エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~   作:雄愚衛門

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ぬおおおお!日間一位!ありがとうございます!



想定外と言う名の必然

(どうしてこうなった)

(ああ、知ってたとも……知っていたとも……)

(あー、ブループラネットさんの作った星空はやっぱすげぇやー)

(現実逃避してないで、行きますよ、アバ・ドンさん)

(ふぁい……アインズさん)

 

装備を整え、ばっちりフル装備になった俺達は闘技場に転移。部下達の前なので、呼び方もお仕事モード。意思疎通は個人メッセージだ。

 

第六階層中央部闘技場。

 

そこで目にした光景に、俺はとっても驚いた。

具体的に言うと、二回精神作用効果無効が発動した。

 

 闘技場の観客席は満員御礼。闘技スペースを囲う観客席は見事にナザリックのモンスターで埋め尽くされていたのだ。収容スペースはコロッセオと同じな筈なのだが、まぁデカイモンスターもいるので人間基準の収容人数は当てにならん。

 

ナザリック中の配下達が全員集合したんじゃないかという状況だ。

 

しかし、その全員が沈黙を保っており、かなり威圧感があった。微かに熱気のようなものを感じるのが尚更怖い。

 

確かに、知り合いを誘っても良いって俺は言ったさ……。

 

そうだな、ナザリック内の面子はほぼ知り合い同士なのだからこうなる事はありえたよな。でも、いくらなんでも集まりすぎだぁ!

 

(これがナザリックの上位者になるという事ですよ、ハハハハ……)

(心中お察しします。ていうかマジでごめんなさい)

 

その乾いた笑いは、今までアインズさんが背負ってきた苦労を匂わせる悲しい笑い声であった……。偉い人は発言にも気をつけにゃならん事がよく分かりました。超反省。

 

さて、この闘技場の観客席上には、周囲より高台になった特等席がある。コロシアムに来たお偉いさんが演説してるスペースみたいな場所だ。

 

そこに、アルベド含む階層守護者全員と(ヴィクティムとガルガンチュアはお留守番)セバス、プレアデスの面々まで集合している。守護はどうした守護は。

 

後、闘技場の闘技スペース入口の影に、30cm大のゴキブリとそれを取り巻く普通サイズのゴキブリが潜んでいた。おお!恐怖公!恐怖公じゃないか!うわー懐かしいな!

 

あんなにひっそりと俺の事を見てるのはきっと、周りに気を使っての事なのだろう。すまねぇ……俺があまりにもリアルなGの造形にこだわったばっかりに……。落ち着いたらゆっくり話でもしよう。今は手を振るだけに留める。

 

アルベドが、フェンスにお胸を押し付けるよう身を乗り出し、アインズさんにものすごい勢いでアピールしている。その結果、胸元がちらりと見え、挟まれて潰れた胸がなんともセクシーだ。蜘蛛の巣アクセサリー引っかかって痛くないのかなぁ?

 

「……チッ、おっぱいゴリラめ」

 

そんなアルベドを横目に、シャルティアが舌打ちをした。ハッキリ聞こえちまったよ……視力聴力が良いってのは良い事ばかりじゃないなぁ。

 

「ああん?貧乳ヤツメウナギとどっちが魅力的なのかしらねぇ?」

「あ?その下品な乳袋、眷族の餌にしてやろうか」

 

す、すごい睨み合いだ。顔の横に『!?』って書いてありそう。これが女の戦い……!なわけねぇ!あれ絶対不運(ハードラック)(ダンス)っちまう類の喧嘩や!

 

皆さーん、あっちで好カードな試合が始まりますよー。あれは、俺かアインズさんが止めに行くべきなのだろうか。

 

「ヨセ……アインズ様ト、アバ・ドン様ガ御技ヲオ見セスル最高ノ機会ダゾ……」

 

あ、コキュートスに諌められた。その言に納得したのか。二人は渋々従い、大人しくなった。やるじゃん!

 

 そして、プレアデスが全員いる、という事は……。

 

「……アバ・ドン様ぁ」

 

いやっほー!エントマちゃーん!視力も聴力も大幅強化されてるからはっきりと見えるぞ!だが、これまたスマートに軽く手を振っておくだけに留める。皆の前だしね。

 

うーん、反応が悪い。ちょっと目を見開いたから気づいてる筈なんだけど……。

やはり前回のアレが良くなかったのか……。すると、眼鏡と夜会巻きヘアーが特徴なプレアデスのお姉ちゃん、ユリがエントマちゃんに耳打ちをした。

 

「ほら、至高の御方が手をお振りになってるのよ?」

「う、うん」

 

おお、良かった。ペコリと頭を下げてくれた。勢いがあったせいか、姿勢を戻した反動で触覚がゆんゆんしてる。ユリ超グッジョブ。しかしどうアプローチをすれば、好感度を回復出来るか……。

 

と、思ったのだがまさに今がチャンスではないか!

 

この模擬戦で、かっこいい所を見せるのだ。そうすれば、俺の事を見直してくれる筈!

 

(やるぞぉ!)

(急にやる気にな……ああ、エントマ効果)

(なんすかその自然現象みたいな呼び方)

 

「アインズ様ー!アバ・ドン様ー!」

「ま、待って!お姉ちゃん!わーっ!?」

 

不意にアウラが、マーレを掴んで飛び降りてきた。もー!大丈夫って分かってるのにハラハラするわ!

