【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第三十話~暴走ガールの行動~

 アミの急な特訓要求から、数日が経ったある日のこと。

 いつものようにクーロンLV1エリアを歩いていた来人たちは――。

 

『む。あれは……』

「アミとノキアだな」

「ノキアって方、すっごい勢いで駆けてくけど何かあったのかな?」

 

 ――目の前を全速力で駆けていくノキアと、それを渋々といった様子で追うアミの姿を見た。

 アミの様子からして、おそらくはノキアが暴走している感じなのだろう。が、一体何だというのか。来人たちはそんな疑問を顔に浮かべた。

 一方で、アミたちも、来人たちに気づいたようで、来人たちの方へと向かって来る。

 

「やっ。奇遇だね」

「いや、それはいいけどさ……何してるんだよ? また面倒事に巻き込まれてるのか?」

 

 いつもに増してタイフーンガールと化しているノキアの姿を視界に収め、来人は呆れた様子でアミに尋ねる。

 一方で、ノキアの暴走にはアミもちょっと感じるところがあるのだろう。その顔にあったのは、苦笑いだった。

 

「それは……まぁ、うん」

「面倒事って、ちょっとアミも否定してよ!? あたしが悪いみたいじゃん!」

「ノキアは悪くないよ? ただ、ちょっと……うん」

「アミぃー!?」

 

 アミの言葉がショックだったのだろう。ノキアはアミの肩を掴んで、ガクガクと揺さぶる。

 

「あがががががが」

「……何なんだよ?」

 

 高速で振れるアミの身体。

 蚊帳の外からそんな光景を見つめることしかできなかった来人たちは、全くついていけなかった。そんな彼らが事情を聞くことができたのは、この数分後の話である。

 

「は? デジモンを助けるチームを作る?」

「そう! 名づけてリベリオン! リーダーはあたし!」

「……」

『……』

「……」

「ちょ、なによ! その驚きと不安が入り混じった沈黙はぁ!」

「ま、やっぱりそうなるよね。その気持ちはわかるよ」

 

 いろいろと言いたいことや思うことはあれど、リーダーがノキアであるという事実は、それらすべてを黙らせるほどの威力があった。

 まあ、来人たちは、ノキアのジミケンにあっさりとやり込められた姿や暴走気味の姿しか見ていない。だから、こうなるのは仕方のないことかもしれないが――とはいえ、やはり当のノキアにとっては、その反応は不満だった。

 

「言っとくけど、あたしは真面目なんだからね!」

「……なら、俺も真面目に答えるぞ。デジモンを助けるとか、そういう理念は別にいい。名前もな。しかし、お前はやりきれるのか? その正義感は結構だ。だけど、中途半端な正義を振りかざすことは時に害悪とすらなるんだぞ」

 

 いつになく強い目で、来人はノキアを見つめる。()()()()に関わることだからこそ、彼は真剣になっていて――それに相対するノキアも、自然と真剣な目で彼を見つめ返した。

 

「あたしだって、別にただふざけてこう言ってるわけじゃないもん! あの一件から自分に何ができるか考えて……悪い事にデジモンを利用するハッカー達をこれ以上ほっとけないって思ったから!」

 

 そう。ノキアはジミケンとの一件以降、本気で悩んだのだ。自分に何ができるか。ジミケンの一件の時など、途中離脱してしまったくらいだが、そんな自分にもできることはあると一生懸命に考えて。

 ハッカーたちに無理矢理に使役されるデジモンたち。そのデジモンたちと戦って傷つくのも、デジモンたち。ノキアは、そんなデジモンたちを助けたいと思ったのだ。

 そうして、考え抜いて出した答えが、コレだった。だからこそ、これを譲る気はなかった。

 

「……はぁ。正気か」

「もち! 今は絶賛メンバー募集中!」

「……なるほど。で、アミはまた巻き込まれてるのか」

「あはは。まあね。でも、私だってデジモンを助けたいもん。ノキアみたいな考えには賛成だよ」

「けど、けどさっ! ユーゴもアラタも付き合い悪いんだよ!?」

「アラタと……ユーゴ?」

 

 知らぬ名前の登場に、来人は首を傾げる。

 まあ、彼がユーゴと会った時は、彼自身は気絶中であったのだから知らなくても無理はないことである。

 

「ユーゴは……ハッカーたちのリーダーだよ。でも、ジミケンみたいなのとは違ってすごい良い人なんだ」

「……へぇ?」

「だから、誘ったのにぃいいいい!」

 

 ノキアの様子を見るに、どうやらよほど冷たくあしらわれたのだろう。

 ユーゴのひとなりを知らない来人は何とも言えなかった。が、一方で、アラタが断ったというのは少し意外だった。何気に面倒見が良い彼のことだ。何だかんだで付き合うと来人は思ったのだ。

 

「それにしても、ハッカーたちね……ま、ハッカーが減るなら面倒事が減っていいや」

「うん! 期待しててね! それじゃ行くよアミ! ヘットハンティング再開ぃ!」

「あ、ちょっと待ってよ! ……もう! それじゃ、またね!」

 

 忙しなく駆けていく彼女たちの後ろ姿。そんな彼女たちの姿に来人は再び不安になる。

 どうやら、過度な期待を寄せるのはやめておいた方が賢明そうだ。そんなことを来人は思う一方で――。

 

「ま、オレは自分のことは自分でするから、関係ないけどなー」

『ふむ。どうなるか楽しみであるな』

 

 ――ブラックグラウモンとカミサマの反応は、そんな来人の思いとは違うものだった。

 ブラックグラウモンの反応はわかる。が、気になるのはカミサマの反応だ。ノキアの姿のどこをどう見れば、そういう反応ができるのか。来人には理解できなかった。

 一方で、そんな来人に気づいたのだろう。カミサマは話し始める。

 

