= The Chaos Wolfs =   作:No.20_Blaz

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と。言うわけで、まずは小手調べ的な意味でのプロローグです。
夏の所為で頭が参ったので少し文章がアレだと思いますが……それはご勘弁を(汗

あと、後書きには簡易的なキャラ紹介を載せています。
今回出てきた主要キャラのみですが今後の参考になればと思い…
また他のキャラは後々登場する予定ですので、そこはご了承を。




では。改めてプロローグのスタートです。




Prologue : run rabbit junk

 

 

 

 

 

 

世界

 

 

全て

 

 

 

貴方はこの言葉を聞くとそれを何処までの広さで考える?

 

世界は地球の中。世界は宇宙の果て。

全てはこの世にある物全て。それともこの世だけではない全ての理。

 

 

これはそんな世界での物語。

全てと言う言葉が拡張され、世界と言う言葉が広がり続ける事象。

そんな世界で、そんな世界に矛盾を持たずに己が生きる世界を生き続け、生きる世界を戦い抜く者達の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その世界に暦法は無い。

いや、かつては存在したがある事を切っ掛けに暦法は事実上消え失せてしまった。

 

 

 

数多の時空、次元が繋がり、その存在を曝け出した世界が数多く存在する世界。

そして未だ見ぬ幾つもの世界が存在する世界。

 

 

そんな世界の暦法を誰かがこう言った。

 

 

 

“次元暦”と。

 

 

 

 

 

 

 

次元暦140年。

幾つもの世界が観測されたこの時代、ひとつの秩序が誕生し散らばった世界を統合させることに成功し新秩序が誕生。

しかし同時に新たな抗争、内乱、侵略者などを誕生させる切っ掛けとなり現在もその火種は消える事も無くまたどこかで燻り続けている。

反体制、反政府、反人種、理由は様々だ。

 

 

そんな無法にも近しいこの世界で、”彼ら”は存在している。

ありとあらゆる抗争、戦争、紛争などに介入し、戦いを求める者達。

彼らを求める者達に平和を与える為でも新たな抗争を作るためでもない。自分たちが必要とされている世界。自分たちの力が必要とされている場所に彼らは立つ。

そして今日も―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルカディア。

楽園、理想郷の代名詞と呼ばれているその名を使った中央集権都市は、いわば次元暦という名称を最初に生み出した場所であり、同時に首都としての機能も持っている。

観測された各異世界を統合、観測を続ける組織のお膝元。

故に、テロや武力犯罪はままある事でもあった。

 

無論。それを防ぐ為にのアルカディアの秩序を守る警察組織も存在している。

が。それでも防げない武装集団というのは多く存在する。

それが今、警察と呼ぶ組織が対峙している相手だ。

 

 

「………で。犯人グループからの犯行声明、または要求は」

 

「現在ウチで捕らえている罪人数名、及び国際指名手配されている指導者の解放」

 

「身代金はなし……か。キナ臭いな」

 

司令車両の中で展開している警察の指揮を執る男二人は、ひとつのテーブルを挟み深刻そうな表情をしている。テーブルには投影技術が使用されて今回の事件が起こった大使館(・・・)の見取り図が映し出され、そのほかにも多くの詳細データなどが表示されている。

だが、それを見れば見るほど男達の頭に頭痛が走り、現状の厳しさに身体が応えていた。

 

「今回の組織は残党的な奴等ではあるが、組織としての機能は十分に機能している。恐らく資金難という残党の決まりごとまでは落ちぶれていないのだろう」

 

「………それでアレ(・・)か。まったく何処から掘り出してきたんだ、あんな物――」

 

考えただけでも頭痛がすると頭を抱えるが、それは苦痛的なものではなく幻覚痛のようなもので痛みまでは感じなかった。感じるとすれば幻覚の痛みと気分の悪さぐらいだ。

そんな場所へまた一人の男が入室。報告を行う。

 

「失礼します。各出入り口、及び下水などの封鎖は完了。あとはご命令さえあればいつでも」

 

「……速いな。もうそんなに時間が経ったか……」

 

「ハッ。機動部隊及び狙撃班の配置は完了。特に問題の(・・・)正面には多めに人員を」

 

「だが相手が相手だ。数で物を言えるような相手でもない」

 

「ッ……」

 

「ああ。機動部隊の装備では到底太刀打ちできん。こんな事なら、彼らにも予算を回しておくべきだったというのに……」

 

「上は自分たちの事で躍起だからな。仕方あるまいといえばそれまでだ」

 

事実と現実を口にした彼らは、覆せない事に落胆し組んだ手の上に頭を置く。

 

「……隊長。万が一の時には……分かっているな」

 

「―――ええ。隊員達も、覚悟しています」

 

「――そうか。君を機動部隊の隊長に任命して正解だったよ。お陰で犠牲というものが目で見て分かったよ」

 

「ありがとう御座います、長官」

 

「―――矢張り……」

 

「ああ。最悪、特攻覚悟で行くしかあるまい。何せ捕らえられているのは政府役人……それも内務大臣と来た……」

 

状況は最悪だ。

立て篭もりが始まって約十分。未だ犯人からの犯行声明はなく、捕らえられている人質の安否すらも不明。しかもその捕らえられている人質は最悪なことに政府要人。

犯人グループの詳細なデータは不明だが、要人ほか複数の人間を立て篭もった大使館の中に捕らえていることから複数。それも十名近くであることは明らか。

更に、武装グループということで銃火器で装備を固めており、ライフルはAKを始めとするオーソドックスなものばかり。

 

だが、それ以上に彼らは信じられないものまで用意していた。

 

