薔薇と堆肥   作:小栗チカ

5 / 14
第四話

過去の話を少ししようと思います。

今の私に繋がる苦くて、少し長いお話です。

叔父と叔父の仲間の皆さんが死んで、一人ぼっちになった私に、いろんな人が声をかけてきました。

ですがそれは、好意によるものではありませんでした。

市民や咎人に罵倒され、陰口を叩かれる程度ならまだしも、私を利用し、食いものにしようとする酷いものもありました。

資源を騙される形で奪われたり、冤罪をふっかけられたり、暴力を振るわれたり。

暴力に対しては逃げの一手で凌ぎました。

まさか、どん底にいた時の技術が、こんなところで活かされるとは思いもよりませんでしたが。

それはともかく、私が狙われる理由はわかっていました。

私が弱くて愚かで一人ぼっちだったからです。

どん底にいた時、そういう人を狙って糧を得たこともありましたから、その心理はわかるのです。

 

最低だよ。

どいつもこいつも、私も含めた何もかも全てが。

 

バカな私は、そんなことを何度も繰り返し、悔しくて悲しくて泣きながら、この牢国都市の冷たさと窮屈さをはっきり自覚したのです。

そうして、冷たく窮屈な社会で一人ぼっちな中、ただの高価な資源であるアクセサリに、咎人が依存をしていく気持ちも理解できるようになりました。

それが、PT法を絶対とする人の形をした監視カメラであったとしても、アクセサリは咎人がPT法を守っている限り、裏切ることも否定することもないからです。

でも私は、アクセサリに、エイノさんに依存することすらできませんでした。

エイノさん──オニ軍曹──がそれを許さなかったのです。

 

「私は貴方の肉親でもなければ友人でもありません。私は貴方に、このパノプティコンに貢献し幸福希求を行う術を教えるモノです。モノに甘える前に、この社会で貴方自身がどのように貢献を行い、幸福希求していくのか。それをよく考えて下さい」

 

甘えを指摘されて平手を喰らったような衝撃を受けました。

衣食住が満たされ、叔父と叔父の仲間の皆さんの温かさに庇護され、緩みきっていた自分に気付いたのです。

このままではいけないと。

社会やヒトやモノのせいにする前に、ちゃんと自分で立てるようになる方法を考えなければいけないのだと。

衣食住が確保されている今がチャンスなのです。

バカでぼっちなおかげで、考える時間は幾らでもありました。

なので手始めに、何故このパノプティコンが冷たい上に息苦しいのか、その原因を知りたくて、このパノプティコンという社会について考えることにしました。

 

窮屈で息苦しいのは、貧民街にいた時も感じていました。

衣食住の確保に必死で、いつもどうやって日々の糧を得るのか、そのことばかりを考えていましたから。

でもここでは、衣食住の全てが満たされているのに、どうしてこんなにも冷たくて窮屈なのでしょう。

そこで、セルガーデンの情報端末で調べたり、エイノさんにそれとなく聞いたり、周囲をしっかり観察したりして、何とかして原因を見つけようと頑張りました。

考えすぎて知恵熱が出て、エイノさんに注意されたこともありました。

ですが、その甲斐あって、牢国都市にあって私の住んでいた世界になかったものに幾つか気付きました。

独房、監視カメラ、情報位階権限(コード)です。

 

一つ目の独房です。

個別に閉じ込めて、住む場所に番号を振り、集団で生活をするようにしています。

個別に住む場所を決めることで管理をしやすくし、集団で生活することで規律を守らせる下地を作っているのかなと。

二つ目は、PT法の象徴とも言うべき監視カメラです。

監視カメラは二種類、見える監視カメラと、見えない監視カメラがあることに気付きました。

見えない監視カメラとは、自分の中にあります。

いつの間にかできています。

いつの間にか、PT法の象徴が自分の中にあります。

自分の中の監視カメラで自分の行動を制限し、時に他人をも監視するようになります。

他人を監視し、違反者を通報することをPTは勧めているからです。

では、その監視カメラはいつ設置されるのでしょう。

それが三つ目の情報位階権限になります。

咎人は、権利を解放するために情報位階権限取得考試を受けます。

その際に、パノプティコン上層部のチェックを受けるわけですが、その際に、肉体的、精神的、PT法への遵守の姿勢など様々なものが求められます。

取得考試をクリアするため、少しずつパノプティコンという社会に適応するため、自ら進んで心と体を改造しているのではないか。

また、開放した権利、つまり情報位階権限を守るために、PT法を順守する必要があります。

さらに、情報位階権限が上がれば上がるほど、私達の存在はPTの目に止まりやすくなり、監視の目が更に厳しくなっているのではないかと。

 

