【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第十四話~不思議な女性~

 中央の柱に椅子のある不思議な部屋。

 来人は、そこで目を覚ました。

 

「どこだ、ここ……?」

 

 起きたらいきなり見知らぬ部屋。そんな状態に、来人は混乱するしかない。見渡す限りでは、この部屋に来人以外の人はいない。

 なぜここにいるのか。来人は記憶を辿って――。

 

「……あれ?」

 

 ――すぐさま、ここ意識を失う前の記憶が欠落していることに気がついた。

 アグモンたちを助けに乱入したのはいい、なぜかアミたちがそこへやって来たことも覚えている。だが、彼にはどうしてもその後のことが思い出せなかったのだ。

 

「一体……どうなって……?」

『やっと目が覚めたか』

 

 混乱に混乱を重ねるそんな来人に手を差し伸べたのは、カミサマだった。

 だが、来人には、いつも通りで呆れた様子なカミサマのその声色の中に、どこか疲労の色があるように感じられた。

 

『その様子では覚えていないみたいだな』

「ああ、一体何があったんだよ……? それにここは……?」

『ここはデジラボなるところらしい。貴様の思い人の娘曰く、部屋の主とやら不在らしいがな。そこはいい。いや、よくはないかも知れぬが……問題はそこではない』

 

 問題は記憶の欠落部分にあるのだ、と続けてカミサマは言った。

 それはつまり、ここにいることよりも重大なことが、自分の身に起こったということ。思わず、来人は唾を飲み込んだ。カミサマの次の言葉を待つ。

 やがて、カミサマは話し始めた。あの時、何があったかを。

 

『あの時、貴様の身に起こったのは進化だ』

「進化? って、ああ、デジモンの……それが何で意識が飛ぶ結果になるんだよ?」

『話を最後まで聞け。そこは後で話す。とにかく、だ。端的にあの時のことを言うのならば、貴様と我は暴走したのだ』

「ぼっ、暴走!?」

 

 暴走。漫画やアニメといったサブカルチャーでは、それなりによく出る単語ではある。が、現実にあったら堪ったものではない。暴走とはすなわち、制御不能であること。場合によっては自滅の危険性さえ発生する。

 そんなとんでもない現象が、自分の身に起きたというのだ。これが驚かずにいられようかという話である。

 

『我もその時のことは詳しくはわからん。しかし、我らは暴走し、紆余曲折の後に生きて戻れたのだ。幸運というしかないだろうな』

 

 そんなカミサマの言葉に、来人は自分の身体を見る。それは、ここ数日で見慣れたアイギオモンというデジモンのものだった。

 

「あれ、進化したってことは、姿が変わるはずじゃ……?」

『退化したのだ』

「進化退化って、デジモンはそう簡単にできるものなのか?」

『普通は違う。我と貴様は状況からして特殊なのだ。今回のことで分かったが、進化できてもそれを保つことができん。これから先には進化することもあろうが、調子に乗ればすぐに退化して死ぬぞ』

「怖いこと言うなよ……!」

 

 実際の原理としては、エネルギー消費とか、来人の存在とか、そんなさまざまな事情が複雑に絡み合った結果なのだが、カミサマは言わなかった。

 言うのが必要がなかったし、なにより来人がその辺りを深く突っ込んで聞いてこなかったからだ。もし仮に来人が聞いてきたのならば、カミサマはちゃんと答えていた。

 

「でも、進化するたびに暴走してたんじゃ……進化できないだろ」

『そこは追々どうにかするしかあるまい。暴走したのは、我と貴様が重なり過ぎたからだ』

「重なり過ぎた?」

『我の感情と貴様の感情。二つが重なって、我という存在のバランスが崩れた。崩れたバランスは外界の影響を受けて変質し、走り出した……とこんなところだろう。ただでさえ、一つの存在の中に異物があるのだ。その辺りにも気を使わねばならん』

 

