デレマス二次   作:(^q^)!

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三話

 日曜はチラッと調べて何もわからずふてくされ、ゲーム三昧になってしまった。

しかしそのおかげというべきか、いくつかのゲームはストーリーを一先ずクリアすることが出来た。クリア、といったがオンライン要素のあるゲームはストーリーなんて基本的にチュートリアルのようなものだ。

本番はクリア後である。低ドロップのアイテムや、各種アイテムなどのコンプリート。オンライン対戦で強いビルドなど、やることを考えればとても一日で終わる量ではない。これから長い時間をかけてコツコツとか成していかなければならないだろう。

長く、険しく、辛い道だがこなさねばならない。何故ならそれが生きがいだからだ。

 

 だらけて過ごせば時間というものは信じがたい速度で過ぎ去る。矢の如しなんてもんじゃない。無想流舞の如しである。

そんなわけでいつの間にか月曜日。学校に行かなくてはならない。授業の時間割などは変わらないようで、今日は二限からだった。教科書などを詰め込んでいると、今日最後の授業で先週配られたプリントが一組余分にあった。

 

 このプリントは、同じ授業を取っている先輩に頼まれて取り置いていたものだ。元々の世界での話だが。

 

 しかしここにも同じものがあるということは、この世界でも同じように頼まれて同じように取り置いたということだろうか。だとしたら周囲にいる人々が変わっていないということになるのか? 

そうであるならそれに越したことはないが、そうでない可能性も考えておかなければならないだろう。

 

 というか、同じように頼まれていたのだとしたらその頼まれた奴は、もともとこの部屋に住んでいた奴は、どこへ行ったんだ?

 

 もしかして、元の世界の俺と、この世界の俺とが入れ替わったとか?

 

 いやまさか。だが考えておかなきゃならない事だろう。この部屋の元々の持ち主はどこに行ったのかというのは重要な気がした。

 

 準備を済ませるといつも通りイヤホンを耳に差し込み、スマホから音楽を流し始める。やはり元気が出る。とりあえず何とかなる気がしてくる。さあ今日もがんばろう。

 

 教室に着くと適当な席に座る。あまり先生に当てられないように人がそこそこ居るところにこっそりと座った。

授業の名前なんかは一緒だったが、内容や進行状況が一緒とは限らないのだ。今週は学校関連で確かめることが多そうだ。交友関係についても確認をしておかなければならない。

 

 一つ気がかりなことは、あまりにも男子生徒が少ないことだ。この教室には自分くらいしか男子生徒がいなかった。男子に人気のない授業ということもないはずだが、何故だろうか。

 

 チャイムが鳴り、授業が開始した。内容、進行状況共に変わりはない。なんというか、ここ数日杞憂が多すぎる気がするがしょうがない。

世界が変わるなんて言う未曽有の事態に遭遇したのだ。空から槍が降ろうが地面がいきなり隆起しようがここでは日常茶飯事だったりするかもしれない。

まあネットでそんなことはないと確認しているがしかし、現に男女比の偏りはここでは普通である。

そして常識を知らないというのは致命的だ。当人にとって当たり前の行動が常識はずれだったりするとかなり悲惨な目に会う。

 

 まずは何においても常識を確認しなくてはならない。不文律を学ばなくては。

 

 黒板の内容をノートに写しつつ頭で今後の事を考えているといきなり隣に座ってきた人がいた。

電車か何かの関係で授業に少し遅れたのだろうか。にしてもなんでわざわざここに座るんだ? 入ってくるドアの近くに座ればいいのに。

 

「……ノートは今から写せば大丈夫そうね。そう言えば今日の昼はどうするつもり?」

 

 ……右隣に座ってきた銀髪ロングの女性はこそこそ話し始めた。前の席の人と知り合いだったからここに座ったんだろう。

 

「…………聞いているの? それとも無視しているの?」

 

 前の席の人は一向に振り向かなかった。チラッと見ると、隣の女性はこちらを向いているような気がした。

……これは、もしかしてこちらに話かけていたりするのか? 

いかにも怒っているという様子の女性に顔を向けると何やら強いプレッシャーを感じる。見ず知らずの女性、しかも綺麗系の美人のそんな雰囲気は物理的なパワーがあるような気がする。

雰囲気だけで表情は無表情なのがさらに圧力をブーストしている気がする。

 

「えっと……」

 

「お昼よ」

 

「購買で何か買おうと思ってました」

 

 圧力が強く、つい予定を吐いてしまった。

 

「そう。じゃあ部室で食べる感じでいいのね?」

 

 え? 部室? なんか入ってたっけ?

 

 ハッとして気が付いた。いや、これはまさしくここの世界での人間関係というやつだろうか。だとしたら、大変だ。何しろこの話題について全く知らない。女性の名前も、部室の位置も、そもそも何部あるいは何サークルなのかも知らない。

うまい具合に聞き出せればいいのだが、会話の主導権は完全にあちらに持っていかれているように思える。ここは話を合わせておくのがいいだろう。

 

「あ、はい。そうしようと思います」

 

 あとは部室の位置を知れればつつがなく行くなと考え、チラッと顔色を盗み見ると女性はすこしびっくりしたような顔をして居た。

 

 あれ? 何かミスったか?