疑問の形にしたのは、私の考えに自信がないせいです。

何せ、バカでぼっちで他人に確認しようのないことですから。

でもそれ以上に、私達には監視するPTの姿は見えていないのに、PTでは本当に私達を監視しているかわからないからです。

噂されているように、本当にザルで実はやりたい放題できるのか。

それとも、知らず知らずのうちに目をつけられ、ある日突然、何かしらの処罰を受けることになるのか。

その疑念が、更に心と体をがんじがらめにしているような気がします。

わかるのは、この三つがPTという社会でとても大切な役割を果たしているのかなってことだけです。

 

モザイク街でも、監視カメラはありませんでしたが、人の目による監視は行われていました。

子供の私が、パンを盗んだ時もそうです。

法のない世界で、それでも人が自分の財産を守り、互いを傷つけずに生きていくための、ささやかであまりにも頼りない監視の目でした。

ですがその目は、助け合いの目にもなっていました。

PT法がないから、人を害するのも自由ですが、弱い物同士が助けあうのもまた自由だったのです。

でも、この牢国都市では、それが極めてできにくいと思います。

PT法によって心も体も法律によってがんじがらめになっている状態では、枠の外に手を伸ばすことすらできません。

そして、誰も彼もが自分とお互いを監視し合い、法に背いた人を、法による正義の名のもとに通報することを良しとする状態では、人との間に暖かな繋がりを持つこともできません。

PTが冷たくて窮屈な原因は、ヒトとしての生活が保証される代わりに、PT法に心と体を管理され、その法に従順であることを絶対条件としているからではないか。

…………。

もしかしたら、もっと他に原因はあるのかもしれませんが、今の私に見えているのはこれくらいです。

 

息苦しさの原因は何となく予想出来ました。

この牢国都市で、手を伸ばして助けあうことは難しいことですが、だからこそ大切なのだということも改めて知りました。

ですが、元々臆病だった私は、さらに臆病になっていました。

それは、自分の過去の後ろ暗さ、劣等感のせいもあります。

見ただけで良い人だと判る咎人や二級市民の皆さんの、明るさと強さ、そして優しさは、とても眩しく、ともすれば自分の愚かさと汚さ、弱さ炙り出されるようで耐えられないのです。

しかし何よりも、手を伸ばした先で悉く裏切られ続け、手を伸ばすことに恐怖を覚えるようになったことが一番大きいでしょう。

裏切りと言っても些細なものです。

寝て、起きて、ご飯を食べて、ボランティアで死に物狂いで戦っていれば、どうでも良くなるようなことばかり。

わかりやすく言うならば、痛みがほどんどない状態で軽く叩かれ続けた状態でしょうか。

数回程度だったら気にもしません。

でも、同じ箇所をずっと叩かれ続けていたら、赤くなるし、そのうち痛みも出てきて無視できなくなる。

そして、同じ力で叩かれているはずなのに、物凄く痛く感じるようになる。

しまいには、触れるもの全てに痛みを感じるようになってしまう。

何度も叩かれ続けた私の心が、これ以上痛い思いをするのはゴメンだと、私の体にストップをかけるのです。

そう言えば、トト、いえ、仕事中でしたからハルカさんですね、彼が言っていました。

 

「昔々の大昔、超大昔の話っす。とある偉ーい市民様のような奴がこう言ったそうっよ。『体は心の牢獄だ』」

「でも、別の市民様のような奴がこうも言ったそうっす。『心が体の牢獄だ』。今からそれをお前に教えてやるっすよ。心と体を貫いて、お前がいた世界の流儀を叩きなおしてやるっす。ああ、大丈夫っすよー。形は違えどPTでもやっていることっすから。『再教育』ってやつっす。ただ、連中よりもわかりやすいとは思うっすけどねー。わかりやすいの、好きっしょ?」

 

ええ、本当にわかりやすかったです。

最下層にいた頃の心のありようを思い出すには十分な内容でした。

この件に関して、ハルカさんに怒りも恨みもありません。

エイノさん流に言うなら、ジゴウジトクというやつです。

どこからどう見ても私が愚かだったのです。

…………。

さすがに感謝はしていません。

 

