【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第十九話~仲間が加わった!~

「……! ……?」

 

 ハッとするかのように、突如として目を覚ました来人。記憶の混濁があった。

 何があったのか。どうしてこんなところで寝ていたのか。それを考えて――。

 

「お、起きたか?」

「っ」

 

 ――すぐそばにいたブラックグラウモンの存在に、すべて思い出した。彼に戦いを挑まれたことも、半ば引き分け気味に決着が着いたことも。

 

「オレがここまで運んできたんだし、別にそこまで警戒しなくてもいいぜ」

 

 そんなことを言うブラックグラウモン。だが、いきなり襲ってきた相手に警戒するなとは、また無理を言うものだ。

 まあ、助け舟は意外な場所から出たのだが。誰に対しての助け舟かはともかくとして。

 

『そうだ。我が話を通しておいた。警戒する必要はない』

「……俺が気絶してる時に限ってカミサマいろいろ言うよな!」

 

 何はともあれ、カミサマ曰く、もう大丈夫らしい。

 何がどう大丈夫なのか知りたい来人ではあるが、カミサマのお墨付きとブラックグラウモンの様子からして、またいきなり襲われることはないのだろう。

 起き抜けに襲われなくて安堵した来人だった。

 

「それにしても、お前強いんだな! 少し前まで人間だったとは思えないぞ!」

 

 そんなブラックグラウモンの言葉に、来人は一瞬静止した。まさに思いがけない言葉だったのだ。

 

「……カミサマ」

『別にいいだろう。貴様の思い人にさえ知られなければ』

「それはそうなんだけど……!」

 

 人の口に戸は建てられない。その言葉が示すように、情報というのはどこから漏れるかわからない。そのくらいわからないカミサマではないだろう。

 だというのに、なぜ教えたのか。

 

「……? 知られたら不味かったのか? 大丈夫だ。オレは絶対に言わねぇ!」

『そもそも、こいつが聞き出してきたのだ。妙な違和感がある、とな。なかなかな慧眼だ』

「いやぁ、カミサマには負けるぜ!」

 

 何こいつら、俺が気絶している間に仲良くなりすぎだろう。

 そんなことをぼんやりと思う来人。実際、来人が気絶している間に何があったのかは、この二人のみが知ることである。

 

「……ま、いいや。で、何でお前は俺を襲ってきたんだ?」

「あ? ああ。それな。オレは強くなりたいからだ。そのためには、多少強引にでもってな」

 

 その後も話を聞いていくと、ブラックグラウモンは強くなりたくて武者修行中らしい。

 通りかかる相手誰彼構わず戦いを挑んでいたらしいのだ。今回は、来人がそれに引っかかったという話である。

 

「強くねぇ……」

『そのためにわざわざ相手の土俵で、自分の力を制限しながら戦っていたのだ。その根性は賞賛に値する』

「よせよ。そんなんじゃないって。ただのオレのワガママさ。そうしても勝てるくらい強くなれなきゃ意味がないからな」

 

 わざわざ来人のインファイトに付き合ったのも、カミサマが挑発するまで必殺技を使わなかったのも。すべては自分を追い込むためだった。ブラックグラウモンはそう言った。

 なぜそうまでして強さを求めるのか。来人は興味が湧いた――。

 

「なんで、そこまでして強くなりたいんだ?」

「わかんない!」

 

 ――が、笑いながら告げられたその言葉は、来人にとっても予想外の言葉だった。

 相応の理由があるのかと思ったら、これ。聞いていた来人が思わずガクッと肩を落としてしまったのも、頷ける話だろう。

 

「そういうのは何かしらあるもんじゃないのかよ!」

「って言われても、なー。強いて言うのなら、いつかのためかな?」

「……いつか?」

「そう、いつか。いつか、強さを必要とした時に、その強さがあるように備えとくためかな」

「そう言われるなら納得できなくも……」

「強ければ、いろいろと良いことが多いしなっ!」

 

