【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第二十四話~バイトの手伝い~

 秋葉原の一件から数日経った日のこと。

 来人とブラックグラウモンは、変わらぬ日々を過ごしていた。

 

「今日も見つからないな!」

「だな……はぁ」

 

 そう。イーターを探してクーロンエリアを行ったり来たりしたり、襲い来るハッカーたちを撃退したりする日々を。

 

『やれやれ。情報が入りそうなあの娘と行動を共にしないのは、貴様のワガママだろう。ワガママを通すのだから、文句も言わずにしっかりと探せ』

「文句は言ってないだろ! ってか、最近のカミサマはそればっかりすぎる!」

 

 呆れたように言うカミサマに、思わずといった風に声を上げる来人。

 まあ、カミサマのこの言葉は、ここ数日の間、それこそ耳にタコができるほどに聞いているのだ。来人がそう言うのもある意味仕方のないことかもしれない。

 

『しかし、現実世界でもイーターが出現しているか。何とかして我々もそこへと行けないものか?』

「うーん……どうだろうな。ってか、仮に行けたとしても……イーターを倒すと俺たちが存在できる空間を作ってるあの現象は終わる。そしたら、俺たちはどうなるんだ?」

『ふむ、確かに。前はあの娘の持ち物があって助かったのだから、どうなるか。やはり、この場で地道に探すのが……む。ブラックグラウモンはどうした?』

「え? さっきまでそこに……あれ」

 

 話に夢中になっていたカミサマと来人は、どこかへと消えたブラックグラウモンに気づけず、慌てて辺りを見回した。

 幸いにして、遠くには行っていないようだ。近くに見える角から、ブラックグラウモンの尾が覗いていた。が、尾は忙しなく動いている。その様子からしても、何かをしているらしい。

 疑問に思った来人は近づいて行って――。

 

「おい、何してるんだ?」

「おっ。ライト! いやな、こいつを見つけたんだよ!」

「……あのさ、他の奴いる時にその名前で呼ぶなよ」

 

 ――そんな来人にブラックグラウモンが見せたのは、布を被ったようなデジモンだった。その布に顔がついていて、ともすれば一昔前のオバケのようにも見える。

 こういうのが流行りのコワ可愛いという奴なのだろうか。そんなことを来人はぼんやりと思う。

 

『バケモンではないか』

「え? こいつデジモンなのか?」

「成熟期のデジモンだぞ?」

「マジかっ!」

 

 パッと見、間抜けで弱そうにしか見えないデジモンが、自分と同格。その事実に、来人はデジモンという種の恐ろしさを感じた。

 まあ、そんな来人の想像通りに、バケモンという種は直接的な戦闘力では成熟期の中でも指折りの弱さを誇っていたりするのだが――それは、来人には知りようもないことである。

 

「隅っこでオレたちを見てたから、何か用だと思ったんだよ」

「そうなのか?」

 

 ブラックグラウモンの言葉に、来人は首を傾げながらバケモンを見る。見つめられたバケモンは、やがてプルプルと震えて――。

 

「覚えてろぉおおおおお!」

「……?」

 

 ――そんなセリフと共に、逃げていった。

 一体何だというのか。来人もブラックグラウモンも、神様であるカミサマにもわかりようのないことだった。

 ともあれ、そんな訳のわからない出会いの後も、来人たちはイーター探しを続ける。

 

「おい、ライト! あれ」

「だから、名前……ん? げっ」

 

 そして、探し続けて見つけたのは、残念ながらイーターではなかった。というか、ある意味イーター以上の難敵だった。

 そう。そこにいたのは――。

 

「あっ! アイギオモンくん!」

「うげっ。おい、アミ? アレってデジモンじゃ……!?」

「大丈夫大丈夫。あの子は良い子だから!」

 

 ――そこにいたのは、アミと白い制服の少年。どちらも、来人の知り合いだった。

 アミはともかくとして、その隣の白い制服の少年。リョウタという名のその少年は、来人と同じ学校に通っている少年だ。というか、実はアミと並ぶほどの来人の幼馴染で、知り合いというレベルではない。

 

「……は、はじめまして……言葉は通じるよな?」

「通じるよ。俺はアイギオモン。で、こっちが……」

「ブラックグラウモンだ! よろしくなっ!」

「あ、ああ……」

 

 リョウタのデジモン知識は、ハッカーが使うプログラムという程度のもので、こうして言葉が通じるとは思っていなかった。

 だから、差し出された手と言葉に、彼が戸惑ってしまったのも仕方のないことだろう。

 まあ、こんなところで思いがけない相手との出会いに戸惑っているのは彼だけではないのだが。

 

「で、リョウタとアミは……何でここに?」

 

