【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第二十一話~秋葉原事件~

 ワイズモンは、来人たちより強かった。だというのに、来人たちの前からなぜか逃亡した。

 その事実に、来人たちは釈然としないものを感じていた。

 

「大丈夫!?」

「大丈夫~」

「なんとか……」

 

 ともあれ、唯一ダメージを受けたパルモンとテリアモンも無事なようだった。実力差を考えれば、かなりの僥倖である。

 

「何であんな無茶したの!」

 

 そんなテリアモンたち二人に、アミは怒鳴る。

 アミがここまで怒るのは珍しいな、と。そう思いながら、その光景を来人は外から見ていたのだが――。

 

「だって~」

「その……」

 

 ――が、なぜか怒られている二匹は来人の方を見る。まるで来人が悪いとばかりに。

 だが、そんな視線で見つめられても、来人としては心当たりがないのだから、反応のしようがなかった。

 

「心配させないでよ……」

「ごめん~」

「ごめんなさい」

 

 結局、二匹が詳しい訳を言うことはなかった。

 それでも、心の底から呟かれただろうアミの言葉に、ようやく二匹は謝罪して――そうして、この一件はとりあえずここで終わる。

 この一件が終われば、次は逃亡したワイズモンの行く先である。

 

「そっちはすんだみてーだな。こっちも追走がギリギリ間に合った。アイツは秋葉原だ! どうやら、ビンゴみてーだな!」

「わかった!」

 

 どうやら、アミが説教をしていて、来人がボーっとしている間にも、アラタはハッキングスキルを駆使してワイズモンの捜索をしていたようである。

 アラタ曰く、ワイズモンは秋葉原のとある場所にいるらしい。

 急がなければ、また逃げられるかもしれない。そう考えて、アミとアラタは移動しようとする。移動しようとして――。

 

「ちょっと待て! ……あの、だな」

 

 ――来人に呼び止められた。だが、呼び止めたはずの来人は、口を動かすだけで、肝心の内容を言わない。

 急いでいるアミたちである。アミはともかくとして、アラタはそんな来人に苛立だってしまい――そんな時だった。

 

「オレたちも連れて行ってくれないか!」

 

 来人の代わりに、ブラックグラウモンが声を上げたのは。きっと彼は、これでは埒があかないと思ったのだろう。

 

「あ、別にお前らの仲間になるわけじゃないぞ。アイツにやられっぱなしは嫌だからだ。事が終わったらここに放してくれ」

 

 勘違いするなとばかりに、ブラックグラウモンは続けてそう言う。

 まあ、ブラックグラウモンとしては、別にアミたちにずっと着いて行ってもいいのだが。彼は彼女たちが悪いハッカーだとは思えなかったし、彼女たちについていけば自然と強くなれるような気もしていた。

 それでも、彼が最後にここで放してくれと言ったのは、来人があまりアミたちと行動したがっていないことを見抜いたからである。

 

「オレは別に構わねぇぞ」

「君も同じ?」

「……いや、まぁ……ああ」

 

 アミに尋ねられて、来人は躊躇ったものの首を縦に振る。

 正直に言えば、この場で一番アミに着いて行きたくないのも、同時に着いて行きたいのも彼だった。いろいろと複雑なことになっている内心だが、つまるところ彼はアミが心配だったのだ。

 成長期だらけの身で、完全体デジモンの追走をしようとしているところとかが。

 

「わかった。じゃあ、一時的だけどよろしくね」

「よろしく……」

「おう! よろしくな!」

 

 そんなこんなで、一時的にでもアミたちと行動することになった来人たちは、アミのデジヴァイスの中に入る。そうしなければ、現実世界に行くことができないからだ。

 初めて入ったデジヴァイスの中。どうなっているのかはさっぱりだったが、視覚的には殺風景な部屋のような感じだった。

 来人がここでこうしている間にも、アミとアラタは現実世界を移動しているのだろう。そう考えると、何だか不思議な気がした来人だった。

 

「……」

 

 デジヴァイスの中に入って、どれだけの時間が過ぎただろうか。

 時計も何もないこの空間では、時間感覚というものが曖昧だった。一分か、十分か、もしかしたら一時間か。わからなかったが――。

 

「っ。出てきて!」

 

 ――ふいに聞こえたそのアミの声は、どこか切羽詰っているようなもののような気がした。

 その声に、若干の焦燥を感じながら来人は外へと飛び出して――そこは、来人の想像していたセカイではなかった。

 電脳世界ではない。しかし、もちろん来人が慣れ親しんだ現実世界でもない。そこは、まるでその二つが混じりあったかのような、そんな無茶苦茶な場所だった。

 

「ここは……? 人間の世界か? それとも……? どうなってるんだ?」

「すっげー! これが人間の世界なのか!?」

 

 ブラックグラウモン共々外に出された来人だったが、この現状には呆然とするしかなかった。

 まあ、ブラックグラウモンの方は興奮してテンションが上がっていたのだが。

 ともあれ、現実がこうなる現象を、アミとアラタは知っていた。新宿の時と同じ怪現象だ。これが起こったということは、すなわち何を意味するのか。

 

「新宿の時と同じ……マヨヒガ現象」

『これが話に聞く……ということは、近くにイーターがいるのだな』

「思いがけないことになってきたな。こりゃ……」

 

 アミのことが心配で引っ付いてきたら、こうなるとは思いがけない幸運だった。

 まあ、アミと合流した途端にイーターの手がかりを掴めたこと対しては、来人は複雑な気持ちだったのだが。

 

「何かに憑かれてないか?」

「……否定できない」

 

 来人の言葉に、苦笑いを浮かべるアミ。

 彼らはところどころの行き止まりに道を塞がれながらも、回り道もして道を進んで行って――。

 