 

「M1戦車……それも爆発装甲付きだと?」

 

「そんなもの聞いたこともないぞ……」

 

「―――いや、今はそんなことはどうだっていい事だ。問題は戦車がある所為で正面からの突入が不可能ということだ」

 

「実際、我々機動部隊には対戦車装備は無く、装甲車も対空として機関砲はありますが……」

 

「……打つ手なし、か」

 

 

 

 

 

「…………いや。ひとつだけあります、長官」

 

「ん?」

 

「どういう……ことで?」

 

「―――今回の件。ただ事ではないという事で、一つ。彼らを試したく思い……」

 

「彼ら?彼らとは…………まさか!?」

 

 

刹那。その言葉を待っていたかのように木製の杖が地面に叩かれる音が響いた。

 

 

 

「ええ。こんな事でも私達の仕事ですからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

夜の首都高速では車の帰宅ラッシュが始まっており、道路の殆どは車で覆われていた。

首都というだけあって人口密度は多く、同時に車両の数も馬鹿にならない。故に計画的な行動をせねばラッシュの渋滞に引っかかるというのはよくある事だ。

 

「くそっ……完全にハマっちまった………」

 

「ココから数キロ、時間にして一時間ってラジオが言ってますよお客さん」

 

「ああ。気にすんな。帰ったら帰ったで五月蝿い女房しか居ねぇからよ」

 

「―――お子さんは?」

 

「娘が一人。けど、親離れって奴」

 

「ああ……もうそんな歳なんですね」

 

「まったくだよ、ったく……どこに飛び出していったんだか…………」

 

後部座席に座っていた男が、そう言って後ろへと振り返った次の瞬間。

聞こえてくる駆動音に何事かと思っていた男と運転手の上を、赤く巨大な蜘蛛が飛び越えていった。

 

 

 

「……………………あ?」

 

 

「へっ………うわっ!?」

 

そして、赤い蜘蛛は難なく車を飛び越えると軽々と着地。

まるでアメンボのように軽快な動きでその場から走り去っていく。

突然の出来事に驚いた男と運転手。だが驚いたのは彼らだけではない。他の近くにいた者達もイキナリ現れた赤い蜘蛛に興味を示し、走る姿を見続ける。

 

「な…………」

 

「く、蜘蛛!?」

 

「いや、ロボット……?」

 

走り去っていく一匹の赤い蜘蛛。

その後姿には、いや蜘蛛の背中には一人の男が張り付いていたのを目撃しますます訳の分からない彼らは窓を開けて去っていく蜘蛛の姿を目に焼き付けた。

一体アレはなんなのか。ロボットか。それとも生き物もか。

そしてその背に乗っている男は何者か。

それを彼らは知る事も、もう一度見ることも出来なかった。

 

 

 

 

「急げよ”ロジコマ”ッ!!」

 

「アイアイサー!!」

 

軽快というよりもダンスに近いスピンなどで渋滞する車を飛び越えていく赤い蜘蛛。その背には黒髪で銀髪の部分を纏めた男が乗っているというよりもしがみ付いており、渋滞を軽々と通る機体の上で不気味な程の笑みを見せていた。

だがそれとは裏腹に、彼本人は焦っており召集時刻(・・・・)に間に合わないことに恐怖していたのだ。

 

「いそがねぇと時間に間に合わ、ないなコレは!?」

 

「うぇ!?」

 

「しゃーねー!!ロジコマ、この先のカーブで高速降りるぞ!!でなけりゃババアにぶっ殺されるぞ!!!」

 

「うわーん!!それだけは勘弁ですよー!!!」

 

端末を見て戦慄する男の命令に泣き声を上げるロボットはそれでも命令に従い、自身の速度を上げる。

別にそこから飛び降り自殺をしようと言う訳ではない、そこから一気に最短コースを行くだけ。高速をちまちま通っていたら絶対に間に合わない。

彼と一機は勢いよく道路へと飛び出し、下にある一般道へと落ちていった。

 

 

「な………何なんだアレは………?」

 

「というか、落ちていきましたよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回の状況を整理する。今から約四十分前、反体制組織と思しき武装集団が大使館を占拠。事件発生時大使館内には少なくとも十五名近くの職員及び国務大臣とその秘書二人の計十七名が人質とされていると予想されている」

 

『内務大臣とは、これまた……で。なんで内務大臣さんが大使館に?』

 

「さぁな。大方、外交問題という大義名分を使って悪巧みをしているのだろう」

 

『うわぁ…ありそうな話だ』

 

『元々内務大臣は賄賂を受け取っていたとか闇金とかで騒がれていたことがある。今回はそれが裏目に出たんだろうさ』

 

「それに大臣は最近どんどんと強まっている外からの圧力に危険視していましたし、大義名分としては外の政治状況と顔色を伺いにってところでしょうね」

 

『どうでもいいだろそれは』

 

割り込む言葉に溜息を吐き、女性は通信機を片手に話を続ける。

 

 

「―――続けるぞ。武装勢力はAKシリーズを中心としたスタンダードタイプで、人数は確認されただけでも十名以上。三十分前には武装勢力の主犯格らしき男から現在、警察組織が収監している仲間数名と指導者の解放を要求。これが受諾されなかったら一時間ごとに一人。

タイムリミットは残りが大臣と秘書官らだけになったらで、その場合は正面に止めている車で大使館を爆破。神風覚悟で市内決戦だそうだ」

 

『指導者帰らぬときは、市民様を道連れにってか?』

 

