【完結】デジモンストーリーサイバースルゥース~電脳探偵と神を宿せし少年~   作:行方不明

5 / 114
ゼヴォリューションの方が完結した(宣伝)ので!
もう一つのサイスルの方と悩んだ結果、こちらを始めることにしました!

また注意事項として、本作はその特性上、原作シーンのカットが含まれます。
最低限は書きますが、やはり最低限です。
原作主人公の活躍を詳しく知りたいという方は、申し訳ありませんが他の方々の小説(宣伝)や原作のプレイ(宣伝)をよろしくお願いします。



第五話~狙われたのは己が身で~

 ひとしきり絶叫して冷静になった来人。彼は、その後、自分の中から聞こえてくる声にいろいろと説明してもらっていた。

 

「なるほど……つまりデジモンってのは、別世界から来た別世界の生き物ってことだな」

『そうだ。付け加えるのならば、その在り方が電脳体としての在り方として近いために、貴様たち人間にはプログラムとして見られているのだろう』

「そこら辺はよくわからんが……わかった」

 

 そんなことあり得るのか、と。正直に言えば、疑問は尽きない。が、来人は無理矢理にでも納得することにした。そうしなければ、この先やっていけないと彼の勘が言っていたのだ。

 

「で、カミサマに聞きたいんだけどさ」

『ちょっと待て。なんだその呼び名は』

「え? いいだろ別に。神様なんだからカミサマで」

『……まぁいい』

 

 何か思うところがあったらしいが、中の声は最終的には来人の呼び方で納得してくれたようである。

 

「で、あのバケモノはデジモンじゃないんだよな?」

『当然だ。あのバケモノはデジモンではない。正体不明の何かだ。だからこそ、調査が必要なのだ』

 

 なるほど、神様でさえ正体がつかめない危険な生物が現れたのならば、確かに調査の必要があるだろう。カミサマのその言葉に、来人は頷いた。

 

『まあ、今はまだその段階ではない』

「……? どういうことだよ?」

『貴様、まだ気づいていないのか?』

「だから……何が?」

 

 首を傾げて聞き返す来人。

 だが、返ってきたのは露骨に呆れた溜息だった。つい苛立ってしまった来人だが、カミサマの方からしたら、なぜ気づかないと言いたかった。

 

『今の貴様は人間ではないのだぞ?』

「ああ、アイギオモンだったっけ?」

『そうだ。なるほど。すでに貴様はその身体を十全に動かせるというのだな』

「あ……」

 

 そこまで言われて、ようやく来人にもわかった。カミサマの言わんとしていることが。

 デジモンと人間では体構造から何から何まで違う。もう来人の慣れ親しんだ身体ではないのだ。今の身体で、今まで通りの動きができるはずもない。

 まあ、実際にはカミサマの補助があるため、そこまで苦労はしない。それでも、歩く程度ならばまだしも、戦闘などの激しい動きをいきなりするのは難しいだろう。

 

『いいか。今からしばらくはその身体に慣れることに専念しろ。死にたくなければな』

「……ぐ。わかったよ」

 

 カミサマに言われて、立ち上がった来人は恐る恐る歩いてみる。普通に歩けた。

 なんだ簡単じゃん、と。予想外の感覚にそんなことを思った来人。そこで調子に乗ってしまったのが悪かったのだろう。

 歩くことができたのならば、次は走ることだ。足に力を入れる。地面を蹴る。

 そして出たのは、予想外の速さで。

 

「ぶべらっ!」

 

 予想外の速さをコントロールできずに、来人は行く先にあった壁に激突した。

 

『間抜けめ』

 

 呆れたようなカミサマの声が、来人の耳に届く。

 顔面に響く痛み。顔をさすりながらでも、来人は穴に入りたかった。顔が、痛みとは別の意味で赤くなる。走って壁にぶつかるなど、そんなことが起きるのは子供くらいだ。本当に間抜けとしか言い様がない。

 とはいえ、彼が壁にぶつかってしまったのも仕方のないことだ。

 

「どうなってるんだよ……?」

『どうもこうもない。貴様は今はデジモンなのだ。人間と同じ感覚でいるな』

「うぐぐ……」

 

