【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第四十話~暴走集団を追え!~

 それはある日のことだった。

 その日もいつも変わりなかった。その日も来人はアミのデジモンたちに睨まれていたり、デジヴァイスの中でブラックグラウモンとトレーニングを繰り返していて――突然、彼だけがアミに呼び出された。

 呼び出された場所はクーロンエリアの入口だった。

 またか。内心でそう思った来人である。

 

「で、今度は何だよ。イーター絡みか?」

「残念だけど、違う! ノキアを助けるの手伝って!」

「は?」

 

 その言葉に来人は疑問を顔に出す。一体どういうことなのか、と。

 ここは一体どこなのか。さらに先ほどの言葉はどういうことなのか。来人はアミに先を促して――。

 

「えっと……」

 

 ――アミは話し始めた。数時間前に何があったかを。

 

 

 数時間前、EDENに一つの中継が映し出された。

 写っていたのはユーゴだ。それは彼の演説だった。

 彼は見ているハッカーたちに問う。今のEDENに自由はあるか、と。 

 彼は語る。EDENの前身にして、ハッカー発祥の地である“アンダーゼロ”。ヴァルハラ・サーバの最奥にあるそこには自由があると。EDEN発足と共に押収され、世界レベルのセキュリティを施されたサーバとなったそれを――取り戻すと。

 

 

 つまり、ユーゴは自らの配下となるハッカーたちを率いて、そのアンダーゼロをハッキングしに行ったのである。

 これだけなら、気になる部分はあっても対岸の火事――だったのだが。問題はその後にあった。

 ノキアだ。このことを聞いた彼女は、自分たちも力試し感覚で行きたいと言い出したのだ。

 その場にいたアラタとアミが止めたのだが、そのせいで余計意地になって――結局、リベリオンズのメンバーを引き連れてアンダーゼロへと向かってしまったのである。

 

「阿呆が……」

『……阿呆だな』

 

 事情を聞いた来人とカミサマは呟く。呆れしかなかった。

 

「お前ももっと止め方を考えろよ……」

「ごもっともです」

 

 アミは縮こまるしかない。

 アミもアラタもノキアを直球に止めすぎた。リベリオンズ(反逆者たち)などという名前のチームのノキアたちだ。その精神は反抗期並のものがある。

 それを見抜けなかったアミたちの落ち度だろう。

 

「で、放っておけないから今から追うのか。アラタは?」

「今仕込みをしてるって。もうすぐ待ち合わせ時間だから、そっちに行く」

「なるほどね」

 

 まあ、でも、アミもアラタもそこでノキアを見捨てない辺り、人が良いというか、何というかだ。そんな彼らの気質に来人は苦笑した。

 

「とにかく、今からアラタと合流する。デジヴァイスの中のみんなにも伝えといて」

「えっ? ちょ、待っ……!」

「頼んだよ!」

 

 有無を言わせず、来人はデジヴァイスの中に戻される。

 デジヴァイスの中ではデジモンたちが思い思いのことをしていて――来人の帰還と共に、その全員の視線が彼を貫いた。

 ブラックグラウモンとガードロモンはまだいいが、その他の面々の視線は相変わらずである。というか、日に日に強くなっていくばかりだ。

 

「とりあえずだな……」

 

 視線が集まっている今を狙って、来人は先ほどアミから聞いた話を言う。

 「へぇ、面白そうなことになってるな!」などとのたまう相変わらずなブラックグラウモンは置いておいて、その他の面々は少しだけ緊張しているようだった。

 

「緊張してるみたいだな」

「緊張? 馬鹿言わないで。これはね、武者震いって言うのよ! いい? アンタは新入り。アタシは古株。アミに気に入られてるみたいだけど、偉そうな顔しないでよね!」

 

 来人はただ呟いただけだったのだが、耳ざとく聞きつけたリリモンが早口でまくし立てる。その顔には来人に対する対抗心だけしかなかった。

 

『……ふむ。苦労するな』

「言わないでくれ……」

 

