

「おらぁっ!」

 

 オメガモンのグレイソードによる一撃を、ドゥフトモンはその手の爪で受け止める。来人の右拳による一撃は、その尾で振り払った。

 

「っく……ならば! “ガルルキャノン”!」

 

 攻撃の失敗にを前に退避しながらも、オメガモンは右腕の砲からドゥフトモンを狙い撃つ。

 閃光が走り、轟音が響く。

 

「っく……!」

 

 一瞬後には、ドゥフトモンの後ろ足の翼は片方が失われていた。

 躱しきれなかったという事実に、ドゥフトモンは苦い顔をする。が、すぐに彼は気を取り直した。気を取り直さざるを得なかった。

 彼の視界に入っていたのだ。漆黒の聖騎士が白銀に輝く聖剣を構えたその姿が――。

 

「ハァっ!」

 

 ――アルファモンの一撃がドゥフトモンに炸裂する。

 ドゥフトモンはかろうじてそれを躱した。後ろ足の残った側の翼を引き換えにして。

 

「……ぬぅ。さすがに数が多すぎる、か」

 

 苦い顔するものの、全くの絶望がないドゥフトモンのその表情に、来人は嫌な予感を覚えた。

 

「仕方あるまい。もう少し仕掛けるつもりだったが、そうも言っていられぬか……!」

 

 瞬間、バチバチッという雷が帯電したような音が辺りに響く。

 それは唐突な出来事だった。まるであらかじめそうであったかのように、いくつものソレが辺り一帯にいきなり現れる。球状のエネルギー――それはまるで機雷のようですらあった。いや、まるで、ではないか。それは機雷だ。触れただけで爆発する高密度のエネルギーの塊。

 それがいきなり出現した。先ほどまでの劣勢を利用し、ドゥフトモンはコレを気づかれないように辺り一帯に仕掛けていたのである。

 

『これだけの数を我らに気づかれないように設置するとは……!』

 

 カミサマの驚愕したような声が辺りに響く。

 辺り一帯に張り巡らされ機雷を前にして、誰もが下手に動けなかった。少しでも動けば、その機雷の餌食となる――それがわかったから。

 

「ふん。我の策略に嵌っていることにも気づかないとはな! “エア――」

 

 だが、そんなことはドゥフトモンには関係がないこと。

 自らが設置した機雷だからこそ、自らには干渉しないというのか。機雷の影響を受けずに、ドゥフトモンは安全地帯まで移動する。

 

「――オーベルング”!」

 

 瞬間、機雷が連鎖的に爆発する。

 この新都庁ビルの屋上を吹き飛ばして余りあるほどの巨大な爆発が、辺り一帯を吹き飛ばす。その直前、アミたちは自らを庇うように動いたデジモンたちを見た――。

 

「ふん。戦の常套手段を弁えているだと? 遅かな。常套手段とはこういうことを言う。弱い者から狙うのが当然。弱者と群れているからそうなるのだ」

 

 ――爆発による煙で視界が遮られる中で、アミたちはドゥフトモンの嘲りの声を聞いた。

 どうなっているのか。嫌な予感だけがアミたちを襲う。爆発という面に対する攻撃を受けながら、自分たちが無事であるということは、それ相応の庇われ方をしたのだ。アミたちにはそれだけがわかった。

 一瞬か、数秒か。煙が晴れるまでの時間が、アミたちには酷く長く感じられた。そして、風が吹いて煙が晴れ、アミたちは目にした。

 

「ぜぇっ……はぁっ……!」

「……!」

「ぐっ!」

「がぁ……!」

 

 自分たちを庇ったのだろう、傷だらけのデジモンたちの姿を。

 ユピテルモンに進化した来人――カミサマも、アルファモンも、オメガモンも、その他のアミたちのデジモンたち全員も。誰もが一律して傷だらけとなっていて、見るに耐えない姿だった。

 

「みんな……!」

「やはりあの爆発から人間どもを庇ったか。愚かな選択をしたな」

 

 ドゥフトモンは彼らの咄嗟の行動を理解していた。

 あの一瞬で自分たちが傷つくのも構わずにアミたちの下へと向かい、自らの技をもって爆発を相殺することで爆発に僅かな空白を生み出す。その空白にアミたちを捩じ込み、襲い来る衝撃は自分たちの身体でもって防ぐ。

