【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第四話~交わった世界~

 アミを引っ張って出口のマークへと押しやった来人。そんな彼は、今まさにあの怪物に向けて倒れ込もうとしていた。

 そう。それがあの助け方の代償。バランスをとることも考えず、勢いだけで体を捻ったら、遠心力でこうなることは必然。

 それでも、それがわかった上で来人はこの方法を選択した。自分がアミを助けるには、この方法しかないとわかっていたからこそ。

 スローモーションでゆっくりと過ぎ行く風景。

 事故に遭った人が体験するのってこういう感じかね、と。来人は、その光景を眺めながらも、ぼんやりとそんなことを考えていた。

 もちろん、来人も、この後の結末に恐怖がないわけではない。

 だが、それでも――。

 

()()()()を助けられたのなら、まぁいいか」

 

 ――それでも、来人の心は穏やかだった。

 怪物に絡め取られ、何かが失われていく感覚。恐ろしくおぞましいその感覚。

 これじゃ、助かることなんて無理そうだな、と。やっぱりアミを助けてよかったな、と。その感覚を味わう来人は、そんなことを思って――。

 

「……?」

 

 ――直後、自分の意識がいつまで経っても無事であることに疑問を抱いた。

 まるで目がなくなってしまったかのように、目の前は真っ暗。体の感覚もない。それでも、意識だけははっきりとしている。

 今の来人は、そんな不思議な状態たった。

 

「なんで……?」

『生きたいか?』

「っ!?」

 

 生きたいか、と。どこからともなく聞こえた声。

 まるで問いかけるかのようなその荘厳な声は、だが、来人にはどこか疲れ果てているかのような、死にかけているかのような声に聞こえた。

 

「誰だ……?」

『生きたいか、と問うている。未だ貴様があの怪物に食われておらぬのも、我が助けているからだ』

「……助けてくれるのか?」

『それは貴様次第』

「俺次第……?」

『貴様が払う代償。それを払えば、助けてやる』

「ちなみに、その代償って?」

『貴様が払う代償は一つ。貴様の時間。事態が解決するまで、我の手伝いをしてもらう』

 

 具体的な内容には触れられていないが、それでも声の言っている内容は悪いものだとは思えなかったし、来人はこの声の主が悪い奴ではないとさえ思えていた。もちろん、証拠は何もないから、説明しろと言われたら来人も困る。だが、強いて言うのならば、そう。直感でそう感じていたのだ。

 まるで悪魔の契約だな、と。そんなことを思う来人。

 どのみち、この内容を蹴ってしまえば死に直行なのだ。だからこそ、来人は決意した。この誘いを受けることを。

 

「受けるぜ。その話。俺も生きたいからな!アンタが悪魔だろうが、なんだろうが……助けてくれるなら、俺はその手を掴む!」

『ふっ。悪魔、か。残念ながら違う。我は……神だ』

「は?か――」

 

 聞こえた単語に、一瞬だけ硬直した来人。そんな彼は直後、まるで水の中から引き上げられたような、そんな感覚を味わって――直後、来人は自身に雷が落ちたような痛烈な感覚を感じて、意識が途切れた。

 

「……!」

「……なるほど。貴様が例の異物か」

 

 そして、その次の瞬間。あの怪物の触手を力づくで押しのけて逃れ、その目の前に立つ。来人ではないその誰かが、来人の身体で。

 

「やはり無理があったか。これはまた……」

「……」

 

 うねうねと不気味に動く怪物の前で、来人でない誰かは体を動かしながら呟いた。

 その誰かは、体の調子を確かめているようだ。が、思うように身体が動かなかったのか。その表情には、若干の不快の色が混じっていた。

 

「彼が助かるために支払う代償が我の手伝いというのなら、これは我が彼を助けるために支払う代償か……やれやれ。皆の者に見られたら殺されそうだ」

 

 一体何を想像したというのか。

 来人でない誰かが疲れたような独り言を言っていた。というか、その背中には苦労人の哀愁さえ漂っている。この人物が自分のことをどう思っているのかはわからないが、何と言うか、すごく哀れみを誘う姿だった。

 

「……」

「まぁいい。我は我の役目を果たすとしよう」

「……!」

 

 ともあれ、すべては目の前にいる怪物を片付けるのが先だ、と。そう思って、その誰かは戦闘態勢をとる。この誰かは、()()()()()()()、しかも来人を助けたせいで、本来の姿も力も発揮できない。

