なかなかに高い位置と変な体勢で巨人化してしまい、変な体勢で落ちていく巨人という間抜けな絵面が完成してしまった。
内心頬を染めながら、起き上がる。
隣には因縁のラリアット巨人、エレンも立っている。
……なぜ岩と反対側の俺を見る?
お前の仕事はその岩を運んで穴を塞ぐ事だろう。
しかし、そんな疑問を空の彼方へ飛ばすように、エレンは拳を振った。
俺に。
はぁ!?
間一髪で避け、その場で尻餅をつく。
更に脚での追撃を避けて、リコ班長を探す。
壁の上で呆然となっているリコ班長を見つけて、できる限りの速さで首を振る。
煙越しなので見えているかどうか……。
と言っても俺の煙は常に口と脇あたりから出ているだけで、風によっては全体が見えるはず。
今日はかなりの風が吹いている。
振られている首は見えるはずだ。
リコ班長は頷き、赤の煙弾を撃ちあげた。
俺はエレンを押し倒し、うつ伏せの状態で地面に押さえつける。
取り敢えずこうしておいて、自我を取り戻すまで待つか、作戦中止と同時にうなじから取り出すか。
どちらかしないと、壁を塞ぐ前に俺が保たない。
すると、どこからか聞きなれた音が聞こえてきた。
立体機動装置のワイヤー巻き取り音。
それも二つ。
しかし、ここに自分から来るような奴は、だいたい同じだ。
「エレン……!」
「しっかりしろ!」
ミカサとアルミン。
おそらく、赤の煙弾画像が見えた瞬間に飛び出したのだろう。
「ノウヴァ! 何か分かる!?」
アルミンに問いかけられる。
しかし、俺もこの力についてよく知っているわけではない。
喋れもしないので、首を横に振る。
するとアルミンは、立体機動装置でエレンのうなじに自分を固定した。
「……よし……大丈夫、真ん中さえ外せば––––––
そして右の剣を両手で握り、
「痛いだけだ!」
突き刺した。
途端、エレンの大絶叫が響き、必死に体をよじる。
しかし俺はそこで意地でも離さないと、更に力を込めた。
向かってくる巨人は、ミカサが削ぐ。
今はこうするしかない。
「エレン! 聞こえるか!? 今すぐこの肉の塊から出て来るんだ!」
–––––––––––––––
出て来いって……俺、今眠いんだ。
『お母さんの仇はどうした!?』
……何言ってんだ、アルミン?
母さんならここに居るぞ。
『エレン! このままじゃ、巨人に殺されてしまう! ここで終わってしまうんだぞ!?』
……だから、何言ってんだよ……アルミン。
なんで外なんかに出なきゃいけないんだ?
外に……調査兵団なんかに……。
『エレン、エレン!……エレン、僕たちはいつか、外の世界を探検するんだろ?』
……!
『この壁の外の、ずっと向こうには……炎の水や氷の大地……砂の雪原が広がっている。……忘れたのかと思ってたけど、この話をしなくなったのは、僕を調査兵団に行かせないためだろ?』
……外の、世界……。
『エレン……答えてくれ。壁から一歩外に出れば、そこは地獄の世界なのに、父さんや母さんみたいに、無惨な死に方をするかもしれないのに……どうしてエレンは、外の世界に行きたいと思ったの……?』
どうしてって、決まってるだろ……。
俺が、この世に生まれたからだ!
–––––––––––––––
「くっ……」
「アッカーマン!」
しまった……足を掴まれた……!
このままでは……食われて……
ウォオオオオオ!
「なっ……!?」
「ノウヴァ……!?」
そこに現れたのは、エレンを抑えているはずのノウヴァだった。
派手に煙と血を撒き散らし、私を掴んでいた巨人を殴り飛ばした姿は、どこかで見た気がする。
「……! あれは……!」
十数体の巨人を千切っては投げ、千切っては投げているノウヴァの後ろに、あの大岩が移動しているのが見えた。
「エレン……」
それはつまり、エレンが自らの意思で岩を持ち上げて、壁を塞ごうとしているという事実。
「アッカーマン!撤退するぞ!」
ミタビ班の人が、私にそう命じた。
ノウヴァが居れば大丈夫、ということか。
エレンは壁に一歩一歩近づいていった。
その前に立ちはだかる巨人は、ノウヴァが殺していく。
殴り、蹴り、投げ、千切り。
そして、門から出てきた巨人の頭を、うなじごとノウヴァが消しとばすと、エレンが門の前に立った。
「……行けぇえ! エレン!」
ウォオオオオオオオオオ!
そして、怒り、憎しみ、恐怖を吹き飛ばすように、光が差し込む恐怖の入り口に、