 

 口調が違う? だとしてもそれは改善のしようが無い。キャラが違うとか? 布団カバーがピンクの男のキャラなんてわかるか。

 

「……そう。じゃあ一緒に部室まで行きましょうか」

 

 ……またしても杞憂だった? いや、何だ? わからないがとりあえず想定外に上手いこと事態が運んだ。意外と何とかなるもんだなあとホッとして、最初の関門の突破を胸の内で喜んだ。

とはいえ、人に会うたびにこんな思いをしなくちゃならないんだろうか。まだ月曜日なのに先が思いやられるなあと考えながら授業を受けた。

 

 授業が終わり、昼休みである。女性は席を立ちこちらを振り返り、言った。

 

「そう言えば、自己紹介がまだだったわね。……私の名前は高峯のあ。二年生であなたの一年先輩よ」

 

 どことなくドヤ顔でのあさんは微笑んでいた。

 

 自己紹介まだだったのか。……あれ? じゃあなんでこの人は話しかけて来たんだ?

 

「それじゃあ行きましょう。先輩方も待ってるわ」

 

 これってまさかなんだけど、人間関係云々っていうこと自体が杞憂で、この会話ってそもそも考慮すべきじゃなかったんじゃあないだろうか。

いや待て。普通に昼食を断り続けていただけかもしれない。だとしたらどうして? わからない。

 

「……あなたが昼食に応じてくれるとは思っていなかったわ。また先週みたいに流されると思っていたのだけれど、どうして今週になっていきなり受けてくれたのかしら?」

 

 道中の会話でグサグサと痛いところのみを刺突し続けるのあさん。何だこの人エスパーかなんかなんじゃないだろうか。

何とかごまかしつつも心の中は後悔でいっぱいだった。よくわからないコミュニティに属しそうであるこの状況は他でもない自分の弱さが産んだ結果である。疑り深いこの性根が悪いのだ。反省をしなくてはならない。

だがしかし、まだ最悪ではない事をしっかりと認識するのだ。何もわからぬまま騙されてよくわからない書類にサインとかをしていないだけ良かったと考えよう。

このお誘いだって部室でご飯を食べる事を了承したにすぎないということを理解したうえで行動しなくてはなるまい。

 

 お昼を一緒に食べるだけである。そこに注意しつつ何とか乗り越えなければ。

 

 のあさんの核心を突きすぎるトークを何とか受け流しながら購買で買い物を終え、部室棟まで歩いていく。

 

「そう言えばあなたは何について研究するか決めた?」

 

 研究? 授業でそう言った話は無かったはずであるが、ここではあるのかもしれない。もしくはこれから行くコミュニティでのことかもしれない。

 

「まだ決めてないけどのあさんは決めましたか?」

 

 返しは間違っていないはずだ。のあさんもとくに疑問に思った様子はない。

 

「私は、電脳関係について調べようと考えているわ」

 

 この世界では電脳関連の調べごとをする何かに属していたのか? 全く想像がつかない。

 

「去年の先輩では日本酒について調べた人もいるそうね」

 

 電脳と日本酒? 関連性が全く見えない。どういった関係でその二つの研究が同じコミュニティ内で発生するんだ……。

 

 あはは、と愛想笑いを浮かべていたが頭の中は完全にパニックになっていた。謎が謎を生みそれが累積していく。そんな状況の中で何とかボロが出ないようにふるまわなくてはならない。できるのかそんなこと。

 

 幸いなことに、のあさんはこちらについて深く知らない様子である。そのおかげでどうにかこうにか誤魔化せているのだが、「……第一印象とずいぶん違ってびっくりしたわ。言葉を交わさなくてはわからないことは多いものね」等と言われたときは口から心臓が飛び出しそうになった。

 

「……そろそろ部室ね。ちなみに鍵はポストの中に入っていて、番号は右に3、左に3、右に4よ」

 

 ダイアル式のカギをさっと開け、中にある鍵を取ってからのあさんは部室棟の階段をあがって行った。遅れないように後をついていくと、一つの部屋の前で止まった。『文化研究会』と書かれた扉に鍵を差し込むとそのまま扉は開いた。

 

「……あら? 先輩方はいない様ね。……まあいいわ。私たちで先に食べてしまいましょう」

 

「わかりました」

 

 椅子を用意して、空気の換気のために窓を開ける。のあさんは電気ポットでお湯を沸かせていた。どうやら何か飲み物を入れるようだった。

 

 正直、先輩方がいなかったことに安心していた。のあさん一人でもこんなに大変なのにそれに加えて何人も人が増えたらご飯がのどを通らないだろう。

そうしてガチガチになりいらぬミスをするという事態も容易に想像できた。目の前の女性からなにがしかの情報を得ることはなかなかに難しいことと思えるが、出来る限りここで情報を集めることは重要であるし、チャンスである。

二人きりであるし、のあさんはこちらについてよく知らないということは変な質問をしても誤魔化す余地があるということだ。こんなタイミングでもなければ突っ込んだことについて聞いたりできないだろう。

 

「わざわざすみません。俺の分までお茶入れてもらっちゃって」

 

「……一人分も二人分も大して変わらないからいいわ」

 

 ご飯を食べ終え、一息付いた。さあ、ここからが勝負だ。

 

 最初から大きく突っ込むのは良くない。ジャブから行くべきだろう。いや、違うんじゃないか? 