 が、それでも、目の前にいる怪物程度ならばどうにでもなると考えていた。

 

「ふっ!」

 

 それは、その誰かの掛け声と共に発せられたというのか。

 次の瞬間、怪物へと殺到したのは、凄まじいばかりの雷。神の天罰を体現したかのような、その太い閃光。天からの火が、怪物を消し飛ばした。

 

「ふぅ。かの騎士どもが動くのだ。……この一体だけというわけにはいかぬか」

 

 瞬殺。そう言うに相応しい光景を見せたその誰か。

 彼は、この場を離れるようにして歩いていった。別に、目的地があるわけではない。だが、とある理由から、あまり人目につく場所にいる訳にも行かないと考えたのだ。

 その理由とは――。

 

「少々か。この者には迷惑をかける」

 

 ――その理由とは、明白なまでの体の変化であった。

 この誰かが人ならざる力を無理に使ったせいか、別に理由があるのか、それともその両方か。来人の体は、だんだんと人間のソレとは変わってきていた。

 

「……っぐ。そろそろ……無理か……」

 

 そうこうしているうちにも、体の変化スピードはどんどん上がっていく。それと比例するかのように、その誰かは苦しそうに呻くようになり、そして――。

 

「だらっしゃぁあああああ!」

 

 ――そして、その誰かと入れ替わるようにして、来人の意識は復活した。

 とはいえ、来人としてはわからないことだらけである。いきなり見知らぬ場所にいるわ、あの怪物や見知らぬ生物たちはいないわ、で。

 まあ、また襲われるよりかはマシなのだ、と。来人はそう思うことにし、そして、助かったことに安堵する。

 

「……生きて、る!?」

『生きているに決まっている。我が助けたのだからな』

「っ!?さっきの声!?どこだ……!」

 

 だが、そんな安堵の気持ちは、先ほどの声が聞こえた瞬間に吹き飛んだ。

 声は、至近距離から聞こえた。だからこそ、来人は先ほどの声の主を探そうと彼方此方を見渡す――が、声の主はどこにも見えない。

 どういうことなのか。まさか、噂の幽霊なのか。そんなことを来人は考えて、その直後、その声の主は答えを告げる。

 

『我の姿は見えぬぞ。我は貴様の中にいる』

「……は?」

『そろそろ自分に起こった変化に気がついたらどうだ?』

 

 自分の中にいる。突拍子もないその言葉に、来人は一瞬フリーズした。だが、その次に聞こえた呆れたような声に、再起動した来人は自分を見下ろして――。

 

「なっんじゃこりゃぁあああああ!」

 

 ――来人は、ようやく自分の身に起こった以上に気がついた。

 人間の上半身に山羊の下半身。ついでに頭は白髪で、羊の角がある。はっきり言って、来人の元の姿の要素は欠片もない。そんな、人ならざる姿になっていたことに、来人はようやく気付いたのだった。

 

「なんだこれっ!どうなってやがる!」

『はぁ。説明するから落ち着け』

「落ち着けるか!お前の仕業か!?」

『……そうだな。そうと言える』

「なっ……戻るのか!?これ!なぁ!これ!」

 

 混乱のままに、叫ぶ来人。

 まあ、起きたらいきなり姿が変わったのだ。こうなるのも頷けるし、仕方のないことでもある。事実、この声の主も、そんな来人の反応を仕方のないことだと思っていた。

 が、まあ――。

 

「なぁ!」

『いい加減に黙れ!』

「……!」

 

 ――まあ、鬱陶しくなって、つい声を荒げてしまったのも同じように仕方のないことだろう。

 そんな雷のような怒声が効いたのだろう。来人は一瞬で静かになった。

 そして、来人が落ち着いたのを見計らって、その声は説明を始めたのだった。

 

『……言っただろう。代償の話だ』

「アンタを手伝うっていう……?」

『そうだ。手伝いが終われば、元の姿に戻り、元の生活にも戻れることを約束しよう』

「その手伝いって?」

『先ほどのバケモノを見ただろう?アレに()()()調()()だ。どれくらいかかるかはわからん。だが、危険ではある』

 

 正確な時期は不明。だが、危険。それを聞いて、来人は直感で厄介なことに巻き込まれてしまったことを悟った。

 

