【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第二十五話~無謀な友人~

 リョウタのバイトから数日後。

 現像された“あの”写真が家に届いている頃だと思うと、早く人間の身体に戻りたいと“久々に”思えた来人。いつもの二割増の気合でイーター捜索をしていた。

 

『普段からこれほどのやる気を出していればな……しかし、いくら思い人とはいえ、あのようなくだらん写真など貰って嬉しいのか? 人間の価値観はよくわからん』

「あれが幽霊に見えるんだし、きっと何かフィルターがあるんだろ」

「べ、別にいいだろうが! っていうか、ブラックグラウモンのは微妙に違う!」

 

 まあ、気合があろうとなかろうと、いつものようにイーターを見つけることはできなかったのだが。

 

「けど、ここ数日戦闘になってないよなー……こうも戦わないと身体が鈍るぜ」

「仕方ないだろ。相手がいないとどうしようもないんだし」

「それだ!」

 

 急なブラックグラウモンの叫びに、来人は首を傾げる。

 一体どれなのか、来人にはわからなかったのだ。だが、疑問に首を傾げる来人の前で、どんどんブラックグラウモンは話を進めていく。

 

「相手がいないのなら、作ればいい! ライト頼む!」

「……え?」

 

 ブラックグラウモンの言っていることの意味は、彼にもわかった。というか、話の流れからしてわからない方がおかしい。

 

「嫌な予感がするけどさ。一応聞くけど、俺に相手しろって言うんじゃないだろうな?」

「そう!」

『いいではないか。時々の息抜きは必要だ』

「……」

 

 カミサマにも同意されては、来人にはどうすることもできなかった。

 まあ、来人としても別に戦うのが嫌というわけではないのだが。

 決まったのならば、善は急げである。場所を移動して、ハッカーたちの来なさそうな場所へと来人たちは移動する。

 移動して、向かい合った来人たちは――。

 

「はぁぁぁっ!」

「らぁっ!」

 

 ――その一瞬後、合図もなしに戦い始めた。

 拳と爪が幾度も交わっていく。戦況的には互角だった。互いが互いの攻撃を躱し、受け流し、防ぐ。それは、まるでいつかの焼き直しのようだった。

 

「……っ。やっぱすごいな! ライト、前より強くなってるじゃないか!」

「それについてくるお前もだろうが!」

 

 戦いが始まって、はや数分。

 この間で、来人もブラックグラウモンもわかった。目の前にいる者が、数日前までとは違うことに。数日前までと同じ感覚でいれば、痛い目を見るのは自分であるということに。

 

「やっぱりお前と一緒に行動していてよかったわ!」

「そうかい!」

 

 来人の右の拳が放たれる。放たれた拳が、迫り来るブラックグラウモンの左手の爪を防いで――彼らは、そこで動きを止めた。

 

「へぇ。面白くなってきた」

「はぁ。面白いもんか。余計に面倒になっただけじゃないか」

『仕方ないだろう。こうなった以上は覚悟を決めろ』

 

 来人とブラックグラウモンの二人は気づいたのだ。自分の戦う相手が、目の前にいる相手ではなくなったことに。自分たちの様子を伺う、誰かの存在に。

 頷き合うことすらせず、二人はくるりと反転する。そして、駆け出した。そんな来人とブラックグラウモンは、近くの角を目指す。

 

「うぎゃぁっ! 気づかれたぁぁぁぁぁぁああ!」

 

 響き渡る悲鳴。それは、その角に隠れていた人物が上げたものだった。

 悲鳴を上げるやいなや、人物は逃亡を図る。が、来人とブラックグラウモンを前に、それは無謀だった。結局、数メートルしか逃げることができず、来人たちに捕まることになる。

 

「で、なんで俺たちを見てたんだ?」

「ごめんなさいごめんなさい! デジモンって珍しいから、つい出来心で!」

 