 カミサマの言葉に、来人は肩を落とす。

 落ち込むなよ。そう言いたいかの如く、ぽんぽんと肩を叩いてくれるガードロモンのの存在がありがたかった。

 

「とにかく、すぐ……に……」

 

 呼ばれると思うから。そう続けて言おうとした来人だったが、次の瞬間に来人は見たこともないような景色の電脳空間にいた。

 本当にすぐ呼ばれたのだ。

 

「アミ……」

「え? 何? 私何かした?」

 

 つい、アミを非難の視線で見る。とはいえ、なぜ来人にそんな視線で見られるのかわからないアミは、首を傾げるしかなかった。

 

「……はぁ。何でもない」

 

 言葉を遮って呼び出されたことに思うことはあれど、そこまでアミが悪いわけではない。来人はすぐに視線を撤回して――辺りを見回す。

 来人の他に呼ばれたのはガードロモンとブラックグラウモンだった。

 来人にとって風当たりがないメンバー。このメンバー構成はありがたい。

 

「おたくは……そっか。アミのデジモンになったのか」

 

 今まで黙っていたアラタが声を上げる。

 アラタにとって今の来人は何度か出会った仲で、見知った仲だ。今までは野生といっても過言ではなかった来人がアミのデジヴァイスから普通に現れたのは、アラタにとって少しの驚きがあった。

 

「……別にそういう訳じゃないけど」

「あっ……そっか。アラタにも言ってなかったね。来人はね……」

「来人? って、まさか……」

「とにかく! 歩きながら話そうぜ。時間ないんだろ?」

「そうだな。こっちだ」

 

 アラタの先導で道を行きながら、面々はそれぞれ気になったことを話す。

 来人がデジモンになったという部分にはアラタはやはり驚いていた――というか、驚くしかなかったようで、その時の彼の顔はいっそ面白いくらいだった。

 

「そっか。わりぃ。あん時……俺が……」

「別に気にしちゃいないよ。生きてるし……俺に関して言えば先も見えてるしな」

 

 自分を責めるような顔をしているアラタに、来人は告げる。気にするな、と。

 そんな来人にどこか救われたような顔をしたアラタだったが――それでも彼の表情の中にはどこか暗いものが残っていた。

 

「っ。何か聞こえる……」

「本当か!?」

「ああ、この感じは……」

『戦闘音だな。しかも、音の感じからして複数だ』

 

 来人とカミサマの言葉に、アミとアラタは顔を引き締める。彼らの言葉が示すのはつまり、もうすでにことが始まっているということなのだから。

 自然、先ほどよりも足が早くなる。その先で来人たちは見た。

 

「行けっ! 倒せっ!」

「なんのっ! やれっす!」

「だらっしゃぁぁぁぁ!」

「死ねぇぇぇえ! アンダーゼロはおれたちザクソンが攻略する!」

「ふざけんなっす! 絶対にノキアさん率いるリベリオンズが攻略するっす!」

 

 敵味方入り混じって戦うザクソンのハッカーたちとリベリオンズのハッカーたちの姿を。

 状況としては五分。数的にはザクソンが有利で、質的というか、やる気的にはリベリオンズが有利。結果五分、というところだろうか。

 

「これは……」

「っていうか、いた。ノキアだ。先陣切って戦って……っていうか、すごいな。ほぼ無双じゃないか」

「おぉー!」

「感嘆デス」

 

 その光景に、来人たちデジモン組から感嘆の声が上がる。

 それもそうだろう。なにせ、そこにあった光景は――ノキアのウォーグレイモンとメタルガルルモンがザクソンのデジモンたちを蹴散らしている姿だったのだから。

 はっきり言って勝負になっていない。自分たちの十倍はいるだろう物量を、ウォーグレイモンたちは蹴散らしていく。

 

「うぉおおおお! こりゃ、負けてられないっす!」

「ファイト……おー!」

「負けるかァァァァ!」

 

