【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第二話~はじめまして~

 電脳空間EDEN。

 EDENネットワークとも呼ばれるそこは、商用最大ネットスペースであり、新時代のWEBコンテンツ。バーチャルリアリティとしてネットの情報を感覚的に体感することができる電脳空間である。

 そこで利用できるサービスは、ショッピングや企業間の商取引、果ては行政手続きまでさまざま。その多様性もあって、かつてのインターネット普及以上の速度で大衆化がされたサービスだった。

 

「うぐぐ……入るのに時間がかかってしまった……!」

 

 そして、そんな電脳空間の片隅に来人はいた。

 理由は言わずもがな。昨日のチャットでの出来事が原因。訳のわからないハッカーに招待されたチャットの人々は、何人かがその招待を受けた。

 来人は、嫌な予感がすることと、この電脳空間に来たことがないということもあって、来る気はなかった――のだが。

 

「あん時はビビったぜ……っていうか、アイツはもう少し疑うことを覚えろよ!」

 

 そんな来人とは対照的に、彼の幼馴染が行くと言い出した。

 覚えた嫌な予感もあって、来人は止めたかった。だが、こうなった幼馴染が頑固なことは知っている。止めようがないことも。だからこそ、来人は、金魚の糞のような感じであるが慌てて同行を申し出たのである。

 

「怪しいんだよなぁ……」

「いや、怪しいのは君だよ」

 

 呟いた来人の背後から聞こえた声。

 まさか声をかけられるとは思っていなかった来人は、驚きのままにバッと振り返って――。

 

「うわっ!?アミ!?」

「やっ!遅かったじゃん!」

 

 ――そこにいたのは、彼の幼馴染。

 相羽アミという名前の、黄色い服に赤い髪の少女だった。彼女は、来人の驚きようにイタズラが成功したかのような顔で笑っている。

 一方で、そんなアミとは対照的に来人は不機嫌そうである。それほどまでにアミのイタズラに引っかかったのが気に食わなかったらしい。

 

「っていうか、遅刻だよ。ま、君のことだからこんな感じだとは思ってたけどね」

 

 実は、来人はアミとの待ち合わせの時間に遅刻していた。

 まあ、アミが気を利かせて早めに待ち合わせ時間を決めたからよかったのもの、下手をすれば()()()()()()()()()()()()にも遅刻してしまっていただろう。

 だからこそ、アミは責めるような口調で来人に話しかけていた。

 まあ、これについては来人が悪い。

 

「仕方ないだろ。俺初めてだぞ」

「言い訳は男らしくないなー」

「ぐ……」

 

 こうして、来人の逃げ道を塞ぎながらも、アミは仕方ないことだとも思っていた。

 来人は機械音痴である。このご時勢にボタンだけしかないような携帯電話しか使えないという音痴っぷり。

 そんな来人が、このEDENへの初アクセスを上手くできるとは、アミも思っていなかった。

 

「ま、いいけどね。わかってたことだし」

「なっ……失礼だろ!」

「いやいや、そういうことはパソコンの設定くらい一人で出来るようになってから言おうね」

「ぐぅ……!」

「まぁいいや。で、どう?初めてのEDENは?」

 

 そのアミの言葉に、来人も改めてこの空間を見渡した。

 なるほど、確かに作り物感はある。だが、それでも――と。そう思って、来人はまるで別世界に迷い込んでしまったかのような気持ちになっていた。

 それほどまでに、この世界はよくできていた。

 

「聞くまでもないか。それじゃ、そろそろ行こっか。どうせ移動方法もわからないんでしょ?」

「……なぜわかる」

「わかるよ。わからない方がおかしい」

「っく……!」

 

 来人にとって悔しいことながら、アミの言葉は本当にその通りだった。

 来人はこの世界に慣れていない。それこそ、あのハッカーとの待ち合わせ場所がどこかも知らない。アミがいなかったら、この世界で迷子になって、時間切れでログアウトする結果となっていただろう。

 まあ、アミもそれがわかったからこそ、前もって合流しようと待ち合わせしたのだが。

 

「これに乗れば移動できるよ。移動先は……こうして」

「……こう、か?」

「そっ」

 

 アミの指示に従って、来人は端末を操作する。デジヴァイスと呼ばれるこのEDENにログインするための端末を。

 とはいえ、このデジヴァイスと呼ばれる端末も、来人は今日初めて触ったのだ。その操作は拙かった。あまりの操作の遅さに、アミが操作を代わってあげたくなったほどである。

 まあ、ともあれ、無事に行き先を設定できた来人。そんな来人は――。

 

「で、この印に乗れば移動できるから。行くよ……それっ」

「がっ……何す――っ!」

 

 ――アミに押されて、あるマークの所に乗せられた。

 何をする。そんな文句を言おうとした来人。だが、来人の言葉は続かなかった。なぜなら、その瞬間に移動が始まったからだ。

 まるで重力に逆らうように、打ち上げられ、何処かへと連れて行かれる来人。行き先は、アミが設定しろといった場所だろう。それくらいは来人にも理解できたが――宙に浮くように移動するというこの体験は、来人にとってはちょっとした恐怖体験だった。

 流れていく景色。そして、到着。移動用のマークに乗せられてからの時間は数秒も経っていない。それでも――。

 

「どう?初めての移動は?」

「……もう二度と体験したくねぇ」

 

 ――それでも、来人はだいぶ参ったようだった。

 ともあれ、目的地に着いたのだ。地面に足がつく喜びを感じながら、来人は周りを見渡す。

 