「わりと冗談で済む話ではないですよ。今回の一件。失敗すればこの世界の地位は落胆し、更なる紛争と治安悪化が懸念される。そうなれば………」

 

『この世界はアラ不思議。世紀末と人間台風よろしくジャンキーワールドに早変わりだ』

 

笑い事でもない話に乾いた笑い声が通信機のスピーカー越しから聞こえてくる。

通信機の向こうに待機している彼なら笑い話なのだろうが、それを聞いていた青年は不快そうに眉を寄せその通信機の向こうで笑っている男に睨みを利かせる。

無論、それは彼だけではなく彼の前を歩いていた女性も呆れて溜息を吐き続けて言おうとする前に言葉で制した。

 

「それ以上は言うな。ガルシア。そこから先を喜ぶのは貴様だけだ」

 

『―――。』

 

「―――イカれてやがる」

 

『同感。関係がないとは言え、俺もそれだけはゴメンだ』

 

『………。』

 

「作戦前から仲間割れはするな。喧嘩なら後でしろ」

 

毎度のことながらと、統率にゆらぎのある彼らに頭を抱える彼女は、その不機嫌さを紛らわせる意味…があるのかは不明だが彼女の後ろを歩く中性の顔の青年に尋ねた。

 

「ところで……あのバカモンは」

 

「あー……なんか渋滞にハマったようで、今ロジコマと一緒に………」

 

「ガキの遊びではないのだぞ、全く………三分以内に来るようにと念を―――」

 

 

そう言って女性が言いかけた次の瞬間。

 

 

 

 

 

「どいた土井たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」

 

「どいの文字を間違ってマース」

 

 

警察などが集結している場所に響く大声に、女性も青年も思わず顔を振り向かせる。

そこには今し方到着した一台の”支援用輸送車両”とその上に乗る一人の男がしがみついており突然現れたその車両と男に警官たちは驚き、中には腰を抜かす者も居たりと混乱していたが、やがて車両は女性と青年の方へと向かうと、目の前に障害物が突然現れたかのように急停止し、男は前に振り落とされそうになるが、逆にそれを利用し車両から飛び降りる。

 

「うおっとぉ!?」

 

若干体勢が不安定だったが、無事に着地した男は軽く息を吐いて安堵し急停止した車両に対し文句を言った。

 

「あぶねぇな……急停止すんなよな!!」

 

「目的地がここでしたので」

 

「だからって普通に止まれないのかって言ってんだよ!!」

 

「事態が急を要してましたので」

 

「同じ事だっての!!?」

 

 

「お前はコントを見せるために態々ロジコマと来たのか」

 

 

「るせ!!今それどころじゃ………」

 

車両に対し怒りを爆発させる男だが、その近くで彼の上司(・・)が居た事に今し方気づいてしまい、彼の表情は一瞬にして真っ青に変化した。

 

「ほう。他に何か言い訳があるのだな?」

 

「……………ババア、何時から?」

 

「お前がロジコマとコントを始める前からココに立っていた」

 

 

「………。」

 

あまりに気まずすぎる空気に冷や汗を流し始める男。

一方で叱られていた車両は彼が怒られているのを気にせず変わらない音量で報告した。

 

「ただいま到着しました!」

 

「ご苦労。それで、頼んでいた仕事は」

 

「はい。命令されていたテロリストの密輸現場殲滅は無事に完了。テロリスト数名を逮捕し警察に引き渡しました!」

 

「……いいだろう。報告書は後で受け取る。今は目の前の仕事に集中しろ」

 

「命令は了解しました!!」

 

「―――異論は」

 

「………チッ―――わったよ。さっさと情報転送しろ」

 

隣で明るく答える車両に頭を抱えた男は、嫌々ながらも仕事を了承し彼女から目の前の事件についての情報を受け取る。

 

「ユズ。コイツにデータを転送しろ」

 

彼女がそういうと、彼が持つ小型端末『iDROID』に情報が転送され現在起こっている事件について分かっている情報、配置状況。経過した時間などが表示される。

投影式のモニターが浮かび上がり、スクロールされていくがそれを一分ほどで全て見たのか、彼は端末の電源をスリープにする。

 

「―――で。俺の担当は?」

 

「見て分からんか?貴様は最後の位置……つまり正面だ」

 

「―――だよな」

 

聞くだけ無駄だったか、とあっさりと諦めた彼はのらりくらりと正門のほうへと歩いていく。

 

「ロジコマ。カーゴ開けろ」

 

「はーい」

 

男に言われて背を向けた車両ロボットは後ろに付けられているカーゴのハッチを開放する。

すると中には耳につける無線機が一つと、彼の得物である大型の長棒のようなものが格納されていた。彼が無線機を取ると、直ぐに自身の右耳に取り付けて設定されている周波数を使い回線を開く。

 

「さてと……シンヤッ!!」

 

 

 

『大使館敷地内にて待機。現在茂みでかくれんぼ。合図があればいつでも』

 

 

 

「ジョンッ!!」

 

 

 

『同じく敷地内に侵入。経路は確保しているからこちらも』

 

 

 

「………真紅。Biohaza-d………ベルベットは」

 

「ちょいまち………」

 

 

 

「―――配置完了……いけるよ」

 

 

『ベールはいけるってさ』

 

 

「……んじゃ。とっとと仕事を―――」

 

 

『おいおいおい。俺を無視するたぁいい度胸だなガキンチョ』

 

 

「………チッ、テメェはどうせ大使館の屋上で酒飲んでるんだろうが。クソジジイ」

 

「ハッ、運動前には準備体操だ」

 

「テメェの頭がスポンジ状に体操されてんだろうが。このドクサレ野郎」

 