 笑いながら言うブラックグラウモンに、来人は苦笑いする。最後で全部ひっくり返された感があった。

 来るかどうかもわからないいつかのために備える。人間でも、いや、生きる者なら誰だってやっていること。そんな誰だってやっていることが、ブラックグラウモンの場合は強さに対してだった。それだけの話なのである。

 

『このような者もいるのだ。良い刺激になるだろう』

「……だな」

『調査をしろと言ったのは我だ。調査をしなければ先には進めん。だが、だからといってそれだけしていたのでは、貴様という人間性が摩耗し、鈍っていく。時には休息も必要だ』

 

 我が子を心配するかのようなカミサマの言葉。それは別にいい、のだが。

 それにしても、休息が戦いとはずいぶんな脳筋である。が、その気遣いはありがたくて――そんな、不器用な神様に来人は苦笑した。本当に神様か、と。

 

「やれやれ……何か今日のカミサマはずいぶんと甘いな」

「ん? 普段からこうじゃないのか?」

「ああ、普段はもっと……スパルタ? いや、普段からこうだったかな?」

『好き勝手言ってくれるな……!』

 

 せっかくの好意だというのに、からかうような感じにされたら堪ったものではない。カミサマの声色は、どこか不機嫌そうなものとなっていて――それに気づいた来人は、慌てて話題を変えた。

 

「そういや、お前はこれからどうするんだ? やっぱりまた辻斬りまがいのことするのか?」

 

 来人は気になっていたのだ。ブラックグラウモンはこれからどうするのか。

 だからこそ聞いたのだが、返ってきたのは、来人も予想だにしていない言葉だった。

 

「いや?」

「……?」

 

 てっきりこれからも頑張る的な言葉が来るものとばかり思っていた来人。だが、返ってきたのはまさかの否定形の言葉。

 何を言っているのかわからない。そんな感じで首を傾げるブラックグラウモンだったが、首を傾げたいのはどちらかといえば来人の方だった。

 

「じゃ、どうするんだ?」

「それもいいと思ったんだけどなー……迷ってるんだよ」

 

 先ほどまで、凄まじいばかりの意思力を見せてきた彼が一体何に迷っているというのだろうか。そんな疑問に来人は首を傾げる。

 

「いやぁ……お前にくっ着いて行くのも良さそうだし、それ以外にもな。通りすがり相手のやつらだけじゃ、限界が来てるような気がしてな」

 

 ブラックグラウモンとて、このクーロンエリアに来て長い。猛者ひしめく最下層辺りはともかくとして、彼はさまざまなエリアに足を運び、そのどこであっても来人にしたような辻斬りまがいのことをしていた。

 初めは、それで強くなっている実感があった。だが、いつの頃からか、成長が止まってきたような気がしたのだ。自分の力を抑えてみたり、相手の土俵で戦ってみたり、といろいろな工夫を凝らしたが、結局彼は同じだった。

 そんな現状を前にして、彼は思い始めていたのである。新しい何かがなければ、これ以上は成長できないのかもしれない、と。

 

「力を貸したいけど……俺も強さに関しては何とも言えないからなぁ……ほとんどカミサマ監修だし。何かないのか?」

『ふむ。成長が止まっている気がしているのは、種としての限界が近づいて来たからだろうな』

「やっぱりそうかぁ……」

『それ以上を望むのならば、技術などそういった部分を磨くか、できるかどうかもわからない賭けで限界を超えることに挑戦してみるか、あるいは……』

 

 カミサマは、そこで言葉を切った。

 この場の全員が、そこから先を言われずともわかった。カミサマの言わんとしていることが。種としての限界を超えることに挑戦する前にやれることがある。

 ブラックグラウモンという種としての限界が近づいてこようとも、デジモンという生物としての限界が来たわけではない。

 

「進化、か……」

 

 そう。ブラックグラウモンは成熟期。デジモンとしての成長が終わった訳ではないのだ。

 