この大きいチャンスだからこそ、いきなり突っ込んだことを聞くべきじゃないか? 先ほど反省したじゃないか。疑り深い性根が引き起こした失敗を繰り返す必要はない。ここは虎穴に入らずんば虎子を得ずという気持ちで行くべきだ。

 

「そう言えば、男子生徒が全然いませんけどどうかしたんですかね」

 

「…………え?」

 

 のあさんが無表情を崩してぽかんとした顔をした。え? そこまで常識なことだった? まずい。これに対する言い訳を何か考えなくてはいけない。

 

「……ほとんどの男性は家庭にいるのだから普通じゃないかしら」

 

 あたふたしているとのあさんはそう答えてくれた。

 

「あ、そ、そうですよね。何当たり前のこと聞いちゃったんだろうごめんなさい」

 

 一先ず誤魔化したが、のあさんからのいぶかしげな視線がグサグサ刺さる。後々何とかしなくてはならないと思うが、それよりも聞き逃せないことがあった。

 

 ほとんどの男性は家庭にいる。どういうことだ? 大学に男性がいない理由が家庭に入っているからということは、高校卒業時点で家庭に入るというのが普通なのか? 

じゃあそのくらいにみんな結婚しているということになるのか? だとしたらこの世界の俺にも奥さんがいるのか? 

いやそれも重要だが家庭に入ることが学校に来ないことの理由になるのか? 配偶者だって大学に行くんじゃないのか? 

というか結婚って近い年齢同士でしているのか? 生活費はどうするんだそれ。

何がどうなっている。ネットにそう言った情報は見当たらなかった。やはり常識はちゃんと学ばないとわからない。

箸を持つ方が右みたいな情報はネットに乗っていないのだから、こうして調べないとならない。

 

 わからないことが多すぎるが、とりあえずわかったことがある。この世界の俺は多分珍しい存在だったんだろう。男子生徒があんまり居ない大学にいるというだけでかなり奇異なんじゃないだろうか。

だからこそ奇異の視線でいろんな人から見られていたんじゃないのか? となると新たな疑問が湧く。何故普通に沿わなかったんだ? 大学に来る理由が何かあったのか?

 

 日記か何かがあれば話は別だったのだが、そういったものは家になかった。調べることが増えてしまったな。

 

 その後は、益体のない話をして昼休み終了まで過ごした。次の授業は流石にのあさんと被っていなかったのでまた今度ということで連絡先だけ交換して別れた。

 

 次の授業は大学に入ってからできた友達がいたはずだが、見当たらなかった。男子生徒が非常に少ない以上仕方のないことかもしれないが、それでも知り合いが消えたことにかなり動揺した。

 

 もしかすると、この世界に友達は一人もいないんじゃないだろうか。

考えないようにしてきたことだが男女比が1:5ということは単純に女性の人口がもともとの世界の五倍になっていない限り、男性は約三分の二が消えたことになる。

その中に自分の友人が一人も含まれていないなんて都合のいいことはあり得るはずがない。

 

 やきもきしながら授業を終える。喪失感というのだろうか。あまり付き合いの長い人物ではなかったが、それでももう一生会えないとなると悲しいものがある。この悲しみを今後、何度でも味わうのだろうか。

 

 ため息をついて本日最後の授業を受けるために教室を移動した。

 

 席について黄昏ていると不意に声をかけられた。

 

「こんにちは。先週はプリントを頼んでしまってごめんなさいね」

 

 知り合いが全員消えたかのような暗い気分を味わっていた時に、知り合いからの声がかかる。海の底から引き上げられるような気分を味わう。勢いよく振り返ると、そこには見知った顔があった。

 

 大学の三年生で、モデルと学生生活を兼業している先輩。

 

「高垣先輩……?」

 

「はい。どうかしましたか?」

 

 にっこりと笑う高垣楓先輩の姿がそこにあった。




のあさんがミステリアスな雰囲気を出せていない気がする。
電脳って安直すぎないか。
っていうかここまで風呂敷広げちゃったけどどうたたむんだこれ。

という風に考えながら書いてたら疲れた。きらりちゃんかわいい

今後もこんな風に何人かのアイドルが大学に通っていたあるいは通っているという設定になるかもしれません。作者の力量不足が原因ですすいません。

輝子ちゃんと南条ちゃんの可愛さを糧に頑張ります。

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