【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第十二話~人気なミュージシャンの素顔~

 来人を不意打ちした罰が当たったというのだろうか。謎の不意打ちによって、ブラックテイルモンは倒された。

 この場の誰もが息を飲み、乱入して来た者たちを見る。この場に乱入して来たのは、三匹のデジモンと赤髪の少女二人。

 デジモンの方も、少女たちの方も、来人にはとても見覚えがある――というか、アミとノキアだった。

 

「大丈夫……?」

「……大丈夫だ」

 

 先ほどまでボコボコにされていた来人だ。二人して駆け寄ってきて心配するのは当然。

 それに、そうやって心配してくれるのも、正直に言えば、来人にとっても嬉しいことだった。が、近づいてきて顔を覗き込んでくるのは止めて欲しかった。

 

「でも、顔赤いよ?」

「大丈夫だ!」

 

 理由はアレだ。いろいろな意味で恥ずかしいからだ。好きな少女に顔を近づけられていることも、今の傷だらけのみっともない姿を見られていることも。

 恥ずかしさとプライドの狭間で、来人がぶっきらぼうな返事をしてしまったのも無理はないことだろう。

 

「っていうか、なんでお前らここにいるんだよ」

「私はノキアの頼みでアグモンたちを探してたんだ」

「って、そだ! あのコたち! 助けてくれたんでしょ! あんがとっ!」

「あのコたち……? ああ、そういうことか」

 

 見れば、ノキアの隣にはアグモンたちがいる。戦闘が始まった時点で、アミたちの姿を見つけた彼らは、来人を助けるために彼女たちを呼んでくれたのだろう。

 そんな彼らの姿と彼女たちの言葉に、来人は大まかな事情を察した。

 事の始まりに、おそらくノキアがアミに頼んだのだろう。アグモンたちを一緒に探してくれ、と。アミはいつも通りに二つ返事でそのお願いを聞き入れ、そしてアグモンを探してこの場に来て――そこでボロボロにされていた来人を見つけたわけだ。

 

「お前、なんでもかんでも二つ返事で頼みごと聞くのやめろよ……」

「……? それ、どういう……?」

「……何でもない」

 

 まあ、実際は、暮海探偵事務所を通したれっきとした依頼なわけだが、そんなことをこの電脳空間から逃れられない来人が知っているはずもなかった。

 

「な、なななな何っすか! お前ら!」

「マジうぜぇな……! いきなりやってきて、邪魔しやがってェ!」

 

 いきなりの乱入、そして不意打ち。

 ハッカーたち二人は、そんな卑怯に憤りを覚えていた。一見すると至極真っ当な感性に見えるが、その根底にあるのは、自分たちの思い通りに事が運ばれなかったという、単なる自己中心的な感情だ。

 とはいえ、どれほど怒りに震えていようと、彼らにはもうどうすることもできない。彼らのデジモンたちは、遠くで気を失っているのだから。

 

「べーっだ!」

「おい、ノキア。相手の神経を逆なでするな」

「もっとやんないと気がすまな……って、なんであたしの名前知ってんの?」

「あ……!」

 

 しまった、と。来人は自分の迂闊を呪った。人間としての来人とノキアはともかく、アイギオモンとしての来人とノキアは初対面だ。自己紹介をしてもいないのに、名前を知っているのは不自然というレベルではない。

 ジーッと見つめてくるノキアを前にして、来人は冷や汗をかきながら、誤魔化す方法を探す。いつもならばこういう時に頼りになるカミサマは、空気を読んだのか声を発しなかった。

 空気なんて読まなくていいから、何とかしてくれ。そう思った来人である。

 

『やれやれ……隠す気があるのかないのか』

 

 そして、この場の全員に聞こえる呆れたようなカミサマの声。だが、そんなカミサマの声は、さらなる衝撃によってかき消された。

 

「ノンノンノン。ノンノンノンノン……YOUたち、ノンロックゥ」

 

