【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第二十六話~ジミケン再び~

 ハッカーたちを脅して、サクラのいる場所のURLを掴んだ来人たち。彼らは、急ぎその場所――デモンズアジトへと訪れていた。

 ちなみに、一連のMVPと言えるリョウタは、来人たちに助けられる前に受けたアバターのダメージが大きすぎたので、後を任せて退場した。

 

「ここが……何か歌が聞こえてくるけど」

「ジミケンの歌だよ! やっぱりサクラっちはここにいる!」

「リョウタのおかげだね。急ごう!」

 

 来人は、ここに来るまでの道中で現状をアミから聞いていた。

 あのジミケンがサブリミナル効果と後催眠効果のあるPV映像を使って、ファンの人々を失踪させていることを。サクラもそんな被害者の一人というわけだ。

 話を聞いた時、来人は何とも言えない顔をしたものである。あのジミケンか、と。

 

「この部屋だな。入るぞ……」

『慎重を期すようにしろ。あの娘がいるだけ無駄かもしれぬが』

「サクラっちー! 助けに来たよー!」

 

 大声を上げながら突入していくノキア。そんなノキアに、来人とアミは苦笑する。もう諦めた。そんな表情が、二人の顔にあった。

 

「これは……うん。何と言うか……カルトじみてるな」

「だね……」

「でも、やっぱり歌は悪くないんだよね……悪魔的だし?」

 

 部屋に入った面々が見たのは、ある意味ですごい光景だった。

 奥のステージであのジミケンが歌っている。それはいい。が、連れてこられただろう人々が、虚ろな目でジミケンを応援して、盛り上がっている。

 もはや不気味を通り越して異常だった。

 

『催眠の効果だろうな。急いだ方が……む? あの娘はどうした?』

「あの娘? ああ、ノキアか。ノキアなら……あれ? アミ、ノキアは?」

「え? あれ? アグモン、ガブモン、ノキアは?」

「え?」

「あれっ!?」

 

 ノキアが連れてきたアグモンたちに問いかけても、知らないらしく、狼狽えるばかりだった。一体どこに行ったというのか。

 辺りを見回して――初めに見つけたのは、ブラックグラウモンだった。

 

「おい、あれ……」

 

 その声には、どこか呆れが含まれている。

 なぜそんなに呆れているのか。来人たちはそう思って、ブラックグラウモンの指した方向を向いて――。

 

「きゃー! ジミケーン!」

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 ――そこには、周りの人々と同化しているノキアの姿があった。

 何と言うか、違和感がない。初めからそこでそうしていたと言われても信じられるほどに。

 

『あの阿呆は……何をしに来たというのだ?』

 

 カミサマの呆れたような声がこの場の全員の耳に届く。そんなもの、来人の方が知りたかった。

 

「ちょっと! ノキア何してるのさ。しっかりしてよ!」

「ノキア!」

「はっ!? あ、あたし今まで何を……!?」

 

 堪らずアグモンとガブモンが駆け寄って、ノキアを正気に戻した――が、それによってジミケンにバレてしまったようである。何と言うか、外見や言動に似合わず意外に目敏い。

 

「おいおいおいおい? フーアーユー? 誰だてめーら!? この“悪魔巡礼”に殴り込みたァ……逆にロックじゃぁねえか!」

「この鬱陶しいテンション……変わらないな」

「ああああああああ! ってか、お前ら! いつもオレ様の邪魔をするフールガールにいつぞやの悪魔的デジモンじゃねぇか!」

「なんか、そう言われるだけであの時の自分の姿に激しく嫌悪を抱くんだけど……」

「だ、大丈夫だよ! その……うん……」

 

 アミが励ましてくれるが、来人は立ち直れそうにない。

 暴走状態だったこともあって、その時の自分の姿は来人の知るところではない。が、悪魔巡礼だの、悪魔的だの、そんなことばかりを言うジミケンに“悪魔的”と言われたのだ。よっぽどな姿だったのだろう。

 二度と暴走してたまるか。ジミケンの言葉を前に、来人は改めて誓ったのだった。

 

