くそが……やっぱりこうするしかねぇのかよ……!
異様に小さい建物と人を異常な煙越しに眺めて、叫んだ。
目の前には、今となっては同じ大きさの
丸呑みにされた事を感謝し、その相手のうなじを踏みつける。
最高の恩を仇で返した。
前を見ると、そろそろ回復してきた巨人達が、俺に襲いかかってきた。
三m級を踏み潰し、同じ十五m級の首に手を突き刺す。
うなじまで貫通した腕を引き抜き、そのままの勢いで後ろの十m級の顔面を肘で打ち、倒れて地面とで押し潰す。
掌で鎖骨ごとうなじを潰し、後ろを見る。
見知った顔の奴らが、立体機動装置で飛び回っている。
と同時に、俺を見て何か言っている。
内容はなんとなく分かるが。
その向こうには、ミカサとアルミン、コニーが居る、が。
その更に向こうの巨人には、何か違和感を感じる。
俺は試しに近づいてみることにした。
建物はできるだけ避けて、大通りを歩く。
あっちも俺を見つけたらしく、歩いてくる。
その際、ミカサ達のかなり近くを通ったが、全く見向きもしない。
すると巨人はいきなり、俺がバカみたいに避けていた建物など無いかのように、一直線に走ってきた。
住宅には見事に一本の線が入る。
巨人は右手を水平に上げ、俺の首元を狙ってくる。
ラリアットか。
その行動は、俺に一つの結論を抱かせた。
とりあえずそれは屈んで避け、勢い余っている巨人は、前の建物に躓いて転ぶ。
そこに別の巨人が来たので、それはそいつに押し付けて、104期のみんなが飛び込んだ本部に向かう。
まだ大量の巨人が群がっている。
中を覗き込んでいる、仲の良さそうな巨人達目掛けて走り、飛び蹴りを食らわす。
一瞬だけ穴から誰か見えたが、今は追撃に集中する。
来い、全部潰してやる!
◇◆◇◆
流石に多過ぎたか……。
あの巨人の攻撃を躱しながら戦うのは、若干無理があったな……。
とてつもない睡魔の中、俺は辛うじてそう考えることができた。
今、俺の体に群がる巨人は九体。
そいつらが全部俺の肉を食っている。
正確に言えば、巨人の、だが。
あっちではあの巨人も食われている。
雄叫びをあげてはいるが、全く振り切れていない。
その時、あの巨人の前を、一体の十五m級が通った。
ウォオオオオオ!
その瞬間、さらなる雄叫びが響き、あの巨人は十五m級のうなじを思いっきり噛み、そいつを縦に横に振り回し始めた。
その中でもちゃんと他の巨人を殺してるのが恐ろしい。
俺もいつまでもこうしちゃいられないので、体を爆散させることにした。
回りに吹き出している煙の圧力を上げ、小さいやつらを吹き飛ばす。
跳ね起きの要領で、上半身を食っている巨人を退けて、そいつらを足で殺していく。
見たところ、あの巨人はまだ俺に向かってきそうなので、さっさと体を蒸発させることにした。
すぐ後ろの肉が裂けて、出られる程の大きな穴になり、そこから体を出す。
腕に引っ付いた肉を力ずくで千切って、その反動で後ろへ倒れる。
睡魔が完全に俺を支配し、俺の瞼は目を覆った。
◇◆◇◆
「コロシテヤル……」
その声で覚醒し、目を開けると、そこは壁のすぐ横だった。
まだぼやける視界に、何人もの兵士を捉える。
「……駐屯兵……?」
肩に刻まれた薔薇の紋章、それが見えた瞬間に、この状況を理解した。
前にはミカサ、隣にはアルミンとエレン……エレン!?
「え、ちょ、お前!?何で生きて……!?」
「そ、それは……」
よく見ると左手脚の袖もない。
これは、どういう……?
「エレン、ノウヴァ!?体は正常か!?意識はあるか!?し、知ってることを全部話すんだ」
「あ、アルミン……!?」
鬼気迫る顔で問いかけてくるアルミン。
しかし、知っていることなど……。
「おい……殺すって言ったぞ……!?」
「あ、あぁ……あいつらは俺たちを食い殺す気だ……」
俺は殺すなんて言ってないし、その気もない。
それを口に出そうとした時、向けられた剣に気が付いた。
いや、それは巨人に向けるものだろう。
俺はそうかもしれない。
だが、エレンとアルミンとミカサは……立派に戦った兵士だろ……?
「イェーガー訓練兵!並びにツェンドレス、アルレルト、アッカーマン!貴様らが今やっているのは反逆行為だ!」
「貴様らの処遇を問わせてもらう!」
反逆行為?
兵士に剣を向けてるそっちがそうだろ……?
やるなら俺だけにしろよ……何で三人も?
「動いたり、逃げ出そうとしたら、直ちに榴弾を打ち込む!」
「率直に問う!お前達の正体は何だ!?」
何だよ、その目は……何で三人を見る……?
今裁かれるべきは俺だろう?
何で……
「質問の意味が、分かりません!」
その問いは理解に苦しむらしく、エレンが叫ぶ。
「シラを切る気か……!?……大勢の者が見たのだ!お前達が巨人の体内から姿を現わすところを!今は!鎧の巨人がいつ現れるか分からない!お前達に兵力を割く時間は……」
「うるっせぇえええ!」
今の話を聞くと、エレンはなぜか俺と同じく、巨人から出てきたわけだ。
しかし、聞いてられない。
さっきもこんなことがあったような気がする。
「……!?何だお前は……!?榴弾を打つぞ!?お前らは木っ端微塵だ!」
「だからそれがうるさいって言ってんだよ!お前らは上官のくせに状況把握も出来ねぇのか!?」
しかし、その言葉に更に反論する。
「な、何だと……!?くっ……打てぇえええ!」
上官は上げていた手を振り下ろし、壁の上、固定砲係の奴に合図した。
俺たちに向いた固定砲の数は、二つ。
エレンはミカサとアルミンを抱き寄せ、手を噛んだ。
俺は反対側の砲台から三人を守るために、逆の方に向いて舌を噛む。
その瞬間、激しい閃光が辺りを照らし、爆発音と爆風が外を襲った。
砲弾二発は、俺たちの手によって防がれ、爆発した。
爆発の煙が晴れ、この場の全員が俺たちの姿を目視する。
様々なところから短い悲鳴が上がり、それはだんだんと長く、大きくなっていった。
「ぶはっ!熱ちぃ……!」
巨人の体内と、周りの煙による熱さを振り払い、横を見やる。
アルミンとミカサは生きている。
その二人を覆っているのは、巨大な骨格だった。