【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第二十二話~数VS質~

 巨大化したワイズモンの戦い始めた来人たち。だが、状況は悪い。

 戦況は、ワイズモンの有利で進んでいるのだ。

 

「ふっ!」

「はぁっ!」

 

 来人とブラックグラウモンが駆け、ワイズモンに殴りかかる――が、その直後にワイズモンの両手に持っている玉が胎動。

 来人たち二人は、“何か”によって吹き飛ばされた。

 

「ぐっ……!」

「ぐあっ!」

 

 不可視の攻撃。おそらくは衝撃波か何かだろうが、詳しいことがわからない来人たちには、何かとしか言い様がなかった。

 

「行けっ! クリサリモン!」

 

 この場に響き渡るアラタの声。その指示を聞き届けたクリサリモンが、動き出す。蛹のような身体から生える鞭のような触手が、ワイズモンめがけて殺到する。その数は六。

 あらゆる方向から自分に迫り来るその触手。しかし、その瞬間にワイズモンが持つ玉が再び胎動し――。

 

「ミナイデェェェェ!」

 

 ――どこからか現れた雷雲、そこから発生した電撃によって、クリサリモンの触手は迎撃された。

 未だ、ワイズモンは一歩も動いてはいない。来人たちが攻撃しなければ迎撃に動くこともないことから、もしかしたら動けないのかもしれないが、そこは問題ではない。問題なのは、この場の最高戦力である成熟期デジモン三体が手も足も出ていないということだ。

 

「何か……まだデカくなってねぇ?」

「確かに……ちょっと大きくなってる?」

 

 アラタとアミが、思わずといった風に唸る。

 その言葉通りに、戦闘が始まってもワイズモンは着々と大きくなってきていた。

 ちなみに、アミは“ちょっと”と言ったが、今のワイズモンは戦闘開始時と比べて一メートルは違う。ちょっとどころの話ではない。

 

「これ、まずいだろ」

『……そうだな。早急にどうにかすべきだ』

 

 大きくなることが、力を増している証だと考えるのならば、来人の言った通り少々まずい。これは、時間を追うほどに来人たちが不利になるということだからだ。

 

「カミサマ、アイツに何か弱点はないのか?」

『普段ならば自分で探せと言うところだが……致し方ないか。ワイズモンは少し特殊なデジモンだが……戦闘においてのノウハウを簡潔に言うのならば……そうだな。あの両手の玉をどうにかすることを考えよ』

「両手の玉……? あれか」

 

 カミサマに言われて、来人はワイズモンの両腕を見る。

 ワイズモンの両手のひらの上。そこに、ぼんやりと発光しながら浮いている玉があった。

 

『ワイズモンはあの玉でさまざまな事象や物証を記録、再生する。あれさえ壊せば、どうとでもなる』

「さっきの攻撃の時、あの玉が何か反応してたように見えたのはそういうことか……!」

 

 先ほどまでの攻防を思い出して、来人はハッとして気づいた。先ほど、来人たちが攻撃した時に、あの玉が反応したことに。

 あれが、カミサマの言う再生をしたということなのだろう。来人たちは、再生された事象によって吹き飛ばされたのだ。

 

「聞いてたか!?」

「ああ、もちろん!」

「あの玉を狙えばいいんだろ! へっ。朝飯前だっつーの! クリサリモン!」

「みんな! アラタたちのサポートをして!」

 

 来人の言葉に、応えた面々が動き出す。

 ブラックグラウモンとクリサリモン、来人があの玉を破壊するために動いて――そんな来人たちよりも早く、アミのデジモンたちは動いていた。いわゆる、陽動として。

 アミのデジモンたちが、ワイズモンを攻撃する。効くか効かないかは問題ではない。少しでもワイズモンの気を逸らすことができればいいのだ。

 

「……! “データクラ――」

「……よっし、今だ! “スタンビート――」

「本気で行くよ! “プラズマ――」

 

 クリサリモンがその触手で逃げ場をなくし、技で強化された来人の拳とブラックグラウモンの肘ブレードが本命として、ワイズモンの玉を砕く。そういう作戦だった――のだが。

 

