= The Chaos Wolfs = 作:No.20_Blaz
と言っても今回は自分のオリキャラの回ですので、本編は少しお待ちを…
意外とストーリーに関係する…かもしれない子です、多分。
Prologue Ⅱ
??? Side
―――私は、なぜ生きているのだろう
暇を持て余した時、私は決まってそう考え自分の存在に疑問を問う。
哲学的なことを言っているが、正直私には哲学というのは分からない。
そもそも。私は哲学的回答など求めていない。
求めている回答はその問いに対しての答え。
模範的な物ではないその人が考えた、感じた、思った事。
私がどうして生きているのか。
何も知らなくてもいい…けど、私は知りたい。
どうして自分がココに居るのかを…
―――逃げた。
―――逃げた。
―――逃げた。
数え切れない夜と朝を―――私は逃げた。
立ち止まったら殺される。
立ち止まったら彼女達のように殺される。
そう思い。私は一心に逃げ続けた。
森を抜け、街に潜り、下水を駆け、港へと向かった。
雨の日、風の日、雪の日、晴天の日。数え切れない朝と夜を逃げ続けた。
そして…私は―――
Side out
◇
= 二年前 =
「はぁ…はぁ…はぁ…」
数え切れないほど歩いた。
数え切れないほど逃げ続けた。
数え切れないほど、
そして逃げ疲れた頃、彼女はとある港の倉庫街に隠れていた。
無論。理由はその近くを探す者達から逃げる為だ。
「………。」
『おい、見つかったか?』
『いや…つーか本当にこんな倉庫街に逃げたのか?』
『報告じゃ警備システムの一つが小娘を捉えたって話だ』
『……なぁ。俺たち、かまされたんじゃ…』
滅多なこと言うなよ。と滑らせた相方に注意すると、言い出した方はそれを遅れて理解したのか直ぐに口元を自分の手で塞ぐ。
場合によってはそれだけでも十分反乱と言われてしまうからで、それで厳しい処罰が彼らの組織では下されるからだ。
『……兎も角。この辺りをもう少し探すぞ。ココに逃げたのは確かなんだ』
『けどよ。ここ等って確か、民間企業の管轄じゃなかったか?』
『ああ。例の対等主義の偏屈企業のな。だから、連中に何を言われるから分からん。しっかりと急いで見つけるぞ…』
そう言うと、二人は次の倉庫を探そうと言い何処かへと歩き去っていく。
その探す相手がすぐ近く、それも数メートルという間で隠れていたとも知らずにだ。
彼らがたまたま見逃したのか。それとも彼女の運なのか。いずれにしても彼女に対しての危機は段々と遠ざかっていき、遠のいていく足音に少女は小さく安堵の息をつかせた。
「………ふぅ」
これで助かった。
そう思った刹那。
「おや。行ってしまったんですね」
「ッ!!!!」
気づけなかった。
いつの間にか少女の直ぐ隣に一人の男が壁にもたれかかって微笑んでいたのだ。
突然の男の声に少女は息を飲んで驚き、反射的に声のする男へと目を向けると警戒しつつも怯えた様子で数歩後ろに下がる。
「ふふふっ…すみません。突然お声を掛けてしまって…驚かれてしまったようですね」
「………!」
黒いトレンチコートとシルクハットから覗き込むブラウンの髪と細い目。笑っているというのは分かるが、如何せん彼の目が開いているかどうかが分からない目をしておりそれだけでも今の彼女には恐怖の対象となりえてしまっていた。
ただ語りかけただけだというのに少女は目の前に悪魔でも立っているかのように怯えてしまい、後ろ歩きをした直ぐに体勢を崩してその場にへたり込んでしまう。
「あ……」
「おやおや…私が悪魔にでも見えますか……これは相当傷つきますね。確かに普段から偏屈と言われてますが悪魔と見られるのは少し傷つきます…はっきし言って、結構ショック受けてるんですよ?」
「………。」
「………なるほど。極限状態で精神がかなり滅入ってる様ですね…まぁ仕方ない事ですか」
