エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~   作:雄愚衛門

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すみません、真相は次回に……(´;ω;`)
明日も更新するのでユルシテ


急展

冒険者としてある程度の目処を立たせたモモンガ達は、一旦ナザリック地下大墳墓へと帰還。第九階層の円卓で合流したアバ・ドンとモモンガは、改めて近況の報告をし合う。

 

「ただいま帰りました」

「おかです。モモンガさん。成果はあったようですね!」

「ええ、冒険者としての地位とコネクションの確立。おまけに身寄りの無い現地人を拉致出来ました。幸先の良いスタートと言えるでしょう」

 

 モモンガの機嫌は良い。下地作りが上手く行ったので、第一段階はクリアしたといったところだろうか。尚、人間の拉致に関して、二人に罪悪感は湧き上がらなかった。何しろナザリックのNPC達や自分達の命が掛かった計画な上、人間には何の同情も湧かなかった。漆黒の剣に対しては愛着が湧いていたが、それに危害を加えようとした上に、計画の邪魔になった二人には何の躊躇いも無い。

 

「おお、バッチリじゃないですか!拉致した人間は?」

「氷結牢獄に監禁しています。早いところ情報を引き出したいですが……」

「まずは、尋問対策の魔法が無いかの確認と解除ですね」

「ええ、それが終わり次第ってところでしょう」

 

モモンガは以前、カルネ村を襲撃したスレイン法国の陽光聖典隊長であるニグンを尋問し、法国が施した"特定の状況下で質問に3回答えたら死亡する"魔法で還らぬ人にしてしまった。その失態を反省し、エ・ランテルでセバスが捕えたクレマンティーヌとカジッチャンは氷結牢獄に拘束し、部下達に魔法の解除を命じている。

 

「アバさんの方はどうですか?」

「まだ、何とも……。そろそろハンゾーさんから連絡が入る筈なんだけど……」

 

アバ・ドンは、シャルティアとハンゾーに様々な対策アイテムを与え、作戦と策を懇切丁寧に説明した上で旅立たせた。

 

彼女達の目的は武技や魔法を習得した犯罪者の拉致。奇しくもモモンガが達成してしまったが、どちらにせよサンプルは多い方が良い。二人は、シャルティア達の報告を待ち遠しく思っていた。

 

「ん……」

「来ましたか」

 

すると、アバ・ドンの頭の中で何か糸が繋がったような気配を感じた。紛れも無く<伝言>によるものである。

 

『アバ・ドン様、定時報告及び緊急の報告に入ります』

 

それはハンゾーからの報告だった。スクロールによる<伝言>なのだが、当然消耗品の為少々勿体無い。実は、エントマならば符による報告が可能なのだが、それをするとアバ・ドンが飛び出す可能性がある故の代案であった。

 

今の状況下で消耗品を使用する事にはモモンガもアバ・ドンも抵抗があったが、背に腹は代えられなかった。

 

『ハンゾーさん、無事で何よりです。では報告をお願いします』

『はッ、此の度シャルティア様が――』

 

 

 

 

「チャイナ服拾ったって」

「はぁ」

 

 報告内容の第一声は何とも奇妙であった。何故いきなりチャイナ服等という単語が出てきたのだろうか。チャイナ服と言えば、あの独特のスリットが入った中華圏の衣装であるあのチャイナ服で間違いないだろう。だが、このタイミングで出てくる単語としては些か奇妙である。モモンガは気の抜けた返事しか出来なかった。

 

「えーっと……犯罪者の拉致は、上手く行ったんですよね?」

「はい、そっちは完璧にこなせたと言ってました。ただ、緊急に報告したい事があるとか……」

「それがチャイナ服と関係あると」

「はい。何でも、シャルティアさんの全力攻撃で消滅しなかったそうです」

「何ですって!?」

 

 アバ・ドンの話した事はモモンガを驚かせるに値するものであった。レベル100NPCの中でも高い戦闘力を誇るシャルティアの一撃で破壊されない衣服。その事実だけで、性能の高さが窺い知れたからだ。

 

「そりゃモモンガさんも驚きますよね……俺もびっくりしましたよ!ちょっと信じ難い話です。とにかく拾った経緯もハンゾーさん達から詳しく聞きませんと」

「ですね、じゃあいつも通り玉座の間に集合させましょう!」

「お願いします」

 

