進撃の巨人〜新星〜   作:鉄少女(男)

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初陣

トロスト区 壁上

 

「……俺は調査兵になる」

 

砲台の掃除をしていると、そんな声が耳に入った。

コニーが言ったようだ。

 

「お、お前は十位以内なんだから、憲兵になれよ」

 

「昨日のエレンの演説が効いたんだよ」

 

「えぇ?」

 

「お前らは掃除をしろー」

 

俺が言うと、それぞれが持ち場に戻り、砲台やレールを掃除しだす。

すると、サシャが、

 

「……あのー、上官の食料庫からお肉盗ってきました」

 

と上着から大きめの肉を取り出し、パンに挟むとか言っている。

 

「お、おい!戻してこい!」

 

「そうだよ!お肉なんてすごく貴重なんだから!」

 

みんながそう反対する中、サシャはその肉を、

 

「……はむっ!」

 

一口分食い千切った。

その次は俺が同じように肉を噛みちぎる。

その行動にみんなが驚き、後ずさる。

 

「これで俺とサシャはウォールマリアを奪い返すしかなくなったが、お前らは?」

 

手をサシャの頭に乗せ、その肉をエレンに投げ渡し、決断を迫る。

 

「……んぐっ!」

 

エレンはも、それを徐に噛みちぎった。

そして一回一回大事に咀嚼する。

 

「……俺も。ウォールマリアを奪還する!」

 

「……俺も!」

 

「私も!」

 

「お、俺にも残せよ!」

 

全員が食べ終えると、ちょうど肉がなくなった。

 

「よし、掃除戻るぞー!教官にバレる!」

 

そう言って再度壁上の手入れに戻る。

レールの錆を見つけたら磨き、また磨き。

……イライラしてきた。

 

そして壁外の方に背を向けた時。

 

「うわっ!?」

 

謎の爆風により、内側に吹き飛ばされた。

咄嗟に脇のホルスターから柄を取り出し、アンカーを飛ばし、壁に突き刺す。

 

「何だ!?」

 

すぐに上を見ると、その答えは否が応でも分かった。

壁を掴む赤い手は、いつまでも忘れることができないだろう。

 

「……!お、おい、壁が……」

 

コニーの目線を辿ると、案の定、開閉扉があった所に縦八メートルもの大穴が開いていた。

 

「……っ!固定砲整備四班、戦闘準備!」

 

その声と共に響いたのは、ワイヤーの巻き取り音。

エレンが壁を登ろうとしている証だ。

 

「目標目の前、超大型巨人!これはチャンスだ、絶対逃がすな!」

 

俺も鞘から刃を装着し、ワイヤーを巻き取る。

アンカーが外れて、壁上へと舞い戻る。

 

「……よう、五年ぶりだな……」

 

莫大な量の蒸気が晴れる。

超大型巨人は、引いた腕を壁上に向かって振り抜き、固定砲を破壊した。

俺とエレンは壁から飛び降り、背中と腰にそれぞれアンカーを刺した。

 

「……チッ!エレン!うなじを狙うぞ!」

 

「あぁ!」

 

蒸気の中から出て来た手を躱し、うなじに狙いを定めてアンカーを飛ばす。

ちょうど真ん中に刺さり、すぐさまワイヤーを巻き上げる。

俺がしくじったら、エレンがトドメを刺す。

 

「……獲った……!」

 

いつもの模型本体ごと破壊する斬撃。

外すはずがないのだが、

 

「うっ!?」

 

新たに出て来た蒸気と爆風に押し戻され、ワイヤーが伸びる。

それでも指に力を込めて、無理矢理巻き取る。

 

「うらぁっ!」

 

剣を振り抜き、蒸気を晴らす。

しかし手応えが無い。

 

消えた!?

 

再度アンカーを壁に刺し、半分の地点で留まる。

 

「き、消えた……五年前と同じ……」

 

「おい!超大型巨人出現時の作戦はもう始まっている。報告を怠るな!」

 

「ハッ!」

 

そう言われた俺たちは、装備を改めるために補給所に戻った。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「いい加減にしろミカサ!」

 

死にたくないやら嘔吐の音が聞こえるところで、ただ一つ凛とした声が響いた。

 

「戦場にお前の私情を持ち込むんじゃねえ!」

 

「……悪かった、私は冷静ではなかった……」

 

エレンがミカサを説得していたようだ。

頭突きしてたが。

 

「ツェンドレス訓練兵、お前もアッカーマン同様後衛だ」

 

「へーい」

 

刃を全て再確認し、鞘に入れながら返事をする。

立体機動の動きも確認し、ベルトの調整を確かめる。

 

「アッカーマン訓練兵、ツェンドレス訓練兵。行くぞ」

 

駐屯兵の人が先を歩き出す。

 

「エレン、死ぬなよ!」

 

「当たり前だ!」

 

ニッ、と笑うエレンの表情に安心し、俺とミカサは駐屯兵に着いて行った。

 

 

◇◇◇◇

 

 

……?

何か声が聞こえた気がしたが、駐屯兵は続々と歩いている。

取り敢えず勘違いという事にして、俺は踵を返した。

 

 

––––––––––––––––

 

 

何で僕は、仲間が食われているところを、黙って見ているんだ……?

僕はただ、みんなと外に……。

 

でも、そのみんなは今食われ、エレンは脚を食われて屋根に転がっている。

 

「ぇ……?……う、うわぁぁ!」

 

一体の巨人が僕をつまみ上げ、大きく開いた口の上へと動かした。

僕を掴んでいる二本の指が離され、口の中へと落ちる。

登ろうとしても、滑って登れない。

もう少しで飲み込まれ、胃液で溶かされる。

そう思った時。

 

「ぁあ……!」

 

何か、いや誰かが、僕の手を掴んだ。

それは僕を思い切り口の外に投げ飛ばし、屋根の上に脱出させてくれた。

 

「エレン!?」

 

閉じられようとする口をこじ開けて、エレンが左手を伸ばしてくる。

 

「アルミン……お前がいたから、俺は……外の世界に……」

 

今にも泣きそうなエレンはそう言って、僕を見つめてくる。

そんな親友に視界がぼやけながらも、必死に手を伸ばす。

 

「エレン!速く––––––

 

しかし手を掴む間も無く口が閉じられ、巨人の喉がゴクンと鳴る。

 

「うわぁああああ!」

 

辺りに、僕の叫びだけが響いた。

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