Mechanized Mercenary 作:Unknown AK
主人公たちはMMMからの直接依頼を受け、疑問を持ちつつも指示されたシドニーへとやってきました。
のですけど…
縦書き前提の書き溜めだったので、どうにも読みにくい部分が目立ちますね。
直す気力も精力も実力もないのであきらめてます。
適当に書くので、頑張って読んでください ←m(_ _)m
コロニーシドニー。
前暦の、さらに前、俗に紀元前などと呼ばれた時代、一人の男が生まれた。
名をソクラテスと言ったその男は、街中で誰彼かまわず討論を吹っ掛け、片っ端から論破するという実に大人げない行為に及んだわけだが、結果としてこの男は、数多の学問の始祖となった。
彼の問答を源流として、無数に枝分かれし、発展した学問の、さらに科学という傍流は、ソクラテスの死後2000年以上の時を経て、ついに自らが住まう星そのものをわが物とし、管理するようになった。星だけでなく自身の肉体をも手中に収め、科学の力をもって超人”機械化兵”を生み出すことに成功したことすら、還元すればソクラテスの問答に端を発しているのだ。
つまり、結論として、機械化傭兵部隊、レイヴンのメンバー3人が、コロニーシドニーの最下層部で立ち往生しているのは、ソクラテスのせいなのだと、俺は思うのだった。
「くっそー、ソクラテス…」
どこかの歴史系デジタルペーパーの記事に出てきた名前を、怨嗟を込めて呟く。
視界の上半分はグレーのコンクリートに、視界の下半分は暗い水面で占められていて、それは当分日の光を浴びられないこと=外に出られないことを意味している。
「ほーら、ぶつぶつ言ってないで、とっとと歩く歩く。」
「誰のせいだと思ってんだよ!」
「ソクラテスでしょ?」
「なっ!」
後ろから掛けられるピアノの声に言い返し、ついでに振り向いて睨み付けると、鳶色の髪と瞳がくるっと回ってそっぽを向いた。
「まあまあ、そのうち出られるだろ。リラックスリラックス。」
そしてアルトはいつものごとく飄々とした態度を崩さない。
はぁー、と深いため息をついて、視界の端を確認する。
現在時刻、4時12分。
現在地、不明。
ちなみに時刻はAMである。
現在地は不明だが、大まかにはコロニーシドニー地下、ということになるだろう。
シドニーは、前世期には南半球でも指折りの観光都市だった。
現在も、企業支配下で観光こそ下火(世界規模で)になれど、オーストラリアに本拠を置く4大企業グループの一つ、AJインダストリーズの城下コロニーとして、盛粋を誇っている。
そして現在、この都市は巨大な地下構造でも知られているのだった。
なんでも過去に地下方向へとコロニーを発展させようとした時代があったようなのだが、沿岸部ゆえの浸水が原因で、中途半端な開発が行われたままの地下はなし崩しに廃棄されてしまった。そして残ったのは迷宮じみた複雑な地下構造、というわけだ。つい昨日の夕方、
「少しなら大丈夫よ。行ってみましょう!」
という好奇心に付き合う形でこの巨大迷宮に足を踏み入れ、結果現在に至るまで夜通し出口を探しているのだった。
「なあ、このまま出口見つからなかったら、どうなんだろうな。」
ふと思って言ってみた。
機械化傭兵と言っても、機械化の度合いは人それぞれだ。
俺たちに限って言えば、全身の皮膚や筋肉はナノ繊維系の強化素材製に、神経系は量子インターフェースを活用した人口回路に、それぞれ機械化されているわけだが、循環系を除いた内臓類は、一定の強化はされつつも生身のそれを保っている。
つまり、お腹は空くし、排泄欲求も生じる。
もしかして、このまま餓死?