 

ある者は茂みに。ある者は木の枝の上に。ある者はどこかのビルの屋上から。

そして、ある者は大使館の屋上の屋根に。

これで配置確認は完了。各隊員も待機状態で後は合図を待つだけ。

悪態を吐き、不機嫌そうな顔をする男はカーゴに残されていた最後の物。彼の得物を取り出すと、慣れた手つきで背中へと差し込む。

 

「ロジコマは合図と共に俺と突撃。真正面からM1とかち合うぞ」

 

「りょうかーい…………え?」

 

『各員ロック解除。スタンバイ確認』

 

女性の声にそれぞれ持っている銃のロックを外し、撃鉄を降ろす。

リボルバー、オートマチック、アサルトライフル、対物ライフル。各々の銃が鉄の音を響かせ、その闘志を湧き立たせた時。

 

 

「よし。行けッ!!」

 

 

 

飢えた獣たちはそれぞれ獲物を狩りに行動を始める。

 

 

 

 

 

『館内の配置状況等は不明。各自敵を見つけ次第即座に始末。あるいは尋問して人質の居場所を聞きだせ。無駄だと思ったら躊躇はするな』

 

「了解っと……」

 

『聞くだけ無駄なんじゃない?仮にも元は大規模なテロ組織だったんだし』

 

耳につけた無線機に小声で答え、茶色髪の青年がひとり茂みから姿を現す。

身を屈めて気づかれないように動くその様から彼がテロリストとは敵対する側の人間であるのは明らかだ。

彼が館の壁に近づくと、予め侵入しやすいように仕掛けていた窓に手を伸ばし、僅か数秒たらずで窓から館内に侵入。サプレッサー付きのUZIを構え、物音を立てずに館内に消えていく。

 

「向こうのメンツ……ですか。さてどうなんでしょ。あるかどうかさえも怪しいモンですが」

 

『そうかもねー……っと』

 

それとほぼ同時に三階からも突入。

堂々と窓から入る彼だったが、すぐ近くにテロリストが向かってきていると感じ取り、得物である短刀を抜き取る。

 

「………相手は二人、か」

 

 

 

 

 

「さて。こっちはとっとと仕事を終わらせるか………」

 

そして屋上で酒をラッパ飲みしていた男は、既に三人ほどテロリストを始末しており、彼の目の前にはヘッドショットを決められた男が二人。喉元をナイフで切り裂かれた男が一人、自身の体内を循環していた鮮血を盛大に撒き散らし絶命していた。

しかし男はそれでは満足しえなかったのか、支給品であるiDROID0を手に持つと満足した様子で端末の起爆ボタン(・・・・・)を押した。

 

 

 

刹那。

大使館内で同時に爆破が起こり、明々とした火薬の花火が各地から飛び出す。

 

「どかーん……ってな」

 

 

 

「っ!?」

 

「おっと……!?」

 

 

「チッ……あの戦闘狂が………!」

 

「うっそー……大使館爆破しちゃいましたよー……ってまずくないですか!?」

 

「シンヤ、ジョンッ!!」

 

『大丈夫ッス。つか今のまたあのおじさんですか!?』

 

『不思議と生きてマース。派手にやったね彼も……』

 

味方の巻き添えも省みずに行った爆破に思わず焦った様子で通信機に叫ぶ女性。

しかし直後、シンヤと呼ばれた青年とジョンと呼ばれている男の二人から応答が帰り、女性は二人が無事である事に安堵した。

が、それは直ぐに終わり、彼女の怒りの矛先はその全ての元凶に差し向けられた。

 

「ガルシアッ!!」

 

『ハハハハハ、あーい?』

 

「貴様……人質と二人が巻き添えを喰らってもいいのか!?」

 

『別にいいだろ?爆破は馬鹿共にしか当たらないようにしたし、場合によってはこの大使館諸共連中と共に心中してもらうさ。俺は逃げるがな』

 

「………。」

 

剣幕を張って叫ぶ彼女を嘲笑うように答えるガルシアは、そう言って軽く笑うと再び携帯していた酒のキャップを取り喉の奥へと流し込む。

そして、酒の酔いが回ったのか、笑い気味の声で続ける。

 

『仕事は馬鹿なテロリどもの殲滅。人質なんざ二の次だ。連中の盾にされちゃ困ったモン―――』

 

「だ。そうだけど……ベール?」

 

 

『……狙撃完了。大使館は、落ちないよ。一応』

 

『…………。』

 

「だそうです。マザー」

 

「ご苦労。bioはそのまま狙撃を続行。残敵を殲滅していけ」

 

『―――了解』

 

しかし今度はその彼を嘲笑うかのように狙撃を担当していたメンバーから、彼が過剰に仕掛けた爆弾の狙撃完了の報が届き、マザーと呼ばれた女性は小さく安堵の息を吐く。

そして今度はスピーカー越しにガルシアが不愉快そうな顔で舌打ちをしていた。

その彼に残念だったな、と直接は言わないが間接的に言ったマザーは、彼に作戦を続行するようにと命令する。

 

「仕掛けはご苦労だった。だがウチもそこまで余裕というものがないのでな。次は出来るだけ少なく爆弾を設置してくれ」

 

『………チッ』

 

「悪態をはくだけの元気があるのならさっさと仕事をしろ。いいな」

 

『―――わったよ』

 

不機嫌そうに通信を切るガルシアにそれはこちらの台詞だ、と呟いたマザーは直ぐに態度を一変させ他のメンバーに通信する。

 

「……シンヤ。そっちはどうか?」

 