 来人は、カミサマの言っていることを完全に理解できたわけではない。訳ではないが、なんとなく、ぼんやりとはわかった。

 ようするに、暴走の原因は、来人とカミサマの二人が一つの身体を共有で使っているからこその弊害とでも言うべきものである。非常に簡易的な理解だが、来人はこう理解した。

 

「じゃ、どうするんだ?」

『それぞれがお互いを強く持つ。自分は自分である、そして相手は相手であると強く認識するのだ』

 

 簡単に言っているようであるが、来人には簡単に思えなかった。カミサマの言葉が抽象的すぎるのだ。来人の頭では理解できなかった。

 

「……でも、今回のカミサマでもできなかったことだろ? そう簡単にできるもんなのか?」

『……今回の件は我にとっても誤算だった。次に同じことはない。我の威信に賭けてもな』

 

 よほど今回の件について思うところがあるのだろう。力強くカミサマは答えた。

 そんなカミサマは、そう在ることを来人にも強いる。

 

『貴様もだ。貴様の命に賭けて誓え』

「まったく……ああ、いいぜ。どのみち乗りかかった船だしな」

 

 それでも、カミサマの言うことが正しいということは、来人にもわかった。強いられているのはいい気がしないが、どのみちそうあらなければ、来人に未来はないのだ。

 だから、というわけではないが、来人も誓う。強く在って、同じことを起こさないことを。自分のために、そして、カミサマのために。

 

『もっとも、どのみち強くあらねば貴様は愛する者の下へさえも帰られぬがな』

「その言い方はずるい……ってか、俺は生きたいからこうしているわけであって、別にアミのところに帰りたいからじゃないぞ!」

『……ワザとか?』

「何が?」

 

 どうやら、盛大な自爆をしてしまったことに、来人は気づいていないようだった。

 まあ、わかりきったことであるからして、カミサマも気にはしない。が、来人は何がワザとなのか、ずっと考えていて――そんな彼の思考は、第三者がこの場にやって来るまで続いた。

 第三者。それはこの部屋の主ではない。

 来人をここに連れてきた人物の方で、その人物とは――。

 

「あれ? ミレイさんいないの? あっ! 君、起きたんだね!」

「うげっ……!」

『ああ、言い忘れたな。貴様をここに連れて来たのはこの娘だぞ』

 

 ――言うまでもない。来人の幼馴染こと、相羽アミだった。

 来人が今一番会いたくないというか、自分の正体を気づかれたくない相手第一位の人物である。

 

「大丈夫? 気分はどう? 動ける? お腹すいてない?」

「いや、大丈夫だから。それに、なんか迷惑かけちゃったみたいだな……わるい」

「いいよ別に。君には助けてもらえたしね!」

「……」

「……?どうかしたの?」

「いや」

 

 何と言うか、来人は不満だった。

 自分が来人であると気づいてくれないのは、まぁいい。いや、ちょっとだけ複雑だが、別にいい。だが、それ以上に、自分に対する今のアミの対応が不満だった。子供扱いというか、ペット扱いというか。

 そんな感じの扱いだったから――来人の表情は、本人も気づかぬうちに、不満ゆえの固さが表れていた。

 

「……? 私何か気に障ることしちゃったかな?」

「別に」

「そう?」

 

 来人が不機嫌になっていることには気づいたのだろう。

 アミは来人に目線を合わせ、驚かせないように、落ち着かせるように話す。それが、余計に子供扱いされているようで、なおのこと来人には気に障った。

 

「ふーん。それじゃ、私は行くね。ミレイさんに用があったんだし……依頼のこともあるしね」

 

 アミは、元々ミレイという女性に用があって来たのだろう。他に用事がありそうな口ぶりからして、結構忙しいのかもしれない。

 去っていくアミの後ろ姿を見ながら、そんなことを思う来人。だが、呆然とアミを見送ってられたのも、そこまでだった。

 

「ああ。君は怪我してるんだから、もう少しおとなしくしてないとダメだよ。カミサマの言うこともちゃんと聞いてね?」

 

 出て行く直前に、アミはとんでもない爆弾を放っていったから。

 

