島風の唄   作:月日星夜(木端妖精)

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なんかコラボ


番外編 コラボ改
1.その後の世界と、また別の世界


 2035年。世界は滅亡する。

 ……なんてこともなく、世界は平和だった。

 どこかで銃弾が飛び交ったり、人が生まれたり死んだりしているけど、おおむね平和。

 だってもう、海は静かなのだ。

 

 かつて人類を絶滅の危機に追いやった深海棲艦はどこにもいない。

 2035年6月17日、午前2時57分。全深海棲艦、撲滅完了。

 これにて艦娘――今はもはや、そんな名称で呼ぶ人間は一握りだけど――のお仕事は完全に終了し、私達は人間になった。

 

 

 ここは東京。

 とーきょ。TOKYO。言い方はなんでもいいけど、とにかく大都会。

 初めて見たな、こんな人でごった返してる場所。

 

 人ごみを避けて建物の近くを歩いている私は、昔島風型の一番艦って呼ばれていた、今はただの女の子。

 名前はシマカゼだけど、私は島風ではないので、もういろいろと違うのだ。

 

 たとえば特徴的なうさみみカチューシャは、ぴょこんと飛び出ていた二つのとんがりを後ろ髪を縛るのに使っていて、髪型は一本縛り。お下げというやつ。

 服装も公道を走れないような破廉恥な格好ではなく、ちゃんと三枚重ね着にもふもふ毛皮のコートと、普通サイズのスカートってスタイル。

 まあ、普通だね。お洒落でもなんでもない私のセンスではこれが限界。

 

 私のかわいいかわいい彼女である朝潮ならもっと良い服選んでくれるだろうけど、あいにく彼女とは二ヶ月ほど顔を合わせてないので、仕方なく自分でチョイス。

 あっ、別に喧嘩してるとかじゃなくって、進学の都合上そうだったってだけ。顔を合わてないのはね。

 

 法律の改正が何度も行われて、私達の定義は幾度も書き変わって、そろそろ世間での扱いも定まってきて。

 そんな時、私達は学校に通う事になった。

 最初はそんなの必要ないと思ったけど、私達元艦娘がこの国で生きていくのには学校は必要不可欠だと知ったので、しぶしぶ中学からやり直し。

 公正なるくじ引きにより私は千葉に進学して、朝潮は北海道だから、あんまり顔を合せられなくなっちゃって、でも今日再会できるんだから寂しくなんてない。これまでも頻繁に電話してたしね。

 

それで、私は今秋葉原にいるのだけど、さて、朝潮達が待っているのはどこだったかな。

 

「もしもし? 島風? 今どこー」

 

 という訳で、スマートフォンでご連絡。

 かけた先は、私の友達の島風。同一艦の島風だ。

 

『待ち合わせ場所だよー。ひょっとして忘れちゃった? ……忘れたんだー』

「いやいや……えーっと……いやいやいや」

『ぶっぶー、時間切れ! 誤魔化そうったってそうはいかないよ。ほら、朝潮も呆れてる!』

「えぇー」

 

 そんなあ。

 待ち合わせ場所がわからなくなったなんて格好悪いから、わざわざ島風の方に電話したのに、これじゃ意味ないじゃん。

 ああ、もういいや。それで、待ち合わせ場所ってどこだっけ。

 

『開き直ったー、いけないんだぁー。朝潮に言いつけちゃおっと』

「待って。クリームソーダ奢るから待って」

『神速で待ちます』

 

 返事がはやい。さすが島風だね。

 

『仕方ないなぁ。島風が教えてあげる。ヒントはー、学校です!』

「……それもう答えじゃん。思い出したよ」

 

 いったんスマホを耳から離して、画面をスライドさせてナビゲートアプリを起動する。目星はもうつけてたから、ちょっと動かすだけで目的地の名前が判明した。

 

「国立音ノ木坂学院ね、了解」

 

 来年から通う事になる高校の事、どうして忘れてたんだと自分に問いかけてみれば、いやまあ、ぶっちゃけそこら辺興味ないしとしか返事できない。

 だって私にとって中学も高校も二週目だし、あんまり学ぶ事はないよ、もう。

 

『ちなみに待ち合わせ時間は午後2時ジャストー』

「んっ?」

 

 午後……2時?

 現在時刻は……午後1時48分。

 ……やっばい。

 

 

『やんやん遅れそうです?』

「うんっ。ごめん、切るね。超特急で行くから!」

『ちゃおー』

 

 朝潮によろしく、と一言残して通話を終了させ、足に力を籠めつつ顔を上げる。とにかく急いで、遅刻なんて絶対ダメ!