『あの娘の思いは本物だ。本物であれば必ず報われるとは限らないが……ああいう輩が、時の思いもよらぬ道を開くこともある。もちろん、往々にして潰れることも多いが、な。さて、あの娘はどうなるか』

「……そういうもんか?」

『疑っているな。まあよい。覚えておくといいぞ。堅実である真面目な者だけが事を成せる訳ではない。愚かなほどの愚直な馬鹿が事を成すこともある。世界とはそう単純なものではないのだ』

 

 カミサマの言っていることに、来人は納得できなかった。

 だが、真実であるのだろう。カミサマは、神様であり、来人とは比べものにならないほどの時を生きている。単純に人生経験が違うのだ。その中で、ノキアのようなタイプの者も大勢見てきた。その成功も失敗も。だから、カミサマはこう言えたのだ。

 それに、必ず成功すると言わなかった辺り、カミサマとて弁えていると言える。

 

「事実は小説より奇なり、か? ……まさかな」

 

 来人自身も、自分の勘はノキアが失敗するとは言わなかった。

 不安に思っているのは彼の理性だけで、その勘はノキアならやれるのではないかと言っていたのだ。

 そんな彼が、チームを率いるノキアの姿に唖然とするのは、このしばらく後の話である。

 

「そろそろ行こうぜー?」

 

 ブラックグラウモンが声を上げる。いつまでも同じ場所で、ここにいないノキアに気を取られていた来人に対する抗議だった。

 

「そうだな。行くか」

 

 そんなブラックグラウモンに応えて、来人は先ほどノキアたちが去っていった方向とは別方向に歩き出した。

 

「……しっかし、驚くほどに何もないな」

『うむ。イーターはこのEDENにも現れていた。少しくらい我々の調査の前に現れても良さそうなものだが……それがないとなると……きな臭いかもしれぬ』

「きな臭い……? ライトが臭いのか?」

「俺が臭いわけじゃない。怪しいってことだ」

『なんにせよ、後手に回るしかないと言うのはキツイものがあるな』

 

 そう言ったカミサマは、溜息を吐いた。

 現状は仕方ないことであるが、仕方ないで済まされないことでもあるからこそ、どうにもならない現状の不満を吐き出したものだった。

 

「俺たちも現実世界とかのイーターの出現現場へと行ければいいんだけどな」

「……んー? 行けるんじゃないか?」

「は? いや、無理だろ。そもそもどうやってこのEDENを出るんだよ」

 

 ブラックグラウモンの言葉に、来人は呆れたように返した。

 自分たちがデータの存在だ。だからこそ、現実世界に出ることのできない。来人たち単体で、ブラックグラウモンの言葉を実現することは不可能だ。

 これが当たり前だと来人は思っていて、彼の反応はだからこそのものだった。

 だが――。

 

『実際、理論上はそうでもないがな』

「え……?」

 

 ――カミサマの言葉に、来人は固まった。

 

『本来のあちらの世界はともかくとして、イーター出現時はその特殊な環境ゆえに我々もあちらの世界に存在することができる』

「それは……確かにそうだったな。けど、そこまでどうやって行くんだって話だろ?」

『あの環境は、イーターの作り出す特殊なデータの流れ故にだ。流れがあるということは、いくつかの場所が繋がれているということ。それは、世界の成り立ちと同じだ』

「……? 悪い、さっぱりわからん」

『……そうか。確か貴様は機械音痴だったな』

「……ま、そうだけどさ。そっち方面の知識が薄いのもわかってるけどさ……!」

 

 データの流れが点在する場所と繋がれる。簡単に言えば、それはネットワークの原理である。

 イーター出現時は、特殊なデータの流れが構築されている。そして、無駄に肥大化したサービスを持つこのEDENは、さまざまなデータ上の繋がりがある。

 つまり、イーター出現時のその特殊なデータの流れにこのEDENから乗ることができれば、それを辿ってイーターのいる場所へと行くことができる。理屈上はこういうことである。

 

「やっとわかった……けど、難しくないか? 詳しくないからわからないけど、このEDENと繋がってるのなんて、それこそ何万通りもあるだろ」

 

 そう。来人の言う通り、このEDENと繋がっているパソコンなどの数は星の数ほどある。来人は何万通りと言ったが、実際は億や兆単位だ。その中から目的の場所一つへと繋がるものを見つけ出すなど、至難の業である。

 

『そうだな。数を撃つつもりならばダメだろう』

「やっぱりダメかー」

「ま、だよな」

 

 さすがにうまい話はなかった。元々あまり期待していなかった来人だ。あまり落ち込むことはなかった。が、そこでカミサマが呟く。だが、と。

 

「ん……?」

『その特殊性とやらを突き止めれば、ある程度の予測はできる。……特殊性という部分を突き詰めれば、当てずっぽうより多少はマシになるかもしれないがな。無論、特殊の意味がわからねば意味がないが』

 

 そう言ったカミサマは黙る。ここから先は、来人に任せるとばかりに。

 

「……どのみち、今のままじゃきついしなぁ」

 

 このまま来る日も来る日も無駄に時間を費やすくらいならば、別のことを挑戦してみてもいいかもしれない。カミサマの言葉を聞いてそう思った来人は、ブラックグラウモンと共に歩き出す。

 目指す先は、EDEN内にある移動用の端末だった。

 




というわけで、第三十話。

原作で言う、ノキアがリベリオンズを結成する話――に、ちょっと関わる話でした。
はい、本当にちょっとだけでしたね。
どちらかといえば、次の話の繋ぎ回的な意味合いの方が大きいかもしれません。

ともあれ、次回からの、この日にあるもう一つのイベントの方にはガッツリ関わります。

それでは次回もよろしくお願いします。
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