話がそれてしまいました。

それでも、このままではいけないのだと、当時の私はやっぱり思ったのです。

私に何ができるのかを考え、まずは人助けをすることで、人と接することを改めて始めることにしたのです。

PTの中での人助けは諦めました。

PT法を全て把握しているわけではないですし、そもそも私にできることはほとんどないように思えました。

なので、モザイク街に出て、道に迷う人たちをひっそりと助けることにしたのです。

モザイク街の中層から下層、最下層は路地が複雑になり、それなりの人が道に迷い、危険な目に合うのを目にしてきました。

私は、移動技術もそうですが、方向感覚にも自信はありましたし、モザイク街の有り様も把握できていました。

それを活かすことで、道に迷った人たちが危険な目に遭うことを防ぐことができれば、そう思ったのです。

そうですね、自己満足です。

私が満足にできる人助けは、こんな程度のものしかなくて。

でも、なけなしの勇気を振り絞った甲斐はあって、ボランティアにおいてイチゴイチエのお付き合いができるくらいには回復しました。

そしてこの三ヶ月は、ライズさんの存在もあって、さらに回復できたように思えます。

ハルカさんの仕事も終わりましたから、また再開して、リハビリを続けようと思っています。

いつまでも、自分が愚かであることに甘えてばかりはいられませんからね。

 

 

◆

 

闇の向こう側から眩く鋭い光が広がり、私の意識を一気に引き上げます。

白い世界に戻ってきました。

 

「おはようございます」

 

人工合成音声でのいつものご挨拶。

 

「おはようございます」

 

目をこすりながら起き上がると、エイノさんが私を表情なく見ていました。

 

「現在の時刻は四時十五分十一秒です。本日の日の出は五時三十四分。日没は十七時五十七分。天気は曇りのち晴れ。午前中はにわか雨の可能性もあります。降水確率は──」

 

エイノさんの天気予報を聞きながら、すでにエイノさんが用意してくださった洗面器とお湯で身支度を整えます。

今日も概ね天気は良さそうです。

もし、にわか雨でも降ってくれるのなら、このPTにとっては誰しもが望んだ貴重な恵みの雨となるでしょう。

その雨水が、有害なものであったとしてもです。

普段着にしているグランジギリーを着たら、エイノさんを伴ってモザイク街へ出発です。

ボランティアに行くわけではありません。

ランニングに行くためです。

お察しかとは思いますが、普通のランニングとは違います。

余程の悪天候でない限り、例の移動技術を使って、このPTのモザイク街のランドマークにもなっている尖がったビルまで走るのです。

エイノさんを伴っているのは、事故った時の保険と体調管理を兼ねてのことです。

しっかり準備運動をしつつ、周囲を確認します。

日の出まで後一時間ほどのモザイク街は、人もさすがにまばらで静かでしたが、空気がピリピリしているように感じられました。

それになんか、キナ臭い?

実際はそんな臭いはせず、いつもの雑多なモザイク街の臭いだけしか感じられません。

でも、心の底にいる子供の私が、鋭く警鐘を鳴らしています。

周囲を見渡しました。

広場はともかく、モザイク街はウィルオーの電灯もわずかに灯るばかりで、ドラム缶の炎と腰につける簡易型のウィルオー灯だけが確かな明かりとなります。

夜目は利くほうですが、決して油断はしません。

見上げた空には、珍しく黒々とした雲が広がっていましたが、雲間から覗く透きとおった闇の向こうに星が光っているのが見えました。

天気以外は、いつもの早朝のモザイク街です。

でも、どん底時代に培ったと思われるこのカンは、よく当たります。

子供の私の警鐘はしっかりと胸にとどめ、腰につけたウィルオー灯を点灯しました。

 

「それじゃあ行ってきますので、時間見ていてくださいね」

「はい。いつものことですが、エンジンルイもキから落ちると言います。足元には十分お気をつけ下さい」

「了解です」

 

