【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

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分割した結果、ほとんど原作と変わらなくなってしまったので、今日は二話同時投稿です。
前話を読んでいない方は前話からよろしくお願いします。


第四十五話~無数の世界~

 アミたちが暮海探偵事務所へと戻り、作戦会議をしているその頃。

 現実世界に出ることができない上、()()作戦なのかを聞いていない来人は、おとなしくデジヴァイスの中にいた。

 

「さっき気になったことを教えて欲しいんだけど……?」

 

 今、近くにアミのデジモンたちもブラックグラウモンもいない。

 先ほど、頼み込んで話の聞こえないような場所に行ってもらったのだ。土下座しかねない勢いで頼み込んだ来人のその姿に、彼らはちょっと嬉しそうな顔をしていたのだが、ほんの余談である。

 

『人払いしてまで……一体何だ?』

「わかってるんだろ? オメガモンの話だ。イグドラシルのこと、神様だって言ってたぞ。カミサマは神様じゃないのか?」

『その辺は少し複雑なのだがな……まぁよい。ここまで来て黙っているというのも難であるし、話そうか』

 

 そう言うとカミサマは話し始めた。()()()()()世界について。

 

『オメガモンらロイヤルナイツがいるのは、イグドラシルの管理するデジタルワールドだ。イグドラシルが世界の理を司り、ロイヤルナイツがそれを守護する……というな』

「その言い方……デジタルワールドにもいくつかあるって言い方みたいだな」

『無論だ。世界は一つではない。有名どころでは魔術師たちの故郷たる世界に、四聖獣の守護する世界、三大天使の治める世界に、ホメオスタシスが見守る世界……名前のあるなしに関わらず、それこそ無限に存在する』

 

 世界が一つではない。

 漫画や小説などでは実際によくある話ではある。あるのだが、それはあくまで創作物の中だけの話。実際にそういうものがあると言われれば、驚くしかない。

 カミサマの上げた世界はほんの一例だ。いくつものデジタルワールドはなぜか似通っているものの、世界の管理者や守護者が違ったり、そもそもいなかったり――本当にさまざまだ。

 

『我々がいた世界は……“イリアス”と呼ばれる世界。ホメロスが世界の理を司り、()()“オリンポス十二神族”が世界を守護する世界だ』

「……? どこかで聞いたような……?」

 

 もし来人が勉強していたのならば気づけただろうか。

 オリンポス十二神族というのはギリシャ神話の神々のことであって、イリアスと言うのはそんな神々が登場する作品であることに。さらに、そのイリアスを作ったのはホメロスという吟遊詩人であったことに。

 いくつも存在するデジタルワールドはそれぞれ似通っているだけではなく、人間の世界とも共通点が存在するということだった。

 

「つまり、カミサマはそのオリンポス十二神族っていう神様ってことか?」

『そういうことになる。立ち位置としてはロイヤルナイツと変わらん。そう覚えておいてくれればいい』

「ふーん……」

 

 頷きながら、来人は先ほどオメガモンから聞いた話を思い出す。

 彼がこの世界に来た理由は、彼らのイグドラシルのデジタルワールドの破滅を免れるためだった。であるならば、カミサマの世界であるイリアスも――そう考えた来人だったのだが。

 

『いや。我々の世界はイーターの危機に晒されてはいない』

 

 だが、事は来人の予想に反していた。

 

「……? じゃあ、何でカミサマはここにいるんだよ?」

『数年前のことだ。ホメロスはイグドラシルのデジタルワールドに異変が存在したのを感知した』

「イーターか」

『そうだ。異変を感知したホメロスは事態を調査し、あのイーターの存在を認識した。幸い、我らの世界にイーターは入り込んでいなかった。他世界の危機とはいえ、自世界の危機ではないのだ。放っておけばいいという結論に達するのは当然の帰結だった』

 

 そんなカミサマの言葉に、来人は顔を顰める。

 少々冷たいのではないか。カミサマの言っていることもわからないでもないが、それでも世界的な危機を見知った上で放っておくなど。

 来人はそう思ったのだ。

 

『貴様の言わんとしていることはわかる。だが、世界を異にする者……それも一般の者たちならばともかくとして、我々やロイヤルナイツのような最高位の存在同士が出逢えば事は良くも悪くも動く。良く動くのならばいいが……』

「悪く動くと目も当てられない、か」

『そうだ。それに世界守護の役目を持つ我々が自世界の守護を放り出して、他世界を守りに行くわけにはいかないだろう』

 

 来人は思い出した。

 オメガモンとカミサマは、互いに険悪な雰囲気ではなかったが、仲の良いという雰囲気でもなかったということを。

 なるほど、確かにメンバーの全員があのような感じだったのならば、事は収まるどころか妙な方向に行ってしまうかもしれない。

 カミサマの言い分はわかった。だが、それでも、仲良くしろよと思ってしまった――が、そこで来人は浮かんだ疑問に首を捻った。

 

「ちょっと待てよ。カミサマの世界は放置を決めたんだろ? じゃあ――」

 

 「何で、カミサマはここにいるんだよ」と。納得できないとばかりの声色で、そう言った来人。

 カミサマは応えた。『ここから先が本題だ』と。

 

『少し前、ロイヤルナイツたちが奇妙な動きを始めた。我々の世界でも感知できるほどの動きだ』

「それって、オメガモンが言っていた……」

『まあ、そういうことだろうな。軽率とも言えるほどの攻撃的な守護だ。我々としても疑問は尽きなかった。イーターとはそれほどの脅威なのか。それで本当にあちらの世界が救えるのか』