「やい! あんたがアタシやサクラっちをこんな目に合わせて……一体何が目的!?」

「いや、ノキアのは自爆……」

「お黙り! サバイバートゥルースガール!」

 

 アミに向かってそう言うノキアだが、言葉が間違っているのはいいとして、テンションがおかしい。どうやら、まだジミケンに毒されているようである。

 

「ノキアぁ……やっぱりまだ変だよぉ」

「とりあえず、アグモンとガブモンはノキアを頼む。……しばらく耳を塞いで部屋の外に連れて行っておいてくれ」

「わかった!」

「あ、ちょま……」

 

 来人の言葉に、重々しく頷いたアグモンとガブモンは、ノキアを連れて部屋の外へと出て行く。

 まあ、いずれ正気になって戻ってくるだろう。とりあえず、そう思っておくことにした来人だった。

 

「はwwwあのいつぞやのアイホエールガールは一体何しに来たんですかぁ?」

「……今回ばかりは否定できないな」

「そんなことより! サクラや他の人たちを解放して!」

「はぁ? ここにいる生贄たちはオレ様が悪魔的スターになるためのもの! 解放なんかするわけねぇだろwww」

 

 この場の人々の解放を訴えるアミだったが、やはりと言うべきか、何と言うべきか。ジミケンは、それに応じようとはしなかった。

 まあ、元々こういう予感はしていた。であるのならば、来人たちのやることは一つだけである。

 

『……なら、仕方ない』

「力尽くだ。覚悟しろ」

 

 ジミケンの下へと向かっていこうとする来人。そんな来人に、アミは不吉なものを覚えた。具体的には、いつかのような感覚を。

 だからこそ――。

 

「アイギオモンくん……!」

 

 ――アミは、アイギオモンの手を握った。どこか遠くに行かないように、と。

 

「はwwwやれるもんならやってみろってwww今度という今度は容赦しねぇ! カモン! マイデジモンズ!」

 

 そんな来人たちの前で、ジミケンは二体のデジモンを出す。

 現れたのは、上半身が裸の人のようなデジモン。だが、青い炎と熱せられた鎖に身を包んでいて、どう見ても人ではない。そのデジモンは、デスメラモンと呼ばれる完全体デジモンだった。

 

『デスメラモンか。完全体が二体……厳しいぞ』

「完全体かよ……! ……それから、アミ。いつまで俺の手を持ってるんだ!?」

「え? あ……大丈夫?」

「……? 大丈夫だけど?」

 

 そんな来人の言葉に、アミは渋々といった様子で手を離した。なぜ彼女がそんなことをしたのかわからなかった来人だったが、そのことについて考える暇はなかった。

 いつの間にか周りの人々は壁際まで退避しており、部屋が来人たちに戦いやすいようになっていたのだ。

 

「ブラックグラウモン!」

「おう! 来人といると強い奴が寄ってくるな!」

「人のせいにするなよ!」

「みんなっ! 無理だけはしないで!」

 

 デスメラモンを前に向かい合う来人とブラックグラウモン。そんな彼らの後ろ姿に、アミもデジヴァイスからデジモンたちを出す。

 テリアモンにトゲモン、ハグルモンにデビモン。来人たちと合わせれば、成熟期が四、成長期二。デスメラモンは以前の暴走ワイズモンよりか弱そうとはいえ、やはり質では劣っていた。

 

「おやおやおやおや! そこな悪魔デジモンはwww以前ボコボコにされた激弱雑魚デジモンじゃないですかwww」

「……!」

「そんな雑魚を出すなんて血迷ってんなwww」

 

 そんなジミケンの言葉に、話すことさえできないものの、デビモンは悔しそうにしている。

 あんまりな物言いとデビモンの様子に、来人とアミの目がスっと細まった。

 

「愚かな……!」

「デビモンは雑魚なんかじゃない……! 私の大切なデジモンだよ!」

「……」

 

 アミのその啖呵に、デビモンはなおも悔しそうに俯いたままだ。

 そんなデビモンの様子に、ジミケンは腹を抱えて笑っていた。

 