 これは、全員に周知させなくてはならぬ大事になると確信したモモンガは、即座に緊急招集を掛けた。

 

「私達も行きますよ、アバさん」

「うい」

 

二人はリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使用し、第十階層玉座の間に転移した。二人はそのアイテムの性能から非常に緊急性の高い内容だと認識していた為か、気が引き締まる。

 

「シャルティアさんの一撃を受けても壊れなかったアイテム……かなりヤバイぞ」

「攻撃にもよりますが、彼女の一撃に耐え得るならば伝説級(レジェンド)は固いですよ」

「下手すりゃ神器級(ゴッズ)もあり得る……!むむむ、報告が待ち遠しいです」

「それを持ち帰ってきたとあれば、かなりの手柄ですね」

「楽しみだなぁ」

 

暫く、二人で雑談をしていると、モモンガの呼び掛けに応じ、第十階層玉座の間にはお馴染みの面子が揃った。

 

アルベド、アウラ、マーレ、コキュートス、デミウルゴス、セバスはシャルティア達が帰還するよりも早く馳せ参じ、上段に居るアインズとアバ・ドンのすぐ下、横に控える。これから帰ってくる犯罪者拉致組がアインズに報告する為だ。

 

皆一様に黙して待っていると、玉座の間の扉が開かれた。

 

「失礼しんす。第一、第二、第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールンただいま帰還しんした」

「『黙示録』親衛隊。ハンゾー、ナガト、サンダユウ、ドウジュン、帰還致しました」

 

入室した人物こそ、件の報告者たるシャルティア達だ。シャルティアを先頭に、エイトエッジアサシンのハンゾー達も後に続く。アインズとアバ・ドンは、無事な様子の部下達にほっと一息吐いた。犯罪者拉致の為派遣したチームは誰一人欠ける事無く帰ってきてくれた。

 

(ヨクゾ帰ッテキタ……)

 

コキュートスも安心した者の一人だった。『黙示録』に課せられた厳命として、誰一人欠けてはならないのだ。自分が推薦した思い入れもあるエイトエッジアサシン達であるし、何より至高の御方との約束を遵守出来た。コキュートスとしても、一安心だった。

 

「シャルティア、ハンゾー、ナガト、サンダユウ、ドウジュン。皆が無事に戻ってきた事を、私もアバ・ドンさんも嬉しく思うぞ」

 

シャルティア達は溢れる思いをこらえ、臣下の礼を取る。いつでも報告が出来ると言った様子だ。実はシャルティアの下半身は溢れる思いを少々抑えきれなかったが、アインズとアバ・ドンが気づく事は無かった。

 

「任務達成お疲れ様です。お疲れのところ、申し訳ありませんが、報告を聞かせて貰いましょう」

「畏まりんした」

 

――時間は、犯罪者拉致の為異世界に赴いた頃に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い夜道、エ・ランテルの外れを大きな馬車が走る。逞しい馬が四頭がかりで引いて走る。月明かりに照らされその姿は見えなくもないが、走らせるには危険な暗さである。舗装された道路を外れ、少々揺られる馬車の中の顔ぶれは不思議なものであった。

 

馬車に乗る面々は、透明化して上部に張り付くハンゾー達。シャルティアと愛妾の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)とソリュシャン。そして……。

 

「不思議ですわぇ。やっぱり、貴方とアインズ様は似ても似つかないでありんす」

「それは無理もありません、シャルティア殿。私の有りようは今のアインズ様の趣きとは少々異なります故。ですが、貴方とペロロンチーノ様のように容姿は大きく異なれど、通ずるものはあるでしょう。私はそう確信しております」

 

ピンと軍帽を弾き、パンドラズ・アクターは答えた。足を組み堂々と座る姿は役者のようでいて、軍服も相まって容姿が整っていれば絵になるのだが、顔がハニワの為どうにも格好が付かない。

 

馬車の中は広い為、窮屈では無かったが、隣に座るソリュシャンはもやっとしていた。

 

(アインズ様が創造なされた宝物殿領域守護者、パンドラズ・アクター……。やっぱ変わり者でいんす)

 