 先ほど、来人は軽く走るつもりで足に力を込めた。本当に軽く。

 たいした速度はでないはずだった。しかし、実際に出た速度は、明らかに人間では出せないような速度で。来人は身をもって知った。デジモンという種の凄さを。

 

『ある程度のサポートは我がするから心配するな。集中しろ』

「そんなこと言われてもな……さっきのを見れば心配にもなるって」

『我がサポートすると言っているだろう。一度慣れれば、我のサポートで普通に動けるようになるはずだ』

「むぅう……!」

 

 そこからは、基本的なことばかりをした。

 全速力で走ってみたり、長距離を走ってみたり、反復横とびをしてみたり、筋トレをしてみたり。学校のスポーツテストのようなことばかりをしたのだ。

 まあ、その甲斐あってか。来人はある程度、身体を自在に動かすことができるようになった、のだが。

 

「本当に動くようになった……慣れって怖いな」

『何を言っている。当たり前だろう』

 

 呆れたようにカミサマは呟く。そう。当たり前だった。

 簡単に言えば、今の来人はアイギオモンという身体の動かし方を知らなかった。それは、車で言えばエンジンのかけ方を知らなかったようなものである。

 エンジンさえかけてしまえば、後の運転そのものはカミサマが全面的にサポートしてくれる。

 だからこそ、一度加減と動かし方さえ覚えてしまえば、後はもう大丈夫なのだ。

 

「ま、これでもう大丈夫だよな!」

『……』

 

 スーパーマンのような、人間以上の動きができるということが、彼には楽しくて仕方なかった。ようやく自由に動くようになった自分の身体を前にして、今までの分の発散とばかりに来人は元気よく動く。

 一方で、カミサマは沈黙していた。呆れているとばかりに。

 

「なんだよ? 違うのか? ……違うんだな」

『当たり前だ。我がサポートすることで貴様はその身体を動かすことができる。とはいえ、だ。動かすのはあくまで貴様なのだ』

「それって……」

 

 そう。自由自在に身体を動かすことができるからといって、動かすという意思の主体はあくまで来人である。そこに問題があるのだ。

 

『そうだ。確かに日常の動きは問題ないだろう。だが、問題は戦闘などの一瞬一瞬の動きが重要となる場面だ。貴様は実戦経験はあるのか?』

「いや。子供の頃の喧嘩くらい……しか」

『絶望的だな。そこは追々何とかしていくしかない。とにかく、だ。動かすことができるからといって、大丈夫ということにはならない。ゆめ忘れるな』

「……わかった」

 

 来人は、カミサマの厳しい言葉は心配してくれることの裏返しであることに気づいた。少し前のカミサマの言葉を思い出したのだ。これから先、危険が伴うことすらあるというあの言葉を。

 それと同時に、来人は急に冷水をかけられたような気になって、浮かれていた熱が冷めていく。足元がぐらつくかのような、そんな不安が襲ってきて――。

 

「よっし。カミサマは戦えるのか?」

『む。確かに我は戦闘能力も高い神であるが……』

「なら、戦い方を教えてくれ。パンチの仕方とか、身体の動かし方とか……いろいろだ」

『それは……いいが』

 

 ――そんな不安から逃れるためにも、なにより生きて帰るためにも、来人は身体を動かし続ける。いつか、無事に帰られるように。

 幸いにして、時間だけはある。身体を動かす練習をするのには十分だった。

 そして、身体を動かし始めて数時間。

 

「ほっ……! ふっ! どうだ!」

『まだまだだ。動くたびに重心がズレている。しかも、殴るにしろ蹴りにしろ軌道がブレ過ぎている。幼子でももう少しマシだぞ!』

「へーへー。厳しいなぁ……」

『貴様が言い出したことだろう!』

「わかってるよ……!」

 

 カミサマ監修のトレーニングの下、来人は素人に毛が生えたレベルにはなれた。まあ、所詮はそのレベルなのだが。そこは仕方ないだろう。一石二鳥で強くなれるはずもない。

 