「……わかってるよ。怖いんだよね? あの日、殺されそうになったことが……死ぬことが」

「……」

「安心して。デビモンは強いよ。強くなろうとして、恐怖に立ち向かってる。それは、強いから出来ることなんだよ」

 

 どこか安心させるように告げられたそれらの言葉は、デビモンに向けられたものだった。

 だが、その言葉を聞いてもデビモンは俯いたままだ。もちろん、デビモンとて見返してやりたいとは思う。アミにこれだけ言ってもらえているのだから、力になりたいとも思う。

 それでも、デビモンが足を止めてしまうのは、あの日の死神が脳裏から離れないからだった。

 

「はいはいwww茶番はそこら辺でwwwwwwオレ様にも時間があるので! やれぇ!」

「オォォオオオオ!」

「ォォォォオオオ!」

 

 戦い始めないアミたちに、いい加減我慢の限界が来たのだろう。ジミケンはデスメラモンたちに指示を飛ばした。

 

「っち。ブラックグラウモン!」

「おうよ!」

 

 未だ、アミは大切な用の最中である。

 そのことを悟った来人はブラックグラウモンと分担して、デスメラモンを一体ずつ受け持った。が、やはり強い。触れるだけでこちらが焼け爛れるほどの高温を常に纏っているデスメラモンを相手に、来人たちは戦況をギリギリで保たせることしかできなかった。

 そんな来人たちの気遣いをありがたく受け取りながら、アミはデビモンと向かい合う――。

 

「アミ。デビモンヲ放ッテオイテ、我々モ戦ウベキデス」

「そんな言い方はないよ! ハグルモン!」

「デスガ、彼ラダケデ勝ツ確率ハ低イ。二十パーセント有ルカ無イカデショウ」

「……!」

 

 ――が、そんなアミに向けられるのは、ハグルモンの冷静な分析だった。

 ハグルモンのその言葉を前に、アミは悔しそうに歯噛みする。ハグルモンの言っていることが正しいとわかったからだった。

 

「……そ、れは……でも!」

「私カラ言ワセテモライマス。デビモンガ雑魚ト呼バレルノハ仕方ナイコトカト」

「なっ、んでそんなこと言うの!」

 

 あんまりなハグルモンの言葉に、アミは声を荒げた。

 確かに、ハグルモンは機械というだけあって冷静な思考をする。が、まさかそんなことを言うとまでは、アミも思っていなかった。

 驚くアミを尻目に、ハグルモンは言葉を続けていく。

 

「力ガ有ロウト無カロウト目ノ前ノ敵ニ立ち向カワナケレバ、役立タズモ同ジ。己ノレッテルヲ否定シタクバ、行動デ示スシカナイノデス」

「それは……そうかもしれない、けど!」

「アミ。貴女ハ優シスギマス。時ニハ厳シクナルコトモ重要デス。デビモン貴方ハナゼ我々二着イテ来タノデスカ。役立タズデイルタメデスカ。我々ノ足ヲ引ッ張ルタメデスカ」

 

 未だ何も応えないデビモンに、苛立つこともなくハグルモンは淡々と話す。それは、彼にとって当たり前だったから。彼は、彼の当たり前のままに、彼の当然を話していく。

 

「私ハ御免デス。役立タズデイルコトハ。私ハ、アミノ力ニナルタメニ“ココ”ニイル……!」

 

 それは、ハグルモンの本心で、力強い覚悟だった。

 一瞬後、ハグルモンが光ったかと思えば、そこにいたのは全く違うデジモンで――アミたちは、思わず目をこすって呆然とした。

 呆然として、そして気づく。ハグルモンが進化したのだと。彼の覚悟が進化を呼んだのだと。

 

「ガードロモン。ソレガ今ノ私デス」

 

 分厚い装甲の茶色のロボット。それが、ガードロモンと呼ばれる成熟期デジモンだった。

 




というわけで、第二十六話です。

微妙に原作とは違いますが……本当に微妙にですね。
次回からは戦闘が本格化します。

それでは次回もよろしくお願いします。
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