『今の爆破で気づかれはしたけど取り合えず二人は。それと奥に二人だから四人だな』

 

「よし。シンヤはそのまま一階の敵を殲滅。上の階はジョンのガルシアに任せておけ」

 

『M1はどうするんスか?幾らあの人でもそれは無理なんじゃ………』

 

「……シンヤ」

 

『はい?』

 

「エントランスには近づくな。絶対にだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ……くそくそくそくそッ!!!どうなっているんだ!?」

 

その頃。大使館の一室では今回の事件の首謀者である女と数人の部下が、人質の内務大臣たちを中央に集め、変な行動を起こさないかと見張りつつ状況を確認していたのだが突然の爆発の相次ぐ仲間たちとの通信途絶に焦りを見せ始めていた。

 

「一階の部隊とは連絡はとれますが、二階と四階の連中とは……」

 

「三階はどうなってる!?」

 

「待ってください、今―――」

 

 

 

『――ち―ら―――えんぐ―――を―――!!!』

 

「ッ……!」

 

『こちら―――三階ッ!!敵が侵入した!!ただちに援軍を―――』

 

乞うはずであった次の瞬間。通信機のスピーカーに酷いノイズが走り、三階の部隊との連絡が途絶えた。

その途絶する直前、僅かだが何かにおびえる声と死に行く仲間の声が聞こえて一室に居たテロリストたちは顔を青ざめさせていた。

 

「な、なんなんだよ……コレ………」

 

「軍の特殊部隊?いや、そんな……あいつ等だってここまで出来る筈が……」

 

「じゃあ一体誰なんだよ!?」

 

「お、俺に聞くなよ!?」

 

 

「………。」

 

「隊長。奴等は一体………」

 

あまりに想定外の事態に女も思考が散漫になり汗を滲ませていたが、やがて考えているうちに一つの可能性、仮説を呟いた。

 

 

「…………旅団(・・)―――」

 

 

「―――え?」

 

 

「如何なる世界にも、企業にも、組織にも、あまつさえ軍にも属さない私設傭兵部隊――

 

 

 

 

 

 

大海の覇者の名を持つ、その名は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――残念だけど。それ以上は―――”話しちゃいけない”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それと時を同じくして。

一階では自身の担当を終えてひと段落つけて歩いていたシンヤが無線機を使いマザーへと報告する。しかしまだ状況自体が終わってないため、彼はUZIのマガジンを交換。手に持つPx4のマガジンを確認し再度装填した。

 

「こちらシンヤ。一階の敵の掃討完了。どうやら逃げ遅れた人質を捕らえていたようなんでついでに救出しておきやした」

 

『ご苦労。今、何処にいる?』

 

そう言って聞くマザーの問いに、シンヤは少しの間を開けて申し訳なくも嬉しそうな様子で答える。

 

「現在……エントランス手前ッス」

 

『………。』

 

「いや、話は聞いてましたよ?けど、残りが居ないかって思って粗方探したんですけど……エントランスを通らないと行けないところもあるからっていうか………」

 

冷や汗をたらし、言い訳のようにも思える言葉に苦笑いで話すシンヤに、マザーは割り込み一言だけ言う。

恐らく説教される。そう思っていたシンヤは目を細めて彼女の怒号を受ける覚悟を決めていた。

 

 

が。

 

 

『――シンヤ』

 

「………ウッス」

 

『巻き込まれても知らんぞ』

 

「――――へ?」

 

その話の切り出しはあまりにアッサリとして、シンヤは思わず目を見開いた。

その言葉の意味は直ぐに現れる。彼女もそう分かっていたのだ。

 

 

 

 

彼の目の前で大爆発と共に大使館の玄関が破壊されたのを目にして。

 

「い……!?」

 

 

巻き起こった爆発、土と砂の煙。

同時に大量の瓦礫やガラスの破片などが飛び散り、彼の目の前だけではなく背筋にも爆風が過ぎ去っていった。

 

「な、なんだぁ!?」

 

吹き荒れる砂煙に目を細めながらも彼は目前で何が起こったかと、こらして見るとそこには大使館の趣のある空間が壊され、無骨な戦車一台が無理矢理駐車されられていた。

 

「M1………外の奴か!?」

 

盛大な爆音と轟音を響かせ退いた戦車に驚きつつも腹部辺りに下げるUZIとPx4を構える。無理矢理下がったのか、それとも下がるしかなかったのか。いずれにしても戦闘になる、そう思った時だ。

 

 

「あーあ。派手に下がったなオイ」

 

「壊しちゃいましたね」

 

「………。」

 

砂煙の中から聞き覚えのある声が聞こえ、気の抜けた声を聞いたシンヤは呆れた様子で腕をぶら下げる。

彼にとっては聞き馴染みのある声に、ただ呆れることしか出来ないシンヤはそれを象徴するかのように溜息を吐いて呟いた。

 

「もうちっとどうにか出来なかったのかよ…」

 

「ん?シンヤじゃねぇか。どうした?」

 

「……別に」

 

「………?」

 

 

『……正面二人。戦車は終わったか?』

 

「――ああ。多分中は電子レンジでチンされてると思うがな」

 

『ご苦労。今、ジョンの奴が突入した。ガルシアも直に撤収するだろう』

 

しかしマザーの言葉を無駄にするように無線機のスピーカーから一人の男、ジョンの声が聞こえてくる。

そこは大丈夫。と言う彼の台詞に、二人は容易に察する事ができた。

 

『こちらジョン。今、人質を全員解放。首謀者と思しき女性は片付けました』

 

『よし。ものは序でだ。髪の一本でも抜いて戻って来い。こいつ等について少し調べたいからな』

 

