エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~   作:雄愚衛門

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お待たせしてごめんなさい!

エントマちゃんがらみのお話いっぱい書きたいから
思い切って本編要素を巻き気味にするつもりです、申し訳ない( ;∀;)


この木なんの木

ナザリックの新たな仲間、ハムスケの報告により、冒険者ギルドが一旦預かってた『死の宝珠』が持ち去られ、犯人がトブの大森林奥地に向かっていることが判明。大森林制圧(?)担当であるアウラとマーレへ優先的に調査するよう指示した。

 

んで、今は第九階層の円卓でモモンガさんと情報共有中だ。情報が大事なのは勿論のことなのだが、思いっきり素が出せる機会なので無駄話も多くなっちゃうのが玉に瑕である。

 

「……というわけでこのままモンスター討伐を繰り返していれば昇格もすぐですね」

「逃げてきたモンスター達は上手いこと冒険者モモンの功績になったか。よかったよかった」

「はい、おかげさまで」

 

喋ってると喉が渇くので繊細な模様入りの銀コップに入った樹液ジュースをストローで吸う。うんまい。エントマちゃんが出してくれてからすっかりリピーターだ。モモンガさんは渇く喉もないので平気。だからどうやって喋ってるのかと。

 

ズーラーノーン逮捕の一件と、アウラ達が引き起こしたモンスター大移動は、出世に一役買ってくれたようだ。最近だと二つ名的なもので呼ばれてるらしい。タッチことセバス。マイコことユリの二人も含めてな。

 

冒険者モモンが『漆黒の英雄』

セバスが『拳聖』

ユリが『美姫』だってさ。

 

なかなかかっこいい!俺の『害蟲』みたいにな!

 

……これ、某匿名掲示板で付けられた蔑称なんだけど、実はお気に入りなんだよね。そもそも俺の能力のコンセプトがソレだし。

 

「そういや、『死の宝珠』が盗まれた件で、冒険者組合からは何か対応ありましたか?」

「ああ、冒険者に死の宝珠の探索をさせてるそうです。足取りは未だ掴めていないみたいだから、見つけるのはこちらが先になるでしょう。後は……。組合長から直接謝罪されたくらい?あれはエ・ランテルの警備の責任だから気にするなとは言っときましたが……」

「なるほど、一応動きは見せてると」

「まぁ、組合は比較的真っ当な組織だと思います。アバさん、そっちはどうでした?」

「良い感じです。『黙示録』のみんなの行軍は、足並みもしっかり揃っていたし。何かしらの接触があった際の対応もきちんと指示通りでした。基本的な部分は大丈夫だと思いますよ」

 

『黙示録』率いる俺の大森林査察は軍事行動がきちんと出来るかの確認も兼ねていたのだが、結果は上々。NPC達は生まれて間もない子供のようなものなのだ。何が出来て、何が出来ないのかを知る必要がある。

 

いや、実はさ、みんなの話を聞く限り、ユグドラシルオンライン時代の記憶もあるらしく、俺やモモンガさんの黒歴史を認識してるんじゃないかと戦々恐々で、エントマちゃん実は俺が源次郎さんに直談判したこと知ってたりしたら……うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!

 

……精神鎮静化した。ふぅ。それでもNPC達の戦闘経験は俺やモモンガさんには遠く及ばない。故に、色々学ぶ必要があるわけだな。あれ?じゃあ俺は、年端もいかぬエントマちゃんを手籠めにしようとするド変態ということに……?

 

この話は終了した。

 

これまでの見回りや部下たちと接してきた感じからも分かったが、自分のスキルの行使や、役割分担、統率に関しては問題ない。NPC達は自分のスキルをきちんと活用して、ナザリックに貢献している。まぁ、アインズ・ウール・ゴウンの運営がきっちり出来てる時点で今更な気もするが、ジッサイ確認は大事。

 

「となると後は、咄嗟の事態に対応出来るかですかね……」

「モモンガさんそういうの超強いからほんと羨ましいです」

「いやいや、とんでもない。マニュアルがないと不安すぎてもう……」

「わかる」

 

モモンガさんが頭を抱えながら呟く。お互いネトゲ廃人なだけで、一応パンピーなのである。

 

先も言った通り、NPC達は経験が少ない。後は自分の能力を応用出来るか、突発的なトラブルに対処できるかが問題だ。俺もそこんとこ急務なんだよね……。がんばろ。

 

NPC達の応用力問題に関しては、良い方法を思いついたので俺が実行するつもりだ。モモンガさんには許可貰ったし。超々渋々だけど。

 