「クーロンっていう、EDENの最下層。私も来るのは初めて」

「ふーん……ここは暗いな」

 

 明るさだけの問題ではない。何と言うべきか、雰囲気そのものが暗い。来人のその言葉は、そんな思いを込めて呟かれた言葉だった。

 実際、この場所はそんな感じだった。まるで打ち捨てられたかのような、ボロボロの外観。

 遠くにはボロボロの公園も見えて、あまり長居したい場所だとは、来人には思えなかった。

 

「……そうだね。アッキーノとブルーボックスを探そう」

「あ、一人あれじゃね?」

 

 そう言って、来人は遠くに見える人影を指す。

 そこには、アミと似たような赤い髪の少女が、まるで手持ち無沙汰といった感じでボロボロの電柱にもたれかかっていた。

 

「あっ……そうかも。さっきも、おともだちの二人は先に来て待ってるってナビットくんから連絡があったし……」

「待て。その連絡、俺には来てないんだけど」

「まだログインしてなかったからじゃない?」

「……」

 

 何か納得いかないが、そういうことにして、来人とアミはその少女に向かっていく。

 足音が聞こえたのだろうか。少し歩いただけで、その少女は来人たちに気づいたようである。

 

「むぅうううう!おっそーい!」

「ごめん。アッキーノだよね?」

「そう!そっちはAI◎BAとKYでしょ!遅い!」

「ごめん。KYが遅れて……」

「悪かった!謝るからその名前で呼ぶのはやめてくれ!」

 

 KYKYとあの偶然ついた名前で呼ばれ続けるのが辛抱たまらなくなった来人は堪らず叫んだ。

 KY。今は使われなくなった言葉ではあるが、その意味は誰でも知っている。知っているからこそ、来人は叫んだのである。

 とはいえ、これはすべて適当にユーザー登録をした来人の落ち度なのだ。一体どういう適当な登録をすれば、そんな蔑称で登録されるのだろうか。まあ、来人自身もわかっていなかったりするのだが。

 

「っていうか、あたし白峰ノキア!よ、ろ、し、く、ね!」

「私は相羽アミ。よろしく!」

「俺は神山来人。よろしくな」

「よろしくっ……って、じゃなーい!遅い!遅い!お、そ、いー!」

 

 和やかな自己紹介、からの奇声。

 この転換には来人もアミもついていけなかった。日頃、機械音痴という来人で濃いキャラに慣れているアミをもってしても、ついていけない別ベクトルの濃さを発揮するノキアという少女。

 そのうちに慣れるのだろうが、来人にしてもアミにしても、初対面でこの濃さはキツかった。

 

「こんなアブナイ場所で……ひとりっきりで待たされる身にもなってよ!」

「いや、ブルーボックスとやらは?」

「あ、アイツ!?来てますよ!来てますよ!……で、それが何か?」

「何かって……」

「信じられる!?あのジコチュー、俺ユーレイ探してくるわキラッ☆とか言って、どっか行っちゃったんだよ!」

「キラッ☆って……」

「きら……」

 

 ノキアはブルーボックスという人物に、だいぶストレスを溜められたらしい。溜まったストレスを発散するかのように、アミと来人に向かってあることないこと吹き込んでいた。

 

「だいたい何!?白い少年のユーレイ!?見つけてどうすんすかー?」

「おい、アミ。何とかしてくれ」

「無理だって。来人こそ何とかしてよ」

「そこ二人!話を聞く!いい!?電脳空間でユーレイなんてヒカガク的だしー!そもそもありえないし!怖くともなんともないし!」

「……怖いのか」

「怖いんだね……あ」

 

 若干、震えながら言葉をまくし立てていくノキアを、生暖かい目で見る来人とアミ。

 だが、そんな二人は次の瞬間に気づいた。フードをかぶった人物が、近づいてくるその姿に。そのことに気づいて、二人は二人そろって指を指してノキアに伝えようとしたが――。

 

「何?二人して!だ、だいたいあたしがそんなコテン的なのにひっかかるわけ――」

 

 ――残念ながら、ノキアには伝わらなかったようである。

 近づいてくるそのフードの人物。その人物は、音を立てないようにノキアの背後にまわって、そして一言。

 

「うらめしや」

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

 直後、この世のものではないほど酷い悲鳴が辺りに響き渡った。現実世界でこの悲鳴が上がれば、まず間違いなくご近所さんから怒声を浴びることになるだろう。ノキアの上げた悲鳴は、それほどのものだった。

 

「ちょ、ビビリすぎだっての」

「な、なんだ。ただのアラタじゃん。ただの。……ユーレイかと思った」

「あれ、さっき怖くないって……」

「シャーラップ!そこの音痴系男子!」

「なんで知ってんだ!」

 

 新たに現れたのは、ノキアにアラタと呼ばれた少年。

 彼こそが――。

 

「ったく。チキンのクセにこんなトコに来てんじゃねぇよ」

「はぁっ!?そのチキンをこんなトコに置き去りにしたのはどこのアラタよ!?」

「……チキンを認めたぞ」

「しっ。言わなくていいの!」

「はぁ。うっせー……ってか。はじめましてだな。こっち出会うの。約一名はほとんど知らねぇけど」

「ああ、まぁ……昨日の今日だし、な。アンタがキラッ☆の人か?」

「なんだそれ。ま、いいや。真田アラタだ。テキトーによろしく頼む」

 

 ――彼こそがあのチャットルームでブルーボックスと名乗っていた人物だった。

 

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