『了解』

 

 

「終わっちゃいましたね」

 

「終わっていいんだよ。仕事は終わりだ」

 

無線機を切り、ロジコマのボディを叩くと気だるい様子で欠伸をして男は玄関へと向かい歩き出す。

その彼の後姿に、そう言うこと、と言葉をつけたしたシンヤもホルスターへとPx4を戻しスリングにUZIをぶら下げると彼の後を付いて行き、ロジコマも無言でついていく。

これで作戦終了。誰もがそう思った時だ。

 

 

 

「オイ、待てよこのクソッタレ共ッ!!!」

 

 

 

「ッ!」

 

「ん!?」

 

「あ。あそこです」

 

口汚い罵声を耳にした二人はロジコマが指差す方へと顔を向かせ、それぞれUZIとハンドガンのGSRを抜く。

すると、構えた先にあったのは青ざめた顔で汗を滝のように流し人質をとるテロリストが立っていた。無論、彼は人質に銃を突きつけ、人質を自分の身体に密着させていたが、テロリストの手は震え、顔にはびっしり汗が流れ出ていた。

 

 

「う、うう、動くなよ!!動けばどうなるか分かってんだろうな!!!?」

 

 

「……シンヤ」

 

「しゃーねーだろ……つかアンタがM1をぶっ飛ばさなきゃ人質救えてたっての」

 

「な事いうがな、俺だって好きでぶっ飛ばしたわけじゃねぇんだぞ。ババアが主砲だけは撃たせるなって言わなけりゃ今頃外でアイツの上半分がオサラバした奴が立ってたっつーのに……」

 

典型的すぎる状態に緊張感がない二人は、互いに人質を取られた罪の擦り付け合いを行い、完全に目の前に居るテロリストと人質の事を無視していた。

やれ戦車がどうの、やれやり方がどうのと話している二人に、テロリストと人質は始め呆然としていたが、やがて自分が無視されていることに苛立ちを感じてくると、テロリストは改めて銃を突きつけた音を立てて二人に向かい叫ぶ。

 

「お……お前等!!状況分かってんのか!!人質が惜しけりゃとっとと銃を――」

 

「あーはいはいったく喧しいな、最近のテロリ共わよ」

 

「全く同感。もう少しクールだったらまだ対応のしがいはあるけどな」

 

がくりと呆れた様子で肩を落とし、そのまま銃を下げる二人。

銃が下がったのはテロリストにとっては喜ばしいことだったが、それでも何故か納得しきれない怒りの気持ちが彼の中に漂っていた。

そう。完全に彼は二人に舐められていたのだ。

 

「くっ……有利だってのになんか嬉しくない……」

 

 

「――で。アンタはその人質を取って。銃を降ろさせて。どうしたいんだ?」

 

「愚痴ならきかねぇぞ。テロリストの愚痴なんでロクなモンじゃないからな」

 

 

「喧しいっ!!人質の命が惜しけりゃとっとと逃走用の車を用意して、俺を安全に外に出させろ!!そうすればコイツの命は―――」

 

 

「―――命は?」

 

 

「………え?」

 

 

 

「命は―――なんだ?」

 

 

 

「命は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「命が無いのは君の方だよ」

 

 

刹那。

その言葉を耳にしたテロリストの首は一瞬にして胴体から切り離され、彼の命は最期に何もいう事も出来ずに絶命という形で終わってしまった。

 

 

「人質なんて取った瞬間から、君の負けは決まってたんだよ。

 

 

………ま、逃げてたとしても同じだけどね」

 

 

余りにあっさりとした事に一瞬何が起こったのかと思っていた人質は、その後テロリストの胴体から流れ出る血を目にして、始めて彼が絶命した事に気づき悲鳴を上げた。

その悲鳴を上げた人質の後ろには彼の命を奪った本人、ジョンが何事も無かったかのように佇んでいた。

しかし、その彼の姿を見て何も思わないのか二人はただ無言で銃を下げ、変に思えたジョンはもしかしてと呟き尋ねた。

 

「―――もしかして二人共分かってた?私が後ろ獲ってたの」

 

「あたぼうよ」

 

「こっちからはバッチ見えてたからな。一部始終が」

 

「ありゃ。それは残念だね。折角二人の驚く顔を見たかったのに」

 

「今更アンタの暗殺技で驚くなんて無理だって」

 

短刀を納刀し二人のもとへと歩み寄るジョンは、反応が期待違いだったことに落胆し覆面の顔にかかるように溜息を吐く。

 

「――仕方ないかぁ……二人とも反応鈍そうだからね」

 

「それと反応が鈍いかは関係ねぇだろ。絶対」

 

子供じゃねぇんだぞ、と言葉を付け足すと少し残念そうな顔をする彼に呆れめの顔で頭をかくと、何を思ったのかおもむろに銃を抜く。

もう敵は残っていないが、念のための警戒だろうか。

そんな事はシンヤもジョンも思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ちなみにだからってテメェがいたことに気づいてないワケねぇからな。クソジジイ」

 

そう言うと、一丁のリボルバーのあらぬ方に向け其処に立っている人物、ガルシアに向けてそう言葉を吐く。

まるで預言者かのように言う彼の銃の先には確かに手すりに腰掛て酒を飲むガルシアが立っており、銃を突きつけられた本人は作戦前と変わらず乾いた声で笑い言葉を返した。

 

「だったらいい加減マテバなんてやめとけや。そんなの脅しにもなんねーぜ」

 

「分かってねぇな。マテバを笑うものはマテバに泣くんだよ」

 

