【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第三十六話~想いを守る二つの進化!~

「ノキア!」

 

 ノキアのピンチに飛び出したアミ。

 彼女は、戦闘が始まる直前に何とかノキアの下までたどり着くことができた。

 

「えっ……アミ!?」

 

 驚くノキアを尻目に、アミはそのままレジェンドハッカーを睨みつける。

 

「はっ。何人いようが関係ねぇ! 俺は伝説なんだからなぁ!」

 

 一方で、レジェンドハッカーは面白そうな顔をしていた。どうやら、アミの参戦によって自分が不利になるとは思ってもいないようである。

 

「なんで、え? ホワイ!?」

「通りかかったんだけど、ノキアがピンチだったから……手を貸すよ!」

「……! あんがとっ! よーっしそれじゃいっくよ!」

 

 アミの言葉に、ノキアは嬉しそうな顔をした。いろいろと一人で突っ走ったノキアだったが、やはり友人であるアミの助力は心強かったのだ。

 助けてくれる友がいる。それだけで、何でもできるような気さえしてきた。

 

「みんなっ!」

 

 アミの掛け声に従って、アミのデジヴァイスからデビモンとトゲモン、そしてガードロモンが飛び出してくる。だが、その表情はどこか固い。

 やはり、二体の究極体を相手にするという事実が重いようだった。

 

「……盛り上がっているとこ悪いけど、追加だ」

「関係ないけどオレも行くぜ!」

『やれやれ』

 

 そんなアミたちに、来人たちも合流する。

 これで数的な戦力差は六対ニ。それでも来人たちには、全然自分たちが優位だとは思えなかった。質的な面で見たら圧倒的に負けている。数の力をものともしないほどの、純然たる力の差がそこにはあった。

 

「ったく、お前は……()()()後先考えずに突っ走りやがって」

「いつも? じゃあ、やっぱり……!」

「……話は後だ。だろ?」

 

 冷や汗をかきながらも来人は呟く。

 誰に言うでもない独り言だが、アミにはバッチリ聞こえたようで、来人は自分の失言に閉口するしかなかった。

 

「数だけ無駄に増えやがって……!」

「なによ! これがあたしの人望ってやつ! アンタとは違うんですー!」

 

 素なのか、わざとなのか。

 ノキアの安い挑発に、来人たちは溜息を吐くしかない。

 

「……! やっちまえ!」

 

 だが、ノキアの安い挑発でも意外に効果があったようで、レジェンドハッカーは苛立ったような声で指示を飛ばす。

 

「ァァァァッァァァ!」

「ォォォォォッォォ!」

 

 その瞬間に、二体の究極体たちは来人たちめがけて歩き出した。“駆け出す”ではなく、“歩き出す”である辺り、完全に来人たちを舐めている。

 

「っ! ったくもう!」

「“ベビーフレイム”!」

「“プチファイアー”!」

 

 二体の究極体を前に、アグモンとガブモンが必殺技を放つ。

 名の通りのその炎は、まっすぐに敵へと迫り、直撃する。

 

「って、嘘!?」

 

 ノキアが驚く。

 まあ、それも仕方のないことだろう。なにせ、アグモンたちの必殺技の直撃を受けても、敵の歩くペースは一切変わらなかったのだから。

 

「そんなヘナチョコ弱攻撃で傷つくかよ!」

 

 レジェンドハッカーの勝ち誇ったような声。その声に、ノキアは苦々しい顔をして――。

 

「次はオレの番だ! “プラズマブレード”!」

「行くわよ! “チクチクバンバン”!」

 

 ――その直後、ブラックグラウモンとトゲモンが飛びかかる。

 硬化したトゲモンの拳が、ブラックグラウモンのプラズマを宿した肘のブレードが、ブラックウォーグレイモンめがけて振るわれる。

 

「っ痛い!」

「っぐ!」

 

 だが、痛みを感じたのは攻撃した側だった。

 見れば、トゲモンの拳もブラックグラウモンの肘ブレードも砕けている。攻撃した彼らの方が傷ついてしまうほど、ブラックウォーグレイモンは硬すぎたのだ。

 纏っている装甲が硬すぎる。客観的に今までの戦闘を見ていたガードロモンは、そう冷静に分析した。

 

「マダデス。ターゲットロック。二連続“ディストラクショングレネード”!」

 