 そんなウォーグレイモンたちの姿に勇気づけられたのだろう。

 リベリオンズのメンバーたちがザクソンのメンバーを押していく。

 来人たちの前の前で、数分も経たずに小競り合いは終わった。無傷とはいかないが、それでもリベリオンズの勝ちだ。

 

「暴走女め……なんにせよ、この程度の場所で見つかってよかった」

「そうだね」

 

 そんなリベリオンズの面々を前に、アミとアラタはやれやれとばかりに呟く。アミにもアラタにも、その言葉の中には安堵の感情が込められていた。

 一方でアミたちがこの場にいることにウォーグレイモンたちも気がついたようである。

 

「あっ……ノキア。アミにアラタだよ」

「君たちも一緒に来てくれるの?」

「あっ! アンタたち……! なによ今更! どのツラ下げて……って、そっか! さてはアレね! 先に雑魚を片付けさせて、後から悠々とオイシイところをかっさらっていく鳶的アレね! なんてヒキョーでヒレツな!」

 

 先ほどは自分を止めたアミたちがここにいるという不可解な事実にあらぬ妄想をしたノキアは、どんどんヒートアップしていく。

 アミたちはそんな彼女の暴走を生温かい目で見ていることしかできなかった。

 

「アホは放置だ」

「ノキアは楽しそうだね」

「はっ!? 何その目は! あたしを踊らせて楽しんでるの!?」

 

 ともあれ、このままでは話が進まない。アラタは話を先に進めることにした。

 

「ったく。一人で盛り上がってんなって。おたくをアンダーゼロに近づけたくないだけだっての」

「はぁ!?」

「仕方ねぇ。奥の手を使うか」

「……奥の手?」

 

 そんなものは聞いていない。そんな表情でアミはアラタを見る。

 一方のアラタはそんなアミの表情を気にも止めずに何かを取り出す――それは“肉”だった。分厚い肉だ。ひと目で上物だとわかるほどの。

 

「美味しそう……」

 

 思わず、アミは呟く。

 人間であるアミですらそう思ってしまうほど、それは肉だった。肉としか言い様がなかった。

 

「これは……一部の選ばれたセレブだけが食べられる高級な肉だ」

「肉……」

「肉っ!?」

 

 ごくり、と。喉が鳴る。鳴らしたのはウォーグレイモンたちか、ノキアか、はたまた別の誰かか。

 「欲しいよなぁ? 食いたいよなぁ?」と。そう言いながら、楽しそうにアラタはその肉を目の前で弄ぶ。どうでもいいが、無駄に悪役顔だった。

 

「くれてやるよ。ほらぁっ!」

 

 肉を投げる。綺麗な放物線を描いて、そして肉汁を垂らしながら飛んでいく肉。しつこいくらいに美味しそうな肉。“彼ら”に、それを耐えることはできなかった。

 

「肉ー!」

「まてー!」

「ちょ、君たちどこに行くの! その肉はあたしがもらうー!」

 

 投げ出された肉めがけて殺到するウォーグレイモンたちとノキア。

 

「……」

「……」

 

 自分でやっていて難だったが、一人の少女らしき生物の人間らしさを奪ってしまったことに、アラタは少しだけ罪悪感を抱かなくもなかったとか。

 

「まぁ、いいや。さて、ここまで来たからには行くしかねぇよな」

「え?」

「ついでにユーゴとザクソンの連中も止めてやるんだよ。ノキアのアホと違って、頭良い奴らは馬鹿だからな。付き合ってくれるだろ?」

 

 乗りかかった船だ。そう言いたいかのようにアラタは、アミをまっすぐに見ていた。

 彼は気づいていたのだ。アミが自ら傷つこうとしているかのようなユーゴのことを止めたいと思っていることに。気づいているからこそ、ここまで来たのならと手を差し出した。

 

「うん……!」

 

 まったく敵わない。アミはそう思って、アラタの手を取る。アンダーゼロはすぐそこだった。

 




というわけで、第四十話です。

アンダーゼロ攻略回がいよいよ開始されました。
着々と原作のターニングポイントが近づいてきていますね。

それでは次回もよろしくお願いします。
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