 

華麗に着地し、元気ッ娘よろしく俺達の下に駆け寄る。マーレが完全に引きずられる形となっているその様は、姉弟の力関係を、雄弁に語っていた。マーレも結構強いんだけどねぇ。

 

(初めて会話した時よりも、マーレの連れ方が強引だな……)

(急いでるんでしょう。もう全員集合してますし)

 

引きずられながら、捲くり上がりそうになるミニスカートを修正する姿は

女の子そのものだ。だが男だ。繰り返す、だが男だ。

 

「ようこそ!アインズ様!アバ・ドン様!この通り、準備完了してます!各階層の警備体制に穴が出ないように、アルベドとデミウルゴスが調整済みです!」

「じ、人員に空きが出るところには、きちんと対策しました!」

「うむ、ご苦労だったな」

「お疲れ様です」

 

準備ってそういう事かよぉ!皆で観戦する準備ね!

 

俺達はアウラとマーレをきちんと労う。俺達を観戦するためにわざわざナザリックの警備状況を考慮してくれたのだ。この状況は俺のせいであって、彼女達のせいではない。

 

「わぁ……アバ・ドン様の装備、とてもよくお似合いですよ!」

 

アウラの言葉にマーレも相槌を打つ。

 

「はは、そう言われると照れますね」

 

気恥ずかしさをごまかすように、俺は自分の防具をチラリと確認する。俺の防具はそれなりの装飾は施されているがアインズさんよりシンプルだ。

 

上半身は、肩と胸、手首を保護するプロテクター。下半身は、腰蓑(こしみの)状の鎧をベルトとバックルで固定し、膝と足首を、上半身と同じプロテクターを装着している。防具の色は全て、俺の体とほぼ同じだ。

 

その全てが神器級。膨大なデータクリスタルを俺専用のチューンで設定し、希少金属とリアルマネーを注ぎ込みまくった珠玉の一品だ。性能だけならアインズさんに決して引けを取らない。

 

その名も『究極の闇をもたらす者(アポリュオン)』!

 

あ、ヤバイ。アインズさんの気持ち分かった。これすごい恥ずかしい。命名俺なんよ。

 

 ま、まぁそれはさておきよく馴染む。装備しても動きを阻害するような違和感は一切無い。尚、武器は無い、俺には不要だ。

 

「僕達、階層守護者は高台で見ようと思います。い、偉大な御方々を見下ろす不敬を……」

「あははは、構いませんよそれぐらい」

「我々は気にしないとも、マーレ。見通しの良い場所で、心置きなく私達の雄姿を眼に焼き付けなさい」

「あ、ありがとうございます!」

 

 アインズさんと会話してる時のマーレがアルベドに負けず劣らず恋する乙女ちっくな表情なのは気のせいだ、そうに違いない。アウラとマーレはまた客席に戻っていった。勿論マーレは引きずられながらな。

 

(これは、恥ずかしい戦いは見せられないですね)

(違いないです……)

(まぁライブ配信されながら戦ってると思えば)

(あー、そうですね)

 

実を言うと、見られながら戦う事自体は慣れっこだ。国内どころか一部諸外国でも、観戦されてたぐらいなのだから。

 

GvG然りPvP然り、見物人も多かったし、その模様を一部のプレイヤーが撮影し、それをネットで配信する。よくあることである。だが、ゲーム越しではなく生で見られるとなると色々違うなぁ。

 

(なるほど、お二方とも面白い事をお考えになる……。ナザリックの支配者としてだけではなく、御自身の力をお示しになる。この模擬戦は、いわばアバ・ドン様による我々へのアピール。そんな事をせずとも、力量を疑う者などおりませんのに……)

 

(なんかデミウルゴスさんの眼光が優しみに溢れてる気がする)

(たまにあります)

(さよか)

 

さてさて、最早賽は投げられた。そろそろこっちに集中しないとね。

 

模擬戦の相手は悪魔の軍勢。

 

開き直った俺達は、デミウルゴスに頼んで、魔将(イビルロード)の悪魔召喚を使う事にした。魔将の悪魔召喚は時間さえあればいくらでも出来るので、モンスターを呼び出すコストも実質ロハという寸法だ。おっとくー。

 

それならば、スタッフオブアインズウールゴウンの宝石に封じられてる原初の精霊でも良かったのだが、俺は多数との戦いの方が得意なのだ。何かと気が利くアインズさんの事だ。俺の見せ場を作るために、あえてそうしたのだろう。さすアイ。

 

 基本的にこの戦いは出来レースだ。魔将の召喚する悪魔のレベルはたかが知れている。レベル差とパッシブスキルのせいで、こちらがダメージを負うことは一切無い。俺達に万が一の事故という事も起こり得ないので一安心という訳だな。

 

 一応ハンデはある。まず、アインズさんは広範囲攻撃は使わない事にしている。ネガティブバースト程度でも、ぶっ放せば一瞬で片がついちゃうし。

 

俺のハンデは攻撃を全て避けきる事。どちらかというとノーダメ縛りという奴だ。

 

それに、こうも皆が集まった以上は、

ゴリ押しでなく合理的な戦いを見せる必要がある。

 

(後はアインズさんを巻き込まないように気をつけなきゃな)

(アバ・ドンさんのアレは直撃するとヤバイですから……)

(攻撃力あんまり関係無いですからねぇ、俺。久々なんで、最初は慎重にやります)

(その方が良いでしょう)

 

久しぶりの戦闘、上手く行くといいのだが。

エントマちゃんにカッコいいとこ見せちゃうぞ!

 




次回、アバドンの能力が判明。
能力解説しやすいのもあり、三人称視点になります。

アバ・ドンの装備は反り投げ(洋風おでん)さんと二円さんが描いて下さったアバ・ドンに、
ダグバ様の金ぴか装備をアバドンカラーにして
くっつけた状態を想像すると分かりやすいでしょう。
ちなみにマントは翅の邪魔になるのでありません。

防具の名前は突っ込んだら負けです。

アバドンの姿形を想像しやすくなったので本当に助かります(´ω`)

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