「っ!?」

「この人!」

 

 ――アミとアラタは、目の前でただ立っている女性を発見した。

 ただ立っている。その言葉通りに、まるで抜け殻のようになってしまっていた。アミたちが何やら必死に話しかけている。だが、反応はない。

 知り合いなのだろう。来人は知らないことだったが、その女性はアミたちにこの事件の情報提供してくれた女性である。

 自分たちが巻き込んでしまった。アミたちが、そう思って落ち込んでしまったのも無理はない話である。

 

「……くそっ」

 

 自分を追い込むのか、悪態をつくアラタ。そんな彼が見てられなかったのか、それとも別の理由があったからか。それまで事の成り行きに身を任せていたカミサマが声を上げた。

 

『落ち着け』

「違う声……そうか。アンタ、カミサマだったっけか?」

『そうだ。どうやら、精神に外側からの影響を受けている……が、それほど強くどうこうされている訳ではなさそうだ。元凶を断てば元に戻るだろう』

「それっ……本当か!?」

『我の見立てではな』

 

 カミサマの言葉は、アラタにとって希望となる。その可能性があれば、善は急げだった。

 アミとアラタは頷き合うと、すぐさま走り出す。この事件の元凶を捕まえ、事件を終わらせるために。そんなアミたちを、来人とブラックグラウモンは慌てて追うのだった。

 

『だが、気をつけろ。おそらくその娘をそうした元凶とこの空間の元凶は別だ』

 

 そんなカミサマの不吉な言葉を聞きながら。

 途中、何やら奇妙な白衣のおじさんがいたような気もしたが、アミとアラタは気にも止めない。それだけ、必死だった。

 走りに走って、この空間をしらみつぶしにしているのではないかというほど走って、その先にいる元凶を見つけ出す。

 

「っ! あんた……西野さん」

 

 そうして見つけた元凶。何の皮肉だというのか。

 

「もしこの世に神様がいるなら、オレのことが嫌いなのかもな……」

 

 思わずアラタがそう言ってしまうほどで――そう。この事件の元凶はアラタの知り合いだった。

 

『我は関係ないぞ』

「わかってるよ!」

 

 来人たちの前にいるのは、一人の女性。アラタに西野さんと呼ばれたその女性の背後には、先ほどのワイズモンがいる。これで犯人ではないなど、どう足掻いても言えるはずがない。

 

「あら……真田くん! ちょうどいいわ! 見て、私の漫画! 新作よ! 真田くんが一番のりなんだから」

「……笑えねぇよ。漫画って……ソレか?」

「そうよ! これなら、文句なしにデビューできるよね!? プロとして……みんなに楽しんでもらえるよね!」

 

 そう言う西野には、どこか狂気の色があった。

 その西野が漫画と言い張っているものですら、壁に描かれた落書きのようなもので――この場の全員がどんなに好意的に解釈しても、それは漫画だと言えるようなものではなかった。

 

「ほんとに笑えねぇよ。こんなことになって、それでも漫画を書いて……っ」

 

 アラタの言葉は最後まで続かなかった。

 まるで親の仇を見るような目で、西野に睨まれたのだ。そのあまりの圧力に、アラタは黙ってしまったのである。

 

「真田君もあいつらと一緒なんだ……私の作品を無意味に貶して……私の夢を邪魔して……嘲って、恥辱めて……何事も無かったように……笑って生きていられるんだ」

「いや、オレは……」

「ふざけないでよ! 自分で書きもしないくせに! 苦労も知らないくせに! 批評家気取って! 些細な理由で馬鹿にして!」

 

 それは、感情の吐露だった。

 激しい感情の激流に、アラタだけではなく、成り行きを見守っていた来人たち全員が黙らされるしかなく――そして、そんな感情に満たされていくかのように、ワイズモンはどんどん巨大化していった。

 

『どうやら、あの娘の感情に暴走しているようだな。このままでは、自滅するまで際限無く強力になっていく』

 

 カミサマに言われるまでもなく、薄々そのことに気づいていた来人たちは、急ぎ戦闘態勢をとる。その間にも、ワイズモンは巨大化を続けていた。

 

「いつか! いつかはすごいのを作るから! お前らみんなが虜になるような……! だから、それまで見ないで! 見ないで……みないで……ミナイデ……ミナイデェェェェェエ!」

『……すまん、あの哀れなデジモンを助けてやってくれ』

 

 見てられない。そう言わんばかりのカミサマの声。

 無論、カミサマに言われるまでもなかった。

 

「西野さん絶対に止めるよ。オレが……!」

 

 そう言ったアラタは、どこか覚悟を決めたような真面目な顔で――そんなアラタの思いに答えたのだろう。アラタが連れていたケラモンが光を放つ。

 それは進化の光だった。ケラモンの姿が変わる。一瞬後、この場に現れたのは、まるで鞭のようなものを生やした蛹デジモンだった。

 そのデジモンこそ、クリサリモンと呼ばれる成熟期デジモンである。

 

「進化した……!」

「……よし。これで成熟期が三体……」

『未だ苦しいことには変わりないがな』

「それでもいいよ。私たちだっているんだから!」

 

 そんなアミの言葉に従うように、テリアモンたちがこの場に躍り出る。その目は、先ほどのリベンジに燃えていた。

 七対一。数の力対質の力。そんな戦いが始まった。

 




というわけで、第二十一話。
表は犯人の下にたどり着くアミたちの話。
裏は地味にスルーされた科学者アケミの話でした。

そんなこんなで、さて次回。
戦闘回ですね。
アミたちは勝てるのか。そして、アケミに出番はあるのか。

それでは次回もよろしくお願いします。
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