【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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第四十四話~世界を超えたワケ~

 事態は目まぐるしく変わっている。

 そんな中で、アミに置いていかれた来人たちはノキアと共に行動していた。今の彼らがいるのは、クーロンエリアの一角である――のだが。

 

「君は……いや、まさか……?」

『さて。何のことやら。しかし、貴様の方こそいろいろとあったみたいではないか。なぁガルルグレイモン?』

「オメガモンだ。わかって言っているな?」

 

 これである。

 馬が合わないのだろうか。険悪というほどではないにしろ、オメガモンとカミサマの間の空気が冷たい。

 頼むから、他所でやってくれ。物理的な距離的意味で間に入らざるを得ない来人は頬を引き攣らせていた。

 

「まぁまぁ、オメガモンもカミサマも落ち着けよ!」

 

 顔を引き攣らせて黙っている来人に代わって、ブラックグラウモンがオメガモンとカミサマを仲裁する。こういう時に役立ちそうなノキアは、アミに連絡すると言って離れた場所にいる。

 早く戻ってきて欲しい来人であった。

 ちなみに、そんなノキアが戻ってきたのはこの数分後のことである。

 

「おまたせっ! アミに連絡取れたよ! すぐに来るって!」

「やっとか……」

 

 連絡が取れたということは、あの後も無事だったということである。来人たちは安堵の息を吐いた。

 まあ、そんな来人たちとは対照的に――。

 

『それにしても記憶喪失とは。かのロイヤルナイツ筆頭がその調子でいいのかな?』

「ふん。イレギュラーな事態だったからだ。平時からこの調子ではない」

『イレギュラーを理由にするとは。これは他の騎士が見たら何と言うだろうな?』

「そちらこそ、ずいぶんと凄惨たる状況じゃないか。私のことを言えるのか?」

『我のこれは名誉の負傷だ。うっかり記憶喪失になった貴様と一緒にするな』

 

 ――カミサマとオメガモンは相変わらずだったのだが。

 この状況をどうにかして欲しい。そういう視線を来人はノキアに向ける。が、ノキアはグッと笑顔で拳を握っただけだった。

 ノキアには、この状況のオメガモンとカミサマが仲良く見えているらしい。

 早く来てくれ、アミ。思わず、来人は天井を見上げて唸った。

 

「あっアミー! ほらほら、オメガモン。アミが来たよ!」

「やっとか……」

 

 見れば、遠くから走ってくるアミの姿がある。

 来人はようやくこの事態が終わることに安堵した。

 

「ノキアごめん! 来人たちを見てくれてありがとう!」

「うんうん、全然オッケー! って来人? どっかで聞いたような……うーん?」

「……」

 

 どうやら、ノキアの中では人間の来人の存在は忘れられているようだった。

 まあ、それも仕方のないことかもしれない。ノキアと会ったのは、あの日の一回だけだ。アミのように、それ以前から何らかの形で交流があったというわけでもない。その後の濃い日々のことを思えば、忘れても無理はなかった。

 

「ったく。お前は! もう少し考えて行動しろ!」

「ご、ごめん……!」

 

 到着したアミに対して、来人は怒る。

 いつもの無鉄砲さを発揮したアミとしては、謝る一択だった。

 

「まぁまぁ、ライトー落ち着けよ」

「アミノ無鉄砲ハ気質デス」

 

 ブラックグラウモンとアンドロモンが、アミに怒る来人を宥める。

 ノキアたちは生暖かい視線でそんな来人たちの姿を見ていた――が、先に進まないと考えたらしい。オメガモンが来人たちの間に割って入り、そして言う。

 

「済まない。事態は急を要する。話だけでも聞いてくれないか?」

「あっ、ごめんなさい。ガルルグレイモン」

「……それは完全に広まっているのか? 私はオメガモンだ」

 

 アミの言葉にオメガモンは肩を落としながら言う。少しだけ、その名前を広めたノキアが恨めしくもあった。

 

「あっ……ごめんなさい」

 

 名前を間違えるなど、失礼千万。アミは謝ることしかできない。

 まあ、その後ろでカミサマが爆笑しているのだが。

 

「ほらほら、オメガモンも! 話をするためにアミを呼んだんでしょ? はい、どーぞ!」

「……ありがとう。ノキア。では……まず、私がこの世界に来た理由。それは我らデジモンの住まう世界“デジタルワールド”を破滅から救うためだ」

「破滅……!?」

「そうだ。デジタルワールドはイーターの猛威にさらされ、滅びの危機にある」

 

 データを喰らうイーターにとって、最高の餌場となる世界。その名の通り、イーターはデジタルワールドを喰らった。いや、今も喰らい続けている。

 オメガモンたち“の”故郷のデジタルワールドは、イーターの侵食によって滅びつつあったのだ。

 

「私はデジタルワールドの守護者たる最高位のデジモン集団――ロイヤルナイツの一人だ」

「守護者。だから……」

「そう。我らロイヤルナイツは“イグドラシル”の意思を受け活動する。イグドラシルとは……()()()デジタルワールドの秩序そのもの……こちらで言う神のような存在だ」

「神……?」

 

 神。オメガモンのその言葉に、来人はカミサマのことを思う。

 彼は言っていた。自分はデジモンの神だと。だが、オメガモンの口ぶりや対応からして、カミサマはイグドラシルではないのだろう。

 これは一体どういうことなのか。疑問に思えど、オメガモンの話は続く。

 