「でも、それだけ強いなら進化できないのか?」

「いや……それがさっぱりだ!」

『確かに“強い”ことは必要条件だが、それだけで進化できるわけではない。環境、心境……さまざまな要因が絡む。そう簡単に進化できたのならば、世の中は世紀末だ』

「……それもそうだな! ははっ!」

 

 カミサマの言葉に笑うブラックグラウモン。そんな彼は、しばらく笑って――笑い終えたと共に、急に来人に向き合って言った。

 

「よっし、決めた! しばらくお前の手伝いをする!」

「は……?」

「カミサマから聞いたけど、前ら何かよくわかんない奴のことを調査してるんだろ? 人手は多いほうがいい!」

「いや、ありがたいけど……」

 

 いいのか、と。声に出さずに、来人はブラックグラウモンに尋ねる。

 ブラックグラウモンとしては、そんなことは承知で決めたのだから、いいも何もなかった。

 

「ああ! 調査とか、何とも面白そうなことしてるみたいだしな!」

『では、これからはよろしく頼む』

「おう! よろしくな!」

「って、カミサマはいいのかよ!?」

『別にいいだろう。一人でできることなどたかが知れている。それに、今の貴様には共にいる誰かが必要だ』

「……?」

 

 そう言ったカミサマの言葉は、どこか真面目な色を帯びていた。

 一体何だというのか。そう思った来人だったが、そんな彼は気づいた。いきなりで驚いたが、よくよく考えれば特に反対する理由はなかったことに。

 

「……まぁ、よろしく」

「おう!」

 

 何と言うか、流された感がある。が、何はともあれ、ブラックグラウモンという新たな仲間が加わったのだった。

 

「……」

『どうかしたのか?』

「いや、凄まじく面倒事の予感がしたような……? ……うーん……」

『何を言っているのだ貴様は』

「いや、勘で……」

 

 何やら嫌な予感を覚えた来人。

 何にそう感じたのか、深く探ろうとする来人だったが――彼に、そんなことをしている暇はなかった。彼がそうしている間にも、ブラックグラウモンは動いていたのだから。

 

「おっ。さっそくハッカーがいるぜ!」

 

 考え事をしたい来人の前で、ブラックグラウモンは近くを歩いていたハッカーたちの下へと行こうとしていた。慌てて捕まえた来人だったが、ブラックグラウモンは止まらない。

 

「いや、おい! こっちから喧嘩を売る必要はないんだよ!」

「何言ってるんだよ! アイツらから情報を聞き出せばいいじゃないか!」

 

 来人が考えていた以上に真面目に考えての行動ではあったようだったが、だからといって関係ない。来人は今までのことから、ハッカーたちから情報を聞き出せる気がしていなかったのだ。

 

『先行き不安というところか』

「言うなら、ちょっとは手伝えよ……! 口は動くだろ!」

『やれやれ』

「よぉーし! おぉーい!」

 

 呆れたようなカミサマの声に、元気いっぱいなブラックグラウモンの声。来人は早くも挫けそうになる。誰か、と。いるはずもない助けを求め、視線を彷徨わせる。

 まあ、ここにいるのはハッカーたちか野良デジモンだ。来人を助けてくれるような人はいるはずもない。

 

「……」

「……」

「……」

 

 が、そんな来人と目が合ったのは、ブラックグラウモンが声をかけようとした二人のハッカーたちで――どちらも、来人の知り合いだった。というか、それぞれのデジモンたちを連れたアミとアラタの二人だった。

 以前、何も言わずに逃亡したからだろう。目が合うやいなや、アラタを放って来人の下へと向かってくるアミ。そんな彼女の姿を前にして――。

 

「最悪だ……」

 

 ――切実に助けが欲しい来人だった。

 




というわけで、第十九話です。
特に山なしオチなしの話なので、さっさと投稿しました。
主人公に仲間が加わった! 題名通りのそれだけの話ですね。

さて、最後からわかると思いますが、次回の内容にちょこっと入っています。
アラタとアミの二人組行動です。次回の内容が何か、わかる人はわかると思います。

それでは次回もよろしくお願いします。

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