「コナイデェエエエエエ!」

 

 ワイズモンの攻撃は、来人たちが玉にたどり着くよりも早かった。

 玉が胎動する。アミのデジモンたちも、来人たちも、誰も彼もをワイズモンの攻撃は吹き飛ばす。来人たちの攻撃は、届かなかった。

 

「くそっ! もう少しだったのに……!」

 

 立ち上がりながら、来人は上手くいかなかったことに悪態をつく。

 とはいえ、この一度が成功しなかったから、次も成功しないとは限らない。そう考えて、来人は成功するまで何回もやる気だった。

 

『……いや、待て』

「なんだよ、カミサマ?」

『我々はそれでいい。だが……アラタと言ったな。貴様のすべきことは我々とは違うだろう』

「あ? なんだよ、他に何かあんのかよ」

 

 カミサマの言葉に、訳がわからないとばかりに返すアラタ。

 この場において、ワイズモンをどうにかすること以外でしなければならないことなどあるのか。彼の目は、雄弁にそう語っていた。

 一方で、アミと来人は、カミサマの言いたいことに気がついたようである。

 

「なるほどな。アラタ! 頑張れ!」

「アラタならできるよ!」

「いやいやいやいや、ちょっと待て。おたくらだけわかっても意味ないんだよ!」

 

 思わずといった風に叫ぶアラタだったが、残念ながら彼に拒否権はなかった。

 アラタがそれ以上に何かを言う前に、アラタを抱えたのは――ブラックグラウモンだ。

 

「こっちは心配すんな。任せとけ」

 

 そう言った来人が、駆ける。

 当然、何の策もないただの突撃だ。そんなもの、ワイズモンに通じるはずもない。ワイズモンの持つ玉が、胎動する。

 それが、ワイズモンの攻撃開始の合図だとは、来人たちもわかっている。

 わかっているからこそ――。

 

「“エキゾーストフレイム”!」

 

 ――ブラックグラウモンが、本気を出す。

 彼の口から放たれたその炎は、真っ直ぐにワイズモンの下へと向かっていく。そして、先に駆け出していた来人と共に、ワイズモンの攻撃によって吹き飛ばされた。

 結局、来人もブラックグラウモンも、ワイズモンにダメージは与えられなかった。だが、だからといって、無意味であったかというとそうではない。

 来人たちの狙いは、ダメージを与えることではなく――ワイズモンの目隠しだったのだから。

 

「痛い……で、どうだった?」

「バッチリ! ブラックグラウモンのおかげ!」

「へへ! どんなもんだ!」

 

 アミとブラックグラウモンのその言葉に、自分たちの作戦が成功したことがわかって、来人はニヤリと笑う。今この場に、アラタはいなかった。

 

「後はこっちだけだね」

「ワイズモンの玉狙いだな。クリサリモンも、アラタはいないけど協力してくれよ?」

「……」

 

 来人のその言葉に、クリサリモンは沈黙を返す。が、言葉がないからといって、否定しているわけではないようだった。

 そんなクリサリモンに頷いて、来人はワイズモンの方を向かい合う。戦闘開始時から比べて、二メートルほど大きくなっている。もはや、見上げなければならない大きさだった。

 

「よし。ブラックグラウモンと俺、クリサリモンを主軸として行く。さっきと同じように、出来るまで何度でもやるぞ」

『幸いにしてワイズモンは暴走状態のようなもの。最も警戒しなければならない技は使えなさそうだ。臆さず行け』

 

 カミサマの言葉に背中を押されて、来人は駆け出した。

 また、ブラックグラウモンも動き出した。肘のブレードを準備しながら、同時に必殺技の準備をする。技を併用することで、少しでも成功のための確率を上げるつもりなのだ。

 

「みんなっ!」

「お~!」

「うん!」

「了解デス」

 