さり気にバカにされたような気がしましたが、いつもの事ですので触れません。

鉄棒を組んだだけの手すりに飛び乗ると、そのまま跳躍。

手近なビルのフロアに転がり込み、一気に走り始めました。

私がこのランニングを日課にしているのは、自分の体を鍛えるためもありますし、この技術を損なわないようにする為でもあります。

咎人になることで、ボランティア中は荊による高速の立体機動が可能になりました。

こんなトレーニングをしなくても、普通の運動能力があれば、十分すぎるほどの超人的な機動を可能としてくれます。

でも私には、移動技術と方向感覚以外に大した取り柄はありませんから、トレーニングでその長所を伸ばし、生存率を高めることが大きな目的です。

もちろん、ウィルオー技術に頼らないこの移動方法が大好きだから、というのは言うまでもないでしょう。

 

でもたまに、寂しくなる時もあります。

この移動技術の真髄は、身体能力の限界を見定めることにあると、私の親代わりだったストリートギャングのリーダーが言っていました。

それが結果的に、自分が女性であるが故の限界を突きつけられることにもなるからです。

どれだけ必死になってトレーニングしようとも、同じように鍛えた男性の機動力にはどうしても敵わない。

身体形成で体を男性クラスの骨密度や筋肉量に調整することも可能でしょうし、いざとなったら男の人になることも可能です。

でも、それは違うんじゃないかな、と思っています。

生まれ持った体でどこまで出来るのか。

限界を知った時、自分の中で現実とどう折り合いをつけるのか。

そのことに向き合うことが、大切なのではないかなと思っています。

ええ、偉そうに言っていますけど、正直に言えばやっぱり悔しいです。

どうにもならない『仕様』なので、仕方がないのはわかっていてもです。

だからこそ、その『仕様』を言い訳に技術を磨くことを疎かにしたくはないし、好きという本当の気持ちまでも否定したくはないと思っています。

集中しましょう。

ベスト記録更新を目指して、モザイク街を走り続けます。

 

目的地点である、尖ったビルに到着しました。

遠目に見れば、その独特の形が美しいビルなのですが、実際はボロボロで倒壊の危険のあるビルです。

崩壊が進んでいるにも関わらず放置されているのは、人も資源も不足していて、その修復に当てる余剰がないからです。

なので、このビルに近づくのは物好きのバカか犯罪者くらいです。

私には前者になりますね、否定しません。

人力で登れるところまでガシガシと上り、中腹まで来たところで、とっくの昔に崩落した窓枠から、空が白んで全ての輪郭がはっきりと見出すことができる時間になりました。

鉄の色をしたパノプティコンの外壁が浮かび上がり、モザイク街がにわかに目覚めるのを肌身で感じます。

今日もパノプティコンの中で、外で、モザイク街のいたるところで、悲喜こもごもの生活が始まろうとしていました。

大きく深呼吸をし、汗を吹きながら、そんな街の様子を全身で感じ取ります。

やっぱり高い場所はいいですね。

子供の頃から、高い場所は大好きでした。

広くて深くて遮るものが何もなくて、時間によって様々な顔を見せる自由な空は、私の憧れなのです。

しばし自由な時間を満喫つしつつ、呼吸が落ち着いたところで、来た道を引き返し始めました。

そうして広場に着くと、ボランティアへ行く人たちや、準備運動をする人たち、ぼんやりと朝の時間を過ごす人たちで賑わい始めていました。

……やっぱりいつもより空気がヒリついているような?

きな臭さもやっぱり感じられました。

気になりつつも、エイノさんの元に到着です。

 

「ただいま戻りました」

「お疲れ様でした。自己ベスト更新には至りませんでしたが、まずまずのタイムです。コンディションも良いようですので、本日の貢献も問題なく行えるでしょう」

「はい」

 

渡されたタオルで汗を拭い、お水を飲みながら独房に戻ります。

 

「本日の予定ですが、六時半にモザイク街へ集合となっています」

「そうでしたね。体を拭いてご飯を食べたら、すぐに出発します」

「了解しました」

 

そうして、タイミングよく来たエレベータに乗り込みました。

独房に戻り、体を拭いて、いつもの九十七式に着替えたら朝ご飯です。

 

「いただきます」

 

茶色い長方形の物体で、プロパくんが完全栄養食と言っている奴です。

どんな原材料が使われているか不明ですし、本当に完全栄養食なのかも不明です。

味も素っ気もないご飯ですが、よく噛めば何となく甘みと旨みを感じられて美味しいような気もします。

それによく噛めばお腹も満たされます。

食べることができるのは、幸せなことなのです。

 

「ごちそうさまでした」

 