 そう。その声と共に、デスメタルなどでよく見るような化粧と格好をした男が、新たにこの場に現れたのだ。

 

「この声は……! ジミケンさん!」

「え……? ジミケンってあの、“ジミケン”……? ジミィKEN、略してジミケン!? え? マジでジミケン? どうやってもジミケン?」

「落ち着けよ。ノ……いや、うん」

 

 現れた男の姿を見て、何やらノキアは叫んでいる。どうやら、彼について知っているようだ。一方で、アミは顔に疑問を浮かべていて、どうやら、彼が誰かも知らないらしい。

 そんな二人を見てから、来人もまじまじと男を見つめる。デスメタルなどに興味を持たない来人にとっては、ジミケンと呼ばれた彼の姿など、奇妙の一言に尽きる。あれだけ奇天烈な姿の男など、早々忘れないだろう。それでも思い当たることはないのだから、やはり来人の結論は知らないだった。

 

「イエ~~~ス! アイアムゥ~~~! ジミィ・ケン! イヤァッフゥウウウ~~~~!」

『ピエモンのような者が来たな。人間ではああいうのが流行ってるのか?』

「ピエモンとやらは知らんけど……とりあえず、流行ってない。アレで人間を測らないで欲しい」

 

 何と言うか、テンションが高い。その奇妙な風貌も相まって、来人はついていけなかった。いや、来人だけではないか。先ほどのハッカーたちを除いたこの場の全員が、ジミケンの登場から流れる雰囲気についていけてなかった。

 とはいえ、当のジミケンには、この場の空気など関係ないようで。

 

「おいおいおい、OiOiOiOiOi! オマエら、イケてないね。そのザマ。マジでイケてないわ! どんなやられ方したら、そんなことになる~? ア~ハ~?」

「えっと……! 不意打ちで……!」

「そうっす! このバカ女どもの不意打ちさえなけりゃ……!」

「ワオ! 言い訳www全然ロックじゃないわ~!」

 

 おそらく説教と思われるものを、ハッカーたちに向かってしていた。

 まあ、ロックがどうだのこうだの、独特な感性によって構築される話し方ゆえに、外野の来人たちにはさっぱり理解できなかったのだが。

 

『……人間が皆、あのような話し方をする存在でなくて、本当に良かったと心から思うぞ』

 

 そんな、カミサマの心の底からの呟きが来人の耳に残って――来人はジミケンのような格好で、ジミケンのような口調で話す自分やアミの姿を想像してみた。三秒で記憶から消去した。

 なぜか、ノキアやアラタの方は容易に想像できたりしたのだが――やはり、付き合いが長いかどうかの差なのかもしれない。

 

「なぁ、ジミケンって誰だ? 知ってんだろ?」

「あ、悪魔的シンガーとして有名な人だよ。謎が謎を呼ぶ熱狂的なファンも多いって、くらい……な、ん、だ、けど……」

 

 だんだんと自信がなくなったのか、声が小さく途切れ途切れになっていくノキア。

 

「ノキアはジミケンのファンなんでしょ? なんで顔を知らないの?」

 

 そんなノキアに味方はいなかった。思い出したかのように告げたこのアミの言葉によって、この場の全員のノキアを見る目が変わった。

 

「えぇっ! ノキアはあんなのが好きなのか!?」

「えぇ……」

『変わった趣味だな』

「ま、まぁ、趣味は人それぞれだし……な? だよな? ……うん」

 

 カミサマも来人もアグモンもガブモンも、全員がノキアから距離をとって――。

 

「ちょ、待っ! 違うんだってばー!」

 

 ――散々に弁明の言葉を紡ぐノキアだった。

 いつの間にか公開独特説教モドキは終ったのだろう。現実逃避を重ねる来人たちに向かって、ジミケンが声を挙げる。

 