愛しの君への侮辱は絶対にしたくないので心に秘めるが、目の前にいるハニワ顔の軍人とアインズの接点を見出そうと思っていた。アイテムフェチの気や厨二気質等、共通点は割かしあるのだが、残念ながらシャルティアは読み取れなかった。

 

「世界をも変える世界級(ワールド)アイテムを派遣者に貸与。そして私とソリュシャンを王国の調査担当に。ふふ、アインズ様は我々の任に強い関心を持っておられるようですね」

「慈悲深きアインズ様とアバ・ドン様は、わらわと共に『黙示録』のエイトエッジアサシン達も預けてくれんした。失敗は許されなんし」

 

シャルティアは自身の爪が不揃いでないか眺めながらもやる気を見せた。アバ・ドン直轄の『黙示録』が初めて外に赴く任務。それを率いて協力するのは他ならぬ自分だ。万が一、シャルティアが失敗をすれば、それはナザリックの威信を地に落とし、至高の一柱であり、アインズの親友であるアバ・ドンの顔に大量の泥を塗る事となる。

 

「シャルティア様。我々エイトエッジアサシンも、全力を以て任務に当たらせて頂きます」

「はいな、あの御方の御命令はよく理解していんす。必要時は貴方が(・・・)遠慮なく指示しなんし」

「御意」

 

 アバ・ドンは、一定の条件下ではハンゾー達の指示に従うようシャルティアに命令した。プライドの高そうなシャルティアにとって辛い事かもしれないと思ったが、アバ・ドン直々に命名した直轄部隊のリーダーという事で、然程抵抗は無かった。至高の御方の肝入りならば、彼女も弁えるのだ。

 

「特定のタイミングではハンゾー達に命令権を譲渡……。シャルティア様の『血の狂乱』対策でしょうか?」

 

ソリュシャンは、シャルティアの言に質問をした。

 

「それもありんすけど、私が探知系のスキルを持ってない事も理由の一つですわぇ。ハンゾー達が主な拉致を担当。私は手に負えない強者担当でありんす。こちらのチームで世界級アイテムを持つのは私だけでいんすから」

「見目麗しい薔薇のようであるシャルティア殿の棘は些か鋭い。皆が傷つかず、生還させようとする故の配慮なのでしょう」

「……分かっていんす。アインズ様とアバ・ドン様は私達に気をお掛けになっている」

 

パンドラの言葉に少々苛ついたが、紛れも無い事実であった。アバ・ドンが取った処置は、シャルティアを決して信頼していない訳ではなく、生還率を引き上げる為の措置だと全員理解していた。厳命する内容が命を落とさない事だと断言する程の上司だ。そう考えても何ら不思議ではない。

 

「至高の御方々は慎重に事をお進めですね。私もパンドラ様の足を引っ張らぬよう精進します」

「王国で一芝居tanzen(ダンス)を披露しなければ。ソリュシャンの補佐も重要になる」

「パンドラとソリュシャンは王国での情報収集……具体的にどうしんす?」

「商い事を少々、ですな。本屋を営もうかと」

「本……?」

「色々と理由はありますが、必ずや、アインズ様に最良の結果をもたらすと約束しましょう」

「よく分かりんせんが、お任せするわ」

 

何故か本屋の営業をするという謎の計画を聞いたシャルティアは、一先ず思考を放棄して目の前の任務に集中する事にした。適度に話を続けていると、馬車が大きく揺れ、窓から見える景色が動かなくなった。

 

「……馬車が停まったようでありんすね」

 

雇い入れた御者がいよいよ本腰を入れたらしい。警護の任に付かせたチンピラが、我儘お嬢様として外で振舞っていたソリュシャンを慰み者にしようとしているのだ。罠に掛かったのがどちらの方かは言うまでもない。

 

「ではシャルティア殿、ハンゾー殿。Wir wünschen Ihnen eine Kriegsglück(ご武運をお祈りします)

 

 パンドラズ・アクターのよく分からない言語を尻目に、シャルティアとハンゾー達は馬車の外へ向かっていった。

 

 

 




ギルメンが居ると正義の味方になるらしいアインズ・ウール・ゴウンですが、アバドンはモモンガ様に追従するヤツなので結局侵略側に……(´ω`)

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