 ならば、装甲で纏えない部分を攻撃すればいい。例えば――目など。

 二連続で放たれたグレネード弾は、まっすぐにブラックウォーグレイモンとブラックメタルガルルモンの目を正確に狙う。

 

「ァァァァ!」

「ォォォォ!」

 

 初めて、彼らも嫌がった素振りを見せた。が、それだけだった。

 グレネード弾が顔面に直撃したというのに、やはり彼らは止まらない。とはいえ、目隠しにはなった。

 

「はぁっ!」

 

 彼らの視界が潰れたその瞬間を狙って、完全体のアイギオテュースモンへと進化した来人が、強襲する。放つは雷を纏った拳でのラッシュ攻撃――そこで、初めてブラックウォーグレイモンが動いた。

 その瞬間、来人は勘づく。まずい、と。

 

「ァァァァァ!」

「なっ!」

 

 直後、来人が視認できない速さで、ブラックウォーグレイモンが腕を振るう。

 感じた悪寒のままに、来人は腕を交差させて防御した――。

 

「……っぐ!」

 

 ――両腕に感じる苦痛。

 言うまでもない。ドラモンキラーと呼ばれるブラックウォーグレイモンの籠手の爪で切り裂かれたのだ。腕を持っていかれなかったのは僥倖と言うべきか。

 痛みに顔を顰めた来人。だが、彼の勘は言っていた。敵の攻撃はまだ終わっていない、と。その直後に彼は見る。足を振り抜いているブラックウォーグレイモンの姿を。

 

「っ来人!」

 

 その光景を見たアミが叫ぶ。

 一瞬後、来人はボールとなった。

 

「ァァァ」

「オォォ」

 

 ついに二体の究極体がアグモンとガブモンの前に到達した。

 

「……!」

 

 即座に、デビモンがアグモンとガブモンの前に立つ。その身体は震えていた。だが、恐怖に震えながらも、デビモンは必死に立ち向かっていた。

 まあ――。

 

「ォォ!」

「……!」

 

 ――勇気を振り絞ったからといって、現実は無情であるのだが。

 必死に立ち向かった彼はブラックメタルガルルモンの前足のひと振りで吹き飛ばされ、気絶してしまう。

 二体の究極体デジモンに哀れな成長期デジモン二匹は向かい合った。

 

「嘘でしょ……?」

 

 ノキアは愕然と呟く。信じたくない光景が、そこにはあった。

 

「はっ。嘘なもんかよ。弱い奴がリーダーなら、下にいる奴もヘボばっかだな! マシだったのはさっきボールになった奴くらいじゃねぇか!」

「……!」

「あ? なんだその目は? てめぇらデジモンのためとか、抜かしてるらしいじゃねぇか。仲良しこよしの雑魚がいくら集まったってなぁ! 結局なぁなぁで終わるんだよ!」

「なっ!? あたしたちは本気で……!」

「うるせぇ! てめぇらみたいな偽善者は見てるだけでムカつくんだよ! 綺麗事ばっかりで影で何してるかわかったもんじゃねぇ! 言ってることはご立派でもやってることは他と変わんねぇ! くだらねぇんだよ!」

 

 ジクリ。ノキアの胸の中に鈍い痛みが走る。

 別に自分が間違っていたとは思わない。が、レジェンドハッカーの言葉の中にあった一言に、ノキアは胸が痛かった。

 言っていることは立派でも、やっていることは他と変わらない。

 その通りだ。デジモンのため、EDENのため。いろいろな理由をつけても、結局戦うのはアグモンたちだ。傷つくのもアグモンたちだ。他のハッカーたちと何も違わない。

 

「はっ。そら見ろ! 言い返せねぇんじゃねぇか!」

「……ち、違……ぅ……」

 

 考えれば考えるほどに、ノキアは思考のドツボにはまっていく。

 言い返したくとも、一度胸に湧いた疑念はノキアを逃さなかった。何もできない弱さが、ノキアを苦しめる。

 目の前が真っ暗になったような感覚の中、ノキアは――。

 

「うるさいっすぅうううう!」

 

 ――ノキアは、声を聞いた。とてもうるさい、声を。

 

「あ? 何だてめぇは?」

 

 レジェンドハッカーの怪訝な声。この場の全員がそちらを見ると、そこには先ほどまで隠れていたヤスがいた。

 

「うるさいっす! アンタ……アッキーノさんの何を知ってるっすか! アッキーノさんがいたから、俺はここにいるんす! アッキーノさんだったから、俺らは集まったんす! アッキーノさんを知らない奴が……アッキーノさんを語るなぁっす!」