「許可してから言うのもアレですけど。ほんっっっと、ケガには気を付けてくださいよ?」

「はーい」

 

俺はサムズアップしつつ素直に返事をする。モモンガさんの気持ちも分かるし、危ない方法なのは確かだ。だが、これは俺のためでもあるし、対策はガチガチに固めてあるので、後はモモンガさんの言う通り、ケガに気を付けるこったな。

 

「モモンガさん、話変わるんですけど、トブの大森林って確かかなーり広いんですよね。死の宝珠の一件は結構時間かかりそうかな?」

「元々森林の調査はだいぶ進んでるみたいだから……。ある程度の範囲さえ絞り込めば良さげだし、そろそろくるかも」

「よっしゃ」

「よっしゃって……。アバさん、大森林探索、相当気に入ったみたいですね」

「みんなで散策するの本当に楽しかったんですよ。機会があればアインズさんや他のみんなも誘いたいぐらいです」

「ナザリック総出でピクニックか……」

 

モモンガさんが顎に手を当て考え込んでいる。てことは、結構乗り気だな。取り巻く問題が片付いたら行ってみたいもんだ。後はエントマちゃんと二人っきりでデートとかな、夢が広がる……。

 

「確かに、みんなでのんびりするのもよさそ……お、アウラから『伝言』きた」

「おや、噂をすれば」

 

ほんとに早かった。『伝言』で呼び出しってことは概ね特定出来たっぽいね。モモンガさんとアウラが会話している。会話してる者同士でしか声が聞こえないので大人しく待とう。スキル次第で盗聴っぽいこともできるけど、そこまでしなくともよかろう。樹液ジュースうめー。

 

モモンガさんが威厳あるアインズさんモードでアウラと会話中だ。相変わらずギャップすげぇ。

 

「なるほど、そいつはドライアードだからその場から動けないと……。ほう、そちらも完成したか。分かった、丁度良い。私たちがそちらに出向くから待機しておけ。……ああ、気にするな。あくまでついでだ。では、すぐそちらに向かう」

 

そう言うと、『伝言』をモモンガさんが切った。ドライアードって木の精霊だよな?後、なんか完成したらしい。

 

「アバさん、宝珠の件。所在を知る者との接触に成功したそうです」

「おお!この速さでそこまで辿り着くとはすごいな」

「所在をある程度割り出して、ニグレドに探させるつもりだったんですが、手間が省けました」

「ですね」

 

ニグレドはアルベドの姉。第五階層 の『氷結牢獄』にいるタブラさんお手製NPCの一人だ。見た目が超ホラーの製作者趣味爆発なレディで、調査系特化の能力を持っている。野外で大規模な行動中は魔法によって監視を行ってくれる縁の下の力持ちなすごいヤツだ。

 

じゃあ、ニグレド一人に調べさせればええんじゃないかな?と言うなかれ。みんなに仕事を割り振る方が良いのだ。森林調査は今も続行中だしな。

 

「それと、森林の拠点が完成したそうなので、拠点の視察ついでにそっちで報告を受けることにしました。一緒に来ます?」

「お、マジすか!ラッキー!」

 

わーい、また森林に行けるぞ!別にモモンガさんだけ出向いても問題ないっちゃないのだが、そこんところは気をまわしてくれたのだろう。さすモモ。

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、アインズさんの『転移門』でやってきました、トブの大森林。今日も空気が旨い。

 

基地の外観や森を見たかったので、拠点入り口前に出てきたのだが、まぁご立派だこと。どっしりとした石の土台に巨大な木造建築の基地が出来上がっているではありませんか。巨大な木の柱、急斜面の木造屋根、木造の梁と壁。たまんねぇなおい。

 

(これが木造建築!木の匂いが素ん晴らしい!木造っていいもんだなぁ)

(元の世界じゃ木造建築なんて絶滅してましたもんね)

(はい、こっちきて良かったですよほんと。シロアリの気持ちが知りたいのでちょっと齧っても)

(やめなさい。……それじゃ、中でみんなを待たせてるので入りましょうか)

(あい)

 

見上げるほどの大きさの入り口をくぐると、階層守護者のアウラとマーレ、コキュートスとデミウルゴスにエントマちゃんが跪いている。俺の秘書だからエントマちゃんがいて当然なのだ!幸せ。

 

