【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第三十五話~四面楚歌~

 アミが来人に勝負をかけたその翌日のこと。

 

「いないな……来人」

 

 そう呟くのは、クーロンLV1を歩くアミで――。

 

「ライトまだ決めてないのか?」

『貴様は何をしているのだ』

「いや……」

 

 ――そんなアミを視界に収め、そして見つからないように、来人たちは隠密行動していた。

 この隠密行動の発案者は言うまでもなく来人だ。急にヘタレた来人に、カミサマもブラックグラウモンも呆れていた。

 

「依頼もあるし、今日はここまでだね……」

 

 用を思い出したとばかりに、去っていくアミ。

 その姿が見えなくなるまで、来人はアミを見送って――見えなくなったその直後、溜息を吐いた。

 

『いい加減に答えを決めるべきだと思うがな。もはやあの娘は確信を得ているぞ』

「……っぐ。やっぱり?」

「諦めるしかないぞー」

 

 アミのいなくなった空間を歩きながら、来人は疲れた顔で再度の溜息を吐く。

 来人にもわかっていた。アミを避けても意味はないことには。気づかれてしまったのだから、今まで通りに行くことなど無理なのだ。

 こうなったのだから、何らかのアクションをせねばならない。

 

「……とりあえず、イーター探しに行こうか」

「……」

『阿呆が』

 

 問題を先送りにした来人はヘタレだというしかなかった。

 イーターを探して、クーロンエリアを彷徨う。この後、EDENから繋がるデジタルウェイブの異常チェックをするつもりだったのだが――。

 

「ライト! ハッカーだ!」

「わかってる!」

 

 ――目の前に現れたハッカーの二人組を前に、来人たちは即座に身を隠した。

 まあ、一瞬だけブラックグラウモンは飛び出していきそうになったのだが――ともあれ、来人たちはこっそりと影からハッカーたちの様子を伺う。

 

「マジふざけんなって感じだよなァ! マジで!」

「おう! マジやばいってか、マジムカつくって感じだよなァ! マジ舐めてんだろ!」

 

 何やら機嫌の悪そうなハッカーたち二人組。その言葉遣いは、よく言えばどこか荒い。

 もう少しまともな言葉を話してくれないだろうか。どうでもいいことだが、来人がそう思ったのも無理はないことである。

 

「昨日のカミシロの体験会を邪魔したのってどこのどいつだよ! マジ最悪じゃねぇか! そのせいで、オレらマジ風当たり強くなってんだぞ!」

「噂じゃ、何体もの白と黒のバケモノ使って、会場にいた人たちをEDEN症候群にしちまったらしいぜ!?」

「はぁっ!? ってことはマジで何? EDEN症候群って、マジでハッカーの仕業ってことか?」

「らしいぞ。マジ驚きだよな! マジ!」

 

 盗み聞きなどいい趣味とは言えないが、こういうことがあるから馬鹿にできない。

 聞こえて来た話は、来人たちにとっても驚きだったし、有益な情報だった。どうやら、また来人たちの知らない間にイーターが出現したようである。

 

『妙だな』

「何が?」

『奴らの話が本当の可能性は低い。噂というのは得てして曲がって伝わるものだ。奴らの口ぶりからしても奴ら自身は当事者ではないようだからな』

「まぁ、そりゃね」

 

 人の噂というものは、どこかで必ずと言っていいほど曲解され、伝わるほどに原型を無くしていく。

 それは仕方のないことだ。重要とする箇所、感情移入する箇所、その他のさまざまなものが受け取り手によって違う。言葉を使おうと文字を使おうと、人間同士である以上、伝えたいことが百パーセント伝わるはずはない。

 

『奴らの言っていることで我々に重要な部分とは、白と黒のバケモノ……イーターのことだ』

「あの口調からだと何体か出たんだよな……ん? 何、体か……?」

『気づいたか。そうだ。もし、奴らの言っていることが正しいのならば、これは奇妙なことだ』

 

 来人はブラックグラウモンと顔を見合わせる。彼らもカミサマの言わんとしていることがわかったのだ。

 そう。今までイーターは一体ずつしか現れなかったのにも関わらず、ここに来て複数体が一度に出現したということに。

 これをどう見るべきか。

 