「ぶほっ!」

 

 そんな風にアミの口から出た言葉に、来人は思わず吹き出した。まさか、アミの口からカミサマの存在が出たのは、予想外に過ぎたのだ。

 

「な、なんで!? おい、カミサマ! っていうか、誰が保護者だよ!」

『仕方ないだろう。貴様は意識を失っていたのだから。それにあながち間違ってもいまい?』

 

 まあ、あながち間違ってはいない。が、何と言うか、来人としては納得できなかった。納得できなくて抗議するが、カミサマはそんな来人の発言を黙殺する。

 ちなみに言えば、先ほどのアミがあれだけ派手に暴走した来人に普通に話しかけてこられたのは、カミサマが前もって心配ない旨のことを彼女に伝えておいたからだ。もしカミサマが黙っていたら、アミは警戒しながら来人と話すことになっただろう。知らぬは来人だけである。

 

「あら……起きたのね。面白い運命に捕らわれている子」

「っ!」

 

 いきなりの声に、来人はビクッと肩を震わせて、振り向く。

 いつからいたのか。そこには、紫色の髪をした女性がいた。年の頃は不明だが、少なくとも来人よりは年上だろう。自然と来人は改まった。

 

「もしかしてミレイさんか……?」

「ええ。はじめまして。私は御神楽ミレイよ」

「俺は……アイギオモンです」

()()()名前でもいいわ。私の口は重いから言わないわ。特にあの子にはね」

 

 自分の身に起きていることを知っている。ミレイの口ぶりから、来人はそれを察した。

 来人の勘は言っていた。隠しごとはしているようだが、嘘はついていない、と。だからこそ、最後の言葉を信じて、来人は自分の名前を言う。

 

「なんで知ってるんだよ……神山来人です。それと、アミが探してましたよ」

「知ってるわ。入れ違いになったみたいね」

 

 知っているのに入れ違いになったとは、それはもう故意ではないのだろうか。ミレイの言葉に、そんなことを思った来人。

 対してミレイは、意味深そうに笑うだけだった。

 

「ふふ……」

『不思議な者だな。人間だが、人間ではない。廻る世界に捕らわれているのか? いや、むしろそれを望んでいるのか』

「さすが主神様。私のことも見抜くのね。面白いわ」

 

 ミレイとカミサマの会話は、来人には全くわからなかった。雰囲気からして、何やら重要な話かもしれない。が、それを考察するだけの情報が来人にはない。

 結局、どうすることもできず、来人は顔に疑問を浮かべることしかできなかった。

 

「ああ、ごめんなさい。貴方のことを放ったらかしにして」

「……いえ、別に」

「お詫びに、この部屋からの出方を教えてあげる」

 

 「知りたかったでしょう?」と確信を持って告げてくるミレイに、来人は顔を引き攣らせる。一体どこまでわかっているのか、と。

 すまし顔で告げるミレイだ。そんな彼女の姿を見ていると、まるで何もかもがお見通しであるかのような気さえしたのである。

 

「そこの印……そう。そこに立てば、クーロンLV1に出られるわ。もっとも、貴方たちだけではここに来ることはできない」

「わかりました。休ませてくれてありがとうございました」

「ふふ。別に構わないわ。運命の導きでまた貴方はここに来ることだし」

 

 最後まで不思議な雰囲気の女性だった。

 最後に礼だけを告げて、来人は部屋を出る。その先は、ある意味見慣れた、そしてある意味見慣れたくなかったあの空間があった。

 




というわけで、第十四話。

原作で何気に初っ端から最後まで登場しっぱなしだった御神楽ミレイとの出会いでした。
別ゲームのキャラが初っ端から登場したことにツッコンだのは自分だけじゃないはず。
……まさか、ネクストオーダーにも出ませんよね?

ともあれ、次回。
来人の身体に異変が……な回です。
正直繋ぎ回ですし、もしかしたら今週は三回投稿するかもしれませんね。

それでは次回もよろしくお願いします。
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