【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第三話~電脳探偵の始まりと少年の最後~

 なんやかんやあったものの、あのチャットルームで行くと答えた面々全員と何とか合流した来人。

 だが――。

 

「それで、ブルーキラッ☆さん。あのナビットくんとやらは?」

「だからそのキラッ☆ってなんだよ!アラタだ!」

「アラタ……キラッ☆?」

「アミって言ったか?おたくも結構アレだな……ま、いいや。アホは放置だ。オレが探したところ、この辺りにはいなかった」

「えっー!?ユーレイ探してたんじゃないの!?」

「ついでにな。ついでに」

 

 だが、先に来ていたアラタ曰く、来人たちをここに呼びつけた張本人たるナビットくんは、近くにはいなかったようだった。

 一方的に呼び出して、そしてアミに早く来いという旨の連絡をしたくせに、近くにはいなかった。その事実に、来人は気味の悪さを感じていた。

 

「いなかった……これから来るのかな?」

「そうかもしれねぇが……ちょっと妙だ。人っ子一人いねー。いくらクーロンが危険エリアでも、ハッカーの一人や二人はいるはずだ」

「えっ!?ここって危険な場所なのか!?」

「なんで知らな……ああ、おたくは機械音痴だったっけな」

「ぶっ!なんでみんな知ってるんだよ!」

「なんでもなにもねーだろ」

 

 自分の弱みとも言える部分が知られているという事実に、叫ぶ来人。

 だが、そんな来人に向かって呆れたような口調で言ったアラタは、アミを見ていて――それを見た瞬間、来人はすべてを悟った。

 

「……えへ?」

「アミ!お前の仕業か!」

「いや、だって私たちのチャットルームに招待するんだから、ある程度は話すよ!」

「っぐ!……そりゃ、そうだけど……!」

 

 愛想笑いで誤魔化そうとするアミに詰め寄る来人だったが、来人はアミに助けられている身。しかも、その情報を話したのだって、チャットに参加したいという来人の願いを聞き届けた結果なのだ。文句など言えるはずもなかった。

 ぐぐぐ、と。歯軋りをしながら、アミを睨む来人。だが、そんな時だった。

 

『やぁ!こんにちわ!ナビットくんだよ!お待たせしたね!集まってくれた良い子のみんなにプレゼントだよ!』

「うぇ!?」

 

 来人たちが持つ端末――デジヴァイスに、ナビットくんからの通信が入ったのは。

 

『これは世界を変える奇跡(チカラ)だよ!』

「力……?うげっ!何かジリジリしてるんだけど!?大丈夫なのか!?」

「え?え?ナニコレ……!」

「これって……!」

 

 ナビットくんの通信は、すぐに切れた。だが、その通信が切れたと同時に、来人たちの視界にはノイズが走った。

 そんな現象を前にして、来人たち全員は混乱するしかない。いや、唯一アラタだけが、自分たちの身に起きている現象が何か理解できていた。

 理解したからこそ、アラタは叫ぶ。「オレたち全員、ハッキングを受けている!」と。

 視界に走ったノイズは、数秒も経たず収まって――。

 

『新規プログラム“デジモン・キャプチャー”がインストールされました』

 

 ――そして、デジヴァイスに表示される文字。

 デジモン・キャプチャーとやらが何か知らないし、インストールという単語も知らないが、来人は早くも自分たちが危険なことに巻き込まれたことを感じていた。

 

「ふーん。特定のデータ……デジタルモンスターをスキャンし、キャプチャする……と」

「えっ!?デジタルモンスターって……昨日言ってたデジモンのことか!?」

「だろうな。最近ハッカーに出回っているハッキングツールだな。これ」

「えぇっ!?でじもんってハッカーが使うヤバイプログラムなんだよね?」

「てことは、私たちはハッカーになった……?」

「ま、そー言えなくもないかもな」

 

 呆然とアミが呟き、それをアラタが肯定する。

 「ま、いいじゃん。ハッカーなんて今時珍しくもねーし」とそう気楽に言うアラタ。

 だが、その他の面々はそんなアラタのように気楽に構えることなどできなかった。特に、来人とノキアの取り乱しようは凄まじい。

 

「ハッカーって犯罪者だろ!?俺犯罪者!?」

「いや、ハッカーってだけで犯罪者とは……」

「ヤダヤダ……ヤダ!こんなヤバイプログラム捨てなきゃ……あれ!?うそうそうそ!?アンインストールできない!?」

 