『可能性が高いのは、奴らの言っていることが間違っている場合。だが、もし……イーターの箇所だけでも正しかった場合』

「何か……新しいことが始まったかもしれないってことだな?」

『そうだ。貴様には悪いが、場合によっては貴様の意思を無視してでも動かざるを得なくなる。それまでに答えを決めておけ』

 

 答え。カミサマの言うソレが、何であるかわからない来人ではない。時間はなさそうだった。

 

「はぁ……面倒なことになってきたかもな」

「そうか? 面白いことになってきたじゃんか!」

「……お前の、その何でも楽しめる精神はほんとに羨ましいよ」

 

 ブラックグラウモンの能天気さに羨望の視線を向けた来人は、先ほどのハッカーたちの方へと視線を向ける。そこでは――。

 

「ね! このEDENとデジモンのためにもリベリオンズに入りましょー! 今なら年会費タダでお得だよ!」

「はぁ? マジリベリオンズ?」

「マジでイミフなんだけど? ってか、マジで何?」

「だ、か、ら! リベリオンズ! EDENとデジモンのための、私たちによるハッカーチーム! このチームに入れば、みんな幸せになれるんだよ!」 

 

 ――いつの間にやって来たのだろうか。ノキアによる、ハッカーたちに対する怪しげな勧誘が繰り広げられていた。

 その光景に来人は頭を抱えた。カルト宗教ばりの怪しげな勧誘活動をしているノキアの姿に、知り合いとして恥ずかしくなったのだ。

 

「何をやっているんだアイツは……」

「でも、なんかいきいきとしてるな!」

『確かに。前に言っていたことは口先だけではなかったということだろう』

 

 来人たちが影からこっそりと様子を伺う。

 

「はっ。マジで意味わかんねぇ! 楽しければいいんだよ。そういう暑苦しいのはマジで他所でやれ!」

「えぇっ!?」

「俺たちゃ縛られるのがマジでムカつくんだよ! しっし」

「あ、ちょ……!」

 

 手を伸ばすノキアの前で、二人組のマジマジ言うハッカーたちは去っていく。

 勧誘には失敗したようだった。

 

「ぁぁぁぁもう! なんだってのよー!」

「……ノキア」

「次に行こうよ! 次!」

「そ、そうだよね! アグモン! ガブモン! これくらいでへこたれてなんかいられないよね! よっしゃ! 進めー!」

「おー!」

 

 気を取り直したのだろう。どんどん奥へと進んでいくアミとアグモンとガブモン。

 その猪突猛進な様子は相変わらずで、思わずといった風に来人は笑ったのだが――。

 

「何してるの? 来人」

 

 ――次の瞬間、背後から聞こえてきた声に来人の表情は凍りついた。

 ギギギ、と。ブリキのロボットが動くかのように顔を動かして、来人は後ろを振り向く。そこにいたのは、見知らぬ青年と先ほどこのエリアから去ったはずのアミの姿で――。

 

『やれやれ』

「ま、ちょうどいいんじゃないか?」

 

 ――呑気そうに呟くカミサマとブラックグラウモンに、苛立った来人だった。

 

「……お前こそ、何でここに?」

「私は依頼だよ。それよりも、今度こそ逃がさないからね」

「あ、俺はちょっと用があるから……」

『ふむ。数時間くらい構わんよ』

「ぶっ! カミサマァァァァ!」

 

 まさかの裏切りに、来人は思わずといった風に叫んだ。

 一方で、そんなカミサマの言葉にニッコリと笑ったアミは、がっしりと来人を掴む。そして、その周りをアミのデジモンたちが取り囲んで――もはや来人は逃げられそうになかった。

 

「いろいろと聞きたいこともあるっすけど、アミさん! アッキーノさん行っちゃいますよ!」

「ヤスくんわかったよ! とにかく、話は後でね?」

 

 アミにヤスと呼ばれた青年の言葉で、今が依頼中であるということを思い出したのだろう。

 なすすべない来人たちを連れて、アミとヤスはこっそりと走り出した。先ほどの言葉や進行方向からいって、ノキアを追っているのだろう。

 現状についていけない来人たちはそう予想して――その予想通りに、数分後には勧誘しているノキアの姿を壁の影からこっそりと覗いていた。

 