 

 ぜぇぜぇはぁはぁ。荒れた息で言いたいことをヤスは吐き出した。ノキアに届くように。

 力などなくとも、負けない。お前の言葉を否定する。そんな意思を込めて、ヤスはレジェンドハッカーを睨みつけていた。

 

「ムカつくなぁ……てめぇ」

 

 一方で、レジェンドハッカーはそんなヤスの姿に目を細めた。

 彼の目には、苛立ちだけがあった。レジェンドハッカーは視線だけでブラックウォーグレイモンに指示を出す。

 

「ァァァッァァ!」

 

 瞬間、ブラックウォーグレイモンはアグモンたちを放って駆け出し、ヤスの下へと向かう。

 そんな中でも、ヤスはレジェンドハッカーを睨んでいた。それはきっと、無力な彼のささやかな反抗だったのだろう。

 ブラックウォーグレイモンがヤスの下まで到達する。その腕を振り上げる。一瞬後、振るわれたその腕は――。

 

「ったく……世の中、自殺願望ある奴が多すぎだろ」

『ふっ。貴様ほどではないがな』

 

 ――現れた来人によって、止められていた。

 ヤスの大声によって気絶から目覚めた彼は、チャンスを狙って虎視眈々としていたのである。まあ、結局はヤスを守るために行動することになったのだが。

 

「デジモンさん……!?」

「お前はもういいから隠れてろ。もしくはノキアの傍に行ってろ」

「は、はい!」

 

 来人の言葉に即座に頷いて、ノキアの下へと駆けていくヤス。近くの影に隠れずに、遠くのノキアの下へと向かったのは、何と言うべきか。

 未だ指示待ちで行動を起こさないブラックウォーグレイモンがありがたく思えた来人だった。

 

「っち」

 

 この場の全員に聞こえるほど大きな舌打ち。思い通りにならない事実に苛立ったレジェンドハッカーのものだった。

 一方で、アミはノキアの下へと急ぐ。伝えたいことがあった。

 

「アミ……あたし……」

「ノキア……ヤスくんの言う通りだよ。リベリオンズのみんなはノキアだから集まったんだ。アラタでも、ユーゴでもなくて、ノキアだからこそ」

「そうっす! その通りっす! 俺たちはアッキーノさんに着いて行きたいんす! だから……アッキーノさんは今まで通りでいいんす!」

 

 アミとヤスのその言葉に、ノキアはこの場の全員を見る。アミにヤス、そしてアグモンたち。誰もが自分を見ていて頷いている。誰もが自分を信じている。

 ノキアは自分の胸の中に、消えかけていた熱い何かが再び燃え上がるのを感じて――。

 

「ノキアの想いは間違ってなんかない!」

「ノキアの想いを……守る!」

 

 ――アグモンもガブモンも、そんなノキアを守りたいと思った。身体だけじゃない。心までも。そしてそんな彼らの思いが、“進化”を呼ぶ。

 

「え? え……!? アグモンガブモン……どうしちゃったの?」

「ボクはウォーグレイモン」

「オレはメタルガルルモン」

 

 一瞬後、そこにいたのは目の前の黒い者たちとは似て非なるデジモンだった。

 ウォーグレイモンにメタルガルルモン。アグモンとガブモンの二匹は本来踏むべき段階を超えて、二体の究極体デジモンへと進化したのだ。

 

「さぁ、ノキア! ボクたちの力を見せてやろう!」

「もう大丈夫だよ!」

 

 自信を持ってそう言う二体に、ノキアも自信を持ってしっかりと頷いた。

 

「はっ。進化したてで何を言ってる! やっちまえ!」

「ァァァァァァ!」

「ォォォォォォ!」

 

 レジェンドハッカーの声に従って、二体の黒い究極体がウォーグレイモンたちめがけて駆け出した。その間にいた来人たちを無視して。

 計四体の究極体がぶつかり合う。まるで鏡合わせのような戦いだった。

 

「デタラメだろ……成長期から究極体へって……!」

『そうでもない。むしろ、奴の事情を考えれば普通だ』

「すごいな! 手を出せないっ!」

「ブラックグラウモンは何でそんなに楽しそうに言うんだよ……!」

 

 自分たちを遥かに超える実力者たちの戦いは、そこに至らない来人たちに介入させる暇を与えない。来人たちは完全に外野となっていた。

 もっとも、来人たちはすでに介入する気もなかったのだが。これがノキアの戦いであるからこそ。

 