「八年前。イーターの出現を感知したイグドラシルは彼らを監視……されど、即座に彼らを認定した。かつての死の進化にも劣らぬ“脅威”であると」

「……!」

「我々はイーター完全排除を目的の下、即座にイーター出現の原因を探り始めた。そして、見つかったのが――」

 

 ここだ。オメガモンはそう言った。

 ここ。それが何を指すのか、この場の誰もがわかった。この場所、すなわち――EDENだ。

 

「このEDENのネットワークは人間の精神をデータ化し、その意思を表出することができる。……EDENアバター……人間の精神データこそがイーター発生の原因だと我々は断定した」

「そ、そんな……それじゃ……」

「私たちがオメガモンの世界を壊したってこと……?」

 

 呆然とした顔でアミとノキアは呟いた。

 そんな二人に、オメガモンは首を横にも縦にも振ることがなかった。ただ、顔を伏せて言う。

 

「このEDENという世界で、露となった人間の負の感情や欲望……デジタル的に異質なそれこそが奴らを生み出した、と」

「……!」

 

 誰も何も言えなかった。

 ここにいる全員が見てきたのだ。悪意あるハッカーたちの姿を。すべての人がそうだと思っているわけではないが、一人でもいる時点で否定などできるはずもなかった。

 

「無論、その早計にして軽率な判断に異を唱えるロイヤルナイツも存在した。私のように。だが、自らの結論を固持する者も当然存在する」

「……その、人間を敵視しているメンバーは今何を?」

 

 嫌な予感がして、来人はオメガモンに聞いた。

 そして、オメガモンは言う。アミたちにとって信じたくないその事実を。

 

「今、彼らは人間の世界を滅ぼそうと動き始めている」

「ぶはっ! ほっほほほ滅ぼすぅうう!? え? 人間の世界って、どこからどこまで!? 東京? 北海道? アメリカ?」

 

 混乱のままにノキアは言うが、頭では彼女とてわかっていた。

 オメガモンの言葉がどういう意味を持つかくらいは。

 

「……この星、その地上すべてだ。イーターという脅威を我々の世界から消し去ったところで、奴らがまた現れないという保証はない。であるならば……」

『原因諸共断つのが最善……か』

 

 オメガモンの言葉を引き継いで言われたカミサマの言葉は、小さいながらもこの空間によく響いた。まるで呼吸が止まったかのように、誰もが黙り込んでいた。

 それだけ、オメガモンの話はショックだったのだ。

 

「彼らはこちらの世界に攻め込もうとしている」

「攻め込むって……どうやって?」

 

 アミは聞き返した。

 デジモンは現実世界に出ることはできない。どうやって攻め込み、滅ぼすつもりなのか、と。

 一方で、来人にはわかり始めていた。自分がデジモンだからこそ、攻め込もうとしている彼らがどうするつもりなのかがわかった。

 

「だからこそのイーターか」

「……! そうか」

 

 来人の呟きにアミも気づいた。

 今、東京に起きている現象。イーター出現時に起きる特殊現象。あの空間では、デジモンも現実世界に存在することができることを。

 

「そうだ。人間の世界とデジタルワールドは“次元の壁”と呼ばれる原理法則によって、異なる次元時空として隔てられている」

 

 だから、普通はデジモンは人間世界に出られない。

 だが、もし――その壁に穴を穿ち、二つの世界を繋げることができれば。交わりあった世界によって原理法則は崩壊し、交じり合う。

 そうなれば、あらゆるデジモンの行き来が可能となる。もちろん、それがロイヤルナイツという最高位クラスのデジモンであったとしても。

 

「おそらく、今東京で起きている現象のすべてはそのための下準備だろう」

「……!」

「計画を推し進めている岸部という人間がいるのだったな。彼女はロイヤルナイツの意向に従っているか、それか精神を操られている可能性がある」

「じゃ、じゃあ……オメガモン以外のロイヤルナイツもこっちに!?」

「次元の壁があるとはいえ、抜け道がないわけではない。だから、こちらにもデジモンがいる」

 

 オメガモンや、同等以上の力があると考えられるカミサマという前例があるのだ。他のロイヤルナイツがいても何ら不思議ではない。

 

「私は何としても彼らを止めたい。自分たちの世界の為に他の世界を滅ぼすなど……そのような身勝手な行為が正当化されるはずもない! 何より……私はそのような破壊的解決を望まない!」

「オメガモン……!」

「だから、私に力を貸してほしい。事態の解決には君たちの力が必要だ」

 

 真摯な表情で、まっすぐと見つめてくるオメガモン。

 答えなど決まりきっていた。アミたちはまっすぐとオメガモンを見つめて、頷く。

 

「ありがとう……!」

 

 オメガモンからもたらされた話は驚くべきことで、重要なことだった。未だ何をどうすればいいのか、この場の誰にも想像できなかったが――。

 

「杏子さんから連絡だ。……! そっか!」

 

 ――どうやら、目の前のことは解決できそうで。

 杏子からの作戦会議のために事務所に戻れという連絡を受けて、アミは探偵事務所へ向けて走り出す。

 

「あっ、あたしたちも行く! さっきの話を伝えないとダメだしね!」

 

 ありがたいことについて来てくれるノキアたちと共に、アミは事務所へと戻る。

 ちなみに、そんな彼女は来人たちをデジヴァイスに戻すのを忘れていて、当人たちに拗ねられたのはほんの余談である。

 




というわけで、第四十四話。

分割した結果、ほとんど原作と変わらなくなってしまったので、今日は二話同時投稿です。
次話もよろしくお願いします。
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