 ドゥフトモンはたった一瞬でそれだけのことを成した彼らに感嘆しながらも、勝負は決まったとばかりに笑みを浮かべた。

 

「これで終わりだ……!」

 

 再び、ドゥフトモンは機雷を発生させる。この狭い空間では自らの他の必殺技が効果的ではないが故の、技の選択だった。

 

『カミサマ、行けるか?』

「無論だ!」

 

 だが、その選択が明暗を分ける。

 来人たちは仕掛けた。賭けに出る。僅かな確率に勝利を捻じ込む。

 

「ぬっ!?」

()たちを――」

 

 一瞬だ。体力的限界や怪我の具合も相まってほんの一瞬だけだが、その一瞬だけラースモードになる。

 見たことも聞いたこともないユピテルモンの姿に、ドゥフトモンは僅かに瞠目する。が、それで止まるドゥフトモンではなかった。機雷が辺り一帯に発生する。

 一瞬後、機雷が爆発となって炸裂――。

 

「舐めるな!」

 

 ――する直前に、すべての機雷はユピテルモンによって爆発ごと斬り飛ばされた。

 瞬間、ユピテルモンは通常体へと戻る。

 

「なっ!?」

 

 だが、自らの技が容易く破られたという事実に、ドゥフトモンは今度こそ言葉を失った。

 生まれた一瞬の隙。その隙に怪我の痛みを押して動くのは、アルファモンとオメガモンだ。

 

「オリンポスの主神の別の姿とは……驚くことばかりだな!」

「全くだ!」

 

 振り抜かれたふた振りの聖剣を前に、ドゥフトモンは回避する。

 回避しながら、機雷を一つだけ生成し、設置する。たった一つだけならば、彼らに致命傷は与えられない。だが、瞬間的に生成できる数には限りがあるからこそ、仕方がなかった。

 準備が出来次第、ドゥフトモンは機雷を即座に爆発させ、目くらましとする。

 

「これで――」

 

 時間は稼げた。再び大技を放つだけ。

 そう思って、動き出したドゥフトモンはそこでようやく気づいた。

 

「終わりだな」

「終わりデス」

「終わりだよ~!」

「終わりね」

 

 自らを狙う者たちの存在に。

 技を使ってオメガモンたちの追撃を躱した今のドゥフトモンに、彼らの攻撃すべてを完璧に躱すことなどできはしない。

 

「“ラピッドファイア”!」

「“ゲヴァルトシュベルマー”」

「“フライバレット”!」

 

 放たれた弾丸が、ドゥフトモンを貫く。

 ドゥフトモンは何とか耐えた。耐えることができた。そして――。

 

「“ローゼスレイピア”!」

「ぐぅっ!」

 

 ――そこを鞭による刺突に襲われた。

 濃厚になった敗北の可能性に慄きながら、ドゥフトモンは勝つ可能性を模索する。模索して――その時点で、あるいは勝敗は決していたのかもしれない。

 それは彼が作戦を立て終えたのと同時だった。

 

「頼むぜ。“あん時”みたいに思いっきり、全力でな! いっけぇぇえええ!」

 

 響いたのは、アラタの声。

 感じた悪寒と気配を前に、ドゥフトモンが振り向く。

 

「おらぁっ!」

「ケケケッ!」

 

 そこには手足を収納して繭の状態となったインフェルモンをその手に掴み、振りかぶったメギドラモンがいて――。

 

「なっ――!」

 

 ――直後、投擲。

 高速を超えて飛んできたインフェルモンをその顔面に受けて、ドゥフトモンは地に沈んだ。

 




というわけで、第百五話。

分割した結果の同時投稿。
ドゥフトモン戦も決着です。決め手は顔面投擲。
MVPはロイヤルナイツの攻撃の中、地味に生き残っていたインフェルモンです。

さて、次回。
ドゥフトモン戦も終わったところで、いよいよラストが近づいてきましたね。
次回も繋ぎの話なのに、やたらと長いので分割して二話同時投稿します。

それでは次回もよろしくお願いします。
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