【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~ 作:行方不明
進化したガードロモンの姿に、デビモンはまた悔しそうにしいた。
そんな彼の姿を知ってか知らずか、ガードロモンはアミに声をかける。
「アミ。指示ヲ」
「う、うん……! みんな!」
「オッケ~!」
「わかったわ!」
アミのその言葉で、デビモンを除く全員が来人たちに加勢する。
戦わずにこの場に残っているのは、デビモンだけだった。
「無理しなくていいからね?」とそれだけを言って、アミはデジモンたちへの指示を出すべく、戦況と向かい合う。
デビモンは、そんなアミに何かを言おうとして――。
「……!」
――だが、ジミケンの改造によって話すことのできなくなった口では、何も言うことはできなかった。
ともあれ、そんなアミたちの参戦によって、戦況は僅からながらに変化を見せる。
「はっ……“スタンビートブロウ”!」
「“プラズマブレード”! ……からのぉ“エキゾーストフレイム”!」
デスメラモンと戦い続ける来人たちが、アミのデジモンたちの参戦によって、戦闘初期よりかは楽に戦えるようになり始めたのだ。
とはいえ、負担が減っただけというだけで、不利であるという状況にはあまり変わりなかったりするのだが。
「オォオォオオオオオ!」
「っふ! はぁっ!」
敵は二体。その二体を、来人たちは分担して戦っていた。一体目のデスメラモンを相手にするのは来人とトゲモンで、二体目のデスメラモンを相手にするのはブラックグラウモンとガードロモン、そしてテリアモンだ。
デスメラモンの火力を前に、来人たちは苦しい戦いを強いられている。
しかし、厄介なのは火力ではなく、むしろ防御力の方。硬すぎると言ってもいいほど、来人たちの攻撃が通用しなかった。
「おらっ!」
「はぁっ!」
数の利を活かした来人たちは、デスメラモンを翻弄。一人に狙いを定められないようにしてから、殴る。
来人たちはそんなヒットアンドウェイの戦い方をしている。が、なかなかデスメラモンの防御を抜けない。通用するのは必殺技などの大技くらいだった。
完全体と成熟期の差。わかりきったことではあったが、やはりこうも苦しい戦いとなれば、その差を呪いたくなる来人だった。
「トゲモン!」
「任せて!」
まあ、内心で呪うだけで事が解決するわけはない。
来人たちは、拙い連携を駆使して戦っていた。慣れない相手との連携と呼べるものが曲がりなりにも成り立っている。それはきっとこのギリギリの状況がそうさせているのだろう。
デスメラモンの纏う炎に拳が焼かれるのにも構わず殴った来人は、すぐさまその場を離脱。そんな彼を狙って、デスメラモンの拳が振り下ろされた。その直後にトゲモンが背後から攻撃を仕掛ける。そして、デスメラモンがトゲモンに反応すれば、即座に来人は距離を詰めて殴り出す。
状況だけ見れば、来人たちが一方的に攻撃できていた。
だが、それでもデスメラモンは倒れない。いや、それどころか、攻撃している側の来人たちが疲労と火傷で一方的に傷ついていた。
『これは……まずいか?』
現状を黙って見ていたカミサマは呟く。
もし、デスメラモンが一体だけだったのならば、結果はまた違ったのかもしれない。だが、このままでこれ以上は厳しい。
撤退。カミサマの脳裏には、その二文字が思い浮かんでいた。これ以上状況が悪化したのならば、迷わずカミサマはそれを選択させるだろう。一応、奥の手がないわけではない。だが、その奥の手はリスクが大きい。である以上、こんなところで使っていいものではなかった。
「オォオオォオオ!」
「ヘイヘイヘイ! どうしたwww手も足も出ないんですかwww」
遠くから聞こえてくるジミケンの声に、来人は腹が立つ。が、言われていることは事実すぎて、どうしようもできなかった。
その間にも、来人は目の前に迫るデスメラモンの拳を躱して、一撃を叩き込む。効いたのかすらもわからない。わかるのは、激痛を訴える自分の拳だけだった。
「……くそっ。ほんとムカつくな……!」
効いているのかどうかもわからない軟弱な拳。その拳に、先ほどのジミケンの言葉を思い出して、来人はなおのこと苛立ち、悪態をつく。
「っ前見なさい!」
「え……っしまった!」
そんな時、聞こえたトゲモンの声。
ハッとして来人が前を見た時には、もう遅かった。迫り来るのは、デスメラモンの拳。咄嗟に腕をクロスしてガードする。が、一瞬後に来るのは、全身を襲う焼けるような痛みと浮遊感だった。
「がっ!」
勢いのある浮遊感に流される。
「……! 大丈夫デスカ?」
「悪い、助かった……っぐ……」