「……なあ、俺、昔から勘がいいんだ」

『……それで?』

「だから聞くけどさ、もう引き返せないんだろ?」

 

 当たりだった。

 この声の主は、来人を助けるために無茶をしてしまった。そのせいで、本来の姿も力も失われているし、来人も否応なしに事態に巻き込む羽目になってしまっている。

 とはいえ、来人は彼を責めるつもりはなかった。というか、責めたら、それこそ身勝手の極みだ。

 もし、この声の主が来人を見捨てていれば、声の主はおそらく力という面で苦労することはなかったのだろう。すべて来人が助かりたいと望んだのだから、こうなっているのだ。

 

「取り乱して悪かったよ」

『……別にいい。それが当然だ』

「死ななかっただけ儲けもん。チャンスが回ってきただけ幸運だ。絶対に生きて戻ってやる」

『ふっ。そうか』

「で、具体的にどうなってるんだ?今の俺たちって」

 

 この誰もが混乱必至の事態に巻き込まれて、それでいてこれほど前を見ることのできるものが世界にどれほどいるだろうか。そんな前向きなまでの来人の姿に、声の主は誰に胸の中で感嘆していた。

 声の主から見て、来人は未だ幼いが故の部分があるものの、それでも将来性がなかなかの器の持ち主であると言えた。

 

『あのバケモノは人の精神を喰らう』

「人の精神を……ってことは、現実世界の体は抜け殻になってるってことか?」

『察しがいいな。おそらく、貴様の体もそうなっているだろう』

「うげ……死体として処理されてないよな?」

『そこまでは知らぬ』

「おい、酷いだろ!それ!」

『ともかく、だ。貴様の精神は、我の中で保存されている状態にある』

「なるほど……って、あれ?じゃあ、なんで俺が表に出ているんだ?普通、そういう時って……」

 

 自分の中に声の主がいるのではなく、声の主の中に自分がいる。であれば、表に出るのは俺じゃなくてアンタじゃないのか、と。

 漫画や小説のサブカルチャー知識からそう思い、来人は言った。だが、事はそう単純なことではないのである。

 

『残念ながら、この身体の主導権は貴様が担っている』

「……なんで?」

『なぜ、か。さまざまな理由があるが……主な理由は我が表に出るのはエネルギー効率が悪いということか」

「燃費が悪いのか?」

『そのようなところだ』

 

 声の主はそう言うものの、来人は持ち前の勘で、それだけがすべてでないことに気づいていた。

 いや、確かにエネルギー効率は悪いのだろう。だが、きっとそれだけではないのだ。おそらく、それには自分を助けたことが関わっている。

 

「そっか。それじゃ、仕方ないか」

 

 だからこそ、自分が助けられた側だからこそ、来人はそのことを無理に聞くのはやめた。

 そして、その疑問の代わりにふと思ったのが、あの見知らぬ生物やこの声の主の素性だった。

 

「なあ、アンタ一体何なんだ?さっきは神とか言ってたけど……本物?」

『ふむ。貴様たち人間の神ではないがな』

「……って言うと?」

『デジモンだ。デジモンの神」

「は?デジモン……?って、あのデジモンか?」

『貴様が何を驚いているのかはしらんが……今の貴様とてアイギオモンというデジモンだぞ』

「……」

『どうした?』

「嘘だろぉおおおお!」

 

 来人の知識では、デジモンとはハッカーの使うプログラムである。

 だからこそ、自分がそのプログラムになってしまったというその驚愕の事実を前にして――来人は再び取り乱すのだった。

 




というわけで、テスト期間中にコツコツ現実逃避していた分はこれで終わりです。
続きを書くかどうか……は、前に書いたサイスル小説含めて、やっぱり未定です。
普通にありえませんが、人気があったら書くかもしれません。

以下、これを書いた理由。

ロイヤルナイツの対抗馬としてオリュンポス十二神族を出せば面白そうじゃね……?
→でも、収拾つかなくなるどころか、人間界壊滅の危機になりそうだな……。
→まあ、でも、テスト勉強も飽きたし、書くだけ書いてみるか。
→バッドエンドものの短編みたくなった。
→プロットも何も考えてないけど……ま、続きを書くかどうかわからないし、いいか。
→ここまで完成。

こんな感じですね。


それでは、お読みいただきありがとうございました。
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