「そうか。だから……」

『そうだ。もし万が一、イーターが我々の世界に来たのならば。いや、そもそもイーターとは。外から調べたのではわからない、実地での調査を必要だとする意見が出たのだ。我々オリンポス十二神の中でな』

 

 『それに我が立候補して、他の者に手伝ってもらって我だけがこの世界へと来た。後のことは知っての通りだ』と。そう言って、カミサマは話終えた。

 事の経緯はわかった。来人が話の初めにカミサマに覚えていた疑問も解消した――のだが、少しだけ思う。

 十二神ということは、十二柱の神様がいるのだろう。その中で率先して外部に来るとは、もしかしてカミサマは下っ端ではないのか、と。

 

『何か失礼なことを考えているな?』

「……ま、そういうこともあるさ。きっと良いことあるよ」

『貴様……その哀れみに満ちた眼差しで虚空を見つめるのを止めろ……!』

 

 怒りに満ちたカミサマの声。だが、そんな彼の声すらも、来人は慈悲の心で聞いていて――カミサマはそんな来人に余計苛立ったのだった。

 

「ま、イーターについては着々にわかってきているけどな……」

『……しかし、まだ完全にわかったというわけではないだろう。それに……今のロイヤルナイツは危険だ。貴様には済まないが、もう少し危険なことに首を突っ込んでもらうぞ』

 

 次元の壁を壊すなど、それこそただでは済まない。

 上手くいけばいいが、下手をすればそれこそイリアスや他のデジタルワールドにさえ影響が出る。そうなれば、他のデジタルワールドさえ動き始める可能性もあるだろう。

 あくまで可能性の域ではあるが、絶対にないとは言えない。強硬派のロイヤルナイツたちはそのリスクを冒してまでやる気なのだろうが――何にせよ、その可能性がある以上、カミサマとしても今のロイヤルナイツを見過ごせなかった。

 

「今更だな……どのみち、アミが()()な以上は危険の真っ只中だよ」

『ふっ。そうか』

 

 笑いながら溜息を吐くという器用なことを来人はする。

 それはアミの先がわかったような気がしたからのものだった。

 

「ん?」

『呼ばれているようだな。行ってきたらどうだ?』

「わかってるよ」

 

 ちょうどこの時だった。

 外から聞こえる声は、アミの自分を呼ぶ声。どうやら、作戦とやらが決まったのだろう。

 今度は何に首を突っ込んでいるんだか。そう思った来人は、自分を呼ぶ声に身を任せて外へと出る。そこは――。

 

「これは……」

 

 ――そこは大きな通路だった。

 天井を見る。半分デジタル化している。壁を見る。半分デジタル化している。地面を見る。やっぱり半分デジタル化している。

 それはイーターが出現する時のあの状況だった。

 

「アミ、またイーターか?」

「うぅん。今回はちょっと違う。歩きながら話すよ」

 

 周りを見渡すせば、自分の他にノキアとオメガモンがいる。

 その表情に少しの焦りがあって、時間がないのは本当なのだろう。来人はアミに先導されて歩き始めた。そして同時に、アミは話しだした。

 今から自分たちがしようとしていること、その経緯を。

 

「杏子さん……あ、私の上司なんだけどね? その人がいろいろと調べてくれたんだ。以前起きたイーター事件の発生場所や今わかるデジタルウェイブの流れを辿って……東京全体を覆う円環状のエネルギーの流れがあるって」

「エネルギーの流れ?」

「デジタルラインって名づけたみたい。それで、そのデジタルラインは人為的な制御がされいるって」

『人為的な制御だと……? いや、そうか。先のイーターを見れば、それくらいはできるか』

「そう。岸部たちは長い時間をかけてデジタルラインを整備していたってことだね。そのデジタルラインを使って、次元の壁に穴を開けるつもりみたい」

 

 岸部。オメガモンも言っていた人物であるが、来人はその人物を知らない。が、話の流れからして、今回の黒幕なのだろう。

 実際はもう少し何かあるのだろうが、話の腰を折っても難であるし、来人はそう理解しておいた。

 

「なるほど。つまり、今はその計画を止めに行くってことか?」

「うん。それ半分はね。もう半分は岸部に捕まっている悠子を助けに行くんだよ」

「悠子?」

「あ、ユーゴの中の人だよ。私の友達。何か、特殊な装置でEDENアバターを偽ってたみたい」

 

 アミたち自身もよくわかっていなかったが、次元の壁に穴を穿つという岸部たちの計画には、どうやら悠子が必要らしい。だから、悠子は捕らえられている。

 

「急がないとね……」

 

 計画を止めるためというのはあるだろう。だが、言葉には出さずとも、アミの中で比重が大きいのは悠子救出の方だった。

 この場にいる全員がそれを察しているが――誰も何も言わないのは、アミがそういう人物であり、ついでに言えば悠子の救出はイコールで岸部たちの計画阻止に繋がっているからだろう。

 

「そっか。じゃあ、急がないとな」

 

 来人は笑っていう。全くもって、いつも通りだ、と。

 

「うん!」

 

 そんな来人にアミは感謝の念を込めた笑みを返して――そんな彼らは気づく。

 何者かが自分たちを追って来ていることに。

 




というわけで、第四十五話です。

前回に引き続き、ネタバレ回。
ようやくイリアスの名前が出せました……。

ともあれ、次回からは悠子奪還回ですね。

それでは次回もよろしくお願いします。
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