何とかもう一体のデスメラモンと戦っていたガードロモンに受け止めてもらったから良かったものの、もし彼がいなかったら、来人は壁に叩きつけられていたことだろう。
とはいえ、来人がガードロモンに助けられたということは、彼はもう片方の戦場に突っ込んでしまったということで――それはつまり、来人たちは合流してしまったということだった。
「まず、い……な」
全身を襲うヒリヒリとした痛みを感じながら、来人は立ち上がって、そんな彼は見た。自分が殴り飛ばされ、ブラックグラウモンたちの戦場と合流してしまったせいで――。
『最悪だな。阿呆が』
「……」
――自分たちが、デスメラモン二体に狙いを定められている状況を。
「おい! ラ……じゃないアイギオモン?」
「悪い……ほんっと悪い」
ブラックグラウモンからの責めるような声色の声にも、来人は謝ることしかできなかった。
格上相手に合流され、さらに数では優っているとはいえ、全員が相当疲労している。もはやどうしようもなかった。
「おやおや! 詰みってやつじゃないですかwww」
「みんなっ!」
アミとジミケンの対照的な声が、この場の全員の耳に届く。
全員が打開策を探すが、デスメラモンの逃がさないとばかりな迫力を前に、見つかりそうもなかった。
「やっちまえ!」
「オォォォオオオ“へヴィーメタルファイアー”!」
「ォォォォオオオ“へヴィーメタルファイアー”!」
ジミケンの指示に従うように、二体のデスメラモンが必殺技を放つ。体内で溶かした重金属を敵に吐きかけるという、その恐るべき技が来人たちに襲い来る。
「っ負けるか! “エキゾーストフレイム”!」
「ロックオン。“ディストラクショングレネード”!」
「僕だってできるよ! “ブレイジングファイア”!」
溶けた重金属に、直接触れるのは危険。
面々はそう悟って、遠距離攻撃できる組がその技に向かって攻撃する。テリアモンの熱気弾が、ブラックグラウモンの炎が、ガードロモンのミサイルが、混じり合ってデスメラモンの技を迎え撃つ。
「まずっ!」
結果はわかりきったことだった。
デスメラモンの技は溶けた重金属。液体だ。それに対するブラックグラウモンたちの技とは、単純に“重さ”が違う。火力が上なら押し返すこともできるだろうが、格下の火力の低い身ではそれも不可能だった。
ブラックグラウモンたちは見る。自分たちの技を押し切って迫り来るデスメラモンたちの技を――。
『っ。待て!』
「……おぁっ!」
――そして、カミサマの静止の声を振り払って、デスメラモンとその技に突っ込んでいく来人の姿を。
驚きに驚くブラックグラウモンたちを庇って、重金属に身を焼かれながらも来人は進む。
二体分のデスメラモンの技を来人一人が背負う。完全体二体の技を成熟期一体が受ける。それは、誰がどう見ても無謀な選択だった。自殺願望とすら思えるような選択だ。
「ぬぐぅうううううう!」
だが、仕方なかったのだ。
デスメラモン二体に同時攻撃されるというこの状況は、来人に原因がある。であるのならば、迎撃をブラックグラウモンたちだけに任せ、彼らだけを矢面に立たせるという訳にはいかない。
近接攻撃しかできないからというのは、来人が動かないことの言い訳にはならない。
責任をとるのは自分でなければならない。自分のせいで仲間が攻撃されるのは嫌だ。来人は、そう思ってしまったのだ。
「はっ……はっ……」
デスメラモンたちの攻撃が止む。
幸か不幸か、来人はその身体の原型を残していた――が、身体の彼方此方がドロドロに溶けていて、見れたものではない。生きている方が不思議なくらいの状態だった。
『何をしているのだ貴様は!』
「ラ、アイギオモン! 何してるんだよ!」
「ちょ、悪い……今、ほんとキツ……」
ブラックグラウモンが倒れそうになっている来人を支える。
支えられながらも聞こえるカミサマとブラックグラウモンのいつも通りの声が、そしてそれをもう一度聞けるという自分が、来人は嬉しかった。
「何笑ってるんだ! まだ何も終わってないんだぞ!」
「わかってるよ……」
デスメラモンは動かない。
どうやら、ジミケンからしばらく動かない指示を出されたらしい。彼にとっては、今の来人の姿はそれこそしばらく見ていたいほどのものだったのだろう。
「舐めてるな」
「でも、チャンスだろ……こんな怪我してるけど、なんかな……なんて言うのかな」
笑う。この場の全員が怪訝な顔をするのにも構わず、来人はただ笑った。
未だ自分は生きている。そのことを実感して――だからというわけではないが、未だ生きているのなら、ここで終わりではないのなら、“行ける”。
そんな、子供が抱くような全能感を抱くのと共に、今の来人には“先”が見えていた。正確には、死に瀕してから、ずっとそんな予感がしていた。