「少しズレただけで着弾地点がズレる欠陥銃にか?とんだ馬鹿だな」

 

「―――試してやろうか。アンタの頭で」

 

「………。」

 

 

 

 

「双方そこまでだ」

 

 

「「ッ―――!」」

 

 

刹那。一触即発の空気を潰すかのように、女性の声がエントランス内に響き渡る。

銃を向け、銃を向けられていた二人はそれに反応してか目線を声の主へと向ける。片や面白くなる所で、と思いもう一人は苛立ちを見せて舌打ちをしていた。

 

「銃を収めろ。ココでの私闘など言語道断だ」

 

「―――。」

 

「分からんか。安い挑発に乗るなと言っている」

 

「―――チッ」

 

 

「あーあ。つまんね」

 

「ガルシア。貴様は先に帰還しろ。後始末はシンヤにやらせる」

 

「え、俺ッ!?」

 

「不服か?」

 

「あ、いえせめてもう一人―――」

 

「不服か?」

 

「………。」

 

マテバを下げる音とシンヤの返事だけがその場に木霊し、肩を落として落胆する彼に軽く肩を叩く。

慰めのつもりのだろうが、それでも今のシンヤにとっては励みにもならなかったようだ。

 

「真紅。bioは」

 

「あ。はいはい……」

 

 

落胆しているシンヤを他所に、マザーは真紅にもう一人、狙撃を行っていたbioについて尋ねる。

別段、彼にだけしか答えないというわけではないが、真紅の場合でないと口数が減るようなのだ。

 

『真紅?』

 

「ああ。ベール、そっちは?」

 

『…終わったよ』

 

「残敵も?」

 

『…逃げようとしてたから』

 

「オーケー。報告は受けるから先ずは戻ってきて」

 

『ん……』

 

 

口数の少ない”彼女”はそう答えて無線機を切ると、作戦が終わって気が抜けたのか吐息を吐くと今まで構えていた対物(・・)ライフルを擬装用のチェロケースにしまう。

発砲時に落ちた薬莢は見つかったとしても特に面倒にはならないので、そのままにしておき転がる金属音を背景に少女は腰から護身用の銃であるべレッタ90-Twoを取る。そして、軽く銃のロックを外すと再び腰へと刺し込んだ。

 

「……行くよ」

 

「らじゃー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

結果だけを言うと、大使館立て篭もりから一時間後。人質を取り大使館に立て篭もっていた武装勢力の全ては、たった一時間という間に全滅。

人質は全員無事に解放され、損害は建物のみという事で終結。その後テロリストがどうやってM1戦車などを手に入れていたのかなど多くの疑問が残っていたが、それ以前に今回大使館に居合わせ、人質となってしまった内務大臣はその場に居た理由を白日の下に曝された。

秘密裏に行っていた人身売買と闇商人などの入国・出国の手引き。そのほかそれに関する事が曝け出され、大臣はスキャンダルの的であると同時に政府の面汚しとされ解任。

一応ではあるが事件は終結へと辿っていった。

 

 

 

 

「つまり、大臣は人身売買での売り上げの半分を貰うのを条件に闇商人や売られる人たちの入国・出国の手引きを行っていた……っていう事」

 

「売られるのは主にストリートチルドレンや有名人の子供。富豪または政府役人たちの子供たちや、少数民族やエルフとかといった人たちを密輸入(・・・)していたんだって」

 

「エルフや少数民族は価値が高い。そういうのを好む連中には喉から手が出るほどで、中にゃあプレミアを付けられた種も居るとよ。酔狂だなぁオイ」

 

「………。」

 

「で。それに一枚かませろって言った大臣が、今回失敗した、と」

 

 

 

 

「そ。その報告とかを諸々。今回の報酬も含めて現在マザーが向こうで抉り中ってワケ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローターの駆動音が響くヘリの機内。

そこから見える光景にマザーは青年少女のように物思いにふけた表情で眺めていた。

特別思い出のある風景というわけではない。ただ考えごとをしている内、彼女は外の風景を見て思いつめていたのだ。

 

「………。」

 

「何、歳に無くふけてんだよ。ヘリの酔い覚めにでもしてんのか?」

 

そんな彼女を見たことが無い彼は馬鹿にするように声を掛ける。見ていて恥ずかしさがわいたという事もあるが、彼にとってはらしくないと、そんな事はしないだろうと思える事だったので、彼自身も半分思っても無い事を口走ってしまった。

 

「さて。どうだろうな。少なくとも、お前の遅刻の処遇についても現在思案しているのだがな」

 

「グッ……ありゃアンタが命令したからだろうが。遅れるのは仕方ないだろ!!」

 

「だからと言って、それが言い訳になるとでも?」

 

「―――。」

 

しかし彼女は彼女だったようで、気が付くと軽く笑い皮肉にも聞こえる言葉で返す。

だが、それは自分の所為ではないと子供の様に言い返す彼は逆上し大声で言い返すが、本当に子供の悪口に付き合っているようにマザーは間もおかずに言い返し、遂には彼も何も言い返せなくなる。

 

「言わなかったか?戦場では一分一秒が惜しい。お前がやっていることは最低限の事も守れない事だ、と」

 

(そうなるよう仕組んだのはババアの所為だろうが――)

 

「何かいったか?」

 

「ッ―――いってねぇよ。クソッ………」

 

小声でぼやく彼に、まだやる気か、と訊くような余裕の目を向けるマザー。

口喧嘩では勝てないと知っている筈なのにと小さく微笑んだ彼女に、彼は舌打ちをして目を逸らす。

諦めた顔ではない。次は勝つ。そんな顔だ。

 

