ごめんなさい。
「まだ空は暗く、ほとんど音がしない森。その中の一本の樹が、グラグラと揺れている。直径1mを越える樹を揺らすものは」
「俺!」
俺は『ノウヴァ・ツェンドレス』。
2年前からこの樹を『素手』で殴っている。
理由は、人類の天敵、巨人をぶっ殺す兵団に入隊するためだ。
父と母は完全に反対していて、それならあの樹を素手で倒してみろ、と言われたわけで、こんなことをやっている。
それでも樹の直径の7割は削ったので、もうすぐ倒れるはず。
「せーっの!」
拳をぶつけると、会心の一撃だったのか、樹がメキメキと音を立て出した。
「お……?」
だんだん斜めになっていき、ついにははっきりとバキバキ音を立てながら横に倒れた。
「やった……!やったぞ……!」
「やったー!」
◇◆◇◆
「すげぇや。斧を使った跡もない……。本当に拳だけで……」
「な?な?これなら兵団に入っても良いだろ?」
シガンシナ区から連れてきた両親に倒れた樹を見せつけると、父は唸るように首を縦に振った。
「約束は約束だからなぁ……。しょうがない、許可しよう!」
「やった、ありがとう父さん!……ん?」
どこからか金の音が聞こえてきて、俺はそちらに目を向けた。
シガンシナ区の街……。
「英雄の凱旋だ!」
それに気づくと、俺は一目散に走り出した。
脚は滅茶苦茶に早いので、直ぐに壁にたどり着いた。
「なんだ、ノウヴァ?もう帰ってきたのか?」
「あぁ!英雄の凱旋だから!またな、ハンネスさん!」
手を振ってくれた酒臭いおやじに会釈して、門に走り出した。
人だかりができていて、大人のせいで全く見えない。
高台を探すと、知り合いのエレンとミカサを見つけた。
「おーい!エレン、ミカ……サ……?」
が、その2人の目は、何か信じられないものを見ているようで……
「また成果なしか?」
「まぁ、俺らの税金をドブに捨てるのには、成功したらしいぜ、っ痛!?」
前で話していた大人の頭を蒔でぶん殴るエレン。
と同時にミカサがエレンの首根っこを掴み、走り出した。
「おいコラァ!ガキィ!」
俺もその後を追いかけた。
「まだ……壁の外に憧れてるの?」
「……それは……」
「憧れは持っといた方がいいぞ、エレン」
「「!?」」
俺の突然の登場に驚いた2人が、一気にこちらに向く。
「捨てれるものは多い方がいい」
「ノウヴァか……なんだよ、何か用かよ?」
立ち上がりながら言うエレン。
「いや、特に用はない。見かけたから。……蒔、手伝うか?」
「いや、いい」
「そうか……」
そう言うと、エレンとミカサは俺の横を通り過ぎていった。
「……冷たいねぇ」
◇◆◇◆
「アルミン!大丈夫か!?」
路地裏を歩いていると、そんな声が聞こえた。
曲がり角を曲がってしばらく進むと、アルミンがいじめられているいつもの光景が……。
「おい、また来たぜ、エレンの奴!」
「野郎、今日こそ……ん?一緒に居るのって……」
その視線の先には、当然ミカサが。
「う、うわぁ!に、逃げろ!」
するといじめっ子はこちらに走ってきた。
前方を確認しておらず、モロに俺にぶつかった。
「ってぇな!誰……だ……」
俺の顔を見た途端に怯えるいじめっ子達。
そんな奴らに俺はにっこりと微笑み、
「正当防衛って知ってる?」
そう言った。
ギャアァァァァァァ––––––……
「あいも変わらず、お前はいじめられっ子だな」
「……異端だって言われた。外の世界の話をしたら」
「そうか、ならアルミンが悪いなぁ」
「な!?」
血相を変えて立ち上がり、大声を出すエレン。
心底心外だ。
「お前、アルミンは悪くないに決まってんだろ!?悪いのはあいつらで、アルミンは……」
「しっ!ちょっと黙れ……なんか聞こえる」
エレンを黙らせ、耳を澄ませる。
すると微かに、一定の間隔で地鳴りのようなものが……。
と考えた瞬間、地鳴りは近づいてきて地震の様に大地を震わせ始めた。
「くっ!?……っておい、嘘だろ……?」
最初に声を上げたのはエレン。
その視線の先には、巨人から逃れるための50mの壁––––––を掴む巨大な手。
異常な量の蒸気から出ている手には皮膚は無く、筋肉繊維が剥き出しになっていて、グロテスクな印象を受ける。
するとそれは、何かを引っ張り上げる様に更に力を込めた。
それに連動するように蒸気の中から出てきたのは、頭だった。
顔面も筋肉繊維が剥き出しになっており、皮膚は所々に付いているだけ。
いや、今はそんなことはどうでもいいんだ。
巨人は最大でも15mの筈……なんで50mの壁から頭を出せるんだ……?
「!?動くぞ!」
「……!」
轟音。
そして爆風。
その2つが俺達を襲い、壁の破片が流星群のように街を襲う。
数秒で轟音と爆風は止み、平穏が訪れ–––––てはいなかった。
「か、壁に穴を開けられた……?」
壁にポッカリと開いた大きな穴。
その奥で蠢く巨大な影。
「……おいおい、なんでだよ……なんで、巨人が入ってくるんだよ……」
そう崩れるエレン。
同時にミカサとアルミン。
「……お前ら、自分達の家に行け。家に破片が命中してないか確かめるんだ」
「え……?」
「下敷きになってたら、それはもう無理だ。船乗り場に集合、走れ」
「……」
「走れ!」
「……!」
そして各々別の道に走り出す。
当たっていないと信じて。
「よし!」
俺も走り出そうとした時、
「……!?」
巨大な手が俺を掴んだ。
みるみる俺の体は中に浮いていき、巨大な顔の上に。
「ぐ、ひらっ、けよ!離せ……!!」
が、どれだけ暴れようが、腕が封じられているため、ビクともしない。
そうしている間に手が開かれ、俺は為す術無く落ちていった。
どうでしたでしょうか?
感想待ってまーす。