「
「……! ったく、ああ! 本当にお前は面白いな!」
だから、来人は立つ。しっかりと地に足をつけて。そんな彼の横にブラックグラウモンは並び立った。
『やれやれ……』
カミサマの呆れたような声が、来人の耳に届く。だが、それ以外の何かを彼が言うことはなかった。彼にはわかったのだ。来人が、それを掴んだことに。
「あぁあん?」
「えっ……」
怪訝な様子のジミケンとアミの声が辺りに響く。
デスメラモンたちも、アミのデジモンたちも、
来人の姿が変わった――進化したことに。
「さぁっ! 行こうか!」
「おう!」
進化した。それはいい。いや、よくないかもしれないが、置いておく。
この場にいる面々は、ブラックグラウモンを除いて、進化した来人の姿を知っている。あの死神のような姿を知っている。だというのに、今の来人の姿は、それとは程遠い姿だった。
だからこそ、驚いたのだ。
『アイギオテュースモンか。死にかけたことで力の一部が発揮されたか……まずいな。いや、暴走するよりはマシだが……うぅむ』
アイギオモンとしての身体が成長したような体躯に、上半身と顔の左半分に赤い鎧を纏ったデジモン。カミサマ曰く、アイギオテュースモン。それが、今の来人だった。
「ちょ、ピンチにパワーアップとか反則だろwwwやっちまえ!」
そんな来人を前に、ジミケンが声を上げる――が、遅い。その時には、来人はもう行動に移していた。いくら来人が進化したとはいえ、全員が疲労状態であることに変わりはない。
ならば、するべきことは一つ。短期決戦だ。
「はっ! “ライトニングパイル”二連撃!」
来人が放つは、アイギオテュースモンの必殺技の一つ。手に発生させた雷を杭状にして、敵を貫き、縫い止める技。
放たれた二つの杭は、寸分違わずに二体のデスメラモンを縫い止める。
ジミケンが、指示を出すのがもう少し早かったのならば、デスメラモンたちも躱せたかもしれない。が、ジミケンによって直前まで停止の指示が出ていた彼らに、それを躱すことはできなかった。
「今だ!」
「任せろっ! “プラズマブレード”!」
デスメラモンたちは、縫い止められたままで必死に抗おうと四苦八苦している。
そんな隙を逃す来人たちではなかった。ブラックグラウモンがプラズマを宿したブレードでデスメラモンたちを切り裂く。いかに硬いとはいえ、動けない相手を思いっきり切り裂き、それで全くダメージを与えられないという道理はなかった。
「っみんな!」
「もちろん! アタシたちだっているもの! “チクチクバンバン”!」
もちろん、来人たちだけに任せるわけはない。
アミが叫んだその時には、トゲモンはすでに必殺技を放っていた。硬質化した腕の刺が、ブラックグラウモンの付けた傷を狙う。
「ロックオン! “ディストラクショングレネード”!」
「僕だって……! “ブレイジングファイア”!」
「ダメ押しだ! もういっちょ“ライトニングパイル”二連撃!」
そんなトゲモンに続くように、テリアモンとガードロモン、来人の必殺技がデスメラモンを襲う。
動けない身でこれだけの攻撃を受け続けたデスメラモンたちだ。耐えることなど、できるはずもなかった。
「オォォォ……」
「ォォォォ……」
倒れ伏すデスメラモンたち。
いろいろとあったが、これで後はこの場に集められた人々をどうにかするだけだ。終わりの見えた事態に、来人以外の全員がホッと安堵の息を吐く。
そう、来人だけだった。嫌な予感を抱いていたのは。そんな彼が見る先には、未だ不敵に笑うジミケンの姿だけがあって――。
「っ!」
――来人は駆け出した。彼に何もさせまいとばかりに。
だが、そんな来人の健闘も虚しく、ジミケンはニヤリと嗤う。
「ヴァーカwww遅れてやってくるのはヒーローだけじゃないってのwww悪魔だってこれからなんだよォwww! 見ろよこのロックなデジモンを!」
ドスン、と。重そうな音を立てて、来人の前に赤い髪で緑色の肌を持つ大男のようなデジモンが現れる。そのデジモンは、来人が今までに感じたことがないほどの威圧感を放っていた。
『まずい、逃げろ……!』
斧を持っているそのデジモンの姿を見た瞬間に、今までにないほど焦った様子でカミサマが声を張り上げた。
『こやつはボルトモン!
「なっ……!?」
現れた敵は、今の来人たちの手に余る程強大すぎた。
というわけで、第二十七話。
ジミケン戦前半。
デスメラモンたちを倒しました。が、まだまだ続きます。
果たして、完全体に苦戦するレベルの来人たちがどう戦うのか。
というか、そもそも戦いになるのか。答えは次回ですね。
それでは次回もよろしくお願いします。