「っていうか、おいおいお~い? さっきからオレ様たちを無視するアンタら~そう! ザ・フールたち! ウケるんですけどwww」

「は?」

「何デジモンとなかよしこよしで交流してるわけwwwwwwほんっとウケるwwwアレですか~? もしかしてアンタら、ペットは大事な家族なんですとか言っちゃう系? 一人になった途端にペットに話しかけちゃう寂しい系人種?」

「……何言ってんだ?」

「AIで世界を救いたい系っつか? 古www古すぎて逆に新しいわロックだわwww未だいるけどさ~マジ絶滅危惧種っていうか~?」

 

 来人たち全員、ジミケンの言っていることはよくわからなった。いや、わかりたくなかったと言うべきかもしれない。

 これがわかるのは、きっと彼と同じ感性を共有するものだけだ。来人たちは、自分たちがジミケンと同類でないことに安堵した。安堵して――次いで、彼らが感じたのは、それぞれ違った。

 

「うわ……こんなやつにバイト代絞られたとか……マジ死にたくなる……伝わる? このフィーリング?」

「の、ノキアしっかりして!」

「気を確かに持って! 伝染ってるよ!」

 

 知りたくなかった事実に、ノキアは正気を失いかけていて、アグモンとガブモンの二人が彼女を助けようと必死になっていた。

 

「ふざけないで……! 生き物をそんな軽く扱うなんて……!」

「全くだよ!」

「アタシたちのことをなんだと思ってるの!」

「ナルホド、コレガ怒リトイウ感情デスネ!」

 

 アミは、自分と共にいるデジモンたちと共にそんな彼の身勝手な言い分に純粋な怒りを覚えていた。

 そして、来人とカミサマは――。

 

『なるほど。それが貴様の答えか。人間』

「貴様の答えが人間の総意だとは思わん。思いたくもない」

『同じ人間として、俺もお前みたいな奴は嫌悪する』

 

 ――怒っていた。

 カミサマと来人、どちらがどちらの言葉を話しているのかすら曖昧になっていく。

 アミたちと同じように、そして彼女たちとは違って、彼らは怒っていた。同じであるのに、どこか決定的に違う怒り。それが呼ぶのは、不穏なまでの空気だ。

 ゆらり、と。まるで幽鬼のようにゆっくりとジミケンに向かい合った来人。そこには、いつもの彼の姿はなかった。

 

「君! ちょっと待ってよ!」

 

 そんな彼の姿に不吉なものを感じたのだろう。先ほどまで抱いていた怒りも忘れて、アミは来人に声をかけた――のだが、遅かった。

 アミが何かを言う前に、それを遮るようにしてジミケンが声を挙げたのだ。

 

「ワオ~www躾のなってないデジモンマジウケるwwwいいぜぇ! やっちゃうかァ! カモン! マイデジモンズ!」

 

 空気が変わったことに気づいているのか、気づいていないのか。

 面白そうに笑いながら、ジミケンは炎の化身のようなデジモン二体と悪魔のようなデジモン一体を呼んだ。それぞれメラモンとデビモンと言われるデジモンで、成熟期のデジモンだ。

 状況だけ見れば、今の来人は同格相手に一対三という、無謀どころではない状況だった。それでも、来人は恐れない。いや、恐れる必要などなかった。

 意思は胸に、力はそこにあったのだから。愚か者に天罰を下す、神の力が。

 

「覚悟しろ。貴様のその業に相応しい天罰を下す。死を見て、生を乞いろ!」

 

 一瞬後、呆気にとられる全員の前に現れたのは――黒だった。

 




どうも。これが投稿される時は、遠い地に足を踏み入れているだろう自分です。
夜行バスはキツイ……。

ともあれ、第十二話。

ジミケンの登場回でした。
……ジミケンって、フェイと岸部リエと並んで口調とキャラが掴みにくくて苦労します。
ジミケンっぽく見えるか不安ですね……。

ともあれ、次回。
レッツ・暴走☆な回です。
必殺技の完全習得もまだですが、タイミング的にここしかないんですよね……。
まあ、ただの暴走とは毛色が違うかも、ですが。

それでは次回もよろしくお願いします。
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