 まさかの自分をよく知る二人とのエンカウント。アミの方はいいとしても、リョウタの方は来人としても想定外だった。

 幼馴染として、自分のことをよく知る二人だ。今の来人があまり会いたくない相手である。

 まあ、実を言えば、来人にとってあまり会いたくないのは、アミ限定の話なのだが。

 とはいえ、会ってしまったのだから仕方なかった。自分の正体を悟られないように、恐る恐るな内心を顔に出さないように注意しながら、来人は言葉を紡いでいく。

 

「私たち? えっと……リョウタの依頼でね……」

「リョウタの?」

「ああ。バイトの手伝いを頼んだんだ」

「それっていいのか? お前のバイトだろ、リョウタ」

「うぐ……それは、まぁ……時間がないから仕方ないんだ!」

 

 来人の言葉に呻きながらも、リョウタは説明する。

 彼の受けたバイトはオカルト系の実証をするバイトらしく、EDENで噂の幽霊を写真に収めてくることが成功条件なのだそうだ。で、アミがEDENに詳しいから、手伝いを依頼したとのこと。

 まあ、それはいいのだし、納得できなくもない――のだが、来人とカミサマには一つ気になることがあった。

 

「噂の幽霊……それってあの白い幽霊か? あのイーターが出るときの兆候だし、もし撮れたとしても危険だろ」

『娘。その少年が貴様の友人だというのなら、危険なことは危険だと言わねばならぬぞ』

「う……」

 

 来人とカミサマの責めるような口調に、アミはしゅんと落ち込む。が、アミとしても、二人の言葉は正論だとわかったからこそ、何と言うこともできなかった。

 

「まぁでも、その様子じゃ見つかってないんだろ?」

「うん。かれこれ三時間くらい探してるんだけど……」

 

 白い幽霊を探して、アミたちはかれこれ三時間も探し回ったらしいが、どうやら見つからなかったらしい。

 まあ、仕方ないことだろう。一日中探し回っている来人たちですら、見つけたことがないのだ。これでアミたちがあっさりと見つけられたら、来人は本気で自分の運のなさを呪う。

 

「で、そろそろ時間もないし……でっち上げようかって」

「でっち上げる? 幽霊をか? 命は大切にしろよ」

「いや、そういう意味じゃないからな」

 

 ブラックグラウモンに、呆れたように返す来人。

 ともあれ、そんな彼は、リョウタのでっち上げるという言葉に安堵していた。そんなものでそのバイトが成功するかどうかはともかくとして、そちらの方がよっぽど安全だろうからだ。

 

「幽霊役、は……もしかしてアミか?」

「そうだけど?」

「やめとけ。そいつ、演技力ないから」

「なんで知ってるの!?」

 

 思わずといった風に叫ぶアミだったが、正体を隠している来人が答えられるはずもない。

 リョウタもアミの演技力のなさは知っているはずである。だというのに、なぜそんな選択をしたのか。おそらくは忘れているのだろうが、来人はほとほと彼に呆れていた。

 

「まぁ、とにかくやろうぜ!」

 

 そう言って、リョウタはデジヴァイスをカメラ撮影モードにして構える。そんなリョウタを見て、来人はこの場を去ろうとした――。

 

「ま、頑張れ。じゃ、俺たちはこれで……」

「何言ってるんだよライ……アイギオモン! 面白そうじゃないか!」

 

 ――のだが、一方でブラックグラウモンは動く気配がない。そんな彼の身体を前に、来人はこの場を離れるという選択肢ができなかった。

 

「はい、チーズ!」

 

 リョウタの元気な声が辺りに響く。

 来人とブラックグラウモンの前で、アミを幽霊役に据えた写真撮影が行われていっていて――。

 

「阿呆が」

『阿呆が』

 

 ――そんな光景に、来人とカミサマが同時に同じことを言った。

 まあ、それもそうだろう。それくらい、リョウタとアミのしていることは傍から見ていて滑稽にすぎることだったのだ。

 

「……へぇ! 見たものを絵にできる写真ってのもすごいけど、()()が幽霊になる人間もすげぇな!」

「いや、ブラックグラウモン。アレを人間全員の価値観として見ないでくれ。あんなものは幽霊にならない」

 

 キラキラとした目でその光景を見るブラックグラウモンに応えながら、来人は呆れた目で目の前の茶番を見続ける。

 そう。茶番だった。何の特殊メイクもせず、ただ腕を前に構えて幽霊“っぽい”ポーズをしているだけの格好を写真に撮って、それを幽霊と言い張るなど。

 本気で言い張るのならば、よほどの間抜けである。ネタで言っているのならば、まあ、アミの容姿も相まって何とかなるかもしれないが――どちらにせよ、リョウタのバイトの趣旨には合っていないだろう。

 

「よし! これだけ撮れば……!」

「やめとけよ」

「恥ずかしかったぁ……」

「だったらやめろよ」

 