 そう意気込んで顔を上げれば、私の頬を冷たい風が撫でて行った。

 

「……え?」

 

 喧騒が消えた。

 

 背の高い建物も軒並み消えて、ついでに無機物も全部消えて、おまけに地面まで消えていた。

 足下にあるのは、目が痛いほど光を反射している海と、その波。

 

「……なにが、どういうこと?」

 

 問いかけた声は、高い空に吸い込まれていった。

 

 現状の把握に努めること数分、理解不能なので思考を放棄した私は、自身の格好が艦娘時代のものに戻っている事に気が付いた。縛っていた髪は解けて風になびいて、頭の上ではうさみみリボンが揺れている。。

 左腕を掲げてみれば、腕時計よろしく情報端末――KANDROIDと呼ばれた機械――までついてるし、履いてるのは鉄の艤装のブーツで、着ているのはやたら丈の短いセーラー服。

 

 ……タイムスリップでもしちゃった?

 なんとなく端末を起動し、空中に投影された光化学画面を眺める。

 西暦……9999年……バグってんじゃん! 駄目だこりゃ。

 

 カツカツと指先で端末を叩いて妖精さんを呼び出す。

 黒色の表面からひょこっと頭を出した羅針盤の妖精さんにどういう事かと意思を飛ばせば、さあ? と肩を竦められてしまった。

 妖精さんにもわからないんじゃ、私にわかるはずもない。

 

「はぁー……どうしたもんかな」

 

 テキトーに周囲に救難信号でも飛ばすか、と妖精暗号通信を試みてみれば、ごく最近撲滅完了したはずのイヤーな奴らが発する妨害電波と似たものに阻まれてしまった。

 なので私はわざとらしく肩を落として溜め息を吐き、どうしたもんかななんて呟いてみたのだ。

 

 その実、遅刻しそうだったのがうやむやになりそうだとか、また敵が現れて、また戦えそうな事に期待してたりとか、そーいうのがあったりして……存外混乱はなかった。

 それでもって、背後から聞こえてくる駆動音……エンジン音? なんかもあったので、このまま何もわからず起こらないままって事もなさそうだったから、落ち着いていられたって訳。

 

「……ほわっ?」

 

 でも振り返ってからは、ちょっと冷静でいられなかった。

 だって、てっきり深海棲艦でも出てくるのかと思えば……車が、走ってきていたんだもの。

 それは私のすぐ傍で水飛沫を撒き散らして止まった。

 そう、停まったのだ。海面に。

 

 ていうか、私はその車に凄く見覚えがあって、だからこそ混乱していたのだけど……フロントガラスから見える運転席に座っている艦娘――綾波と、助手席に座っている艦娘――吹雪に目が行って、まさか、と目を見張った。

 

 まさか……ここ、ロンドン?

 

 

 結論から言えばここはロンドンではなかった。

 いや、吹雪ちゃんと綾波の組み合わせって言ったら、二人がロンドンへ留学した事しか知らないし……そうだと思うじゃん、普通。

 

 だけど、普通ではなかったのだ。

 この海も、私を自らの"基地"に案内すると言ったこの綾波も。

 

 

 いったん近場の安全らしい島に連れ込まれた私は、そこで事情聴取を受けた。

 どうしてあそこにいたのか。私は何者なのか。

 隠したってしょうがないし、不透明な事が原因でトラブルがあっても嫌なので、一から百までペラペラ喋る事にした。

 

 気が付けばあそこにいて、私が元いた場所では深海棲艦はもういなくって、ついでに私は仮面ライダーが好きです。みたいな話。

 ……この綾波、食い付いてきたんだけど。ファンの一人なのかな? 真っ赤な車、トライドロンなんてものを乗り回してたし、そうなのかも。

 

 ならば話は早い。趣味が同じなら警戒する必要もないし。

 

 案の定話が弾んだ。彼女は私が本物の泊進ノ介と出会った話に強い興味を抱いてくれたので、自慢したい私としては嬉しい限りだった。

 一緒にいた吹雪は話に入ってこれなくてあんまり楽しそうではなかったけどね。

 

 話が盛り上がりそうだったけど、いつまでもお喋りしている暇はないらしい。

 ひとまず彼女は上の立場の人に連絡をとって、私を保護すると報告した。

 迷子扱いされたんだけど……いや、迷子じゃないよ?

 ちゃんと目的地はわかってたもん。やんやん遅れそうだっただけで。

 

 ……今さらだけど、やんやんってなんだろう。ヤンヤン棒? 懐かしい。

 そんなこんなで、私は久々にトライドロンに乗り込んで、彼女達の基地へと向かったのであった。

 

 ……ところで、私のスマホどこ?




TIPS
・藤見奈シマカゼ
中学三年生。得意技はストライクウィザード。

・藤見奈朝潮
女学生。得意技は『ものしり』。

・藤見奈島風
学生。得意技は早寝早起き早食い早弁。

・あやなみ
謎の艦娘。中の人がいっぱいいる。

・吹雪
台詞がなかった。悲しみ。

・スマホ
お隠れになった。

・なぜ音ノ木坂が出てきたの?
最近ラブライブにはまってるから。
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