【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第二十話~思いがけない情報提供~

 時は少し遡る。

 

 某電脳探偵見習い曰く、暴走警察の異名を持つ伊達真希子。彼女からの強制という名の依頼を受けたアミ。内容としては秋葉原での連続失踪事件の調査である。アキバの神隠しとさえ揶揄される事件だ。

 その調査中に、面白そうという理由でアラタが合流――で、さっそくアラタが役に立った。

 とある情報提供者曰く、失踪者は全員がとある漫画に誹謗中傷まがいのコメントをしたらしいのだ。ということは、その漫画の作者ないし関係者が怪しい。

 現在は削除されたそのとある漫画についての情報。それを、アラタのハッキングスキルで見つけ出した――のはいいのだが、そこに問題があった。

 その情報は、EDENのクーロンエリアに流れ着いており、しかもデジモンらしきプログラムに守られているらしいのだ。

 こうなってしまえば、外からでは手を出せない。だからこそ、アミはアラタと共にクーロンエリアと向かった。

 

 という経緯があって、クーロンエリアを歩くアミたち二人。

 

「そういえば……おたくの言ってた事務所って探偵事務所のことだったんだな」

「そうだよ? 何だと思ってたの?」

「いや……」

 

 アミの問いかけに、アラタは言葉を濁す。

 まさかアイドルの事務所だと思っていたなど言えるはずもない。男同士での冗談ならばともかく、目の前にいる女性に面と向かって言うと、下手をすれば妙な疑惑をかけられる。

 ただでさえ、アミにオタク疑惑をかけられているアラタだ。これ以上、奇妙な疑惑をかけられるのはアラタも避けたかった。

 

「……?」

「……何か騒がしいね?」

「だな。どっかのハッカーが喧嘩でもしてるのか?」

 

 ハッカーたち以外は寄り付かないようなこのクーロンでは、話し声で騒がしいということはあまりない。戦闘音で騒がしいということは多々あるのだが。

 物珍しさに、思わず野次馬根性が出てしまったアミたち。幸いにも、その音の発生源となっているところは近くだ。

 だから、というわけではないが、アミたちはそっとそちらの方向を向いて――。

 

「……」

「……」

「……」

 

 ――黒い魔竜と戯れ合っている、ように見える一人のデジモン(来人)と目が合った。

 その姿は、最近アミが心配していた相手で――思わず彼女は駆け出した。

 

「最悪だ……」

 

 そんなアミは、目の前でそう呟かれた声も聞こえない。というか、聞く気もない。

 

「元気になったんだね! よかった!」

 

 開口一番、アミは来人の身体中をまさぐりつつも、ジロジロと見る。どうやら、あの時の傷が治っているかどうかをチェックしているらしい。

 だが、当の来人にとっては鬱陶しいことこの上ない。相変わらずの子供扱い、というかペット扱いな過保護な扱いも、それに拍車をかけていた。

 

「おかげさまで」

「勝手にいなくなったから、心配したんだよ!」

「……別に勝手だろ」

 

 自分、不機嫌です。そんな態度を隠そうともしない来人の姿に、アミは微笑みながらうんうんと頷く。

 今のアミには、来人の姿はちょっとツンのある子供のように見えていたのだ。まあ、その中身は長年連れ添っている幼馴染なのだが――それを知らないのは、彼女にとって幸か不幸か。

 

「おいおい! お前このハッカーと知り合いなのか?」

「おたくもこのデジモンと知り合いなのかよ?」

 

 蚊帳の外であるブラックグラウモンとアラタが、それぞれに事情を聞く。

 知り合いといえば知り合いだが、元を辿ればただの知り合いではないという、結構複雑な来人。それに対して、アミの方はシンプルだった。

 

「うん、ただの知り合いだよ?」

「……」

『……今度、少し休むか? 我の同胞曰く、そういう時は酒だそうだ』

「カミサマうるさい!」

 

 仕方ないことではある。あるのだが――そんなアミの邪気のない答えが、何気に心に刺さった来人である。

 

