【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第三十一話~迷い込んで浅草へ~

 いつまでも進展を見せないイーター調査。そんな調査に新たな風を吹き込むべく、EDENに繋がるネットワークを利用して、場所を移動することにした来人たち。

 そんな彼らは、クーロンエリアの外へと初めて出ていた。

 

「へぇ……なんて言えばいいのか……不思議な光景だな」

 

 形容し難い過ぎ行く景色に、来人は感嘆したかのような声を上げる。

 今、来人たちは、データの迷宮の中を通っていた。

 

『可視化されたデータの流れだ。ところどころに道が別れているだろう。あれがそれぞれ別の場所に繋がっている』

「ところどころ、デジモンたちがいるな。迷い込んだのか?」

「迷い込んだのかもしれないし、わざとここに来たのかもしれない。でも、レベル的に大したことなさそうだぞ?」

 

 ところどころに見えるデジモンたちのレベルを測っているブラックグラウモンに、来人は苦笑する。

 見れば、ここにいるデジモンたちの多くが成長期で、成熟期が時々いるくらいだった。

 

「……んあ?」

 

 そんな風にデジモンたちを観察していたブラックグラウモンだが、何かに気づいたかのように、いきなり間抜けな声を出した。

 

「おい、ライト。あれ見てみろよ」

 

 そんな彼が示す先にあるのは、行き止まりだった。

 行き止まりに何があるというのか。そんな疑問を、来人は顔に出す。

 

『む。あれは行き止まりではないな。出口だ』

「出口? って、本当だ……!」

 

 何かに気づいたようなカミサマの言葉。そんなカミサマの声を聞いて、ようやく来人も気づくことができた。

 その行き止まりの場所に、ぼんやりと歪んだ空間がある。そこがまるで窓になっているかのように、そこから何かの風景を見ることができた。

 

「なんか見たことないものや人間がたくさん見えるぞ?」

「これって……!」

 

 自動車が、人々が、忙しなく行き交う風景。

 そう。それは、人間の世界のものだった。

 

『これはこの空間への出入口だな。EDENと言ったか。人間たちがあの空間へと行くための出入口だ。我々が今いる流れは、あの空間とそれらの出入口を結ぶ流れなのだろうな』

「人間たちが使う……? ああ、EDENスポットか!」

 

 カミサマの言葉に、来人は納得したような声を出す。

 EDENスポット。それは街中のいたるところに存在する、EDENへと繋がる情報端末である。今来人たちが見ている光景は、その端末の一つから見える風景なのだ。

 

『だが……これは……』

「なんだよカミサマ。何か気づいたのか?」

『ふむ。思いがけない収穫かもしれぬな。これならば、無駄であると切り捨てずにもっと早くこの方式で調査をするべきだった』

「もったいぶらずに言えよカミサマ。ライトだってそう思うだろ?」

「まあな……」

 

 再び、何かに気づいたかのようなカミサマの言葉に、ブラックグラウモンは焦れた様子だった。気になるから早く言ってくれ。そう、目が語っていた。

 

『貴様らは気づかないのか』

「……?」

『仕方ないか。そこを見てみろ』

「そこってどっちだよ」

 

 声だけでどちらの方向とは言わないカミサマに、ブラックグラウモンは声を上げる。が、一方の来人は即座にわかったようだった。

 来人は、そのまま右の方向を向く。だが、カミサマの言葉に反して、そこには何もない。データの迷宮とも言えるこの場所の壁があるだけだった。

 

「何もないぞ?」

『いや、そこに手を当ててみろ』

 

 カミサマの言葉通りに、ブラックグラウモンと来人は壁に触れる。その表情は半信半疑なもので――。

 

「……いや、だから壁があ、るだ……け?」

 

 ――だが、次の瞬間に彼らの表情は驚愕へと変化した。

 彼らの腕がずぶずぶと飲み込まれていく。しかも、何かに引っ張られているかのように、抜け出すことができない。

 