 またしても、衝撃の事実の発覚だった。

 アンインストールとやらがやっぱりわからない来人ではあるが、ノキアのその発言から、その単語がだいたいどのような意味なのかは理解して、だからこそ、彼も唖然とするしかなかった。

 

「やめとけ。プログラムにプロテクトがかかってる。無理に削除すると、何が起こるか……わかんねーぞ」

「えぇええええ!?何が起こるかわからない?爆発!?」

「おたくはなんでそうゆー結論に……ま、なるかもな」

「げぇっ!?」

「来人。一回落ち着こう?」

「落ち着けるか!って……あれ?」

 

 一周回って驚きが顔に出なくなったのか、それとも取り乱す二人を前にして逆にそうなったのか。ともあれ、異様なほど冷静なアミに諭された来人。

 だが、そんな来人は一瞬、走り去っていく人影を見つけて――。

 

「っ!ナビットくんだな!逃がすか!」

「って、来人!?」

 

 ――直後、来人は走り出した。

 混乱に混乱していた来人は、走り去っていった人影がナビットくんだと思い、そして捕まえればこの状況も何とかなるという、そんな短絡的な思考に支配されてしまったのだ。

 

「っち。おい、待てよ!」

「アラタも!?」

「ちょ、なんで二人共追いかけるの!?」

 

 ナビットくんを追いたい気持ちがあったのだろう。そんな来人を追うように走り出したのはアラタ。

 そして、走り出した来人とアラタとは対照的に、ノキアとアミはどうしていいかわからずにその場に留まっていたのだった。

 ともあれ、そんな面々のことなど知る由もない来人。最も早く走り出した来人は、現在――。

 

「くそっ!どこだここ!」

 

 ――迷子になっていた。

 勢いよく飛び出したのはいい。だが、来人は走り去った人影に追いつくことはできなかったのである。人影を逃してしまったことに舌打ちして、そしてハッと冷静になった時にはもう遅かった。その時には、来人は迷子になっていた。

 ちなみに、来人は知らないことだが、このクーロンという場所は、EDENの廃棄データの集まる場所であり、データの墓場とでも言うべき場所。さらに、そのせいでダンジョンを形成している。

 つまり、来人が迷うのも仕方がないことだった。

 

「帰り道もわかんねぇ……」

「……おたく、何してんの?」

「のわっ!?」

 

 とはいえ、神は来人を見放してはいないようだ。

 本日二度目の、背後からの聞き覚えのある声。突然だったために驚いてしまったが、その声はこの状況においては蜘蛛の糸にも等しいものだった。

 

「キラッ☆!」

「……じゃあな」

「ごめんなさい!俺が悪かった!だから助けてくれ!」

「……」

 

 助けてくれたというのに、さすがに冗談が過ぎる。

 引き返そうとしたアラタ。そんなアラタの腰にしがみついて、来人はアラタを引き止める。必死に謝り倒して、何とかアラタに許してもらった来人だった。

 まあ、自業自得である。

 

「……それで、アイツは?」

「逃がしちまった。悪い」

「……ま、仕方ねーか。で、おたくは何してんの?」

「道に迷って……」

「……本当に仕方ねーな。行くぞ。奥に行けばまだ見つかるかもしんねー」

 

 そうして、アラタという心強い地図を味方につけた来人は、地図(アラタ)と共に奥へと向かう。幸いというか、奥まではこれ以上ないほどの一本道だった。

 というか、なぜ来人が迷ったのかがわからないほどだ。

 

「俺って機械音痴だと思ってたけど、方向音痴だったのか?」

 

 まあ、来人がいるのは前後左右上下すべてが似たような景色の場所だ。迷ってしまうのも仕方のないことだと言えなくもないかもしれない。

 ともあれ、最奥と呼べるような場所まで来たというのに、結局あの人影は見つからなかった。

 

「……いないな」

「だな。そううまくいかねーってことか」

「はぁ。俺も犯罪者か。どうす……っ!?」

 

 溜息を吐いて、そんなことを呟いたそんな時だった。

 唐突なフラッシュバックのような現象。脳裏に浮かぶのは、複数の子供のような映像。だが、まるでのっぺらぼうのように、細部が不鮮明で、気持ち悪い。

 そんな映像が来人には見えたのだ。いや、見れば、アラタも青い顔をしている。どうやら、アラタも同じ映像を見たらしい。

 