 そんな来人たちに追従するように、アミたちも動いた。多少の無理と無茶は承知の上で。

 デジモンたちの攻撃が、ワイズモンを次々と襲う。何度失敗しても、何度でも立ち上がって、スタミナの続く限り何度でも。

 もし、ワイズモンが正気を保っていたのならば、そのしつこさに辟易としたことだろう。

 

「ミナイデェ……ミナイデェミナイデエ!」

「“エキゾーストフレイム”!」

 

 玉が胎動し、発生する衝撃波。

 それを焼き尽くさんとばかりに、ブラックグラウモンが炎を吐く。炎と衝撃波。そこには、成熟期と完全体の差があって――炎は衝撃波に消され、衝撃波だけが押し通る。

 何度目かわからない衝撃波に、ブラックグラウモンは吹っ飛ばされそうになる――が、吹き飛ばなかった。

 

「ぬぉおおおおお!」

「む~!」

「ふぅうううう!」

「……!」

「モウ少シデス」

 

 なぜなら、来人が、アミが、この場にいるデジモンたち全員が、ブラックグラウモンの後ろで彼を支えていたからだ。

 ワイズモンの技は、あくまで記録していたものの再生だ。記録していた時間だけしか、再生できない。それはつまり、ワイズモンの意思で技の延長ができないということだ。

 数秒の後、衝撃波は止まる。来人たちは、耐えた。耐えることができた。

 

「ぜぇぜぇ……今だっ!」

「おう!」

 

 せっかく生まれたこのチャンス。逃すことはしない。

 衝撃波が終わった直後に、ブラックグラウモンは来人を()()()。ワイズモンの玉が再び胎動する――が、遅い。

 

「ナイス!」

「……!」

 

 その時には、投げ飛ばされた来人は、ワイズモンの下にやって来ていたのだから。勢いのままに、来人はワイズモンの玉に激突する。

 来人が激突した方の玉が砕けて――。

 

「うぉおおおおお! “プラズマブレード”!」

 

 ――飛び出したブラックグラウモンが、もう片方の玉も砕いた。

 

「よっし……!」

『これでワイズモンは戦えない。我々の勝ちだ』

 

 ワイズモンの攻撃の源を絶った。カミサマの言う通りならば、ワイズモンはもう攻撃する術を持たないということで、実質上はこれで来人たちの“勝ち”である。

 その事実を前に、未だワイズモンは倒れてはいないが、来人たちは喜んだ。喜んで、しまった。

 

『っ。馬鹿者共!』

「え……? っ!」

 

 だからだろうか。カミサマの言葉に、来人たちが正気を取り戻した時は、すべてが遅かった。

 ハッとしてワイズモンを見れば――膨らんでいた。巨大化ではない。文字通り、膨らんでいたのだ。まるで風船のように。

 その光景は、風船が破裂する瞬間のようにも見えて、来人の勘が言っていた。このままではアミがまずい、と。

 

「っ! アミ!」

「えっ……?」

 

 来人は覚えた嫌な予感のままに動き出す。即座にアミを抱き寄せ、彼はワイズモンに背を向ける――が、アイギオモンとしての来人の身長は、アミよりも低い。

 自分だけではアミを庇えない。来人はその事実に歯噛みをするしかなくて――。

 

「アンタにアミは任せないんだから! アミはアタシが守る!」

 

 ――そんな来人の前に飛び出したパルモンが、まるで宣言するかのようにそう叫ぶ。

 直後、そんな彼女の意思に触れたのだろう。パルモンの姿が、光と共に大きく変わった。まるで巨大なサボテンのような、トゲモンというデジモンに。

 それが進化であると思い至る前に――。

 

「っ!」

 

 ――ワイズモンが、爆発した。

 




さて、もう11月ですね。早い……ともあれ、第二十二話。

ワイズモン戦ですね。
勝因(?)は正気を失っていたから。
もし、ワイズモンが本来の意志でもって主人公たちと戦ったのならば勝てませんでした。

さて、次回。
少しだけ時を遡って、途中からサラリとフェードアウトしたアラタの行動。
そしてこの一件のラストですね。

それでは次回もよろしくお願いします。
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