Mechanized Mercenary 作:Unknown AK
その4くらいまでは書いてあるので、今日の内に上げてしまう予定、なのですが…
その後のペースは正直未定です。
見てくださる方、応援してくださる方などいれば、週1くらいで上げられるかもしれない可能性が…
なにはともあれ、その2です。
「お客さんたち、傭兵かい?」
美味とは言えない合成タンパクを”補給”していると、不意に店主が声を上げた。
若くはないもののいまいち年齢の読めない、接客には向かなそうな強面を数秒見つめてから、俺たちは今の声が自分たちへ向けられたのだと認識する。
「ああ、そうだけど。」
俺が答えると、店主は顔を綻ばせた。
これはとても珍しい。顔をしかめられることや、眉を顰められることはあっても、笑顔などめったに向けられることはない身分だ。
「それが、どうかしたのかよ?」
俺と同じ感想を持ったらしいアルトが聞くと、店主は言う。
「いやね、実はあの野生型、最近現れた”新型”じゃないかって噂があったからさ、早めに討伐してくれて、助かったと思ってるのさ。なにせこんな小さなコロニーじゃ、自前で傭兵を雇ったりなんて、到底できないからね」
一つは企業や組織の依頼を受けての、強襲。
輸送部隊の襲撃から敵対企業の戦闘部隊の撃破、迎撃まで、主に依頼を受ければ何でもこなす。
二つ目は、
こちらは、依頼を受けるだけでなく、自主的に討伐を行えば、討伐対象に応じた報酬をその地域の支配企業から受け取ることができる。このコロニーは小さいので、おそらく依頼を出すための報酬額を用意することができなかったのだろう。となれば流れの傭兵が討伐してくれるまで、あの野生型に耐えるしかない。
つまり俺たちが道すがら、報酬目当てであのワークスパイダーを討伐したことは、このコロニーにとっては降ってわいた幸運ということになるのだ。
「なるほど。そういうことか。」
頷いて、ふと先の店長の台詞に違和感を覚えた。
「ん、ところで店長、新型ってなに?」
ピアノが訪ねるのを聞いて、思い出す。
さっき、店長は「新型じゃないかと噂があった」と言った。
普通、野生型に関しては”新種”という言い方をするので、単なるその言い間違いかもしれない。が、それにしては新型、という言葉に重点を置いていた気がする。
はたして、店長は、
「あれ、お客さん知らないのかい。最近流れてる”新型”の噂。」
と言った。明らかに”新種”の言い間違いではない。
ピアノも同じ結論に達したのだろう、脚の収納から、汎コロニークレジットをいくらか取り出し、カウンターに置く。
「ええ、ぜひ教えてほしいんだけど。」
この時代、情報も資産の一つである。ただで教えてもらえるのは、相手がよほど親しい間柄なときくらいである。
脚の一部を直接開閉して取り出す様に少しぎょっとした様子の店長だったが、
「いいよ。」
答えると、カウンターに手をついて顔を傾ける。
周りを見渡し(と言っても俺たちのほかに客はいないのだが)低い声で言う。
「新型ってのは、最近噂になってる新手の
「ワイルドタイプを、組織化?」
信じられないといった様子で、アルトが聞いた。
野生型は、基本的には単独行動、集団で行動する種類は希少だ。
加えて、組織化してコロニーを襲うなどあり得ない。
「おうよ。アフリカの主戦域のあたりに多く出没するってデータもあって、どうにも企業の新兵器だと踏んでる奴もいるみたいだな。」
「それは、さすがにデマじゃないか?」
俺が言うと、店長は傷ついたように身を引いた。
「失敬だな。俺は金まで貰ってデマは言わねえよ。俺の甥っ子がAJの部隊にいてよ。こないだアフリカから帰ってきたんだ。こいつはそいつから直接聞いた話さ。」
AJ。というのは、ここオーストラリア大陸と周辺を支配圏に収める企業グループ、AJ・インダストリーズのことだ。そのアフリカ部隊に居たという甥の話、ということは、あながちウソでもないのか…
野生型を組織化して、コロニーを襲う新型。
いうなれば、「統率型」と言ったところか。
そんなものはあり得ない、と否定する理性と裏腹に、俺はなおも語り続ける店長の言葉に寒気を抑えられなかった。
意外と意気投合してしまった店長と長々と話し込んでしまったので、俺たちが店を出たのは夜中を過ぎたころだった。また来いよー。と手を振る店長にうなずき返し、古ぼけた合板プラスチックのドアを押し開けると、乾いた風とかすかな砂が頬を撫でる。
「しっかし「新型」かぁ。いんのかねぇそんなのが。」
伸びをしながら言うアルトに、ピアノが意地悪な口調で言う。
「さあね。でもともかく、あなたがそんなに合成タンパクを嫌ってないことはわかったわ。」
「へ?」
聞き返すアルトに、ピアノは口角をつり上げて言う。
「だってあんた、おかわりまでしてたもんね。これからはアルトは毎食あれでいいかしらね」
「あ、いやあれは…店長さんへのアレだよ。カンシャの気持ちをだな…」
ホントは天然もののがいいに決まってるだろ!