「お友達も一緒なようだしよかったよ。安心した。私たちも用があるし、これでね?」

 

 来人の無事な姿に安心したアミだが、自分にも仕事があることを思い出したのだろう。来人の頭を撫でて、そのまま立ち去ろうとする。

 

「知り合いなんだから、お前が調べていることについて聞かなくていいのか?」

「あー……それもそうだな。ちょっといいか?」

 

 ブラックグラウモンの言葉に、来人は頷いてアミたちを引き止めた。

 まあ、暇な一日調べまくっている自分ですら情報は得られていないのだ。アミたちが知りたい情報を持っている可能性は低いだろう。

 そうは思ったものの、万が一ということもある。だからこそ、来人はアミに聞いて――。

 

「え? 白と黒のバケモノ? イーターのこと?」

「……イーター?」

「うん」

 

 ――残念ながらと言うべきか、万が一どころの話ではなかった。アミは普通に来人以上に知っていた。

 アミから話されるイーターについての情報は、どれも自分が知らないことばかり。思いがけない情報に、カミサマは感嘆していたが、どちらかといえば悔しい来人だった。

 

「君はイーターのことについて調べてるんだね」

「ああ……まぁ……何日も調べて何も掴めてなかったけどな!」

 

 どこか拗ねているような対応する来人。

 

「おたくも苦労する友達がいるな……」

「いや、オレもここ数時間の仲だけどな……しばらくの付き合いになりそうだ」

 

 そんな彼の姿を、アラタとブラックグラウモンは後ろからやれやれとばかりに見つめていたのだった。

 その後も、来人たちはアミたちと行動を共にしていく。理由は特にないが、強いて言うのならば成り行きだろうか。

 

「へぇ! お前デンノウタンテイとかやってんのか!」

「うん、デジモンからの依頼も大歓迎だよ。今まで何回もあったしね」

「人のいぬ間にまた妙なことに首を突っ込んで……!」

「何か既視感があるんだよな……おたく、どこかで会ったことあるか? いや、この前のことじゃなくて」

 

 雑談しながら、クーロンを歩いていく来人たち。なんだかんだ言っても、久しぶりの人間との和やかな雰囲気で、来人も癒されていた。

 

「っていうか、そうか。電脳探偵か。それなら、確かに情報も集まりやすい……か?」

『そうだな。貴様がこの娘と行動を共にするようになれば、それだけの我々にも情報が手に入りやすくなるかもしれん』

「だけど……」

 

 確かにカミサマの言う通りだろう。来人は内心で同意する。

 アミがイーターについて知った場所は、ちょうど人間の世界で、今の来人単体では行けるはずもない場所だからだ。

 人間の世界でもイーターの情報が手に入る可能性があるとわかった以上、このクーロンエリアだけで彷徨っていても、調査は進展しない可能性すらある。

 しかし、それをわかった上で、来人は――。

 

「どうかした、アイギオモンくん?」

「うん、やっぱり嫌だ」

「……?」

 

 ――来人は、別にこの身体のせいにする気はないが、今の身体、今の扱いでアミのと行動を共にしたくないと思えるのである。

 まあ、好きな子と共に行動できるということに、惹かれるものがあることも彼は否定しないのだが。

 ちなみに、そんな来人を複雑そうな目で見るのは、会話に入っていけないアミやアラタのデジモンたちである。

 そんな時のことだった。

 

「んあ? あれじゃないか? アミたちが探してるの」

 

 来人が指したのは、空間に落ちているデータの塊。

 まさしく大当たりであった。すぐさま、アミがそれを解析する――。

 

「まさかあのアミが……犯罪者になるなんてな」

「ハッカーは犯罪者じゃないよ!?」

 

 ――のだが、来人としては、目の前でハッキングスキルを振りかざすアミの姿が複雑でもあった。来人の中では、ハッカーとはイコールで犯罪者であるからだ。

 

