暗くなった空を、穏やかに月明かりが染めている。
しかし俺は、穏やかからかけ離れたものを、胸の中に持っていた。
「……以上十名が、成績上位の者達だ!」
首席 ミカサ=アッカーマン
次席 ライナー=ブラウン
三位 ベルトルト=フーバー
四位 アニ=レオンハート
五位 エレン=イェーガー
六位 ジャン=キルシュタイン
七位 マルコ=ボット
八位 コニー=スプリンガー
九位 サシャ=ブラウス
十位 クリスタ=レンズ
「無論、憲兵団に入れるのはこの中の者達のみ!各々の兵団での活躍を期待する!解散!」
◇◇◇◇
「まさかノウヴァが10位内にいないとはな……」
「……まぁ、色々壊したり、教官とガチで喧嘩したらそうなるよ。訓練兵団きっての問題児だったらしいよ」
エレンとアルミン、うるさいぞ。
しかし大問題だ。
サシャの誤解を解けず解散式を迎えてしまった。
今日中に謝らないと。
「……すいません。風に当たってきます」
サシャがそう言って立ち上がった。
「ちょっと外の空気吸ってくる」
俺も適当に理由をつけて、サシャの後を追った。
食堂から出てすぐに、大きめの木がある。
その下に、サシャはいた。
木に背中を預け、空を見上げている。
雲一つなく、満天の星が輝いている空を。
「……」
俺は、これに声をかけれるのか?
こんなにも儚い、一本の細い糸の様なこいつに。
きっとすぐに切れてしまう。
どうすればいいのだろうか。
……考えても仕方がない。
空気なんか読むな、捨てれる
それが俺の、信念だ。
「……サシャ!」
「……!?」
驚いて振り向いたサシャ。
何も喋らせないように、間髪入れずにこう言った。
「俺はお前が好きだ!」
「……!?」
顔を紅く染めているのが、月明かりで分かる。
俺の顔も、同じくらいに紅いのだろう。
後ろから、みんなも見ている。
「……そんな、からかうのはやめてください……」
そうやって顔を伏せる。
こいつは、一人なんだ。
やっぱり、同じ場所なんかにいなかったから、こいつは俺から逃げてたんだ。
全く違う場所から触れられて、怯えていた。
俺も、経験したじゃないか。
頼れる人がいない。
頼れる人は違う所にいる。
だからこんな誰でもない木に、体を預けて。
「それならさ……」
喉の奥から声を絞り出す。
これだけは言いたいから。
弱いから元気に振る舞う。
泣き虫だから笑う。
寂しがり屋だから誰かといる。
そんなの当たり前じゃないか。
でも、それでも建前なんかいらない。
倒れそうで、泣きそうで、寂しいんなら、
「俺がお前を支えるから」
星の下、もみくちゃになっている少年の腕の中にいる女の子は、弱くて、泣きそうで。
でも。
決して寂しがり屋なんかじゃない。