「っていうか、同行すりゃいいだろ」

「わかってないっすね。デジモンさん! アッキーノさんは頑張ってるんす。こういう時、漢ってもんはこっそりと見守るもんっすよ! そりゃ、万が一があれば別っすけど……」

 

 やたらと熱弁してくるヤスを前に、ついていけない来人たちは呆然とする。アミが苦笑していることから、おそらくはずっとこうなのだろう。

 目を逸らすついでに、来人たちはチラリとノキアの方の様子を見る。

 

「おい、そんなアッキーノさんにその万が一が起こってるみたいだぞ?」

「へ?」

 

 来人のその言葉に、この場の全員がバッとノキアの方を見る。

 そこには、先ほど勧誘していたハッカーとは違う一人のハッカーがノキアに詰め寄っている光景があった。

 

「な、なによアンタ!」

「はっ。俺のことを知らねーたァモグリだな! 俺こそが伝説のレジェンドハッカーだ!」

「厨二な馬鹿はアラタだけでお腹いっぱいなの! そういう厨二な馬鹿に限って根はオタク気質な根暗なんだから。たいしたことないのよ!」

「……言いやがったな?」

 

 遠くにいる来人たちの居場所まで聞こえてくるほどの大きな声。

 ここまでヒートアップして、それでいて無事に済むなど、外野の来人たちも思えなかった。

 

「出る杭は打たれる! お前の生意気な杭を打ってやるよ!」

「上等! アタシたちの力を見せてあげる! アグモン! ガブモン!」

「わかったよノキア!」

「オッケー!」

 

 ノキアの言葉に従って、アグモンとガブモンの二匹がレジェンドハッカーの前に立ちはだかる。その表情はやる気に満ち溢れていた。

 一方で、レジェンドハッカーはそんな彼らを鼻で笑う。彼にとっては、いかにやる気があろうと彼らなど敵ではなかったのだ。

 

「はっ。大層なことを言うチームのリーダーのくせに、出すのは成長期かよ」

「……う。確かに私たちはまだ力不足かもしれないし……ユーゴやフェイにまだ敵わないかもしれない。けど! あくまで“まだ”なんだから!」

「現実はんなに甘くねぇんだよ。出てこい! ブラックウォーグレイモン! ブラックメタルガルルモン!」

 

 レジェンドハッカーの声に従って出てきたのは、漆黒の機械狼と竜戦士。その威圧感たるや、思わずノキアたちが一歩引いてしまうほどだった。

 実力面では間違いなく負けている。そのことを、ノキアは理解して――だが、彼女はすぐさまそんな自分を叱咤した。そして、目の前にいる相手を睨む。気合だけは負けてなるものかとばかりに。

 

『……まずいな』

 

 そんなノキアの姿を遠くから見ていた来人たち。ポツリと呟いたのは、カミサマだった。

 

「何がだよ?」

「あれはブラックウォーグレイモンにブラックメタルガルルモン……どちらも究極体だ』

「嘘だろ?」

 

 愕然とした様子で来人が呟く。

 今、彼の脳裏にはジミケンが操っていたボルトモンのことが思い出されていた。理不尽と言えるほどの力の塊。あれと同クラスが、二体。

 正直に言って、どう贔屓目に見てもノキアの手に余る。いや、来人やアミの手にも余るだろう。

 そんなノキアの危機を見たアミは、叫ぶ。

 

「行くよ!」

 

 究極体の力は身に染みてわかっているはず。だというのに、アミは迷いなくノキアの下へと飛び出して行く。

 そんなアミの彼女“らしさ”に来人は苦笑して――。

 

「ったく」

 

 ――仕方ないとばかりに、来人も走り出した。いつも通りに。

 




十二月になってしまいました。
今年も残すところあとひと月……当初の予定ならば、十二月に入るまでには書き切って、後は投稿するだけにしておくつもりだったのに……。
現在書き終わったのは原作のチャプター15までの辺りで、滅茶苦茶速い某お馬騎士さんと追いかけっこが終わった辺り。
……どうしてこうなったんでしょう。
それもこれもカミサマ関連のせい……!


と、そんなことは置いておきまして、ともあれ第三十五話。

着々とその時が近づいてきている主人公の一方で、引き続き原作での話。
次回はノキアの二匹がああなる回ですね。

それでは次回もよろしくお願いします。
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