尚、警備体制の都合でアルベドとシャルティアはナザリック地下大墳墓で留守番だ。仕方ないね。こういう状況ならヴィクティムに第一階層の警護を任せるのが良いんだが、ヴィクティムは死んで効力を発揮するタイプの能力故に未検証なんだよね。試しに殺すわけにもいかんので……。

 

警備に穴が開くのは間違いない、念のために手は打っている。

 

「皆、待たせたな。立ち上がって、楽にしてよい。アウラ、マーレ。拠点制作と『死の宝珠』調査、ご苦労だった」

「皆さん、お疲れ様でした。素晴らしいものをありがとうございます」

「光栄です!アインズ様!アバ・ドン様!」

「お、お褒め頂き、ありがとうございます!」

 

アウラとマーレが目を輝かせ、答える。俺とアインズさんのダブル誉め言葉攻撃!論功行賞のときのシャルティアやハンゾー達もそうだったが、本当にうれしそうだ。喜ぶならどんどん褒めちゃおうね。

 

「ただ、至高の御方々をお迎えするには簡素な作りになってしまいました。申し訳ありません!」

 

喜んでたのも束の間。アウラが謝っている。まぁ来たのは急だったしねー。てか、どんだけゴージャスにする気だったんだ……。

 

「気にすることはない。お前が私達の為に作っているものなのだから、この場はナザリックに匹敵しよう」

 

アインズさんが良いこと言った。

 

「アインズさんの言う通りです。それに、こういったシンプルな木造、私は大好きですよ。自然が感じられて、とても清々しい気分です」

「……はい!」

 

よかった、アウラが元気になった。アウラってそういうの結構気にしちゃうタイプなんだよねぇ。茶釜さんも弟絡みで責任感じたりするとこあったから、似たのかもしれん。ちょっとしたところでギルメンの面影を感じるのが微笑ましい。

 

「アバ・ドン様ハ、木造ガオ好ミデアラレルト……」

「参考にさせて頂きます」

「メモメモぉ……」

 

……ん?エントマちゃんはメモを取り出して、何か書いている。書記とか頼んだっけ?それにしても、ダボダボの裾に隠れた手で器用に記入するものだ。しかも、あの中の手はカギ爪型だから難しいだろうに。スプーンやフォークもお手の物だもんな。うーん、生命の神秘。エントマちゃんを複眼で視界に留めつつ、俺はデミウルゴスに話しかける。

 

「デミウルゴスさん。メガちゃ……私の召喚した蟲の警備に問題はないですか?」

「はい、警備の補強に大いに役立てております。アバ・ドン様。あれほどの強大な蟲を召喚して頂き、深く感謝致します」

「いえいえ、お気になさらず」

 

最近ナザリック地下大墳墓も他所に出てる部下が増えてきたしなー。念のために、俺の蟲にも警備をやらせることにしたのだ。なーんと、レベル100のとびっきり強いヤツだ。大奮発である。

 

(100レベルのモンスターを経験値消費なしで呼び出せるとかほんと羨ましい……)

(司令官系の特権ですからね!とは言うものの、3日に1度が限界ですし……。つーか、モモンガさんは俺より遥かに能力の幅が広いでしょ!俺の蟲達は永続的に召喚し続ける方法がまだ分からないし、消費MPが据え置きなせいであんまり活用できてないし)

(ああもう、ほんと勿体ない……!)

(そう言うと思ってました)

 

かつてユグドラシル時代に幾度となく患った"勿体ない病"がこっそりぶり返した模様。

 

この人みたいに、死体を媒介にして召喚した者を永続的に留めておくことが出来たら良かったんだけどなー。蟲の永続化は今も研究中だ。

 

幸い、永続は無理でも長時間維持することなら出来るので、代わりの警備要員として呼び出した。こんな時でもないと呼び出す機会がないしな。超変異体千鞭蟲より、更に不憫な子なのである。

 

MPの回復手段は時間回復のみ。俺の戦闘スタイルの関係上、1体の蟲にMPを割き過ぎる訳にはいかん。故に、今まで日の目を見ることはなかったのだ……。呼び出したとき心なしか嬉しそうだったもんなぁ。警備頑張ってね、メガちゃん。

 

「さて、『死の宝珠』の在処をドライアードが知っているそうだが……。であるならば、こちらから出向く必要があるな」

 

ドライアードは木が本体なので、行動範囲は木の近くに留められる。面倒だけど、行くしかないか。

 

「いえ、それには及びません!本体を引っこ抜いて、こちらに運んでおきました!」

「え?!」

「え"?……おほん。それは、色々と大丈夫なのか?」

 

想定外である。アウラさんったら大胆ね!アインズさんも言ってるが、それは良いのかな……?