「……見たか?」

「ああ。でも、なんだよ。今の映像。気味ワリィ……」

「……白昼夢とか?ここってそういうことあるものなのか?」

「二人揃って見ることなんてねーって、そか。おたくはわかんねーか」

 

 二人揃って見たあの現象が何なのかはわからない。ただ、やたらと気味の悪い映像だった。

 来人には、アレがまるで不吉を呼ぶかのようなモノに思えて仕方がない。

 

「あー!いたいたいたー!」

「おーい!」

「ん……?」

「ちょっともー!二人していなくなるとか、チームプレーって言葉知ってますかー?」

 

 ともあれ、だからこそ、こんな時にノキアとアミの二人が合流してくれたのは、気分転換にもなって来人たちにとってもありがたいことだった――が。ありがたいことと不吉なことが同時にやってくるのが、こうも最悪な気分になることを、来人は今日初めて知った。

 一瞬、視界に走るノイズ。そして、その直後に現れたナニカ。不吉の象徴にしか見えない、貝のような軟体生物。

 

「なんっだ……アレ。デジモンってやつ?」

「……デジモンキャプチャーが反応しねー。別モンだろうな……ってか、アレが噂のEDENの黒い怪物か!?」

「知ってる。データを食い漁ってるとか言うやつだよね」

「……マズイな。お前ら!こっちに走れ!」

 

 あの怪物が何なのかはわからない。だが、ヤバイものであることは間違いない。そう感じたアラタは、ノキアとアミの二人に叫ぶ。

 そんなアラタの鬼気迫る声を聞いたからか、それとも己の生存欲が発揮されたのか。アミは一目散に駆け出して――対照的にノキアは、その恐ろしさに震えて動けなかった。

 

「おい!走れって言ってんだろ!……っち。来人!」

「うぐ!?はい!?」

「俺はコイツを起動させる!お前はあの二人を助けてこい!」

 

 そう言ったアラタが指したのは、地面に張り付いているマーク。来人も見たことある。EDENの移動する際に利用されるマークだ。

 なるほど、アラタは見るからに動いてそうにないこれを動かして逃げることを考えているのだろう。

 そうなれば、これで機械音痴の来人に手伝えることはないし、今のアミやノキアを助けに行く方が役割分担としてもいい。適材適所というやつだ。

 そう考えた来人は、アミやノキアの方に向かおうとする。見れば、謎の生物があの怪物と戦っていた。

 

「……?味方?」

 

 目を離した隙に状況についていけなくなっていることを感じながらも、とりあえず来人は動こうとして――。

 

「よし!ロックを解除した!ログアウトできるぞ!」

 

 ――その直後、自分の仕事を完遂させたアラタの声に出鼻を挫かれた。

 まあ、仕事が早いのはいいことである。

 

「ノキア!早くしろ!」

「でも……あの子たちが……まだ!」

「わかんねぇのか!足でまといはお前なんだよ!」

「ノキア早く!」

 

 自分たちの味方となってくれた生物を放って行くのが嫌だったのか、渋るノキア。だが、アラタの怒鳴り声を聞いて、心を決めたようだった。

 ごめんね、と。そう呟いて、辛そうな顔でノキアはアラタが起動させたマークの上に乗り、この空間を去(ログアウトす)る。

 

「よし!おい!ノキアはログアウトした!来人とアミも急げ!いいなっ!」

 

 そして、そんなノキアに続いて、アラタもログアウトした。

 後に残ったのは来人とアミだけ。アラタの急げという言葉通りに、アミもこちらに走ってくる――が。アミの後ろに迫るあの怪物の姿を来人は見て。

 その光景を見た瞬間、来人は目を見開き、気がつけば走り出していた。

 

「アミ!」

 

 この後の自分の恐ろしい未来を思い浮かべなかったわけではない。が、自分がどうなるかなど知ったことではないとばかりに来人は手を伸ばし、伸ばした手はアミの手を掴む。

 あの怪物に触れられ、足を絡め取られそうになっているアミの手を。

 そして、勢いをつけて体を捻り、アミをあのマークの方へと押しやって――。

 

「えっ……!?」

 

 ――アミの口から漏れた呆然としたかのような声。

 アミが最後に見たのはあの怪物の方へとバランスを崩していった来人の姿だった。

 

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