エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~ 作:雄愚衛門
原作のユグドラシル時代の会話が好きやねん
「いや、ほんとにお久しぶりです。えっとアインズさん」
「アバさんもお変わりなく……あ、すいません、"モモンガ"でいいですよ」
「そりゃどうも、モモンガさん。早速なんですけど、
なんでギルド名を名乗ってるんですか?」
「ああ、それはですね……あ、立ちっぱなしはなんでしょうし、どうぞ」
「あざっす」
どこからともなく呼び出してくれたクラッキングチェアに腰掛けると、早速、自分が辿った経緯を説明してくれた。モモンガさんも随分とイケメンボイスになったなぁ。
俺を玉座に呼び出したのに他意は無いとの事。
部下との付き合いで、今は円卓よりもこっちのが使用頻度が高いのだとか。
そして、モモンガさんの口から語られる衝撃の事実。
俺達がどうなったかざっくり纏めると、ナザリック地下大墳墓とNPC達で丸々異世界に転移したんだそうな。その折に、NPC達が生を受け、モモンガさんに忠誠を誓ったと言う。で、他のギルメン達がいないか、AOGの名を世界に轟かせるべく、秘密裏に活動中と。
なんじゃそりゃあ!?
……はいはい、沈静化沈静化。
かつて栄華を誇ったAOGは、モモンガさんを除き、誰もいなくなっていた。
ユグドラシル終了のその時まで、モモンガさんはAOGの維持に一人奔走していたのだ。
うん、涙腺あったら、玉座の間が洪水になってる自信あるわ……。
AOGが野望を抱いてる最中、第六階層のジャングルで俺が眠るように倒れてたのを発見。ナザリック中が蜂の巣をつついたような大パニックになったと嬉しそうに語っていた。
「そういう訳で、動き出したNPC達には上位者として接してます」
「なるほど、うん……俺もそうした方が良いかもなぁ……。
さっき、エントマさんに案内されてる時考えたんですけど、みんなには敬語で接しようかと」
「ああ、敬語キャラで通すんですね」
「そんな感じです。何か強そうでしょ?」
「確かに」
「ウルベルトさんが自分のキャラを模索してたのを思い出しますねぇ」
「ははは、そっすね。あの人悪役へのこだわり半端なかったですもん」
「おかげでたっちさんと仲悪かったですけど」
「人助け当たり前と考えるリア充でしたし、折り合い付かなかったんだろうなぁ。
あ、俺恐怖公にまだ会ってないんですけど元気してるかな?」
「ああ、元気と言うか蠢いてると言うか……。
どうも部下達の中にも忌避感を持つ者が多いみたいです」
「ぬぐ、やっぱGはあかんのか!くそう!太古の昔から姿を変えず生存する虫の終着点の一つだと言うに、ゴキちゃんがバッチィのは住む環境が原因であって、あれ自体は普通に清潔で……」
「……アバさん、相変わらずですね」
「モモンガさんこそお変わりなく」
本来なら情報の共有が優先事項だと言うのに、後から後から色々な会話が溢れてくるのは、どうしたものだろうか。だが、暫し許して欲しい。
俺達は、話を大いに脱線させつつ、自分の状況を把握した。
他にも、AOGが現地で敵対した相手をひっ捕らえて、人間時代なら口に出すのも憚られるような苛烈な尋問をしている事も聞いた。なんてこったい。
「いよいよもって悪の秘密結社だなぁ……」
「……アバさんはどう思われますか?」
「それがその、人間に対して情が湧かないというか、なんとも無いというか」
「やっぱりか……」
「と、言いますと?」
「お互い人間ではなくなってしまった影響で、倫理観に影響が出てるようです。
他にも、精神的に大きな触れ幅があると、精神作用効果無効の能力で無理やり……」
「あ! そういうことかぁ! なんで気づかなかった!
俺もそうです。蟲人にも付いてますしね、無効化」
「一先ず人間時代の自分はほぼ死んだと思って良いかもしれません……」
「ですね」
俺に至っては実際死んでるしな。人間であった頃の自分は死に、蟲王アバ・ドンが誕生したということだ。
今の俺は嘘偽り無く、アバ・ドンという生命体になったのか……。
「むぅ……」
「俺は元の世界にそれほどの未練はありませんでした。アバさんは……」
「……」
「あ、アバさん?」
「うおぉぉぉおお! やったぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」
「うわ!?」
「……ふぅ」
「ああ、無効化しちゃったんですね、分かります」
「……やったあぁぁぁぁああ!!」
「またですか!」
蟲になった!俺は蟲になったぞ!今日は何て素晴らしい日だ!