 

「はい。なんでも、あの周辺はすっごく危ないヤツがいるから、むしろ運んでもらえると助かるとか言ってたので」

「なんだ、そういうことか……。良い判断だぞ、アウラ」

「恐縮です!」

 

良かった、ドライアードも同意の上だったみたいだ。現地人との敵対はなるべく避けたかったので俺もビックリした。

 

「ドライアードノ本体ハカナリ騒ガシカッタノデ、拠点ノ裏側ニ植エテオリマス」

「騒がしかった、ですか」

「なんでも世界が滅亡するー!とかって……。うるさくってしょうがなかったです」

「静かにしてほしい……」

「全く、冷静さの欠片もありませんでした」

「蟲で口を塞いでしまうべきかと」

「ふむ……」

 

俺もエントマちゃんに口を塞いでほし、なんでもない。

 

みんな、ドライアードのやかましさにご立腹のようだ。しっかし、世界滅亡とは大きく出たな。

 

「穏やかじゃないですね。事情はよく分かりませんが、ナザリックに何かしら被害が及ぶ可能性があります。早急に話を聞いた方が良いでしょう」

「その通りだな。ではアウラよ、ドライアードの元へ案内しろ」

「かしこまりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとなんだって!このまんまじゃ魔樹が大暴れして世界が滅んじゃうんだよ!!」

 

木の幹のような肌。新緑の葉の髪。どっからどう見てもドライアードだな。名前はピニスン・ポール・ペルリアと言うそうだ。なげー。みんなが言ってた通り、かなり騒がしい。怯えによるパニック状態だな。俺とアインズさんに対面したときもひえええ!化け物と!大騒ぎするし。まったくもう。

 

なんとか話を聞いてみたところ、黒い石を手に持った冒険者らしき男が、封印の魔樹、ザイトルクワエとやらを目覚めさせたそうだ。冒険者の男はこちらの呼びかけに答えもせず。虚ろな目で、魔樹の元へ向かっていったとか。ハムスケの証言と一致している。ほぼ、間違いないだろう。ザイトルクワエは森の奥地東側。枯れ木の森に潜んでいるそうだ。

 

「場所は分かったが、彼女の証言ではザイトルクワエの具体的な強さが分からんな」

「ではエントマさん。ニグレドさんへ、ザイトルクワエの調査をするよう『伝言』お願いします」

「畏まりました」

 

(アバ・ドンさん)

(ええ……)

 

俺とアインズさんに緊張が走る。世界を滅ぼすってんなら最悪ワールドエネミークラスも覚悟せねばなるまい。

 

「調査なんかしてる場合じゃないって!みんなで世界の果てまで逃げなきゃ危ないよ!!」

「……」

 

(やれやれ。仕事の邪魔だな……)

(まずいです、みんなが激おこぷんぷん丸ですよ)

(激、なんですって?まぁ、有益な証言をしてくれたことは間違いないです。このままでは部下に殺されかねないからなんとかしたいんだけど……)

 

ピニスンがなおも騒いでいる。怖いのは分かるが、エントマちゃんの業務を邪魔するとは不届きものめ。とは言え、怒るわけにはいかない。部下たちがキレる5秒前なので、そっちをなんとかせねば。多分騒がしいことよりも、俺とアインズさんに失礼だと思ってることが原因なのだろう。

 

(仕方ない、こんなこともあろうかと俺が温めておいた、とびっきりのインセクトジョークで場を和ませるッッ!!)

(え)

 

アインズさんが困惑しているが、部下たちとのコミュニケーションで培った、ジョークネタをキメることで、この空気を打破するのだ。

 

(大丈夫です!ルプーさんやエントマさんにバカ受けだったので、結構自信あります)

(う、うーん。それならまぁ、お任せします)

 

お任せされた。ではいってみよう

 

「ピニスンさん、余り騒いではダメですよ。皆さんの任務を阻害してしまうかもしれませんからね。この問題は、我々がきちんと処理するのでご心配なく」

「で、でも!」

「ですから、あんまり騒いでいると……。住処(コロニー)にしちゃうぞ?☆」

「」

 

ピニスンは、一言も喋らなくなった。




ちらっと出てきた100LV蟲のメガちゃんはアバドンの能力上、余り出番がない可哀そうな子です……。プロット上出せる場所がここしかなかった( ;∀;)

某怪獣王にちょっと善戦出来るぐらい強い子です。

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