「うぉぉおぉおおお!」

「ァァァァァァァ!」

 

 ウォーグレイモンとブラックウォーグレイモンがぶつかり合う。

 突き出した右の腕は左の腕で弾かれる。即座に繰り出された蹴りは蹴りで返す。その勢いを保持したまま繰り出した左の腕は右の腕で返される。

 超絶スペックの技の応酬が超高速で繰り返される。そしてそれはメタルガルルモンの方も同じだった。

 

「ぉりゃあぁあああ!」

「ォォォォォォォォ!」

 

 互いに装備された武装を放ち、野生動物のようなぶつかり合いを演じる。

 弾丸が、ミサイルが、レーザーが。ありとあらゆる凶器が飛び交い、迫り来る敵の凶器を迎撃する。まさに、戦場さながらの光景のだった。

 超絶兵装の威力が炸裂する。

 

「いっけぇぇ!」

「なっ……馬鹿な……! 伝説な俺のデジモンが!?」

 

 そして、そんな戦いを傍から見ていた全員は気づいた。どちらが優勢でどちらが劣勢であるか。

 いや、彼らよりも実際に戦っている当人たちの方がわかっているか。だからこそ、両者は最大火力を狙う。ある者たちは一発逆転を賭けて。ある者たちはこれで終わりにするために。

 

「“ガイア――」

「“ガイア――」

「“コキュート――」

「“コキュート――」

 

 似ている姿と同じように、放たれるのは似た技。

 ウォーグレイモンたちが放つは、その色に違いがあれど、その身の丈を超えるほどの大火球。

 メタルガルルモンたちが放つは、その色に違いがあれど、すべてを凍らされる絶対零度のブレス。

 

「――フォース”!」

「――フォース”!」

「――ブレス”!」

「――ブレス”!」

 

 究極体の四つの必殺技が、一つの点を中心に激突する。

 世界が揺れる。一瞬、爆発。その凄まじい衝撃は、このEDENの運営元のカミシロ・エンタープライズが異常として察知するほどであったというが――。

 

「やった!」

「馬鹿な……!」

 

 ――それよりも早く、ノキアたちは結果を目にした。

 立っているのは、勝者。這いつくばっているのが、敗者。這いつくばっていたのは黒い方だった。

 

「っく……ふざけやがって……! 覚えてろぉ!」

「あ、ちょ……!」

 

 忌々しげに呟いたレジェンドハッカーは、負けたデジモンたちをデジヴァイスにしまうと即座に逃げていった。

 

『やれやれ。どこにでもいるものだな。前を向く者の足を引っ張るものがいるのは』

「……みたいだな。さて、俺たちも行くか」

 

 事が済んだのを確認した。

 もうここにいる意味もないのだから、来人はこの場を去ろうとして――。

 

「逃がさないって、言ったよね?」

「……」

『阿呆め』

 

 ――来人はアミに捕まった。

 なんとか逃げようとしたかった来人だが、うまくいかなかったようである。

 

「何逃げようとしてるのかな?」

「いや、ノキアの邪魔になると思って……」

「……? ノキアの……?」

 

 来人の言葉にアミは首を傾げる。

 ノキアが一体何だというのか。アミは疑問のままにノキアの方を見た。

 

「ヤスッスくんがアミたちに依頼してくれたの……? ありがとっ! これからも頑張ろうね!」

「……! はいっす!」

「……あれ? 鼻血……? もしかして、アタシの悩殺フェロモンにやられちゃったぁー?」

「……! ぶほっ」

 

 ノキアはヤスと何やら取り込み中のよう。まるで青い春のようである。

 だからこそ、アミは気を遣ってこの場を去る。もちろん、気を遣ったのはノキアにではなくヤスの方だ。その想いが報われることを祈ったからこそ。

 

「それじゃ、私たちはここら辺で行こうか。行くよ、来人」

「俺は来人じゃ……」

「今更だよね?」

「っぐ……!」

『やれやれ』

「諦めろよ」

 

 ドナドナの歌のごとく、アミに連行されていく来人。その諦めは悪かった。

 




というわけで、第三十六話。

ノキアがノキアらしくなかったかな……と、ちょっと不安に思う回でした。
キャラを崩壊させずに書くのって難しいですよね。

ともあれ、次回。
いよいよその時が来ます。長かったですね。

それでは次回もよろしくお願いします。
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