「って、やばいだろこれ!?」

「抜けないー!?」

 

 押しても引いてもどうにもならない事実に焦る来人たち。そんな彼らは、次の瞬間に完全に壁に飲み込まれた。

 

「……って、あれ?」

「……?」

 

 だが、一瞬後、彼らは何でもないかのようにデータの迷宮にいた。

 一体何だったのか。疑問を顔に出し、顔を見合わせる来人とブラックグラウモン。

 そんな彼らの様子は、彼らが何も気づいていないことを示していて――カミサマは呆れたように溜息を吐いた。

 

『見かけに惑わされるな。確かに似ている風景ゆえに惑わされるが、今いるこの流れは先ほどまで我々がいた流れとは違う流れだ』

「え?」

『しかも……先ほどよりもずっと広くて大きい。どこに繋がっているかは知らぬが、意味もなくこれほどの大きさを誇るのは異常だ。しかも、微妙に質も違う。これは……もしかしたら、もしかするかもしれぬぞ』

「……!」

 

 異常。その言葉は、特殊であると言い換えることができなくもない。

 そこまで考えて、来人は思い出した。イーターが出現する時、特殊なデータの流れが特殊な環境を形成することを。

 であれば、この異常な流れが繋がる先には“何か”があるかもしれない。来人たちは、そんな感じに、頷きあって――。

 

「なら、行くか!」

「ああ、行くぞ!」

 

 ――その流れの先に進み始めた。

 来人たちの進む流れは広く大きい。が、それはどこか一つの場所へと繋がっているかのようで、先ほどまでの複雑かつ小さな流れの時よりも、ずっと進みやすかった。

 ぐんぐんと進んでいく。やがて、道の終着点にたどり着いて――。

 

「のわっ!」

「ぐわっ!」

『やれやれ』

 

 ――来人たちは、突如として別の空間に放り出された。

 受け身も取れずに地面に激突する来人たちの姿を前にして、カミサマが呆れたような声を出す。

 

「いてて……ここは……っ!?」

 

 そして、顔を上げた来人たちは息をのんだ。

 そう。そこはあの秋葉原と同じ――デジタルに浸食された場所だったのだから。建物の感じからしても、ここは現実世界だろう。

 というか、遠くに見える景色に、来人は見覚えがあった。有名な観光地だ。何度もテレビや雑誌で見たことがある。

 

「ここって……もしかして浅草か!?」

「あさくさ……?」

『地名か、その辺りだろう。しかし、大当たりだな』

 

 カミサマのどこか嬉しそうな声が辺りに響く。実際、久しぶりにイーターに関するヒントになりえる現象に接触したのだから、当然だろう。

 一方で、来人たちはイーターを探して辺りを見渡す。見渡して――気づいた。遠くに、うねうねと動くイーターがいることに。

 いや、この現象がある以上、イーターがいるはずであるから、そこはいい。問題ない。問題はその近くに何人かの人間がいることである。

 

「ライト!」

「わかってる! 間に合えっ!」

 

 イーターと接触した人間は、EDEN症候群となる。以前、アミから聞いたその情報を思い出して、来人は血の気が引いた。

 来人とブラックグラウモンは駆ける。目の前では、すでに何人もの人間が倒れている。未だ無事なのは、ほんの数人。初めいただろう数から考えれば、半分もいない。

 

「―――――――!」

 

 一人、また一人とイーターが襲う。ただ触れられただけなのに、人間が倒れていくというその光景は悍ましく、そして恐ろしい光景だった。

 

「いやぁ……! 来ないで! 来ないでぇ!」

「うわぁっ! 来るなぁ!」

 

 パニックになった様子で、人間たちが逃げ惑う。だが、彼らの逃げ方は拙いものだった。

 まあ、仕方のないことだろう。デジタル化した空間というこの異常事態の中、そして次々に人が倒れていくという身の危険が迫る中で、思考はパニックに陥ってしまっている。そんな状況では、できることもできないのは当然のことだった。