あらかじめマグカップの入れておいたお湯を飲み、歯を磨いて身支度をします。

その間に、エイノさんが水筒にお湯を注いでいました。

これがボランティア中の飲料水になります。

肌を保護するクリームと、色付きのリップクリームを塗ったら準備完了です。

この色付きのリップクリームは、ライズさんに勧められて買ったものです。

PTで支給される男女兼用のリップクリームを使っていた私を見て、ライズさんはとても驚き、私の肩に手を置いて、

 

「女の子なんだからもうちょっと身なりに気を遣おう!? な!?」

 

恐ろしく真剣な表情でこのリップクリームを勧めてくれたのでした。

プレゼントしてやるとも言っていましたが、それは謹んでお断りしました。

ライズさん、本当に良い人です。

蛇足ですが、リップクリームを初めてつけたその日、ハルカさんモードのトトは大げさにたじろぎ、

 

「天罰? 天罰が来ちゃうの? また天罰が来ちゃうんスか!?」

 

そう震えた声で言っていました。

本当に失礼な人です。

ふと、先ほど感じたキナ臭いのことを思い出しました。

 

「エイノさん」

「はい、何でしょう」

 

多分答えてくれないだろうなとは思いましたが、言葉を選びつつ尋ねてみることにしました。

 

「あの、近日中に大規模な作戦行動が行われる予定ってありますか?」

「それはどういう意味でしょうか」

「えっとですね、今朝モザイク街の広場からキナ臭さを感じたんですよ。空気も緊張しているような気もしましたし。こういう時って、大体大きな作戦行動がある時に感じることが多いので、どうなのかなって思ったんです」

 

私の言葉に、当然エイノさんは表情を変えることはありません。

 

「現在の貴方に、その情報を取得する権利はありません」

「フフ、やっぱりそうですかー」

 

予想通りの答えに、思わず笑ってしまいました。

情報共有がされない理由は何となくわかります。

咎人や二級市民に余計な行動をとって欲しくないからでしょう。

情報を与えることで勝手に考えて行動するのは、集団行動をする際には害になることが多いからです。

命令に対して忠実に、淡々と従ってくれる、それこそアクセサリのような存在であってほしいと思っているのでしょうね。

ええ、理解できます。

理解できますけどね。

 

「ミーティア、集合時間、十分前です」

 

エイノさんの呼びかけに、私は気を取り直してうなずきました。

 

「はい、では行きましょう」

 

エイノさんと一緒に戦う、最後の一日の始まりです。

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
誤字脱字、その他修正がありましたら、随時対応をします。

主人公の過去話に絡めた、FWにおけるパノプティコンについて触れてみました。
ゲーム発売から一年以上、設定資料集の発売から半年以上が経っています。
今更語る必要のない内容ではありますが、私個人としては今一度きちんと触れて復習しておきたかった内容でした。
制作者のインタビューにて、FWの世界観を読み解くに当たってのいくつかの手がかりが提示されていて、その内の一つにミシェル・フーコーの『監獄の誕生』がありました。
噂ではフーコーの論文全般が難解とのことで、私には難しくて絶対に理解できないだろうと思い、入門書どまりです。
ただ、入門書止まりとはいってもかなり参考にはなりました。
元々予想していた部分がはっきりと形になり、見えなかった部分が見えたのは大きな収穫です。
そう言えば、貢献ガールの歌の歌詞にこんな一節がありました。

誰かがいつも見ている。
本当は誰も見ていないのかも。

パノプティコンという社会の構造を端的に示した歌詞だったんですね。
この難解で複雑な社会の有り様を感じ取る前に、ゲームそのものをやめてしまうプレイヤーが圧倒的に多いと思います。
そしてゲームをやめてしまう原因は、擁護できないあれやこれがあるわけで。
インフラが搭載される前のFWは、前評判の期待値が高かった分、本当にアレでしたから。
それはプレイヤーもそうですが、制作する側にとっても不幸だったのではないかと思います。

この物語で語られたパノプティコンに対する考えは、あくまで主人公の見て聞いて調べて考えたものであって、正解ではないです。
そもそも、正解が制作側から提示されることもないでしょうしね。

次回はいよいよボランティアの始まりです。
多少は盛り上がってくるのではないかと思いますが、新キャラが受け入れられるか今から心配です。
本当にアレを出して大丈夫なのかな。
ともあれ、よろしければお付き合いいただければと思います。

それではまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。