恐怖と絶望。怯える彼女は既に精神が極限状態に達し見る人全てが敵に見えてしまっていた。それも、彼の言う悪魔。それに近しいものにだ。
もう誰も信じることが出来ない。簡単に言い表すならそのような状態なのだ。
それを彼女の様子だけで理解すると、男は手に持って居たステッキをくるくると回し始め、そのまま少女へと近づいていく。
「始めまして、実験体さん。いえ……試作実験体、No.12……ですかね」
「………ッ!!!」
「私の名はミストラル。この世界などで武器などの商人をしているものです」
「………。」
「――ご安心を」
まだ警戒しているようだ。と小さく微笑んだミストラルは回していた杖をカッと音を鳴らして地につけると反対側の手を少女へと差し出す。
「私は貴方を売る気など毛頭ありませんよ、貴方のような人を…ね。私もそこまで非人道的行為は好みません。寧ろ嫌う側です」
「………。」
「………やれやれ。やはり子供には嫌われる様ですね…こればっかりはどうにもできませんか………」
落胆したミストラルはそう言うと手をポケットにしまい、自身のジンクスに溜息をつく。
こればっかりは彼にもどうにもできないようで、不気味とも取れる言動、態度、雰囲気がその主な原因だというのには彼も気づけずに居た。
だが、ジンクスに慣れてしまったのか直ぐに立ち直ると、不意に何処かへと独り言のように声をかける。
「では…リタ」
「はーい?」
彼女もどこから現れたのだろう。
広々とした倉庫の中に突如としてまた一人、今度は彼よりも少し歳の若い女性が姿を見せる。
黒い裾の短い上着とシャツ。そして深い蒼色のショートパンツの服装にこげ茶色のポニーテールをしているが、時間と場所ゆえに今は黒くなって見えている。
しかしその中で露出度の高い服の中にはしっかりと彼女の肩のホルスターに不釣合いなほど大きなサブマシンガンが収められている。
見た目からすればかなり危険な人物だと思うが…
「私ではどうやら相手は無理のようです。貴方から頼みます」
「………。ま。そーなるとは思ってたけど………」
「……。」
軽くミストラルの言葉に返事をすると、リタと呼ばれた彼女は今まで加えていたキャンディの棒を口から出すとどこかあらぬ方へと投げ捨てる。
それを見ていた少女には彼女の行動の一つ一つが恐怖の対象であるかのように見えてしまい、未だ唇を震わせ歯を強くかみ締めていた。
そして。リタが少女との距離を一メートルにも満たないときになった瞬間。
自分は殺される。そう思った彼女は反射的に身を防ぐ構えを取った。
「―――別に撃ち殺したりはしないわよ」
「………。」
が。リタは静かにしゃがみこむと少女の予想に反し温厚な態度で彼女の頭を撫で始める。
ゆっくり、そして静かに優しく置かれた手に怯えていた少女だが、やがてその手から伝わる思いがあったのだろうか。
震えていた身体は段々と治まりを見せ、目を逸らしていた彼女の目はゆっくりとリタの方へと向けられた。
「あ……」
「大丈夫。ここに貴方の敵は居ないわよ」
やがて。彼女が警戒を解いたのを切っ掛けにリタは母親のように彼女を優しく抱き包む。
泣きじゃくった子供を母が抱いたときの様に。それを思い出すかのように、リタは静かに彼女を包み込んだ。
「怖かったわね。寂しかったわね。けど…もう大丈夫。ね」
「………。」
そうした直後。少女の目には静かに、それでも大きな雫が溜まりこれまでの辛さが熱い一つの線となって流れていった。
「……一杯泣きなさい…ちゃんと…もうこんな事にはしないから…」
「ああ……」
「………飽和力…ですかね…」
◇
そうして。彼女は人を知った。
母を知った。
感情を知った。
現実を知った。
そして…運命を知った。
「………クラウを渡すって…本気?」
「ええ。相手は知っているはずです」
「……別に彼らを疑ってるわけではないわ。けど、あの子にはまだ…!」
「それでも…彼女はそう作られてしまったんですよ。リタ」
「ッ……」