 捕まえてみて初めてわかったが、その人物は男で、ハッカーたちではないようだった。服装がハッカーたちとは違う。

 ついでに言えば、ブラックグラウモンが怖いのだろう。そちらに視線を固定したまま、その表情は恐怖に染まっていた。

 

「……なんだ? ってことは、オレたちを襲おうとしてたんじゃないのか?」

「もちろんです!」

 

 いつものハッカーたちのごとく、自分たちを襲う算段でもしていたと思えばこの様子。来人とブラックグラウモンは、拍子抜けだった。

 

「……ま、襲って来ないならいいや。どうする? 続きするか?」

「いや……冷めちゃったし、いいや。また明日辺りやろうぜ」

「それはそれで嫌だな」

 

 男を前に話す来人とブラックグラウモンだが、当の男としてはこの状況から早く逃げ出したかった。彼にとってはそれだけ、デジモンという種が恐ろしく見えたのだ。

 

「あ、あの! もう行っていいですか? これから予定があるので……!」

「んあ? ああ、別に構わないよ。脅かしたみたいで悪かったな」

「い、いえ! それでは! もうデジモン・キャプチャーなんていらないよー!」

 

 来人に言われて、すぐダッシュで逃げていく男。

 だが、最後の言葉だけ、来人は気になった。あの言葉は、まるでデジモン・キャプチャーを手に入れられるかのような内容である気がしたのだ。

 あんなものをばらまかれては堪ったものではない。そんなことを思う来人だったが――そんな彼は見た。

 

「ん? あれは……リョウタ?」

 

 あの男と入れ違いになるかのように、自分たちの司会の片隅に入ってきたリョウタが、一心不乱にとある方向へと進んでいく姿を。

 

『ふむ。なかなかに鬼気迫る表情だな。一体何だというのだ?』

「あっちは下層だな。行き先はLV4か? どうするライト?」

「追う」

 

 聞いてくるブラックグラウモンに、来人は即座に返答した。

 只事ではない。あの必死な様子からしても、自分の勘からしても、それがわかる。何か、大変なことが起きている気がして、来人は走り出した。

 

『やれやれ。バレたくないと言っているくせ、自ら関わるか。……見捨てるよりは断然いいがな』

 

 呆れていながらも、どこか嬉しそうなカミサマの声が印象に残った来人だった。

 何はともあれ、リョウタを追う来人たち。先ほどブラックグラウモンが言ったように、彼の行き先はクーロンLV4と呼ばれるエリアだった。

 

「おい、ライト。なんか妙にハッカーたちが少なくないか?」

「気のせいだろ。リョウタのやつどこへ……」

 

 リョウタは迷っている様子がなく、どんどんと進んでいく。まるで目的地があるかのようなしっかりとした足取りだった。

 何か地図でも見ているのだろうか。そう考える来人たちの視線の向こうで、リョウタは立ち止まる。どうやら、目的地に着いたようだった。

 

『む……何やらいつぞやの仮面を被った者たちが来たぞ』

「ハッカーだな。三人か……ライト、どうするんだ?」

「もう少し近づいて様子を見るぞ」

 

 バレないように近づきながら、来人たちはリョウタの様子を探る。

 さすがに話している内容がわかるほどに近づけなかったが、リョウタが緊張していることに気づけるくらいには近づけた。

 そのまま、来人たちはこっそりと様子を覗いて――。

 

「何か揉めてるな」

『揉めてるな。何をやっているのだあやつは。接触して数秒も経たずに揉めるなど……もしや、殴り込みというやつか?』

「……言ってる場合じゃないだろ!」

 

 ――そんな来人たちが見た光景は、まるで電気のような攻撃で痛めつけられるリョウタの姿だった。

 事情は知らない。が、放っておけるはずもない。周りを気にすることなく来人は走り出す。そんな来人の後をブラックグラウモンは追って行き、来人たちはリョウタを庇うように躍り出た。