そんな思いが頭をよぎり、俺は頭を振った。今そんなことを言っても仕方がない。
「まぁ、餓死だろうな。」
言いやがった。アルトの奴。
まあ、どうにかして出ればいい話であるが。
「ところでお前、トイレとかいいの?」
「死ね。」
アルトとピアノがいつも通りやり取りを済ませたところで、俺は二人に向き直る。
よし、もっと真剣に、ここから出る方法を考えよう。
というか、二人も真面目に考えてくださいお願いします。
と、口を開こうとしたところで、俺は固まった。
「え?」
思わず口から出たのは、力の抜けた疑問詞だけ。
アルトとピアノのほうへと後ろに振り向いた俺の視界には、アルト、ピアノ、そして謎の人影(物影?)が映っている。
澄んだ金色に光る目は、左右非対称な大きさで発光している。
顔は角ばっていて、それは妙に直線的な四肢やずんぐりとした胴体も同様。
そして表面は金属の光沢を放っている。
まるで”事件”以来見られなくなった”ロボット”のような…
「というか、
俺は大声を上げた。
人型のワイルドタイプは少ないが、存在しないわけではない。
たいてい非力だが、それでも人間をはるかに上回る、機械化傭兵にも匹敵する戦闘力を秘めている。EEAに乗っているときならともかく、生身(と言っていいかは微妙だが)で戦闘するのは遠慮したいところだ。
「うおっと!」
「うそ!」
アルトとピアノもそれぞれパッと振り返り、声を上げる。
俺はすばやく大腿部に手をやり、そこに固定していたPDWを手に取って構えた。
だが
どうにかコレで足を止めて、高周波ナイフを急所に叩き込む。
両隣で同じく銃を構えるアルトとピアノを視界の端で確認しつつ、そこまで思考を巡らせて、トリガーを引こうとしてから、しかし俺は気づいた。
「なんで、攻撃してこない…」
相手の
2つのセンサーアイを瞬かせるだけで、体の随所に機関銃を展開することも、ブレードを構えることもない。
「
ピアノが訝しげに言うが、だとしても拳を構えるなり体当たりしてくるなりの動きはあるはずだ。
攻性化していない?だが、人間に対して攻性化しない野生型《ワイルドタイプ》なんて、あり得るのか?
という思考を巡らした刹那、謎の
一言でいえば、手招きをした。
くいっくいっ、と手首を動かす仕草を見て、俺たちは顔を見合わせた。
「案内、してくれるの?」
ピアノが聞く。
そんなことはありえない。はずなのに。
くいっ。
かすかなサーボ音と共に、人型ワイルドタイプは首を縦に振ったのだった。
そしてくるりと向きを変えると、ゆっくりと歩き出す。
「ど、どうする?」
普通に考えれば、罠だと想定するべきだろう。
案内される先で、トラップ、待ち伏せが仕掛けられている?
だが、罠だと告げる理性とは裏腹に、俺の口は動いていた。
「行こう。」
そして、5歩ほど歩いたところで立ち止まってこちらを見ている
なぜだがわからないが、センサーアイの黄金色の光が、とても懐かしく、優しいもののように、俺は感じたのだった。
※ ※ ※
およそ30分後。
俺たちは無事、コロニーの上層、つまり居住エリアへとたどり着いていた。
一晩かけて彷徨った地下層から、わずか半時間で脱出できてしまうというのも、複雑な気分にさせられるが、出られたのだから良しとするべきだろう。
さらに20分かけて煩雑な通りを抜けて宿へと辿りつき、宿屋の主人が向けてくる”チェックインしておきながら一晩夜遊び(と思われているはずだ。)してきた客3人”への呆れ気味の視線を潜り抜けて、今現在、俺たちは2部屋に分かれてベッドに倒れこんでいる。薄い壁を隔てた隣の部屋からは、爆睡する二人のいびきや寝言が小さく響いてくるが、俺はどうにも寝付くことができなかった。
理由は、あの謎の
30分かけて出口まで案内してくれた謎の人型ワイルドタイプは、疲れのあまりにピアノが脚を滑らして転んだ際、いつの間にか姿を消してしまった。
人間に対してあまねく敵対するはずのワイルドタイプの、わずかな例外なのか、あるいは全く別の何かなのか。もしかしたら、調査依頼を受けた”新型”、依頼書の呼称を取れば、”統率型”に関連があるかもしれないので、一応の調査は行う予定だ。
だが、俺の中に焼き付いて離れないのは、あの人型ワイルドタイプの”目”だった。
金色に輝く目。
その輝きが、どこかとても懐かしかったような気がするのだ。
懐かしさと悲しさ、喪失感の入り混じったような思いが沸き起こる。
心の底に刻まれた何かを、ふわりと温かい風が撫でた気がして、俺は目を閉じて意識を集中した。
「ハル、私とあなたはずっと一緒よ。」
幼さと落ち着きを併せ持った、澄んだ声。
そして、夕日に照らされ美しく輝く髪と、微笑む口元。
一瞬浮かんだ情景を、俺は捕まえようとした。
しかし、体がついに疲れに屈し、情景は眠りの向こうへと、揺らいで消えた。
MM04 邂逅
お疲れ様でした。
と、自分にも言ってあげたい(泣
意外と校正作業が大変なんです。書き溜めでも。
さて、今回登場した謎の野生型ですが、実は遠隔操作されてたりします(ネタバレ!)
操作していたのはいったい誰なのか。
それは今後いつかきっと明らかになるつもりですので、楽しみにお待ちください。
それでは、今度は書き溜めでなく、書きたてホヤホヤをきっと。