「残念ですが、それだけは譲れません。彼女は旅団に行かせる」
「………。」
「と言っても、彼女の存在は未だ我が社だけの極秘です。知られるわけには行かない」
「………。」
「そこで。彼女は今度輸送部隊の物資と共に紛れて護送してもらいます。無論、向こうには伏せますがね」
「………彼女を殺したら承知しないわよ」
「……私もそこまで馬鹿ではありません」
◇
「………。」
「…リタ?」
「………ゴメンね。クラウ…」
「………。」
「ゴメン……」
強く抱きしめられた時に降り注いだ熱い雨。
それが彼女、リタが彼女に見せた最後の涙だった。
◇
= 現在 =
「………。」
時は動く
時は過ぎる
時は…来る。
『グリーン1よりシークレット。制空及び制海権の取得を確認。これより我々は其方の護衛を終了。以後其方の自由認証と共に作戦空域離脱を許可する』
「シークレット了解。良いフライトを」
『そちらも、シークレット』
無線での通信を終え、ヘリの操縦を行っていたパイロットが進路をヘリの一団から脱し別の方へと向ける。彼らがスパイであったり、他の誰にも言えない極秘の任務を行っていると言う訳でもない。
元々そのヘリと他のヘリの一団は目的地が違っていたのだ。
ヘリの一団は軍事基地への物資輸送が目的だが、そのヘリのみとある傭兵部隊に引き取られる予定の要人を運んでいるのだ。
と言っても、要人は歳も若いし身体検査は念入りに行われ必要最低限の物しかなく、何より丸腰だ。
「間も無く目的の空母に着く。用意はできてるか?」
その
「………。」
ただ無情に、下を向き続ける彼女に気まずさを感じたパイロットは顔を引っ込ませると隣で操縦する相方に対し小声で話しかける。
どうやら苛立ちは消え失せたが、反対に気まずさを感じて何もいえなかったようだ。
「結局だんまりか…」
「気にするな。俺たちが本社から伝えられた仕事はアイツの移送だけ。別に尋問しろとかは言ってないんだし。客が黙って従ってくれるなら御の字だ」
「…けど、結局あの娘。一体何者なんだ?」
「さぁな。本社直々の命令なんだ。それほどのビックなんだろうさ」
「………。」
「っと。そろそろ目的の空母が見えてくる頃合いだ」
「のようだな。通信が入った」
黒いバイザーに光が反射し、夕暮れ時に日が沈む太陽が彼らの前に姿を見せる。
もうそんな時間か、と声を漏らすパイロットの言葉に反応し少女は今まで沈んでいた頭を持ち上げると、日の光に反射して輝く紅い海と共に一隻の空母艦が窓から見え、目的地に着いたのだと確信する。
周りには護衛艦の一隻も存在せず代わりに複数の対潜ヘリが群れを成して警戒し、甲板には
「着陸許可を得た。誘導棒が光るからそこに着陸してくれと」
「了解した」
もう考えるのはやめよう。
どう考えようともこれは決まってしまったことだ。
そして今それをやめると言う事は限りなく無理な事。
一瞬でも帰りたいと願ってしまった自分とは、ココで別れることにしよう。
「…着陸完了した。降りていいぞ」
「………。」
パイロットからの許可に少女は礼も告げないまま無言にノブへと手を置く。
そして、力一杯にドアを引き、其処から匂う潮風と少しの熱風。そしてローターの風を身体一杯に浴びて、狭く閉ざされた世界からその身を出したのだ。
これが現在までとの別れだと、心のどこかで悟りながら。
「ッ……」
吹き込む風に目を細くし、甲板の上に足をつける。
ただそれだけの動作だというのに、その刹那。
彼女の胸に僅かな恐怖が滲み始める。
――否。恐怖というよりも…
「お前が……クラウディアだな?」
「………。」
感じ取ったのは警戒心。そして、それに伴う安心感だった
「ようこそ。私の部隊に」
その安心感に引き寄せられ、少女、クラウディアは無意識に彼女の下へと歩き始めた。
そう行くのが運命であるかのように。まるで決められていたかのように。
少女は暗闇から足を踏み出す。