絶対に叶わぬと諦めていた念願が、思わぬ所で叶ってしまった!
これが夢なら一生覚めないでくれ!
ああ、まただ!また歓喜と精神異常無効化に心が揺さぶられる。
貧弱ですぐに息の上がる体とおさらばし、願望を詰め合わせた肉体に生まれ変わることができたのだ。これを喜ばずにはいられまい!
精神無効を何度も繰り返し、ようやく鎮まりました、サーセン。
「すみません、やっと落ち着きました」
「精神作用効果無効をそんなに連発するとは……。度合いが大きすぎるとそうなるのか……?あれですね、よほど嬉しかったんでしょう」
「そりゃもう!あ、じゃあ俺がどうやってこっちに来たのかも説明しないと」
一段落したので、俺はアッチで死んだ時の事情を、モモンガさんに説明した。
「そうだったんですか……。そう言えばアバさんが脱退したのも体調不良が原因だったっけ」
「いやほんとすいません。あの時のモモンガさん"悲しい"アイコン連発しまくるから罪悪感半端無かったです」
「いやはや、お恥ずかしい」
「しかし、何の因果かこうして再会できましたし
俺もAOGの一員として、モモンガさんに全面協力したいと思います。
ですので、改めてよろしくお願いします。モモンガさん」
「こちらこそ!頼もしい限りですよ!」
俺とモモンガさんは両手で固く握手を交わす。
副腕もねじ込んだのでモモンガさんの腕が全く見えねぇ。
「ところでアバさん……」
「はい」
「GM(ギルドマスター)及び、此処の総括としてお聞きしたいのですが、
エントマとの関係はどうするんですか?嫁にするって豪語してたの――」
「嫁にします」
「即答か」
「おうとも」
俺の最終目標はこれに尽きる。
この世界での行動方針は決まった。俺は再びAOGの一員として、ギルドに貢献すると共に、エントマちゃんとの仲を徐々に深める。
従者として、絶対の忠誠を誓ってくれているとは言え、異性経験ゼロの俺にエントマちゃんという高嶺の花は恐ろしいほどのハードモードとなるだろう。
だからこそ、至高の41人の1人にふさわしい働きを見せるべく邁進しよう。
早速、前途多難なのだが……。
「ただ、俺の第一印象最悪だったみたいなので、先は長いですよ……ははは……は……。ふぅ」
「う、うーん、その辺は、まぁ、これから長い付き合いになるだろうから、ゆっくり改善していきましょう」
「そっすね、ていうかいいんですか?いわゆる職場恋愛ですけど」
「職場というか……うん、確かにそうだな。
それについては源次郎さんとアバさんで話がついてますから俺が介入する余地はありませんよ。夢が叶いそうなのに邪魔なんてとてもとても」
「ありがとうございます」
「すごかったですもんね、
源次郎さんへの執拗な土下座と数十回に渡るPvPの果てでしたし」
「いやー、嬉しかったですよ。ペロさんにお前こそ真の漢だとベタ褒めされました」
「虫に関して言えばペロロンチーノさんを凌駕してますもんね、アバさん」
「何がです?」
「その……変態度」
「ぐふぅ」
「ただ、色恋沙汰は……俺も疎いので、そういう相談はちょっと……」
「大丈夫、全部分かっています」
俺はどこからともなく珍妙な仮面を取り出す。真っ赤な顔に、笑ってるとも怒ってるとも泣いているとも取れる、絶妙な表情を浮かべた仮面が一つ。
クリスマスイブ、いつもどおりログインしていたら突如配布されたアイテム。
通称『嫉妬マスク』だ。
何故、そんな通称が付いてるのかは想像に難くないだろう……。
すると、おもむろにモモンガさんの右手がぽっかりと空いた虚空へと吸い込まれる。
やがて戻ってきた手にはあの仮面、『嫉妬マスク』が……。
「「……」」
俺たちは仮面を片手に、静かにサムズアップをした。
アバ・ドンのイラストを描いてくださった方が現れました!!
反り投げさん!ありがとうございましたぁ!(´;ω;)
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51768836
追記:修正版にURLを張り替えました!描き込み度ヤバイ