 

「な、何だこいつら!」

「こいつらもしかして……!」

「あの最近噂のハッカー殺しぃいいい!?」

 

 ハッカーたちは、そんな来人たちの登場に驚いて固まった。

 どうやら、襲い来るハッカーたちを返り討ちにしているうちに、来人たちは噂話ができるほどに有名になっているらしかった。

 

「ったく。危ないことに突っ込むのはアミだけで十分だっての……!」

『しかし、我が考えている通りならば、その気迫は買えるだろう。とにもかくにも、目の前にいるハッカーたちをどうにかするのが先だ。早急に無力化させるべきだな』

 

 デジモン・キャプチャーを使われるのは面倒であるし、リョウタを庇って戦うのもキツイ以上、カミサマの言う通りに早急な無力化が望ましい。

 だからこそ、慌ててくれるのは好都合だった。

 慌てた彼らが自分たちのデジモンを出そうとする前に――。

 

「はっ!」

「おらっ!」

『ふむ。見事だな』

 

 ――来人たちは動く。相手が対応しきれていないことに漬け込んだ、見事なまでの奇襲だった。

 

「ぐふっ!」

「ぐはっ!」

「あぎぃっ!」

 

 手加減したとはいえ、成熟期デジモンの一撃だ。

 そんなものを受けてただで済むわけがなく――ハッカーたちは、地面に倒れ込んで苦痛に呻く。そんな彼らを、ブラックグラウモンがその身体を使って無理矢理に押さえ込んだ。

 もちろん、動こうとすれば即座に対応できるようにしている。そのことがわかったハッカーたちは、まるで自分の首に鎌が添えられているかのような恐怖を感じて動けなかった。

 

「任せろっ! こっちは見てるから、リョウタのことを見てきていいぞ」

「悪い、頼む!」

 

 ハッカーたちをブラックグラウモンに任せて、来人はリョウタの方へと向かう。

 リョウタは、来人たちに助けられたという事実に目を見開いて驚いていた。彼は数日前に友人経由でちょこっと知り合っただけの者が助けに来るなど、思ってもみなかったのだ。

 

「っ……お前ら……この間の」

「ったく。一体何してんだよお前は!」

 

 呆れながら、来人はリョウタに事情を聞いて――。

 

「俺はサクラを助け……ぐっ」

「サクラ? 何かあったのか?」

 

 ――リョウタの口から漏れたサクラという名前。その名前を、来人は知っていた。もちろん、桜の木のことではない。リョウタが恋心を抱いている女子だ。

 サクラ、そして助けるという単語。そのリョウタの言葉を前に、来人は大雑把に事態を把握した。おそらく、サクラに何かがあったのだ。リョウタは、そんなサクラを助けようと思ってこのハッカーたちに接触し、そして返り討ちにあった。

 おおまかにはそういうことだろう。

 

「なるほどな。サクラが……」

「あいつらがサクラの居場所を知ってるはずなんだ……!」

「それじゃ、蹴散らさなかったのはちょうど良かったか。よし、待ってろ。今聞き出す」

 

 ブラックグラウモンに抑えられているハッカーたちがサクラの居場所を知っているというのならば、話は早い。

 善は急げ。来人は、ハッカーたちへと話を聞きに行こうとして――。

 

「アイギオモンくん! リョウタ! 大丈夫!?」

「ちょ、君この前のだよね!?」

 

 ――そんな来人の前にやって来たのは、アミとノキアだ。

 まあ、リョウタがこんなことになっている時点で、来人は薄々こういう気がしていた。が、それでも溜息を吐かずにはいられなかったのだった。

 




というわけで、第二十五話。

原作であった戦闘シーンは先手必勝の概念を元に、バッサリとカットされました。
ともあれ、次回からは原作主人公たちと共に殴り込みです。
またあの面倒くさい口調のアイツが登場します。

それでは次回もよろしくお願いします。
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