「大丈夫だ。今時珍しいもんでもないから」

「知ってるよ。アラタ。そのせいで俺は毎日毎日追われまくってんだから。デジモン・キャプチャーとか言うあの気持ち悪いプログラムも……何とかして欲しいもんだ」

「……」

 

 そんな来人の愚痴ともとれる言葉に、アミとアラタは彼から目を逸らした。どうやら二人にも思うところがあるらしい。

 

「と、とにかく……そいつは当たりだ! ちょいと仕掛けてみよーぜ」

「う、うん! そうだね!」

「って、あれ? これ……容量はほとんどカラだな。つうか、……!」

 

 来人の言葉から逃れるためだろう。アラタが慌ててアミが解析したデータを弄りだした――のだが、すぐに引き締まった顔になり、叫ぶ。「やばい!」と。

 一体何だというのか。訳がわからない来人たちの前に――。

 

「……デ……ミナイデ!」

 

 ――突如として現れるデジモン。

 それはまるでフードを被ったかのような、人に近い見た目のデジモンだった。

 

「リンク先の変なもんにアクセスしちまった……! おそらくコイツがデータを守っていたデジモンだ!」

『こやつはワイズモン……完全体だ』

「ぶっ!」

 

 カミサマの言葉に、来人は思わず噴き出した。

 完全体デジモンを相手にしたことなど、来人にはない。それどころか、この場の面々の多くは成長期。成熟期は来人とブラックグラウモンだけで――戦力差は覆しようもなかった。

 

『質は数で埋めるしかあるまい。とはいえ、コイツは――』

「わかってるよ!」

「さっそく来たな! 強そうな奴!」

 

 さすがに完全体デジモン相手に、成長期デジモンを主として前に出すわけには行かない。カミサマの言葉の続きを聞かずに、来人とブラックグラウモンが前へと飛び出した。

 

「みんなっ!」

「行けっ!」

 

 続けて、アミとアラタのデジモンたちも来人たちに並ぶように前に出る。

 テリアモンにパルモン、ハグルモンという来人も以前見たことのある三匹だ。が、三匹の内二匹が以前以上にやる気に満ち溢れていた。以前と変わらないのは、ハグルモンだけである。

 

「行くよっ! アミに良いところを見せる!」

「アタシも行くわ!」

「おい! ちょっ!」

「ピピ……オ待チクダサイ」

 

 横目で来人を睨みながら、テリアモンとパルモンの二匹が躍り出る。

 なぜ睨まれたのか。疑問に思いつつも、来人は静止の声を上げる。同じく、冷静に事態を観察しているハグルモンも同じように声を上げていた。

 だが、すべて遅い。この場の誰もが止められないほど、二匹は進んでしまっていたのだ。

 

「ミナイデ……ミナイデミナイデ!ミナイデェエエエエエ!」

「うわっ!」

「きゃっ!」

 

 発狂したかのようなワイズモンの声。その声と同時に発生した衝撃に、テリアモンとパルモンはなすすべもなく吹き飛ばされる。

 彼らが吹き飛ばされた先には運良く来人がいた。彼は自分の方に吹き飛ばされた二匹をキャッチする。が、その際にワイズモンは来人の前まで来ていて――。

 

「まずっ!」

 

 ――来人は、ダメージを覚悟した。

 二匹のせいで両腕は塞がっていて、咄嗟に身体を動かしてもワイズモンの攻撃範囲から逃れるだけの移動はできなかった。

 スローモーションに見える景色の中、来人にできたのはただ一つ。やがて来たるダメージを前に、ワイズモンを睨みつけることだけで。

 

「……ミナイデ」

 

 直後、ワイズモンは消えた。まるで、来人に睨まれて怯えたように。

 




というわけで、第二十話。
原作で言う秋葉原の神隠し事件ですね。ずいぶんと端折ってますが。
これからしばらくは秋葉原の事件です。

さて、次回。
主人公、久しぶりの人間世界(異常事態中)へと帰還するお話……からの、戦闘開始までです。

それでは次回もよろしくお願いします。
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