『とはいえ、一人ではできることが限られる。やはり実戦相手が欲しいところだな……』

「え?」

『ふむ。やはりまだ早いか。隠れろ』

「え?いや、だから何を……」

『いいから早くしろ!』

 

 独り言から始まったカミサマを不審に思った来人だったが、飛んできた怒鳴り声を前に、すぐさま行動を開始する。適当な場所の影に身を隠し、息を潜めた。

 どれだけ時が経っただろうか。しばらくして、たったったと誰かが走っている足音が聞こえる。その足音を前にして、来人は見つからないようにソっと陰から覗いた。

 

「……何だ、アレ」

 

 見えた光景に、思わず来人は呟いてしまった。

 青いノイズまみれの人型の何かが走っている。この空間に詳しくない来人でも異常だと思えるような何かが、このクーロンの奥を目指して。

 来人は、そんな何かを呆然と見送るしかなかった。

 

『あれは……奇妙なことになっているな』

「カミサマはアレが何かわかるのか?」

『うむ……おそらくは精神データが独立しているようだが……ふむ。よくわからんな』

「カミサマのくせに……!」

 

 去っていったあの何かは、どこの誰とも判別できない。だが、来人にはアレがよく知った誰かと重なった気がして――彼は、その嫌な考えを頭から振り払った。

 アレが彼女であるはずがない。彼女は無事だったんだ。そんな、頭の中に浮かんだ疑念を振り払うべく、来人は、再び身体を動かし始める。

 

『……間抜けめ』

 

 呆れたかのようなカミサマの声が、妙に来人の耳に残った。決して、心中を覗かれたわけではないと分かりつつも。

 

「何が間抜けなんだよ?」

『我が何のために隠れろと言ったと思っている』

「え? さっきのアレから隠れるためではなかったのか?」

『いや、確かに説明不足は否めなかったがな。しかし……こうなっては仕方ない。いいか、一つ言うぞ』

「……なんだよ?」

『危なくなったら撤退。これは基本だ。わかったな?』

「いや、だから何を……っ!」

 

 そこまで言って、来人はようやくカミサマの言わんとしていることを理解した。来人も見つけたのだ。下衆な笑いを浮かべながら、だんだんと近づいてくる男を。

 その男は、妙なロゴ入りの服を纏い、その背に赤い恐竜を従わせて、堂々と歩いて来ている。

 その視線の先にいるのは自分だとわかって、来人は頬を引き攣らせた。何となくだが、来人にはその人物の視線が獲物を狙う狩人の目に見えたのだ。

 

「へへっ! 見たことねぇ奴! こりゃ、レアだな!」

「もしかして……それ、俺に言ってる?」

「おぉ? 何言ってやがる。当たり前だろっ! へへっ」

「ですよねー」

 

 赤い恐竜を連れた彼は、来人を品定めするかのように見ていた。その視線は、何が何でも来人を手に入れるという意思に溢れていた。

 正直に言えば、とても気持ち悪い視線だ。来人に男色の気はない。

 もちろん、男として狙われているのではないことくらい来人もわかっている。が、とはいえ、だ。それがわかっていても、自分を狙っているというその視線には耐えられなかった。

 

「くそっ! 捕まってたまるか!」

「ハァ? てめぇみたいなレアキャラは絶対逃がさねぇよ!」

 

 ゾクゾクゾワリ、と。その瞬間に、来人は自分の身体が舐め回されるかのような、そんな気持ち悪い感じを味わった。視線云々ではない。もっと機械的なまでの何かを。

 そして、それが何か理解する間もなく――。

 

「行けよオラァ! あのレアキャラを捕まえるんだよ!」

「うぉおおおおおお!」

「ちょっ!」

 

 男が連れて来た赤い恐竜が、来人に襲い掛かった。

 

『……我は知らんぞ』

 

 三度の、呆れたようなカミサマの声。

 来人の初戦闘は、自分の身をいろいろな意味で守る戦いとなったのだった。

 




というわけで、初戦闘。
貞操(嘘)を狙ってくる男との戦闘です。

さて、今回は二話連続投稿です。

それでは次回もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。