 

「いやぁっ!」

 

 一際大きな悲鳴が響く。それは、躓いて転んでしまった女性が上げたものだった。躓き転んで、立ち上がるよりもイーターが自分に迫る方が早いとわかってしまったがゆえの。

 今、その女性は恐ろしさに震え、生への未練に溢れていた。誰でもいいから、助けて。絶望の中、彼女はそんなかすかな希望を妄想して――。

 

「はぁっ!」

「――――!?」

 

 ――その助けは、現実となった。

 間に合った来人が、女性から引き剥がすようにイーターを蹴飛ばしたのだ。助けが差し伸べられたその時の光景を、彼女は決して忘れないだろう。

 

「……え?」

「早く逃げろ! 死にたいのか!」

「あ……はいっ!」

 

 来人の鬼気迫る言葉に驚かされたのだろう。その女性は立ち上がって、駆けて行く。同時に、生き残った人々も逃げて行って――後に残ったのは、イーターと来人たち、そして小さな女の子だった。

 

「娘! お前も逃げろ!」

「いやっ!」

 

 駆け寄って告げる来人の声に、その女の子は拒否を示す。

 年の頃は三歳か四歳くらいだろうか。未だ生死の概念を理解できているかどうかも怪しい年頃だ。そんな彼女は、倒れ伏して動かない二人の男女の元から一歩も動こうとしなかった。

 その男女は、彼女の両親なのだろう。だが、倒れているということは、イーターに襲われたということであり、それが示すところはつまりそういうことだった。

 

「パパとママがまだだもん!」

「そいつらは……!」

 

 咄嗟に、来人は真実を告げようとした。が、一瞬思い留まった。この小さな女の子に、残酷な真実を告げるのか、と迷ってしまったのだ。

 優しく諭せばいいのか、それとも無理矢理に逃げさせるべきか、はたまた残酷な真実を告げるべきか。いっそ、人間なのだから放っておけばいいのかもしれない。

 そんな、さまざまな考えが浮かんでは、来人は悩む――が、イーターは待ってはくれなかった。

 

『前を見ろ!』

「ライト!」

「------!」

 

 二人の声に、ハッと思い直して前を見れば、イーターはすぐそこまで迫っていた。

 即座に、来人は女の子を抱えてその場を離れる。

 

「パパっ! ママっ!」

 

 だが、その女の子の声で――来人は、今の今まで忘れていた両親のことを思い出した。最近は鬱陶しく思うこともあるが、それでも確かに愛している彼らのことを。

 一瞬悩んで、即座に来人は答えを出す。

 

「ブラックグラウモン!」

「わかってるって! さっさと戻ってこいよ!」

「サンキュー!」

 

 そして、ブラックグラウモンに声をかけたが、彼は何も言わずに来人を送り出してくれた。

 つくづく、ありがたい気遣いである。感謝の念も尽きぬまま、来人は抱えていた女の子を地面に下して言った。この場を動くなよ、と。

 即座に来人は駆けだして、彼女の両親を回収。そして、そんな来人に襲いかかろうとしたイーターを、ブラックグラウモンが抑え込んだ。

 

「任せた!」

「任せろっ!」

 

 両親の身体を抱えた来人は、イーターをブラックグラウモンに任せて駆けて行く。

 そんな来人を見送ったブラックグラウモンは、イーターと向かい合って――。

 

「さて、それじゃ……えっ!?」

 

 ――そして、彼は見ることになる。驚愕の光景を。

 




どうも。デジアドトライ見てきました。続きが気になる感じで……これから感が満載で面白かったです。第二章も楽しみですね。
あと、秋はもう終わったので、リンクスは年内……年末とかいうオチですかね?

ともあれ、第三十一話。
原作で言う浅草デジタルシフト回ですね。
原作主人公組よりも先にイーターと接触しちゃってますが。
次回はちゃんと原作主人公たちも出ます。

それでは次回もよろしくお願いします。
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