と弁解するアルトに視線を向けてから、俺はピアノに言う。
「どうする。こんな時間だけど、整備、明日にするか?」
「うーん、いいえ、今日中にやっちゃいましょう。」
ピアノはさすがに疲れの見える顔を傾げて一瞬考えつつも、そう口にする。
新型、か。
げぇー、とまたも声を上げるアルトにピアノが言い返す声を聴きながら、俺は店長が語った噂話が頭を巡っているのを感じた。
気のせいだ。
そう思いつつ、頭の片隅にわだかまる違和感、もしくは嫌な予感は、消えなかった。
「左足の関節部分が、やっぱり少し弱いか…」
小さくつぶやくと、視界に表示される
旋回時の重心制御プログラムの設定を変更し、姿勢制御スラスターを連動させる。
多少エネルギー効率は落ちるが、脚部の破損や不具合は生死に直結するので、ここでケチるのは遠回りな自殺行為だ。
「ふぅ…」
残りの二人は、もう整備を終えただろうか。
ひと段落ついたところで息を吐いて、機外モニターに目を向けると、そこでは”残りの二人”ことアルトとピアノが何やら口を開閉させていた。
「おっと。」
モニターの中で、ピアノが業を煮やしたように人差し指で耳を指すのを見て、俺は慌てて集音器のスイッチを入れた。
とたん、コックピットに大声が鳴り響き思わず耳に手を当てる。
慌てながらもボリュームを調節すると、ようやく苛立った響きの台詞が聞き取れた。
「聞こえてんなら返事しなさーい!」
「帰るぞー。」
口に手を当てて叫ぶピアノと、眠そうな顔で手を振るアルトに、俺は声を返す。
「悪い、集音オフにしてたんだ。」
「また?もう…。いつも付けとけって言ってるでしょ。」
俺は、いや、集中が切れるから…。といういつもの言い訳を口にしようとしてやめた。
「先帰ってていいぞ。っていうか、いつもそう言ってるだろ。」
「はーいはい。じゃあお先に。」
二人が後ろ手を振りながら格納庫を出ていくのを見送ってから、俺は作業を再開する。
仮想のキーボードに指を走らせ、各所のプロパティを参照しつつプログラムを修正、改善していく。この時間が俺は好きだった。
戦闘時には自身と融合し、一心同体、言わば単数として共に戦うこの物言わぬパートナーと、別々の個体、存在として複数のまま向き合う時間。科学的根拠はないが、機体に宿る戦闘意志と、魂を感交させているような感覚。
作業を終えると、俺はコックピットブロックから出て、格納庫の床へと飛び降りる。
時計を確認、午前1時12分。
睡眠をとるのも仕事の内だ。そう言い聞かせた体を外部への扉へと歩かせながら、俺は後ろを振り返り、屹立する自機”
EEA。
大まかな人型のシルエットは、サーボモーター内臓の関節と、装甲、センサー類に覆われている。外見的には200年ほど前の電子遊戯、”ゲーム”の仮想世界に登場したロボット兵器にそっくりだ。実際、前暦2000年頃にEEの基礎構想が生まれたとき、その理想形として設定された目標が当時のゲームだったというのだから、さもありなんというものだが。
「アーマード・コア、だったかな。」
物好きなアルトがきっちりコレクションしていたそのアーカイブゲームの名を呟いてみる。
ともかく。
ゲーム内の最強兵器を現実に作る。という夢物語が200年の時を経て完遂したのが、EEAということになるのだった。
MM02 EEA
乱文読了ありがとうございました。
なかなか意味不明な世界観ですが、少しづつ理解して貰えたらなーと思っています。
この世界は、4つの企業グループが覇権を争っています。
・08カンパニー
・スクエアエンタープライズ
・華鋼インフラ
・AJ・インダストリーズ
このうち、主人公たちの現在地は AJインダストリーズ支配下、オーストラリア大陸となっています。
これから、世界に雄飛していく(はずの)主人公たちを、どうか応援よろしくお願いします。