 満足気なリョウタと顔を赤くしているアミの二人を、来人は呆れた風に見て――。

 

「見つけたぞー」

 

 ――そんな時のことだった。

 間の抜けたような声と共に現れたのは、バケモンだ。さらに、先ほどのバケモンだけではなく、その数は五匹に増えている。どうやら先ほどの言葉通りに、仲間を連れて戻ってきたらしい。

 

「さっきはよくもやってくれたなー」

「何かやった記憶がないんだけど……ってか、さっきのバケモンはお前じゃなくてその後ろのお前だろ」

「ギクッ……ば、バレたら仕方ない! やっちまえぇぇぇ!」

 

 一体何だというのか。何だかよくわからないが、殺気立ったバケモンたちに取り囲まれたのだ。来人とブラックグラウモンは渋々と戦闘態勢をとる。

 そんな来人たちを助けようと思ったのだろう。アミは、デジヴァイスから二体のデジモンを出して――。

 

「っ。アイギオモンくん! みんな出番だよ! トゲモン! ()()()()!」

 

 ――その片方のデジモンに、来人は驚いた。

 現れたそのデビモンを来人は見たことがある。デビモンという種での括りではなく、その個体を見たことがあって、だからこそ驚いたのだ。

 そう。そのデビモンは――ジミケンとの戦いでの時、暴走した来人が殺しかけた個体だった。

 

「うげぇぇええええ!?」

 

 一方で、新たなデジモンの登場に驚いていたのは来人だけではない。

 来人たちを取り囲むバケモンも、その二体の成熟期デジモンの登場に驚くしかなかった。彼らは、直接的な戦闘力が弱いために、数を揃えてきた。だというのに、いつの間にかその数でさえも近づかれている。

 しかも、来人たちは全員が直接戦闘能力が高いタイプだ。今、バケモンたちは、恐ろしいまでの迫力に襲われていた。

 

「こんなの相手にしてられるかー」

「あんた一人でやってくれ」

「うげー!」

「いやぁぁぁぁぁ」

 

 勝ち目がないと悟ったのだろう。

 一匹、また一匹とバケモンたちは逃げていく。気づけば、この場にいるのは一番初めに会ったバケモンだけで――。

 

「覚えてろぉおおおおお!」

 

 ――そんなバケモンは、先ほどと全く同じセリフを言って逃げていく。

 一体何だというのか。容姿に違わないバケモンの奇っ怪な行動に首を傾げる来人たちだった。

 ちなみに言えば、バケモンのこの行動は自分たちよりも強そうな来人たちを驚かすというイタズラをしようとしていただけなのだが、それはほんの余談である。

 

「ま、なんにせよ……なんでデビモンはアミと一緒にいるんだ?」

「……」

「あっ。デビモンはジミケンに改造された影響で喋れなくなっちゃったみたいなの。今までミレイさんに預けておいたんだけど……」

 

 助けてくれた恩もあって、自分に着いて来ることになったのだ、と。そう言ったアミを前に、心当たりのありすぎる来人は明後日の方向を向くことしかできなかった。

 心なしか、デビモンは身体が震えている。さらに、恐怖の篭った視線で見つめられるとあっては、自業自得であるが、ちょっとだけショックだった来人だった。

 

「あれ……リョウタは?」

 

 忘れていた。そう思って、来人は辺りを見渡すと、いた。

 リョウタは何やらデジヴァイスを弄って、何かを見ている。

 一体どうしたのか。そう思った来人が近づくと――。

 

「おい、アイギオモンだっけ? おかげでいい写真が撮れたよ。ありがとう」

「はい……?」

 

 ――がっしり、と。感極まった様子でリョウタは来人の手を握る。

 そして、来人に見せるのは、バケモンの写真で――そこまでいって、ようやく来人は思い出した。リョウタのバイトのことを。

 どうやら、リョウタは先ほどのバケモンのことを、来人が自分に協力してくれた結果だと思っているらしかった。

 

「いやー……これで何とかなりそうだ。デジモンの幽霊! これ行ける!」

「リョウタがいいならいいけど……私のやつは?」

「ああ、そっちは現像して来人にでもあげとくよ。アイツなら喜ぶだろうしな」

「なんでっ!?」

「……」

 

 自分の恥ずかしい写真がばらまかれる未来に、アミは堪らず叫ぶ。

 その後ろで、何とも言いたくない来人は黙り込むしかなかったのだった。

 ちなみに後日、来人の身に起こった異変を知らないリョウタの手によって、アミのあの写真の数々はバッチリと来人の部屋に郵送されたのだった。

 




というわけで、第二十四話。

リョウタのバイト話でした……が、微妙に原作とは違いますね。
ちなみに、今回の話のバケモンたちは一発キャラではありません。

さて、次回からはいよいよ原作のあの事件です。

それでは次回もよろしくお願いします。
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