 

「ボス、官邸に到着しました」

 

「―――ご苦労。よかったな、言い訳と説教を逃れられて」

 

「―――。」

 

「降りるぞ。元内務大臣さまを救ったんだ。それなりにふんだくらせてもらう為にな」

 

「……はいはい。分かりましたよ、オーナー様」

 

そうとしている間に、ヘリは目的地に辿り着きヘリポートへと着陸した。

ガタンと重い鉄の軋みが機内に響くと、二人は半手動のドアが開き引くだけで扉が開くようになる。

結局、終始彼女に乗せられた彼はまだ嫌味の一つでも言いたげな様子で頭を掻くと、直ぐ近くに置いていた自身の得物を持って後ろへとついて歩く。

 

ボディガード兼話し相手。彼女らしいといえばらしいのだろう。

しかし任ぜられたほうは、しばらく口をへの字に曲げている事が多い。

特に彼の場合はそうだ。

しかし、それを吹き飛ばすほどのことがあれば―――全ては別だ。

 

 

そんな事を軽く吹き飛ばす事。

戦いと、意味と、答えと、力と。

 

 

 

「我ら旅団の力。見せ付けてやるぞ」

 

 

「――仰せのままに、ってな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢や理想は要らない

ただ真実と現実だけがあればいい

 

その言葉を信じ、彼は彼女の下で戦い続ける

 

 

戦う力をくれてやる。戦う意味をくれてやる

 

その対価として、彼はそれに応え続ける

 

何時しか貰った二つ名「黒狼」の名をその剣に刻み

男は今日も戦いの世界に生きる

 

 

 

 

「行くぞ、リヤン」

 

「はいはい。とっとと行くとしましょうかね」

 

 

虚龍リヤン。またの名を「黒狼」

 

 

これは彼ことリヤン

 

 

そして。それぞれの目的で集まりし者達の物語。

 

 

 

 




・オマケ・

簡易キャラ紹介。


虚龍(こりゅう)リヤン (イメージCV 杉田智和)

一応物語の主人公、のばす。
性格は粗暴ではあるが根っこは完全に悪人と言う訳ではない。
トレードマークとして黒髪と小さく纏められた銀髪(その辺りだけ変色している)、そして赤い鞘の複合兵装型の大剣を持つ。ちなみに銃はGSR、マテバなどを使用。



マザー・トルメンタ (イメージCV 榊原良子)

如何なる場にも属さない傭兵部隊、通称”旅団”を率いる老婆。
年寄りではあるが食えない性格で、広い人脈を持つ。
普段は女性用のグレーのスーツを着込み、杖を突いている。
リヤン曰く「怒らせると後と後世が恐ろしい奴」。



ガルシア・ファン・ラバル (イメージCV 田中正彦)

旅団に所属するモノホンの傭兵。またの名を”性格破錠トンチキオヤヂ(誤字でなく)”。
過去の出来事で左耳は千切れ、右手薬指は無くなっている。
爆発物関係はお手の物その気になれば一人で戦争が出来る合理主義な人。
ある理由から旅団に属しているが、詳しい理由は不明。



ジョン・ドゥ (イメージCV 小山力也)

味方としては「救世主」。敵となれば「死神」と呼ばれる、覆面を被った謎の傭兵。
つかみどころの無いひょうひょうとした性格だが、一貫して面白い物を探し続けるという本人の理念から行動し属している。しかしその為か苦手意識を持つ者も少なくない。
主に短刀を扱った接近戦と奇襲、暗殺を得意とし弾丸も容易に切り落とせるとか。



シンヤ・キタムラ (イメージCV 寺島拓篤)

“新西暦”と呼ばれる世界出身の元軍人。年齢は部隊内では最年少。
歳相応の明るさを持つムードメーカーで過去に出会った者達がその原因だとか。
しかし戦闘時は冷静なもので、狙撃や精密射撃などの射撃を担当。だがリヤンが突撃し、ガルシアが容赦なく爆破することから主に退路確保や援護を行う縁の下の力持ちとなっている。



ベール (イメージCV 原紗友里)

“C.E”と呼ばれる世界出身の元軍人。コードネームはbiohaza-dでベールは愛称。
基本、性格が無口・無愛想という所為で相手に意思を伝えにくくそれによってトラブルが絶えない。しかし、最近では真紅と共に行動する事が多いので幾分かは解消。彼女も真紅にはある程度心を開いている。
主に狙撃担当ではあるが本人が何処に居るのかは分からないことが多々ある。



真紅 (イメージCV 沢城みゆき)

中性的容姿を持つ青年。面倒見のいい性格をしており、その一環としてベールと行動、コミュニケーションを取る事が多い。しかし戦闘時はかなり冷酷で敵であれば躊躇い無く倒す。得物は双剣のように扱う太刀。また太刀で対応できない距離をカバーするため銃も使う。が、前線に立つことは少なく、主にマザーのボディガードを勤める。





= 版権作品から =

ロジコマ (攻殻機動隊ARISE より)

旅団が所有する歩兵兵站用輸送支援車両。
元々とある世界で作られた支援用輸送車両らしいが、実際は旅団の開発部がそこからデータをサルベージし独自の技術で製造したもの。(AIも同様)
その為人員を乗せるという事も考慮していない設計はそのままで基本はカーゴに人を乗せて移動したりする。手すりも無い。
三機が製造されているが、最後の一機はAIと機体のマッチングに手間取り遅れてロールアウトする。

また、ロジコマとは別に人員を乗せることを前提にした思考戦車も三機居る。

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